為替管理制度

最終更新日:2024年03月14日

管轄官庁/中央銀行

インド準備銀行

為替相場管理

変動相場制。ただし、極端に不安定な変動局面には、インド準備銀行が介入。

貿易取引

経常勘定における為替取引は、原則自由化されている。対日貿易のほとんどはドル・ベース。ネパールとブータンとの輸出入では、インド・ルピーでの決済を義務付け。国内通貨はインド・ルピー。輸出で獲得した外貨は全額、無利子のExchange Earners Foreign Currency(EEFC)口座に外貨で保有できる。

決済通貨

輸入のための外貨取得は、ネパール、ブータンからの輸入の場合を除き自由。通常、米ドル、英ポンド、およびユーロが最も頻繁に取引されている。また、米トラベラーズチェックも、ほとんどの金融機関で自由に購入できる。
ただし、輸入製品が輸入規制対象品目の場合、外貨取得には輸入ライセンスが必要となる。

決済手段

  1. 輸入代金

    輸入代金の支払いは、原則、船積みから6カ月以内に行わなければならない。
    6カ月を過ぎても(3年未満であれば)、次の理由で輸入代金の決済が遅れている場合、承認取引銀行(AD Bank)は支払遅延を許可できる。

    1. 荷役の数量や品質が契約不履行で係争中
    2. 資金難
    3. 輸入業者が販売業者に対して訴訟を提起している

    なお、インド準備銀行(RBI・中央銀行)が、特定の業種(未加工・カット・研磨等のダイヤモンド)に対し、輸入代金の支払期間の延長のためのガイドラインを出している場合には、当該ガイドラインが適用される。

    その他のバイヤーズ・クレジット、サプライヤーズ・クレジットを含む延べ払い決済による輸入決済は(船積みから3年超、または承認取引銀行に認可されていない場合)、トレードクレジット扱いとなり、管轄地域のインド準備銀行と財務省の認可取得が必要であるほか、トレードクレジットに関する政府ガイドラインに従った手続きが必要となる〔Para B.5.1, B.5.2, B.5.4 of Master Direction - Import of Goods and Services〕。

    注:COVID-19の発生により、インド準備銀行(RBI)は、2020年7月31日以前の輸入品について、通常の輸入品に対する送金完了期間(履行保証等のために金額が保留されている場合を除く)を船積み日の6カ月以内から12カ月以内に延長していたが、現時点では6カ月以内となっている。
    (2020年5月22日付、RBI/2019-20/242 A.P. (DIR Series) Circular No. 33)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(155KB)

    輸入代金の前払いについて、金額の上限はない。ただし、前払額が20万ドルを超える場合、原則として、取消不能のスタンド・バイ信用状、輸出国銀行の保証もしくは承認取引銀行(AD Bank)の保証の取得が求められる。
    ただし、これらの取得が不可能な場合には、輸入者側の承認取引銀行の裁量で500万ドルまでの前払いが認められる〔Para C.1. of Master Direction - Import of Goods and Services〕。

  2. 輸出代金

    原則として、輸出企業*は船積みから9カ月以内に輸出代金を回収しなければならない。
    9カ月を過ぎても(15カ月未満であれば)、一定の条件を満たす場合、承認取引銀行(AD Bank)は輸出代金の回収の遅れを認めることができる〔Para A.2、C.20 of Master Direction - Export of Goods and Services〕。

    * SEZ内企業、ステータス・ホルダー輸出企業、100%輸出志向型企業(EOU)、ソフトウエア・テクノロジー・パーク(STP)内企業、エレクトロニクス・ハードウエア・テクノロジー・パーク(EHTP)内企業、バイオ・テクノロジー・パーク(BTP)内企業を含む。

    一方、輸出代金の前受けの条件は次のとおり。

    1. 金利がLIBOR+100ベーシス・ポイント以下、もしくは金利の支払いがないこと。
    2. 代金の前受け後、1年以内に船積みが行われること(一定の条件をクリアすれば、1年以上の期間が経過しても認められる)。
    3. 前受け金の支払いを行った銀行を通じて、船積み書類がやりとりされること。

    また、輸出から得た外貨は、輸出者がExchange Earners Foreign Currency(EEFC)口座で全額保有できる〔Para C.2 of Master Direction - Export of Goods and Services〕。

    注:COVID-19の発生に伴い、インド準備銀行(RBI)は、2020年7月31日までの輸出品について、輸出された商品またはソフトウエアまたはサービスの輸出額の全額に相当する金額の回収およびインドへの履行期間を、船積み日の9カ月以内から15カ月以内に延長していたが、現時点では9カ月以内となっている。
    (2020年4月1日付、RBI/2019-20/206 A.P. (DIR Series) Circular No. 27)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(244KB)

その他外貨支払い・受け取りにかかる許認可など

配当金、技術使用や商標等の使用に関するロイヤルティーの海外への支払いについては、原則、制限がない。

貿易外取引

インド外為管理法(1999年)によると、1居住者が1年間に取得できる外貨の上限は、目的に応じて異なる。それを超える場合、インド準備銀行の事前許可が必要。

インド準備銀行は、2015年5月26日付で、送金自由化スキーム(Liberalised Remittance Scheme:LRS)による居住者(外為管理法)について、事前許可なしでの送金上限額を年間25万ドルに引き上げた。

LRSの対象となる取引は、経常勘定取引や資本勘定取引となり、経常勘定取引〔Para A 1 of Master Direction - Liberalised Remittance Scheme〕は次のとおり。

  1. 海外旅行(ネパールおよびブータンを除く)
  2. ギフトや寄付
  3. 雇用のための海外渡航
  4. 海外移住
  5. 海外の親類への生活支援
  6. 次に関する渡航費用。海外出張、海外での会議・専門的な研修への参加
  7. 海外での治療・健康診断に関連する費用。海外での治療・健康診断を行う患者への同行
  8. 留学
  9. その他

また、項目4. 7. 8.に記載された目的で、海外移住、治療や大学での勉学に関する費用に対して所定の条件を満たす場合には、前述のLRSの上限(25万ドル)を超える両替が可能。

資本勘定取引(Para A 6 of Master Direction on LRS)は次のとおり。

  1. 海外の外貨銀行口座の開設
  2. 海外の不動産投資
  3. 海外への投資
    1. 海外の上場および非上場会社の株式、または債務証書の保有・取得
    2. 海外の会社で、取締役の役職を保持するために必要な株の取得
    3. プロフェッショナルサービスまたは取締役報酬の対価としての海外会社の株式取得
    4. ミューチュアル・ファンド、ベンチャーキャピタル・ファンド、格付けされていない債券、約束手形への投資
  4. 所定の条件を満たす場合100%子会社および合弁会社の事業開始
  5. インド人の非居住者親族(当該親族は、2013年会社法に定義されている)への貸付(インド・ルピー建ての貸付を含む)

資本取引

海外直接投資は、2020年統合版FDI政策の制限リストに記載された政府の特別認可を要する規制業種以外は、自動認可される(2019年外国為替管理 (Non-debt Instruments) 規則および2020年プレスノート3も参照)。また、制限リスト以外の特定業種への投資を禁止するネガティブ・リストもある。インド証券取引所の上場インド企業の株式取得については、登録された外国機関投資家(FII)・外国ポートフォリオ投資家(FPI)また特定インド非居住者がブローカーを通じて可能。

直接投資

直接投資とは、非居住者による居住企業の株式取得、強制転換権付の優先株式や社債取得、および預託証券の取得を指す。転換権のない普通社債・優先株の発行/取得は、対外商業借入(ECB)と考えられる。
直接投資は、2020年統合版FDI政策制限リストに記載された政府の特別認可を要する規制業種以外は、自動認可される(2019年外国為替管理(Non-debt Instruments)規則も参照)。制限リスト以外の特定業種への投資を禁止するネガティブ・リストもある。
ネガティブ・リストについては「外資に関する規制」の項を参照。

インド証券取引所の上場インド企業の株式取得については、FDIの条件、インド証券為替取引所(SEBI)・インド準備銀行(RBI)の手続きガイドラインおよび評価ガイドラインに従う必要がある。上場インド企業へのFDIとは、上場インド企業の発行済み完全希薄化後の払込自己資本10%以上への出資を指す。
なお、インド国外居住者による、上場インド企業の資本調達手段への既存出資で、発行済み完全希薄化後の払込自己資本の10%未満の場合、当該出資は引き続きFDIとして扱われる。

証券投資

インド証券為替取引所(SEBI)に登録された外国ポートフォリオ投資家(FPI)は、インド国内向け送金により、インド企業の株式購入が可能。外国ポートフォリオ投資とは、インド国外の居住者による資本調達手段への投資を指す。当該投資は、次のいずれかの条件を必要とする。

  1. 上場インド企業の発行済み完全希薄化後の払込株式資本の10%未満
  2. 上場インド企業の各資本調達手段の払込価額の10%未満

2019年のSEBI(FPI)規制で規定されている外国ポートフォリオ投資家(FPI)、または投資家グループによるインド企業への投資については、次のいずれかの条件を必要とする。

  1. 完全希薄化後の払込自己資本の10%未満
  2. インド企業が発行した社債、優先株式および新株予約権の払込価額の10%未満

また、外国ポートフォリオ投資家による投資合計については、完全希薄化後の払込自己資本、または社債、優先株式および新株予約権の払込価額の24%以下にする必要がある。当該10%の制限は個別、24%の制限は合算制限と呼ばれる。インド企業は、取締役会決議および株主総会特別決議により、当該24%の制限を適用となるセクターごとのキャップまで引き上げることが可能。

対外商業借入(External Commercial Borrowing:ECB)

  1. 対外商業借入(ECB)の概要

    ECBは、インド居住者である法人が、在外銀行や外国株主等の非居住法人から調達する商業借入(ローン)である。1999年外為法およびRBIによるECB規制(Master Directions※)に従い、最低償還期間、資金使途、オールインコストの上限金利などの条件に適合する必要がある。条件は借入全体に運用され、個別での適用ではない。Master Directionsは頻繁に改正されるため、実際にECBを実施する際にはRBIの以下ウェブサイトで最新の規制を確認する必要がある。
    Master Direction - External Commercial Borrowings, Trade Credits and Structured Obligations外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(以下、「Master Directions」)

  2. ECBのフレームワーク(Master Directions 項目2.1)

    ECBを通じたフレームワークは、外貨建てECB(自由に兌換できる外貨)とインド・ルピー建てECBの2種類の選択肢で構成される。ECB規制上の条件(Parameter)に適合する範囲内でのECBであれば、自動認可ルートで調達が可能(Master Directions 項目5)。

    表1 ECBのフレームワーク
    Parameter ECBの種類
    外貨建てECB インド・ルピー建てECB
    ECBの形態
    • 銀行借入を含む借入金
    • 変動利付債、固定利付債、社債(強制転換条件付きを除く)
    • 3年超のトレードクレジット
    • 外貨建て転換社債(FCCB)
    • 外貨建て転換条項付き社債(FCEB)
    • ファイナンス・リース
    • 銀行借入を含む借入金
    • 変動利付債、固定利付債、社債(強制転換条件付きを除く)
    • 3年超のトレードクレジット
    • 外国発行のルピー建て普通社債(発行した国の規制に基づき私募債または取引所への上場により発行可能)
    対象となる借入人
    • 外国直接投資(FDI)を受け入れることができるすべての事業体
    • 港湾公社(Port Trust)、SEZ入居企業、小規模産業開発銀行(SIDBI)、インド 輸出入銀行(EXIM Bank
    • 外貨建てECB対象となるすべての事業体
    • マイクロファイナンス事業に従事する登録事業体(登録NPO、NGO等)
    貸付人
    • 金融活動作業部会(Financial Action Task Force:FATF)または証券監督者国際機構(International Organisation of Securities Commission's:IOSCO)加盟国の居住者(いずれも日本は加盟)。ただし株主以外の個人は除く。
    • 外貨建てECBは、インドの銀行の外国支店/子会社も貸付人として認められる(FCCBとFCEBを除く)(注1)

    注1:インド銀行の外国支店/子会社は、海外で発行されるルピー建て債券のアレンジャー/引受人/マーケットメーカー/トレーダーとして参加可能。ただし、インドの銀行が発行するルピー建て債券を、インド銀行の外国支店/子会社が引き受うけることは不可。

    表2 ECBのフレームワーク
    Parameter ECBの種類
    外貨建てECB インド・ルピー建てECB
    最低平均償還期間(Minimum Average Maturity Period:MAMP)

    以下の特定の場合を除き、原則3年

    1. 製造業による1会計年度当たり5,000万米ドル相当額までのECB:1年
    2. 外国株主(注2)からのECBで、資金使途が以下の場合:5年
      • 運転資金
      • 一般的な事業資金(general corporate purposes
      • ルピー建て借入金の返済
    3. 資金使途が以下の場合:10年
      • 運転資金
      • 一般的な事業資金
      • ノンバンク金融会社(NBFC)による、運転資金または一般事業資金を使途とする再融資
    4. 設備投資のためのルピー建て国内借入への返済を使用使途とする場合(NBFCによる同使途での再融資含む):7年
    5. 設備投資以外のためのルピー建て国内借入への返済を使用使途とする場合(NBFCによる同使途での再融資含む):10年

    ※A~Eについては、インドの銀行の外国支店/子会社からECBを調達することはできない。

    なお、コールオプション/プットオプションは期限前の行使不可。

    注2:外国株主(Foreign Equity Holder)とは、[1]出資比率が25%以上の直接外国株主、[2]出資比率が51%以上の間接外国株主、または[3]共通の海外親会社を持つグループ会社を指す。

    表3 ECBのフレームワーク
    Parameter ECBの種類
    外貨建てECB インド・ルピー建てECB
    オールインコスト上限金利(All-in-cost ceiling per annum)(注3) 新規のECB:ベンチマークレート(注4)+500bps
    既存のECB:ベンチマークレート+550bps
    ベンチマークレート+450bps

    オールインコスト上限金利は、2022年12月31日まで調達されるECBについて一時的に100bps引き上げられた。上限引き上げは、インド信用格付機関(CRA)から投資適格の格付を付与されている適格な借入人に対してのみ適用される。その他の適格借入人は、従来のオールインコスト上限内でECB を調達できる。

    注3:外貨建てかルピー建てかを問わず、金利、手数料、保証料、その他費用を含む。ただしコミットメント・フィーおよびインド・ルピーで支払われる源泉税は含まれない。
    注4:外貨建てECBの場合、借入通貨に適用される、広く受け入れられているインターバンク・レートまたは6カ月物期間の代替参照レートを指す。ルピー建てECBの場合、対応する満期のインド政府証券の実勢利回りとする。

    表4 ECBのフレームワーク
    Parameter ECBの種類
    外貨建てECB インド・ルピー建てECB
    資金使途(End-uses(Negative list))

    以下(ネガティブリスト)はECBからの資金が利用できない

    1. 不動産事業
    2. 資本市場への投資
    3. エクイティ投資
    4. 運転資金(「最低平均償還期間」のB、Cを除く)
    5. 一般的な事業資金(「最低平均償還期間」のB、Cを除く)
    6. ルピー建て借入の返済(「最低平均償還期間」のD、Eを除く)
    7. a~fを使途とした再融資(NBFCによる「最低平均償還期間」のC、D、Eを除く)

    その他の主な条件は以下のとおり。

    表5 ECBのフレームワーク
    Parameter ECBの種類
    外貨建てECB インド・ルピー建てECB
    借入限度額 1会計年度あたり7億5,000万米ドル相当額
    (2022年12月31日までのECBに関しては15億米ドル相当に引上げられた)
    負債資本比率 ECB額が500万米ドル相当額超の場合、負債資本比率は7:1を超えることはできない。 規定なし
    借入通貨の変更 他の自由に兌換可能な外貨やルピーに変更可能 外貨への変更は不可
    ヘッジ義務 インフラ関連会社(Infrastructure Space Companies)(注5)は、ECBの平均償還期間が5年未満の場合、ECBエクスポージャーの70%を強制的にヘッジすることが求められる。 義務規定なし
    保証 インドの銀行、全インド金融機関、NBFCによるECBに関するいかなる種類の保証の発行も認められない。
    担保 ECB調達のため借入人の不動産、動産、金融証券に対する担保の設定/解除、外国貸付人/担保受託者のための法人 保証/個人保証の発行は可能。担保行使による売却資金はECB返済にのみ許可される等の条件あり。

    注5:インフラセクターに分類される会社の他、インフラ・ファイナンスを行うNBFC、インフラ・ファイナンスを行う持株会社/中核投資会社等

関連法

1999年外国為替管理法(Foreign Exchange Management Act:FEMA)

その他

特になし。