マレーシアの貿易と投資(世界貿易投資動向シリーズ)

要旨・ポイント

  • 2022年のGDP成長率は8.7%と、22年ぶりの大幅な伸びを記録。
  • 世界需要の増大を受け、電気・電子製品の輸出が通年で好調。
  • 対内直接投資は2年連続で過去最高を記録。欧米などからの半導体関連投資が引き続き活発。
  • 日本からの直接投資は、製造業と非製造業ともに堅調な増加を記録。

公開日:2023年10月10日

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マクロ経済 
新型コロナ禍からの反動増で高成長、年末から減速へ

2022年のマレーシアの実質GDP成長率は、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)関連規制の大幅緩和や国境再開に伴い、通年で8.7%を記録した。前年の3.3%から大幅に加速し、2000年以来、22年ぶりの高水準だった。特に第3四半期は、14.1%増の2桁成長を記録したが、第4四半期以降は新型コロナ禍からの反動増効果の剥落に世界経済の成長鈍化も加わり、減速傾向が定着した。

需要項目別にみると、GDPの6割を占める個人消費が、経済活動の正常化に伴い、特に第2四半期(18.3%増)と第3四半期(14.8%増)で成長を加速させ、通年でも11.2%増と経済全体をけん引した。政府消費は、2022年まで続いた新型コロナ対策の支出を主因に一貫してプラスを維持し、通年では4.5%増へ拡大した。民間投資は、とりわけ輸送機器や娯楽分野の資本支出増により、年後半に好調だった。また純輸出については、好調な輸出(14.5%)に対し、それを上回る伸びで輸入も拡大(15.9%増)したことで、前年に続きマイナス成長(1.0%減)が続いた。需要項目の中でも特に経済への影響の大きい個人消費の動きに関し、2022年の小売売上は前年比23.9%増の6,611億リンギと、前年の4.4%減と比べて大幅に増加した。同年の新車販売台数も、前年比41.6%増の72万658台へと急拡大し過去最高を記録した。生産活動の改善や新型コロナに伴うサプライチェーン寸断の緩和のほか、売上税の免税措置終了に伴う駆け込み需要も寄与した。

産業別にみると、GDPの58.3%を占めるサービス業は、消費活動の回復により前年の2.2%増から10.9%増へと大きく加速した。中でも、自動車、飲食料品、宿泊、不動産関連サービスは、前年のマイナスから大幅なプラスへと反転し、コロナ禍からの脱却が顕著だった。製造業も8.1%増と好調で、特に「電子部品・基盤、通信機器、家電」は16.7%増と前年に続き2桁成長を続けた。

2023年上期の実質GDP成長率(前年同期比)は、第1四半期は5.6%増、第2四半期は2.9%増と減速しつつもプラス成長を維持した。マレーシア中央銀行は、2023年通年の実質GDP成長率を4.0~5.0%と予測する。観光や消費分野の回復を背景としたサービス業の堅調さや、大型投資プロジェクトの実施継続、雇用環境や所得水準の改善などが成長をけん引すると見込む一方、リスク要因としては、インフレ圧力の継続や世界的な金融引き締めによる成長鈍化、生活費や投入コストの上昇などを挙げた。

好調な内需や失業率低下、コアインフレの高止まりを受け、中央銀行は2023年5月に3会合ぶりとなるサプライズ利上げを行った。2022年11月以降、据え置いていた政策金利を2.75%から0.25ポイント引き上げ、3%とした。2023年7月の金融政策会合では、金利据え置きを決定した。消費者物価指数の上昇が減速したことで、前回利上げの効果を見守る判断をしたとみられる。エコノミストの多くは、当面は追加利上げはなされないと見通している。なお、中央銀行では、7月1日、ノル・シャムシア・ユヌス総裁の任期満了に伴い、副総裁であったアブドゥル・ラシード・ガフォール氏が新総裁に就任した。

表1 マレーシアの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
2021年 2022年 2023年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1
実質GDP成長率 3.3 8.7 4.8 8.8 14.1 7.1 5.6
階層レベル2の項目民間最終消費支出 1.9 11.2 5.3 18.3 14.8 7.3 5.9
階層レベル2の項目政府最終消費支出 6.4 4.5 6.9 2.3 6.5 3.0 △ 2.2
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 △ 0.8 6.8 0.1 5.8 13.1 8.8 4.9
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 18.5 14.5 12.3 15.9 21.5 8.6 △ 3.3
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 21.2 15.9 16.1 20.1 21.1 7.2 △ 6.5

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。
〔出所〕「四半期別GDP統計」(マレーシア統計局)から作成

エンデミックへの移行と第15回総選挙

ASEANの中でも、とりわけ新型コロナによる封じ込め政策が厳しかったマレーシアだが、2022年4月にはワクチン接種率の向上や重症化率の低下も踏まえエンデミックへの移行を宣言、同月から入国規制を大幅に緩和した。コロナ禍の特設手続きとして、ビジネス目的の渡航者に限定して短期出張を支援するマレーシア投資開発庁(MIDA)下のワンストップセンターが廃止された。コロナ禍では長期のビザなしに入国できなかった外国人も、2022年4月には約2年ぶりにワクチン接種完了を条件に隔離なしの入国が可能となり、同年8月以降は全ての入国規制が撤廃された。その後12月には、新型コロナのパンデミックからの出口戦略として、2021年6月にムヒディン・ヤシン政権下で設立された国家回復会議(NRC)も解散に至った。NRCは、国境の再開時期なども含めた新型コロナ対策を協議しながら、国内経済や国民生活をロックダウンから回復させる戦略を立案し、政府に提言する役目を担った。各州・連邦直轄都市はその感染状況に応じてフェーズ分けされ、コロナ関連規制の緩和を段階的に行っていたが、それを主導するNRCの解散をもって、マレーシアの新型コロナとの闘いは一定の収束を見たといえよう。

NRC解散を判断したのは、2022年11月に誕生したアンワル・イブラヒム新政権だった。同年11月19日に実施された第15回総選挙では、イスマイル・サブリ・ヤーコブ前政権与党内の主要政党だった、統一マレー国民組織(UMNO)率いる国民戦線(BN)、国民同盟(PN)、野党連合の希望連盟(PH)の三つ巴の戦いとなった。PHが最大議席を獲得する一方、マレーシア独立後長年続いた連立与党であるBNが、幹部の汚職問題などの影響で大幅に議席を減らし、総選挙史上初めて各政党連合ともに単独過半数を獲得するに至らなかった。新政権の枠組み作りに向けた政党間の駆け引きが混迷を極めたが、国王の仲介により、第一勢力であるPHを中心にBNなどで構成される連立与党が成立し、結果的に与党側は憲法改正に必要な3分の2である148名の議席を得た。2023年8月に実施されたセランゴール州など6州の州議会選挙では、与党連合は3州で引き続き過半数の議席を獲得し、中長期的な経済改革への基盤が整ったとの評価もある。他方で、州議会選挙では連邦総選挙と同様に、保守イスラム勢力を主軸とする野党陣営・PNの台頭が著しく、現政権にとっては特にマレー系国民からの支持回復が課題視もされている。

財務相も兼任するアンワル首相が2023年2月に発表した2023年度修正予算では、過去最高の歳出規模である3,861億リンギを計上。これ以降も、政権スローガンである「マレーシア・マダニ(持続可能性、繁栄、革新、尊敬、信頼、思いやり)の推進」の下、中低所得層向けの優遇措置や生活費上昇の抑制、社会的セーフティーネットの強靭化に注力する姿勢で政権運営を行ってきた。これと併せて、7月末に打ち出した政権初の中期国家政策「マダニ経済政策」では、海外投資誘致の強化を中心とした構造改革を推進する姿勢を打ち出している。

貿易 
世界的な需要回復に伴い電気・電子製品が通年で好調維持

マレーシア統計局によると、2022年の貿易総額(通関ベース)は前年比27.8%増の2兆8,484億リンギだった。貿易収支は0.6%増の2,551億リンギへと微増し、1998年以降25年連続の貿易黒字を記録した。輸出総額は25.0%増の1兆5,517億リンギ、輸入総額は31.3%増の1兆2,966億リンギと、いずれも2桁増で拡大した。

輸出を品目別にみると、全体の38.2%を占める電気・電子製品が前年比30.2%増の5,935億リンギだった。世界的な需要減速を受け、年後半に向け増加幅は縮小に向かったものの、通年でみると前年の18.0%増から大幅に加速した。同品目の約半数を占める集積回路が32.7%の3,017億リンギだった。さらに、資源価格の高止まりに伴い、パーム油・同製品が27.1%増の1,379億リンギ、石油製品が76.0%増の1,517億リンギ、液化天然ガス(LNG)が78.0%増の680億リンギと、前年に続き大幅に増加した。他方で、新型コロナ感染拡大を背景に一時的に輸出が急増したゴム手袋は、需要縮小に伴い65.3%減の190億リンギへと急減し、主要輸出品目の中でも輸出額の縮小が際立った。

輸出を国・地域別でみると、シンガポールが前年比33.7%増の2,326億リンギで、中国を抜いて首位に浮上した。次いで中国が9.4%増の2,106億リンギと、伸び率は前年(20.6%増)より減速するも第2位の仕向け先であった。これに米国(17.5%増の1,672億リンギ)、日本(29.6%増の982億リンギ)、香港(24.6%増の956億リンギ)が続いた。シンガポール向けの主要輸出品目では、全体の4割を占める集積回路が44.2%増、1割強を占める石油および同製品が69.8%増へと増加した。中国向けも同様に、主要輸出品目である集積回路や天然ガスがそれぞれ4割以上拡大するなど、電子部品と鉱物性燃料の好調が際立った。

輸入を品目別にみると、30.4%を占める電気・電子製品が前年比25.2%増の3,938億リンギと前年に続き2桁増だった。次いで輸入金額が大きい品目は石油製品で、資源価格高騰を受け68.7%増へと拡大した。原油は、前年にサウジアラビアでの減産の影響により急減したことの反動増で、輸入額が3.8倍へ急増した。

輸入を国・地域別にみると、中国が輸入総額の21.3%を占め依然として最大だった。次いで、シンガポール、台湾、米国、日本と続いた。中国からの輸入では、集積回路、石油および同製品、プリント基盤などで2桁増を記録した。シンガポールからの輸入でも、4割を占める石油および同製品が98.7%増、2割を占める集積回路が43.2%とそれぞれ拡大した。

表2-1 マレーシアの主要品目別輸出(FOB) [通関ベース](単位:100万リンギ、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
電気・電子製品 455,953 593,495 38.2 30.2
石油製品 86,160 151,660 9.8 76.0
パーム油・同製品 108,515 137,891 8.9 27.1
液化天然ガス(LNG) 38,193 67,986 4.4 78.0
専門・科学・制御機器 42,877 52,318 3.4 22.0
原油 18,372 31,552 2.0 71.7
木材・同製品 22,794 25,213 1.6 10.6
ゴム手袋 54,813 19,041 1.2 △ 65.3
鉄鋼製の棒 13,688 14,968 1.0 9.4
冷暖房設備・部品 6,580 8,486 0.5 29.0
合計(その他含む) 1,241,022 1,551,736 100.0 25.0

〔出所〕マレーシア統計局

表2-2 マレーシアの主要品目別輸入(CIF) [通関ベース](単位:100万リンギ、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
電気・電子製品 314,546 393,804 30.4 25.2
石油製品 82,911 139,834 10.8 68.7
原油 14,131 52,942 4.1 274.7
特殊機械・同部品 15,793 22,701 1.8 43.7
圧延鋼板 18,561 19,646 1.5 5.8
測定・分析・制御機器 15,262 18,168 1.4 19.0
金(非貨幣用) 18,314 18,027 1.4 △ 1.6
14,322 17,834 1.4 24.5
航空機・関連機器・部品 8,037 17,762 1.4 121.0
自動車部品 11,802 17,051 1.3 44.5
合計(その他含む) 987,344 1,296,636 100.0 31.3

〔出所〕マレーシア統計局

表3 マレーシアの主要国・地域別輸出入[通関ベース](単位:100万リンギ、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
アジア大洋州 851,459 1,074,302 69.2 26.2 728,776 937,942 72.3 28.7
階層レベル2の項目日本 75,816 98,240 6.3 29.6 73,942 83,271 6.4 12.6
階層レベル2の項目中国 192,475 210,624 13.6 9.4 229,016 276,505 21.3 20.7
階層レベル2の項目香港 76,706 95,597 6.2 24.6 17,637 17,602 1.4 △ 0.2
階層レベル2の項目韓国 38,224 54,781 3.5 43.3 50,084 59,773 4.6 19.3
階層レベル2の項目台湾 40,625 51,694 3.3 27.2 75,203 106,069 8.2 41.0
階層レベル2の項目ASEAN 343,503 452,896 29.2 31.8 232,681 319,101 24.6 37.1
階層レベル3の項目シンガポール 173,974 232,566 15.0 33.7 93,633 135,649 10.5 44.9
階層レベル3の項目タイ 52,162 65,843 4.2 26.2 45,383 56,186 4.3 23.8
階層レベル3の項目インドネシア 39,180 56,053 3.6 43.1 56,127 74,174 5.7 32.2
階層レベル2の項目インド 45,203 54,687 3.5 21.0 24,531 31,458 2.4 28.2
階層レベル2の項目オーストラリア 34,479 48,804 3.1 41.5 22,562 39,847 3.1 76.6
欧州 130,737 157,218 10.1 20.3 95,416 110,407 8.5 15.7
階層レベル2の項目EU27 103,721 126,310 8.1 21.8 76,637 90,224 7.0 17.7
階層レベル2の項目英国 9,789 9,293 0.6 △ 5.1 7,395 8,300 0.6 12.2
中東 25,696 36,341 2.3 41.4 33,308 76,104 5.9 128.5
階層レベル2の項目湾岸協力会議(GCC)諸国 19,490 27,463 1.8 40.9 30,642 73,586 5.7 140.1
北米 148,603 172,044 11.1 15.8 78,294 105,889 8.2 35.2
階層レベル2の項目米国 142,244 167,162 10.8 17.5 74,727 100,425 7.7 34.4
アフリカ 30,405 40,542 2.6 33.3 15,799 19,431 1.5 23.0
中南米 25,254 30,325 2.0 20.1 24,604 28,844 2.2 17.2
階層レベル2の項目ブラジル 4,294 4,663 0.3 8.6 11,578 12,197 0.9 5.3
合計(その他含む) 1,241,022 1,551,736 100.0 25.0 987,344 1,296,636 100.0 31.3

〔注〕アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕マレーシア統計局

RCEPとCPTPPの発効でFTAカバー率7割に迫る

マレーシアが締結する自由貿易協定(FTA)は16あり、貿易総額に占めるFTAカバー率は67.3%に上る。2022年3月には、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定、11月には環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)がマレーシアにおいても発効した。投資貿易産業省(MITI)はCPTPP発効により、特にマレーシアとのFTAがなかったカナダ、メキシコ、ペルーへの市場アクセス改善に強い期待を示している。また、近く加盟が見込まれる英国についても、同国との間で初めてFTAが誕生することから、相手国側の関税撤廃によるゴム製品やパーム油、電気・電子製品や化学製品といった広範な品目で輸出競争力が増すことを歓迎している。日本との間では、マレーシア・日本経済連携協定(MJEPA)、日本・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)に加え4つの協定が併存する。2023年7月以降、前者の2協定においては日本からマレーシア向けの輸出に際して第一種特定原産地証明書が電子化され、利便性向上による活用促進が期待されている。

マレーシアは2023年5月、新たにアラブ首長国連邦との包括的経済連携協定の交渉開始に合意し、トルコとのFTAアップグレードに続き中東へのアクセス改善を積極化させている。他方、2012年を最後に交渉が中断したEUとのFTAについては、EUが採用する「森林破壊防止のためのデューディリジェンス義務化に関する規則」が交渉再開へのボトルネックと見なされている。同規則によりパーム油を中心とした農産物の輸出が規制されることから、マレーシアはインドネシアなどのパーム油産出国と協働し、かねてEU側への対抗姿勢を強めていた。同規則に関するEUとの協議進展次第で、FTA交渉を再開する用意があるとマレーシア政府は表明している。

表4 マレーシアのFTA発効・署名・交渉状況(単位:%)
FTA 発効日 マレーシアの貿易に占める構成比(2022年)
往復 輸出 輸入
発効済み ASEAN物品貿易協定(ATIGA) 1993年1月 27.1 29.2 24.6
ASEAN・中国自由貿易協定(ACFTA) 2005年7月 44.2 42.8 46.0
日本・マレーシア経済連携協定 2006年7月 6.4 6.3 6.4
ASEAN・韓国自由貿易協定 2007年6月 31.1 32.7 29.2
マレーシア・パキスタン自由貿易協定 2008年1月 0.3 0.4 0.1
日本・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP) 2008年12月 33.5 35.5 31.1
ASEAN・インド包括的経済協力枠組み協定(AIFTA) 2010年1月 30.1 32.7 27.1
ASEAN・オーストラリア・ニュージーランド自由貿易協定(AANZFTA) 2010年1月 30.6 32.8 28.0
マレーシア・ニュージーランド自由貿易協定 2010年8月 0.4 0.4 0.3
マレーシア・インド包括的経済連携協定 2011年7月 3.0 3.5 2.4
マレーシア・チリ自由貿易協定 2012年2月 0.1 0.1 0.1
マレーシア・オーストラリア自由貿易協定 2013年1月 3.1 3.1 3.1
マレーシア・トルコ自由貿易協定 2015年8月 0.7 1.1 0.2
ASEAN・香港自由貿易協定 2019年6月 31.1 35.3 26.0
環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP) 2018年12月 27.5 30.3 24.0
地域的な包括的経済連携(RCEP)協定 2022年1月 58.1 56.2 60.4
合計 67.3 68.9 65.3
交渉中 マレーシア・韓国自由貿易協定 4.0 3.5 4.6
マレーシア・EU自由貿易協定 7.6 8.1 7.0
カナダ・ASEAN自由貿易協定 27.5 29.5 25.0
マレーシア・EFTA経済連携協定 0.5 0.3 0.7
交渉開始合意 マレーシア・UAE包括的経済連携協定 1.4 1.0 1.7

〔注〕1.FTAを適用した貿易額ではなくFTA締結国との貿易額がマレーシア全体の貿易額に占める割合を表示。2. 「合計」算出に当たっては、重複する国・地域の構成比は除く。3. 特恵関税協定は除く。4. 複数国間協定の場合、発効日は最初の発効国を基準とする。
〔出所〕マレーシア統計局、「世界のFTAデータベース」(ジェトロ)から作成

対内直接投資 
対内直接投資は2年連続過去最高を記録、米国の投資が台頭

2022年のマレーシア対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は前年比47.8%増の746億リンギと、前年(504億リンギ)を上回り、2年連続で過去最高を記録した。業種別では、製造業が前年比52.9%増へと大きく増加し、全体の66.4%を占めた。中でも電気電子・輸送機器分野への投資は約2倍の427億リンギへと拡大し、全体の約6割を占めた。サービス業も約2倍の235億リンギとなり、シェアの大きい金融・保険業や卸・小売業向けの投資が活発だった。製造業においては、北部ペナン州を中心に広がる電気電子分野の裾野の広さ、高度人材も一定程度獲得可能であること、英語力の高さといった従来の強みに加え、米中間の緊張関係の高まりを背景としたリスク回避行動も、特に高付加価値半導体などでマレーシアが投資先として選定される要因であると考えられる。中でも、太陽光電池や電気自動車(EV)用電池など環境分野での投資計画が相次ぎ発表されていることも特徴の一つと言える。

国・地域別にみると、米国からの投資が前年比4.6倍の378億リンギと、2年連続で過去最高を更新し、投資総額の50.8%と過半を占めるに至った。2022年中は、大手損保リバティ・ミューチュアル・ホールディングによる自動車保険アムジェネラル・インシュアランスの株式取得が単独案件としては最高額だったが、医療機器インスレットによる製造拠点設立や半導体大手TTMテクノロジーズによるペナン州でのプリント基板工場設立などもあり、製造業分野への投資は5.7倍の360億リンギへ躍進した。次いで、シンガポール(22.7%増の113億リンギ)、日本(4.6倍の96億リンギ)、香港(2.9倍の63億リンギ)、中国(75.7%増の36億リンギ)と続いた。米国の躍進により、2022年末時点のマレーシアの対内直接投資残高で、米国は2021年末の5位から2位にまで順位を上げ総額の11.5%を占めた。残高の首位は引き続き、20.6%を占めるシンガポールだが、前年3位だった日本は第4位へと順位を落とした。米国の対内投資残高が日本を上回るのは、2008年以来14年ぶりである。

表5 マレーシアの国・地域別対内直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万リンギ、%)(△はマイナス値)
2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
アジア大洋州 18,019 29,573 39.7 64.1
階層レベル2の項目日本 2,098 9,613 12.9 358.2
階層レベル2の項目中国 2,057 3,614 4.8 75.7
階層レベル2の項目韓国 4,720 2,064 2.8 △ 56.3
階層レベル2の項目ASEAN 8,758 14,197 19.0 62.1
階層レベル3の項目シンガポール 8,873 11,333 15.2 27.7
階層レベル3の項目タイ △ 1,872 1,711 2.3
階層レベル2の項目インド △ 514 △ 16
階層レベル2の項目オーストラリア 900 101 0.1 △ 88.8
欧州 16,828 △ 6,518
階層レベル2の項目EU27 6,528 △ 283
階層レベル2の項目英国 4,653 △ 2,847
中東 1,373 1,646 2.2 19.9
北米 8,447 37,164 49.8 340.0
階層レベル2の項目米国 8,280 37,843 50.8 357.0
アフリカ 382 67 0.1 △ 82.5
中南米 2,574 5,441 7.3 111.4
階層レベル2の項目英領バージン諸島 4,153 1,234 1.7 △ 70.3
合計(その他含む) 50,438 74,552 100.0 47.8

〔注〕アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕 「対内外直接投資統計」(マレーシア統計局)から作成

表6 マレーシアの業種別対内直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万リンギ、%)(△はマイナス値)
2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
農林水産業 722 21 0.0 △ 97.1
鉱業 5,765 1,380 1.9 △ 76.1
製造業 32,368 49,484 66.4 52.9
階層レベル2の項目食品・飲料・たばこ 955 970 1.3 1.6
階層レベル2の項目繊維・木製品 1,098 1,058 1.4 △ 3.6
階層レベル2の項目石油・化学・ゴム・プラスチック 3,439 1,147 1.5 △ 66.6
階層レベル2の項目非金属・基礎金属・金属加工 5,173 3,620 4.9 △ 30.0
階層レベル2の項目電気電子・輸送機器・その他 21,703 42,689 57.3 96.7
建設業 73 170 0.2 132.9
サービス業 11,510 23,497 31.5 104.1
階層レベル2の項目電力・ガス 336 1,148 1.5 241.7
階層レベル2の項目卸・小売業 168 3,237 4.3 1,826.8
階層レベル2の項目輸送・倉庫業 625 △ 32
階層レベル2の項目情報通信業 1,606 2,862 3.8 78.2
階層レベル2の項目金融・保険業 5,594 12,334 16.5 120.5
階層レベル2の項目その他サービス業 3,181 3,949 5.3 24.1
合計(その他含む) 50,438 74,552 100.0 47.8

〔出所〕 「対内外直接投資統計」(マレーシア統計局)から作成

投資の先行指標であるMIDAの投資認可額統計では、2022年の外国投資認可額は前年比21.7%減の1,633億リンギへと縮小した。うち、製造業は63.2%減の660億リンギ、サービス業は3.4倍増の84.9億リンギと、後者の増加が顕著だった。製造業投資の内訳として、新規投資が252億リンギと全体の38.2%を占め、残りが拡張・多角化投資に当たる。投資認可額の縮小は、2021年に計上された中国の東方日昇新能源による太陽電池関連投資が巨額だったため、その反動減によるところが大きい。2022年の製造業投資は長期時系列でみれば、1986年以来2番目の水準であり、コロナ禍前を上回った。

製造業の外国投資認可額を業種別にみると、シェアとしては最大の4割強を占める電気・電子製品関連が前年比81.0%減の279億リンギだった。前述の反動減により見た目の投資額が大きく落ち込んだ。MIDAによれば、この分野での主な投資国・地域はドイツとオランダで、中でもウエハー、半導体デバイス、集積回路、プリント回路基板、センサーの製造にかかる案件が多かったという。次いで、輸送機器が5.5倍の66億リンギ、化学・同製品が64.4%増の57億リンギなど、電気・電子製品以外の業種は堅調に投資が拡大した。

国・地域別では、シンガポールが79.4%減の97億リンギで首位だった。同国大手鋼管メーカーのイースチールが、サバ州で環境配慮型の製鉄所を建設する案件が報じられた。次いで中国が42.5%減の96億リンギで、米国との合弁企業TF-AMDマイクロエレクトロニクスによる追加投資や、リチウム電池製造大手EVEエナジーによる工場建設案件があった。これに、日本(21.9%増の92億リンギ)、オランダ(88.3%減の88億リンギ)、ドイツ(10.7倍の88億リンギ)が続いた。ドイツの急増は、半導体大手インフィニオンテクノロジーズによる拡張投資(20億ユーロ以上)によるものだ。

2023年第1四半期の外国投資認可額は、前年同期比35.7%増の375億リンギ、うち製造業は49.5%減の126億リンギだった。近年最大のシェアを占めていた電気・電子製品の関連投資は、87.4%減の20億リンギとその勢いに陰りが見えた。他方で輸送機器向けは144.5倍の43億リンギ、基礎金属製品は45.3倍の24億リンギと急増した。MIDAは第1四半期の大型案件として、中国のEVEエナジーによる増資や、韓国のロッテEMマレーシアによるリチウム電池用電解銅箔の生産拡張などを挙げた。政府は今後、特に研究開発および持続可能性の向上に資する投資、例えばマレーシアの中小企業に裨益するようなグリーン投資を集中的に誘致したいとしている。

表7 マレーシアの主な対内直接投資案件(2022年)(単位:100万ドル)
時期 企業名 国籍 業種 投資額 概要
2月1日 インフィニオンテクノロジーズ ドイツ 半導体 2,200 半導体分野の製造能力を増強。クリムにある拠点に20億ユーロ以上を投資し、2024年下半期に稼働予定。
7月28日 リバティ・ミューチュアル・ホールディング(LIB) 米国 保険 544 米リバティ・ミューチュアルは、自動車保険アムジェネラル・インシュアランス(出資比率はAMMBホールディングス51%、インシュアランス・オーストラリア・グループ49%)より、22.9億リンギで株式取得。買収後の出資比率は、AAMB30%、LIB70%。
9月1日 サラワク・シェル 英国 石炭・石油・ガス 505 シェルはペトロナスの生産・探査子会社ペトロナス・チャリガリと共同で、サラワク州沖のガス田ロスマリ・マジョラムでガス開発を行う。2026 年に稼働予定。
7月29日 CVCアドバイザーズ 英国 代替金融投資 367 英CVCのマレーシア法人スターライト・アセットは、アフィン銀行などから、資産管理会社アフィン・ホワン・アセット・マネジメントの68.4%の株式取得。
8月30日 ゼネラリ保険 イタリア 保険 311 アフィン銀行より、保険アクサ・アフィン・ジェネラル・インシュアランスの株式を取得。同銀はゼネラリ保険に対し、保有する他の保険2社アクサ・アフィン・ライフ・インシュアランスおよびMPIゼネラル・インシュアランスの一部株式も譲渡。
11月1日 日月光半導体製造(アドバンスド・セミコンダクター・エンジニアリング、ASE) 台湾 半導体 300 ペナン州に半導体の組み立ておよび検査施設を設立。生産スペースの拡大、高度な設備の調達、エンジニア人材の訓練・育成に、5年間で3億ドルを投資する。施設は2025年に完成予定。
6月1日 インスレット 米国 医療機器 200 インスリン注入システムの世界大手。ジョホール州に新製造施設を設立。5年間で約2億ドルを投じ、500人以上の従業員を雇用する計画。2024年半ばの稼働を目指す。
9月1日 スカンジナビアンIBS(SIBS) スウェーデン 不動産 146 工業化建設システム(IBS)を手掛けるSIBSは、ペナン州サイエンスパーク内の生産設備を拡張。今後5年間で段階的に約5億リンギを投じる予定。
6月1日 J&Tエクスプレス インドネシア 物流・倉庫 136 セランゴール州で30エーカーの土地取得を完了。物流センター建設に6億リンギを投じる。2025年に稼働開始を予定。
3月1日 TTMテクノロジーズ 米国 電子部品 130 ペナン州のサイエンスパークに、高度自動化プリント基板(PCB)の最先端製造施設を新設。パイロット生産を2023 年後半、量産を2024年に開始予定。
8月31日 三井物産、エフピコ 日本 包装 125 三井物産と食品容器製造大手エフピコは、機能性食品容器の製造・販売を行うジョホール州リースーンセンプラスチックインダストリイズの全株式を取得。出資比率は、三井物産60%、エフピコ40%。
12月6日 OMホールディングス バミューダ諸島 金属、採掘 120 シンガポールに本社を置く採掘企業OMホールディングスは、非鉄金属加工会社OMマテリアルズ・サラワクの未所有株式25%を1億2,000万ドルで取得。 金属ケイ素の生産を開始する。
10月1日 バンテージ・データ・センターズ 米国 通信 118 サイバージャヤに 2 番目のデータセンター (KUL12) を開設。地域需要に応えるため、3 番目の施設 (KUL13) も建設中。
4月1日 フェローテックホールディングス 日本 半導体 114 フェローテックのマレーシア製造会社がケダ州に新工場を建設。金属加工、ロボット組立、石英・セラミックス加工製造などを手がける。2023年下期に完成予定。
10月4日 フレーザー・アンド・ニーブ・ホールディングス シンガポール 飲食料品 111 フレーザー・アンド・ニーブは、菓子・飲料製造販売ココアランド・ホールディングスの保有株式28.7%に加えて、未保有株式72.3%を取得し、同社を完全買収。

〔注〕 投資額は推計値も含む
〔出所〕ワークスペース(Refinitive)(2023年7月3日時点)、fDi Markets(Financial Times)、各社プレスリリース、報道などから作成

対日関係 
対日貿易、投資ともに強まる回復基調

マレーシアにとって日本は、中国、シンガポール、米国に次ぐ4位の貿易相手国で、順位は前年と同様だった。2022年の対日貿易総額は前年比21.2%増の1,815億リンギだった。貿易収支は8.0 倍増の150億リンギへと大幅に増加し、2010年から13年連続の対日黒字を記録した。輸出額は29.6%増の982億リンギ、輸入額は12.6%増の833億リンギと、輸出の伸びが大きかった。

対日輸出を品目別(HSコード4桁ベース)にみると、全体の3割超を占める天然ガスが最大の輸出品目であり、前年比90.5%増加した。マレーシアにとって日本は液化天然ガスの仕向け先として4割超を占める最大の相手国であり、日本にとってもマレーシアはオーストラリアに次ぐ第2位の供給国である(2022年実績)。マレーシアの対日輸出品目としては、集積回路、石油および歴青油、映像機器、通信機器が続く。前年に大きく伸びたゴム手袋は、新型コロナ収束を受け58.3%減へと縮小した。

対日輸入では、全体の2割を占める集積回路が前年比8.2%増の158億リンギへと拡大した。次いで、石油および同製品、半導体デバイス、自動車部品、乗用車が続いた。

日本からの直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は、前年比4.6倍の96億リンギで、国際収支統計が遡及可能な2008年以降、2019年(105億リンギ)と2011年(97億リンギ)に次ぐ、過去3番目の水準だった。このうち製造業が13.2倍の47億リンギ、サービス業が4.1倍の35億リンギと、ともに大幅に増加した。2022年末時点の対内直接投資残高は888億リンギと総額の10.1%を占めたが、順位は米国に抜かれ4位に後退した。MIDAの発表によると、2022年の日本による製造業投資認可額は21.9%増の92億リンギで、前年に続き増加した。構成比は全体の13.9%を占め、いずれも前年から減少したシンガポールと中国に次ぎ、3位の投資国に浮上した。総額の43.5%を占める化学・同製品および25.0%を占める非金属鉱物の分野での投資が多かった。化学関連では、東洋インキグループによるラミネート接着剤の生産設備拡張案件があった。

2022年に発表された日本企業による投資案件をみると、製造業では、上記の東洋インキの案件や、フェローテックホールディングスによる新工場建設などがあった。発表された大型案件の多くが電気電子分野だった。非製造業では、NTTによる第6データセンターの着工やNIPPON EXPRESSホールディングス傘下のNXマレーシアによるクアラルンプール国際空港内の新倉庫開設などがあった。

表8-1 マレーシアの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万リンギ、%)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
天然ガス(HS2711) 15,871 30,232 30.8 90.5
集積回路(HS8542) 6,972 7,430 7.6 6.6
石油および歴青油(HS2709) 2,494 4,622 4.7 85.3
映像機器(HS8528) 2,598 2,877 2.9 10.7
通信機器(HS8517) 2,264 2,854 2.9 26.1
合計(その他含む) 75,816 98,240 100.0 29.6

〔出所〕マレーシア統計局

表8-2 マレーシアの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万リンギ、%)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
集積回路(HS8542) 14,586 15,782 19.0 8.2
石油および同製品(HS2710) 2,186 3,702 4.4 69.3
半導体デバイス(HS8541) 2,755 2,936 3.5 6.5
自動車部品(HS8708) 2,322 2,885 3.5 24.2
乗用車(HS8703) 1,709 2,411 2.9 41.1
合計(その他含む) 73,942 83,271 100.0 12.6

〔出所〕マレーシア統計局

慢性的な人材不足やコスト増が企業活動の重石に

マレーシア日本人商工会議所(JACTIM)とジェトロが実施した2023年度日系企業アンケート調査(調査期間2023年1月20日~2月27日、有効回答数198社、回答率35.6%)によれば、業況判断指数は、2022年下期がマイナス8.1ポイントと、同年上期(9.4ポイント)から17.5ポイント悪化した。前回調査での予測値(20.5ポイント)とも大きく乖離し、2半期ぶりにマイナスに転じた。調査対象期間で景況判断が「悪い」と回答した企業においては、一般ワーカー不足も含めた人材面の課題や、政府による頻繁な規制変更に対する懸念が特に大きかった。

2022年上半期ごろまで顕著だった外国人労働者の不足は、採用手続きの再開に伴い、時間は要したものの2022年後半にかけて徐々に解消に向かった。他方、2022年の後半以降は世界的に需要が減退したことから、人余りの状態も発生した。こうした中での日系企業の景況判断の悪化は、2022年5月に実施された最低賃金引上げの影響が尾を引いたほか、2023年1月に施行された改正雇用法により、企業は就業規則や雇用契約の見直しに迫られることとなったのも影響したとみられる。なお、2023年7月には、零細企業を含む全企業に賃上げ対象が拡大している。

労務関連コスト増加に加えて、電気代の上昇も企業活動への重石と認識されている。2022年12月の天然資源・環境・気候変動省の通達に基づき、燃料価格の変動に合わせて電気料金に付加される「コスト消費者転嫁(ICPT)メカニズム」を、中・高電圧の契約者を対象に2023年上期中は1キロワット時当たり3.7セン(約1.1円)から20センへ大幅に引き上げた。結果として、該当電圧を契約している事業者はおおむね3~4割の電気料金値上げに直面し、マレーシア製造業者連盟(FMM)をはじめ多くの業界団体が反対声明を繰り返し発出した。その後2023年下期のICPTは、20センから17センへ引き下げられたものの、前年と比べて電気代が高水準である状況は変わっていない。また、マレーシアには追加料金を支払うことで再生可能エネルギー由来の電力を購入できるグリーン電力タリフ(GET)制度があるが、2023年8月には、GETの追加料金も、1キロワット時当たり3.7センから21.8センへと約6倍に引き上げられた。2,000を超えるGET制度の契約者が1.5倍程度の料金値上げの受け入れを余儀なくされている。

基礎的経済指標

人口
3,301万人 (2022年)
面積
33万411平方キロメートル(2022年)
1人当たりGDP
1万2,364米ドル (2022年)
(△はマイナス値)
項目 単位 2020年 2021年 2022年
実質GDP成長率 (%) △ 5.5 3.3 8.7
消費者物価上昇率 (%) 1.1 0.7 3.0
失業率 (%) 4.5 4.6 3.8
貿易収支 (100万リンギ) 183,345 253,678 255,483
経常収支 (100万リンギ) 59,091 60,178 55,098
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 105,280 114,641 112,393
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 958,479 1,080,355 1,144,663
為替レート ( 1 米ドルにつき、リンギ、期中平均) 4.203 4.143 4.401

注:
1人当たりGDP:推計値
実質GDP成長率:2015年基準
消費者物価上昇率:2010年基準
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所:
人口、面積、実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:マレーシア統計局
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):マレーシア中央銀行
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF