税制

最終更新日:2023年12月15日

法人税

マレーシアの法人税率は、2016賦課年度より24%。

企業の居住者資格

マレーシア企業の居住資格の可否については、1967年マレーシア所得税法(Income Tax Act, 1967:ITA)第8条(1)項に定められているように、「管理」および「統制」の両面から判断される。事業の「管理」および「統制」がマレーシア国内で行われている企業は、マレーシア居住者とみなされる。すなわち、少なくとも年1回の取締役会議がマレーシア国内で開催され、かつ当該会議の内容を記録した議事録があれば、マレーシア内国歳入庁(IRB)は、通常、当該企業を税務上のマレーシア居住者とみなす。

課税対象所得

マレーシアの税制は、属地的な性質を持っている。当該所得が、マレーシア国内を源泉とするもの、あるいは、マレーシア国外から送金されて国内で受領された場合は、原則マレーシアで課税される。ただし、2021年12月31日までは、個人や会社(銀行業、保険業、空海運業を除く)がマレーシア国内で受領した国外源泉所得は、免税とされていた。しかしながら、2022年度税制改正により、個人や会社(銀行業、保険業、空海運業を除く)がマレーシア国内で受領した国外源泉所得も、2022年1月1日以降は課税されることになった。この変更の経過措置として、2022年1月1日から2022年6月30日までにマレーシアで受領する国外源泉所得は3%の税率で課税されされていたが、2022年7月1日以降は現行の税率が適用されている。また、会社および有限責任パートナーシップ(LLP)(銀行業、保険業、空海運業を除く)については、内国歳入庁のガイドラインの要件を満たす場合には非課税となる。具体的には、2022年1月1日から2026年12月31日までにマレーシアで受領するパートナーシップ事業に関する国外源泉の配当所得については、源泉地国の課税対象であり、かつ、その最高税率が15%未満ではない場合には、非課税となる。
2022年1月1日から2026年12月31日までにマレーシアで受領する国外源泉所得に関する税制措置については、以下のガイドラインを参照。

内国歳入庁ガイドライン:TAX TREATMENT IN RELATION TO INCOME RECEIVED FROM ABROADPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(435KB)

2019年度税制改正により、マレーシアに所在する事業の場所に帰属する所得は、マレーシア源泉の所得として取り扱うことが明確化された。

キャピタル・ゲイン税は、原則として不動産に関するものについて課税されていたが、2024年度税制改正により、2024年3月1日から、マレーシアで設立した非上場企業の株式の処分による純利益に対しても10%の税率で課税されることとなった。なお、株式の取得日が2024年3月1日以前の場合は、課税者は、株式の処分による純利益に対して10%または売却総額の2%のうち、いずれかを選択することができる。
以下に関連する株式の処分については、キャピタル・ゲイン税は免除される。

  • マレーシア証券取引所(Bursa Malaysia)が承認した新規公開株式(IPO)
  • 同一グループ内での株式再編

また、キャピタル・アローワンス(税務上の減価償却)を享受し、減価償却後価値を上回る価格で売却された資産から生じた利得も、所得として課税対象となる。

次の所得源が課税対象となる。

  1. 商取引、専門職業、事業から生じた利得および利益
  2. 雇用から生じた利得または利益(給与、報酬など)
  3. 配当、利子、割引料
  4. 賃貸料、ロイヤルティー、保険料
  5. 恩給、年金、またはそれ以外の定期収入
  6. その他の所得の性質を有する利得または利益

なお、所得税法および投資促進法に基づき、数多くの免税所得が規定されている。また、2009賦課年度より、企業の配当金支払については一段階方式(シングル・ティア方式)が導入され、配当金は、受け取った株主側で免税となる。

法人税の計算で発生した未控除のキャピタル・アローワンスは、原則として永久に繰り越すことができる。税務上の繰越欠損金は、2019年度税制改正により7年間の繰越年限が設けられたが、2022年度税制改正により繰越年限が10年間に延長された(2019賦課年度より適用)。経過措置として、2018賦課年度およびそれ以前に発生した繰越欠損金は、すべて2028賦課年度まで繰り越すことができる。

申告と納税

マレーシアにおける法人税の課税は、課税対象者の全カテゴリー、すなわち企業、事業、合名・合資会社、協同組合、有給従業員などにおいて、自己申告納税制度(Self Assessment System:SAS)に基づき行われている。納税者は、各自の所得税申告書を完全かつ正確に記入し、納税義務を自ら査定しなければならない。IRBは随時監査を行い、納税者による法令順守の状況を確認する。

法人税課税の基準期間は、基本的に会社の事業年度(決算期間)と一致する。申告と納付法定期限は、事業年度末から7カ月以内である。例年、インターネットでの申告の場合には1カ月の延長が付与され、事業年度末から8カ月以内の申告となっている。

各企業は、当年度法人税額の見積り提出が義務付けられているが、この見積り額は、前年度の見積り額または修正見積り額の85%を下回ってはならない。企業は見積り額を基準期間(会計年度)月数で等分、すなわち12等分し、第2月より毎月15日までに分割納付しなければならない。会計年度の第6月と第9月に、当該見積り額を修正することが認められている。

中小企業(SME)は、事業開始年度から2賦課年度は、税額見積りと分割納付を行わなくてもよい。SMEの定義は、払込資本金が250万リンギ以下であることに加え、直接間接に50%超の支配関係にある親子・兄弟会社も、普通株式による払込資本金が250万リンギ以下であること、とされている。

SASの結果、一部の企業については、過大な分割納付により所得税を過払いしている場合があり得る。分割納付額が確定法人税額を上回ったことによる過払い金は、原則として還付が行われる。一方、分割納付額が確定法人税額を下回ったことによる不足額は、期限(事業年度末から7カ月以内。税務申告期限と同じ)までに納付しなければならない。分割納付額が確定法人税額を30%超下回った場合、30%を超える法人税不足額の10%が罰金として課せられる。

法人税率

法人税率は次のとおりである。

法人税率
払込資本金 2023賦課年度以降の税率
1. 中小企業(SME)(払込資本金が250万リンギ以下)で、かつ年間売上が5,000万リンギ以下の場合* 課税所得が15万リンギまで15%
15万超から60万リンギまで17%
60万リンギを超える分24%
2. 1.以外の場合 24%

* グループ会社内に払込資本金が250万リンギ超の親会社などがある場合を除く。

グループ・リリーフ

マレーシアで設立された居住会社は、グループ・リリーフを利用することができ、当年度における調整後損失の70%までについて、同グループ内の他の居住会社の所得と相殺できる。ただし、払込資本金、会計年度、同グループ内の企業間の株式保有要件などに関し、諸々の条件を満たすことが必要であり、実態としてあまり利用されていない。2019賦課年度より、グループ・リリーフの利用、つまり調整後損失のグループ会社への損失の譲渡は、連続する3賦課年度のみに制限されることになった。

移転価格税制(Transfer Pricing

移転価格税制が導入されている。内国歳入庁長官は、関係会社間における物品やサービスの取引が独立企業間価格で行われていないと判断した場合は、かかる取引について調整する権限を有している。なお、移転価格税制については、規則およびガイドラインが発行されている。

2021年度税制改正では、以下2点が導入された(2021年1月1日より適用)。

  • 内国歳入庁から移転価格文書の提出を要請された場合に、移転価格文書を提出しないことに対するペナルティ(2万リンギから10万リンギ)
  • 内国歳入庁により移転価格調整を受ける場合に、移転価格調整額の5%を上限とするサーチャージ

内国歳入庁は、2023年5月、新たな移転価格税制規則を公表した。新規則は2023賦課年度以降に適用される。新規則では、同時文書化義務、独立企業間価格幅、比較可能性分析、無形資産等に関する変更点が盛り込まれている。

内国歳入庁:Transfer Pricing外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

二国間租税条約

マレーシアは、2023年12月現在、二重課税を回避するための租税条約を76カ国と締結・批准し、発効している。

マレーシアが租税条約を交わしている国については、内国歳入庁のウェブサイトを参照。
"Double Taxation Agreement外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

日本・マレーシア二重課税防止条約(JMDTA)の下、日本の居住者がマレーシアから得る所得に関しては、次の条件を享受する。

  1. 利子
    マレーシアの所得税法上の源泉徴収税率は15%だが、JMDTAに基づき、10%に引き下げられる。
  2. ロイヤルティー

    ロイヤルティーに対する源泉徴収税率は、JMDTAに基づき、10%である。ロイヤルティーは、次のとおり定義される。

    • 文学上、芸術上もしくは学術上の著作物(ソフトウエア、映画フィルム、ラジオまたはテレビ放送用のフィルムやテープを含む)の著作権、特許権、商標権、意匠、模型、図面、秘密方式もしくは秘密工程の使用、もしくは使用の権利に対する対価。
    • 産業上、商業上もしくは学術上での、設備の使用もしくは使用の権利に対する対価。
    • 産業上、商業上もしくは学術上の経験に関する情報の対価として受領するあらゆる種類の支払金。
    • 船舶または航空機の裸用船契約に基づいて受領するあらゆる種類の支払金。
  3. 配当
    マレーシアの所得税法に基づき、マレーシアの居住会社から支払われる配当には、源泉徴収税が課せられない。

OECDの下で策定されたBEPS防止措置(税源侵食及び利益移転を防止するための措置)を多数の既存の租税条約に対して同時に実施するための「税源侵食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約」(「BEPS防止措置実施条約」または「MLI」)に関して、2021年2月18日に、マレーシアはOECDにMLIの批准書を寄託した。これにより、2021年6月1日をもって、MLIがマレーシアにも適用された。この結果、日本などMLI批准国との間では、MLIにおける源泉税に関する規定は2022年1月1日より、源泉税以外の規定は2021年12月1日より適用。なお、MLIの適用により、前記のJMDTAの源泉税率には変化はない。

日本財務省:我が国とマレーシアとの間の租税条約に対する本条約の適用関係の概要外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

その他税制

源泉徴収税、個人所得税、売上税、サービス税、物品税、印紙税、不動産譲渡益税などがある。
2022年1月1日から9月30日まで、間接税の特別自主開示プログラム(Special Voluntary Disclosure Program)が実施された。売上税、サービス税、物品税、関税などの間接税を対象として、納税者が過去の無申告や過少申告、過少納付などを自主的に修正する場合には、罰則が減免された。具体的には、2022年1月1日から2022年6月30日までの第1フェーズではペナルティの金額の100%が免除、2022年7月1日から2022年9月30日までの第2フェーズではペナルティの金額の50%が免除とされた。
また、2023年6月6日から2024年5月31日まで、特別自主開示プログラム2.0(Special Voluntary Disclosure Program 2.0)が実施されており、直接税および間接税を対象として、納税者が過去の無申告や過少申告、過少納付などを自主的に修正する場合には、ペナルティの金額の100%が免除される。

源泉徴収税(Withholding Tax

マレーシアでは、非居住者に対する利子、ロイヤルティー、マレーシア国内で行われる役務の対価、プラントや機械設置にかかる据付け手数料、動産の賃貸料、請負工事代金のサービス部分といった特定名目の支払いに対し、源泉徴収税が課税される。
税率は、利子に対しては15%(JMDTAでは10%)、ロイヤルティーが10%(所得税法第109条)、役務対価や据付手数料などが10%(所得税法第109B条)、工事請負代金のサービス部分が13%(所得税法107A条)である。なお、2009年1月1日より、事業所得に該当しない販売コミッションや保証料などの非居住者への支払いについても、源泉徴収税の対象となった(所得税法109F条)。
所得税法第109B条における役務対価などの課税範囲は、従来マレーシア国内で提供されたサービスのみであったが、2017年度予算に基づき、マレーシア国外で行われたサービスも2017年1月17日以降は課税とされた。しかし、各国大使館や商工会議所などの抗議もあり、所得税法免除令が発動され、2017年9月6日以降にマレーシア国外で発生した役務の提供については、課税されないことになった。2019年度税制改正では、課税対象となる役務の範囲から「技術的な」という文言が外されたため、2019年1月1日以降は、役務が技術的な性質を有するかどうかは課税の有無に影響を与えないことになる。
また、ロイヤルティーについても、ソフトウエアの使用権、衛星・有線・光回線などによって送信される画像や音声を提供する権利、これらの権利の全部または一部の譲渡については、課税範囲に含まれるとした。

マレーシア内国歳入庁(IRB):

2022年度税制改正により、会社から個人への一定の販売コミッションの支払いに対して、2%の源泉税が課されることになった。一定の販売コミッションとは、会社のために販売を行う個人のエージェント、ディーラー、ディストリビューターへの支払いのうち、前年に、金銭その他のコミッションを1社から10万リンギ以上受け取った個人への支払いに限る。この場合、会社は、コミッションの支払日から30日以内に源泉税を納付する必要がある。

個人所得税

1967年所得税法上、居住者とみなされる個人には特殊な分野の所得を除いて累進課税が適用され、その際に課せられる最高税率は2020賦課年度より30%となっている。マレーシアに1年間に182日以上滞在する場合には居住者とされる。住宅家賃補助、各種手当、会社負担の個人所得税などは課税対象所得、住宅付随の家具や自動車などは現物給付所得とみなされる。なお、本人、扶養家族、保険料などに関する控除も適用される。

ジェトロ:個人所得税税率(2023賦課年度以降)PDFファイル(288KB)

外国企業が従業員をマレーシアに駐在させている場合、当該従業員の給与所得は、その給与の受取場所にかかわらずマレーシア国内源泉の所得とみなされるため、マレーシアへの送金の有無に関係なく、マレーシアでの課税対象になる。
2022年度税制改正により、2022年1月1日以降は、個人がマレーシア国内で受領した国外源泉所得も課税される。たとえば、駐在員が母国で得た不動産賃貸収入などはマレーシア国外源泉の所得だが、マレーシアに送金するとマレーシアで課税される。経過措置として、2022年1月1日から2022年6月30日までにマレーシアで受領する国外源泉所得は、3%課税される。また、内国歳入庁のガイドラインの要件を満たす場合には、非課税となる。具体的には、2022年1月1日から2026年12月31日までにマレーシアで受領する、源泉地国の課税対象となっており、その最高税率が15%未満ではない場合のパートナーシップ事業に関する配当所得、および源泉地国の課税対象となっているパートナーシップ所得以外の国外源泉所得については、非課税となる。
2022年1月1日から2026年12月31日までにマレーシアで受領する国外源泉所得に関する税制措置については、以下のガイドラインを参照。

内国歳入庁ガイドライン:TAX TREATMENT IN RELATION TO INCOME RECEIVED FROM ABROADPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(435KB)

非居住者の雇用所得に対しては、2020賦課年度より一律30%で課税されるが、雇用によるマレーシアでの就労が60日以内であれば、所得税法上は免税となる。報酬の支払い者がマレーシア居住者でないなど、日マ租税条約上の条件を満たす場合なども免税となる。

個人所得税の課税基準期間は暦年(1~12月)であり、この間の所得を翌年4月30日までに申告・納付する。

雇用主は、従業員の毎月の給与から所得税を源泉徴収することが義務付けられている。源泉徴収額は、税務当局作成の所定の表に従う。従って、4月30日の納付期限は、源泉徴収された税額と確定税額との差額についてのものであり、源泉徴収による納付額が確定税額より多い場合は過払い分が還付される。

なお、雇用によって金銭報酬のみを受け取っている被雇用者については、一定の条件を満たせば、2014賦課年度から月次の源泉徴収額を最終税額とし、翌年4月30日までに行う申告をしない選択も可能となった。

売上税(Sales Tax

2018年5月の政権交代に伴い、物品・サービス税(GST)は2018年8月31日をもって廃止され、2018年9月1日から売上税(Sales Tax)とサービス税(Service tax)が導入された。売上税とサービス税を総称してSSTと呼ばれている。
売上税は、課税物品の輸入および課税事業者たる製造業者がマレーシア国内で製造する課税物品に課され、税率は5%または10%である(石油製品を除く)。課税事業者による輸出は免税とされる。GSTにおける仕入税額控除のような仕組みがない代わりに、売上税においては、課税事業者が材料などを輸入または他の課税事業者から購入する場合に、免税を適用することができる。指定地域(ラブアン、ランカウィ、ティオマン、パンコール)および特別地域(フリーゾーン、保税倉庫、保税工場など)は、原則として売上税の対象外とされている。
将来または過去12カ月における課税物品の売上が50万リンギを超える製造業者は、課税事業者登録を行う必要がある。課税事業者は、2カ月の課税期間ごとに、課税期間終了日から1カ月以内に売上税の申告と納付をしなければならない。

これまで課税対象ではなかった、オンライン市場で販売され、陸路、海路または空路でマレーシアに配送される500リンギ以下の価格の低価格商品(Low Value Goods:LVG)についても、他の課税物品との公平性を図るため、売上税が課されることを内容とする改正売上税法(SALES TAX (AMENDMENT) ACT 2022)が2022年10月に成立した。2023年4月1日からの施行が予定されていたが、その後施行は延期され、2024年1月から施行される。低価格商品に対しては、売上税として一律10%が課税される。また、低価格商品の販売額が年間50万リンギを超える者は、マレーシア国内外を問わず納税義務者となり、登録販売者(RS)として税関に届け出を行う必要がある。

税関:
登録申請ウェブページ:Application for Sales Tax on Low Value Goods (LVG) Registration外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
Sales & Service Tax(SST)公式ウェブサイト:MySST外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

高額商品税(High Value Goods Tax

2024年度税制改正より、2024年3月から宝飾品や時計など特定の高額品目について、その基準価格に基づいて5%から10%の税率で高額商品税が課される。

サービス税(Service Tax

  1. サービス税の概要

    サービス税は、マレーシア国内に所在する課税事業者が行う課税サービスに課され、税率は6%である(クレジットカード発行は1枚につき25リンギ)。2018年サービス税規則(Service Tax Regulation 2018)の別表1でA~Iのカテゴリーの課税サービスが規定されている。具体的には、レストラン、弁護士、会計士、エンジニア、コンサルタント、ITサービス、マネジメントサービス、人材紹介、警備業、保険、広告、国内線のフライトなどがある。

    2019年1月1日より、一定の専門的サービスまたは広告サービスを提供する国内の課税事業者が、他の国内の課税事業者から同種の課税サービスを取得する場合、他の課税事業者が提供する同種の課税サービスは免税できることになった。
    2024年度税制改正により、食品、飲料、通信サービスなどを除き、サービス税の税率が6%から8%に引き上げられる。また新たに、カラオケ、デリバリーサービス(食品、飲料のデリバリーを除く)、非金融サービスの仲介・引受業務、物流といったサービスが課税対象となる。

  2. サービス税の申告・納付の手続き

    将来または過去12カ月における課税サービスの提供が一定額を超えるマレーシアの事業者は、課税事業者登録を行う必要がある。課税事業者は、2カ月の課税期間ごとに、課税期間終了日から1カ月以内にサービス税の申告と納付をしなければならない。

  3. 輸入サービスに対するサービス税

    2019年度税制改正により、2019年1月1日より、輸入サービスつまりマレーシア国内の事業者がマレーシア国外の事業者から取得する課税サービスにも課税されることになった。輸入サービスに係る申告・納税の処理は、マレーシア国内の事業者が実施しなければならない。
    課税事業者が行う課税サービスおよび輸入サービスのうち一定のサービスについては、いわゆるグループ免税の規定が設けられている。これにより、原則として50%超の資本関係を持つグループ会社間で行われる課税サービスは免税となる。この点、サービス提供者が同種サービスをグループ外の会社にも提供する場合には、グループ会社に対して行う課税サービスも課税とされていた(グループ免税が適用されなかった)が、2020年度税制改正により、将来12カ月におけるグループ外の会社に対する課税サービスが全体の5%以下であれば、グループ会社に対するサービスに、グループ免税が適用されることになった。

  4. デジタルサービスに対するサービス税

    2020年1月1日からは、マレーシアで課税事業者登録をした国外のデジタルサービス提供者が提供するデジタルサービスにも6%のサービス税が課せられる。デジタルサービスとは、インターネットまたは電子的ネットワークを通して提供されるサービスで、ITの利用を伴い、サービス提供が本質的に自動化されているものと定義されている。年間のデジタルサービスの売上が50万リンギを超える国外のデジタルサービス提供者は、マレーシアにおいて課税事業者として登録しなければならない。登録した課税事業者は、デジタルサービスの売上にサービス税を課すとともに、3カ月ごとの課税期間の終了日の翌月末日までに、当該課税期間にかかるデジタルサービス税の申告・納税を行う必要がある。

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物品税(Excise Duty

ビール、スタウト・ビール、その他の酒、一定の加糖飲料、たばこの葉が含まれた巻たばこ、電子たばこなどのたばこ製品、自動車、トランプといった特定品目に対しては、物品税が課せられる。物品税の税率は、課税対象品によって異なる。物品税対象品の製造業者は、当該品目を製造するライセンスを取得しなければならない。物品税の課税対象品の保管についても、倉庫ライセンスが必要である。
一般に、物品税は、当該品目が製造地を離れた時点で支払うが、自動車の物品税については、当該車両が道路交通局に登録された時点で支払う。輸出品には、物品税は課されない。

税関:物品税に関するウェブページ:Excise & Levy外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

印紙税(Stamp Duty

特定の証書および文書に対して課される印紙税の税率は、証書/文書の種類および取引価格によって異なる。一部の証書や文書については、印紙税の免除が認められる場合がある。

主な印紙税率は、次のとおり。

  1. 土地、営業権、売掛金などの資産譲渡にかかわる文書
    資産価額 税率
    10万リンギまでの部分 1%
    10万超50万リンギまでの部分 2%
    50万リンギ超100万リンギまでの部分 3%
    100万リンギ超 4%
  2. 一般的契約書および覚書
    一律10リンギ
  3. ローン契約書
    1. 教育ローンについては、一律10リンギ
    2. 教育ローン以外については、原則としてローン金額1,000リンギごとに(1,000リンギ未満切り上げ)5リンギ
  4. 株式
    1. 非上場株式
      評価額1,000リンギごとに(1,000リンギ未満切り上げ)3リンギ
      この場合の評価額とは、次の金額のうち最大のものを指す。
      • 純資産
      • 売却価格
    2. 上場株式
      取引金額1,000リンギごとに(1,000リンギ未満切り上げ)1.5リンギ
  5. 建設請負契約などのサービス契約
    サービス契約額の0.1%(2011年1月1日より)

不動産譲渡益税(Real Property Gains Tax:RPGT)

マレーシアに所在する不動産の譲渡は、RPGTの対象となる。不動産は、「マレーシア所在のあらゆる土地およびその土地をめぐる利権、訴権、または権利」と定義され、土地に付随する建物や建造物も含まれる。
2022年1月1日以降の税率は、次のとおり。

RPGT税率
保有期間 内国法人 マレーシア人および永住権者 外国人および外国法人
取得日より3年以内 30% 30% 30%
4年目 20% 20% 30%
5年目 15% 15% 30%
6年目以降 10% 0% 10%

買い手は売り手に支払う譲渡対価の3%を保留(源泉徴収)し、譲渡日から60日以内に税務当局へ納付することとなっている。売り手がPR(永住権)を持たない外国人または外国法人の場合、この保留率は7%。また、マレーシアの内国法人、信託、社団が取得日より3年以内に譲渡する場合、5%となる。

電子インボイス(e-Invoice

電子インボイス(e-Invoice)が2024年8月から段階的に導入される。電子インボイスは事業者間取引(B2B)、事業者対消費者取引(B2C)、事業者対政府取引(B2G)のすべての取引が対象となる。2024年8月からは年間売上高または収益が1億リンギ超の納税者、2025年1月からは年間売上高または収益が2500万リンギ超1億リンギ以下の納税者、2025年7月からはすべての納税者に導入される。
電子インボイスは、マイインボイス・ポータル(MyInvois Portal)およびアプリケーション・プログラミング・インターフェイス(Application Programming Interface(API))の2種類から選択される。マイインボイス・ポータルは、すべての納税者が利用することができ、個別入力またはスプレッドシートからのアップロードによって生成される。アプリケーション・プログラミング・インターフェイスは、大量の取引を送信することが可能であり、多額の納税者や取引量の多い企業が対象となる。
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