技術・工業および知的財産権供与に関わる制度

最終更新日:2023年05月30日

技術・工業および知的財産権供与に関わる制度

ラオスの知的財産については2017年11月15日付の改正知的財産法第38号により定められている。主管官庁は商工省知的財産局。

「2017年11月15日付の改正知的財産法第38号」については次のリンクを参照。
ジェトロ「ラオス知的財産に関する情報」ページ「法令等」に掲載の『知的財産権法(2017年11月15日改正)』(ジェトロ仮訳)

知的財産権

知的財産は産業財産、植物新品種、著作権および著作隣接権の3つで構成され、それぞれ次の要素が含まれる。

  1. 産業財産
    特許、実用新案、意匠、商標、商品名、半導体集積回路の配置、地理的表示、企業秘密。
  2. 植物新品種
    一般的に生息しており、品種改良によって新品種となったもの、もしくは自生していて新たに発見されたものを指す。ラオス国内において1年以上販売されていない、あるいは他国において4年以上(樹木とつる植物の場合は6年以上)販売されていないものが対象となる。
  3. 著作権および著作隣接権
    • 著作権は、芸術分野、文学分野、コンピューター・プログラムを含む科学分野における、それぞれの作品や成果に対する権利を指す。
    • 著作隣接権は、実演家、レコード製作者、放送機関による作品に関する権利を指す。

各知的財産権の有効期間、登録料の支払頻度・手数料は次表のとおり(改正知的財産法第8条~第11条、第48条~第55条、第83条、第113条、手数料・サービス料に関する国家主席令第2号(2021年6月17日付)第19条)。以下の手数料の他にも、技官サービス料やフォーム代金がかかることに注意。

表1 産業財産
登録対象 有効期間 登録保護料の支払 申請手数料(*1)
a. 特許 20年 5年目以降毎年 証明書取得100万キープ、5年目まではかからず、6年目は20万キープ。以降、経年ごとに増額
b. 実用新案 10年 毎年 証明書取得50万キープ、2年目は15万キープ、以降経年ごとに増額
c. 意匠 15年 5年ごと 登録料40万キープ、6~10年目は80万キープ/件、11~15年目は100万キープ/件
d. 商標 10年(その後10年ずつ更新) 10年ごと 商標および国際商標ともに80万キープ/回
e. 集積回路の配置 12年 3年目以降毎年 登録料40万キープ、3年目は25万キープ。以降、経年ごとに増額
f. 地理的表示 無期限 初回のみ 80万キープ/件
表2 植物新品種
登録対象 有効期間 登録保護料の支払 申請手数料(*1)
a. 樹木、ブドウ 25年 5年目以降毎年 登録料30万キープ、5年目は15万キープ/件。以降経年ごとに増額
b. 他の植物 20年 5年目以降毎年 登録料30万キープ、5年目は15万キープ/件。以降経年ごとに増額
表3 著作権および著作隣接権
登録対象 有効期間・登録
絵画、彫刻、建築デザイン、写真、文学、詩、等およびその派生物 著作権は作者の没後50年(ただし映画は一般公開あるいは制作時から50年)、著作隣接権は作品が完成した年の年末から50年で、登録は不要

*1:手数料・サービス料に関する国家主席令第2号(2021年6月17日付)より抜粋。

産業財産・植物新品種の登録申請は、ラオス商工省または知的財産登録に関する国際機関に対して行う。外国に居住する者、ラオス国内に事業地がない者は、ラオスでの申請代理人を任命する。登録時に必要な主な書類は次のとおり。

  1. 各財産権の取得申請書
  2. 委任状(申請代理人を立てる場合)
  3. 申請する財産権の詳細説明書(文章、写真、絵などにより財産権の内容と用途を説明)
  4. 登録料の支払領収書

登録申請書類は英語での作成が可能だが、提出から90日以内にラオス語に翻訳した資料を提出しなければならない。法的準拠資料はラオス語版となる。財産権の有効期間中、その権利を保護するためには、前払いで登録料を支払うことが必要(改正知的財産法第27条、第33~35条、第37条、第75条、第77条)。
著作権および著作隣接権については、作品が完成した時に権利が発生し、登録は不要である。ただし、権利の侵害や紛争が生じた時の証拠として、商工省に権利が発生したことについて通知することができる(同法第97条、第98条)。

なお、2016年11月1日より、日本国特許庁とラオス知的財産局との間で「特許の付与円滑化に関する協力(Cooperation for facilitating Patent Gran:CPG)」が開始された。同協力により、日本で審査を経て特許となった出願に対応する出願について、出願人からの申請により、ラオスでも実質的に無審査で特許として認められることになる。

ロイヤルティー、技術料の本国送金にかかわる制限規定

特に規定はない。

その他の留意点

ラオスにおいては、知的財産権の概念の普及と活用がまだ広く浸透していない。商標については5万9,000件が登録されているが、特許は976件、意匠は614件に留まっている。
地理的表示(GI)では、もち米(カオカイノイ種、サントン香米)やボラベンコーヒー、パクソンティー、ルアンパバンテキスタイル、ホアパンシルク、ポンサリー郡のサーコーメーン(茶)の登録が完了している。

ラオスは2016年3月に、商標の国際登録により締約国においてその知的財産権を保護することができる「標章の国際登録に関するマドリッド協定議定書」に加盟している。

ラオスの知的財産に関連する法制度、協定、登録などは、ラオス商工省知的財産局のウェブサイト "Department of Intellectual Property外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"、および世界知的所有権機関(WIPO)のウェブサイト "Lao People's Democratic Republic外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"を参照。