技術・工業および知的財産権供与に関わる制度

最終更新日:2023年12月15日

技術・工業および知的財産権供与に関わる制度

知的財産は、マレーシア知的財産公社(Intellectual Property Corporation of Malaysia:MyIPO)によって監理され、主に次の法令およびコモンローによって保護されている。CPTPPやRCEPを含め国際的な動向に対応するため、2021年12月には、著作権法・特許権法の改正および地理的表示法の新法が導入された。
2019年商標法、1987年著作権法、1996年工業デザイン法、1983年特許法、2000年集積回路の回路配置法、2022年地理的表示法、機密情報および企業秘密、2000年特許(改正)法、2012年著作権(改正)法、2021年著作権(改正)法、2022年著作権(改正)法、2021年特許(改正)法、2022年特許(改正)法。

管轄官庁

マレーシア知的財産公社(Intellectual Property Corporation of Malaysia:MyIPO外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
Tel:03-2299 8400/8989
E-mail:ipmalaysia@myipo.gov.my

個人情報保護局(Department of Personal Data Protection外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

MyIPOは、知的財産関連法の強化、知的財産保護の重要性に関する啓蒙、知的財産保護のための登録サービス、情報、アドバイスの提供などを行う。マレーシアの知的財産に関する法令は、MyIPOのウェブサイトで確認できる。

2013年4月26日、世界知的財産の日にちなみ、「ASEAN IPポータル」が開設された。ASEAN諸国は、この共通プラットフォームにおいて、知的財産に関する手続きやデータ情報を共有し、知的財産権についての認知度向上を目指している。

(参考)ASEAN IPポータル "ASEAN Intellectual Property Portal外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

  1. 商標

    マレーシアにおいて、商標およびサービス・マークは、2019年商標法(Trade Marks Act 2019)、2019年商標規則(Trade Marks Regulations 2019)によって規定され、保護されている。
    当該商品/サービスと当該マークの正当な使用者の間にある商売上の関係を示すために、商品に関連して使用される、または使用を意図したすべての商標は登録できる。ただし、この場合、当該マークが本質的に特徴的であること、あるいは当該マークによって少なくとも商標使用者の商品と他社の商品/サービスとの区別が可能になることが条件となる。

    商標が一度登録されれば、商標の登録者は、当該商標を悪用する者に対し、法的手段に訴えることが可能となる。商標の登録者は、当該商標を譲渡したり、使用を許可するライセンスを付与したりする権利を有する。
    商標登録は、出願日から10年間有効で、その後は10年ごとに無制限に更新することができる。ただし、3年以上にわたって使用されていないマークは廃止される場合がある。マレーシアでは、電子出願、早期審査の制度が導入されている。
    また、2012年1月1日より、ニース国際分類(Nice Classification)(当時第10版、現在第11版)が採用されている。

    2019年7月に成立した2019年商標法の下では、マドリッド協定議定書(Protocol Relating to the Madrid Agreement Concerning the International Registration of Marks)に加入するための法整備が行われた。これを受け、マレーシア政府は、2019年9月27日にマドリッド議定書への加入書を世界知的所有権機関(WIPO)に寄託し、2019年12月27日に議定書の効力が発生。議定書への加入により、一つの申請により複数の国での商標登録が可能となった。
    また、2019年商標法の下では商標の定義の変更により、色、音、においなども商標の対象とされ、商標として登録することができるようになった。

    MyIPOウェブサイト:

  2. 著作権

    マレーシアにおける著作権関連法規の基礎は、1987年著作権法(Copyright Act 1987)、1987年著作権規則(Copyright Regulations)、および同法・同規則の改定条項である。著作権保護は、著作物の質または著作物製作の目的にかかわらず存続し、いかなる形態による著作物の無断複製を防止するものである。

    マレーシアには著作権登録または版権登録納本の制度がなく、ある著作物に対するマレーシアの著作権は、1987年著作権法(Copyright Act 1987)に基づく著作権基準が満たされれば、自動的に発生する。著作権の判断基準は、次の4点である。

    1. 当該作品が独自のものであること。
    2. 当該作品が、有形な形態によって記録または変換されていること。
    3. 当該作品が、6つの保護作品カテゴリー(文学、音楽、芸術、録音、映画、放送)のいずれかに属すること。
    4. 当該作品が著作権要件を満たしていること。

    2012年著作権(改正)法(Copyright (Amendment)Act 2012)に基づき、MyIPOは「著作権任意通知システム」を導入している。同システムでは先願主義を採用しており、審査はないが登録と同じ効果があるとしている。

    MyIPO:著作権任意通知システム "Copyright Voluntary Notification外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

    基本的な著作権保護期間は、作者の生存期間と死後50年間である。出版物、録音作品、写真、映画、放送作品の著作権保護期間は、最初に出版または放送された年の翌年から50年間である。芸能人のライブ・ショーに対しては、50年間の著作権保護が適用される。

    著作権に関する訴訟に対応するため、2012年9月1日より、2012年著作権(著作権裁判)規則(Copyright (Copyright Tribunal) Regulations 2012)が施行された。

    また、マレーシアは、文学的および美術的著作物の保護に関するベルヌ条約に加盟している。ベルヌ条約の内国民待遇原則に従い、本条約加盟各国には、自国の国民/居住者に対する場合と同様、他のベルヌ条約加盟国の国民/居住者に対しても、同等の著作権保護を与えることが義務付けられている。

    2021年著作権(改正)法では、ストリーミング技術を利用したコンテンツの著作権侵害を違反対象とするなど、著作権保護を強化した。また、2022年著作権(改正)法では、視覚障がい者に配慮した規定やストリーミング技術を利用した著作物に対する著作権侵害に対する罰則規定を設けるなどの改正が行われた。

    MyIPO:1987年著作権法および関連法規 "Copyright Act 1987Copyright Regulations外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

  3. 意匠

    1996年工業デザイン法(Industrial Designs Act 1996:IDA)により、マレーシアにおける工業デザインの現地登録制度が創設された。IDAによる登録を可能にするには、デザインが新規で、視覚に訴え視覚のみで判断される形状、構造、模様または装飾上の特徴を備えていなければならない。

    IDAは、工業デザインの登録期間について、最長で25年(5年ごとの4期延長)と規定している。工業デザインの所有者は、IDAに基づき、登録済み工業デザインが用いられているあらゆる製品を、販売または貸し出し用に製作もしくは輸出する、商売または業務用に使用する、ならびに、これを販売する、貸し出す、あるいは、販売または貸し出し用に提供または公開するにあたり、それらを独占的に行う権利を有する。
    なお、2013年7月1日より、工業デザインに関するすべての申請・要望については、2013年工業デザイン(改正)規則に基づくこととなった。

  4. 特許権

    特許権の供与と施行は、1983年特許法(Patents Act 1983)に準拠する。発明者は特許を申請する資格があるが、特許を取得するには、当該発明について、世界的な新規性があり、進歩性を伴い、産業上利用できるものでなければならない。

    2000年特許(改正)法に基づき、特許保護期間は、特許出願日から20年とされている。特許権所有者は、特許保護期間中、マレーシア国内で当該特許の適用範囲にある発明を利用することができるとともに、当該特許権のいかなる侵害に対しても法に訴えることができる。なお、マレーシアでは、電子出願と早期審査の制度が導入されている。

    MyIPO:特許の早期審査の手続き "Patent Expedited Examination Flowchart外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

    特許協力条約(Patent Cooperation Treaty:PCT)に基づいてMyIPOに提出された国際出願については、2013年4月1日より、国際調査機関(International Searching Authority:ISA)および国際予備審査機関(International Preliminary Examining Authority:IPEA)として、日本の特許庁が指定されることとなった。

    2021年特許(改正)法では、特許権を担保対象の資産として認めるなどの改正が行われた。
    2022年特許(改正)法では、分割出願を認める規定や第三者が特許出願の特許性に関する事項について意見を述べることができる規定を設けるなどの改正が行われた。

    MyIPO:1983年特許法、1986年特許規則 "Patents Act 1983Patents Regulations 1986外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

  5. 集積回路の回路配置

    2000年集積回路の回路配置法(Layout Designs and Integrated Circuit Act 2000)は、創造性、創作者の独自の考案、作品が自由に創作されたという事実に基づき、集積回路の回路配置の保護を規定している。集積回路の回路配置に関する登録は存在しない。

    保護期間は、その商取引の開始から10年、または商業的に利用されていない場合は創作の日付から15年である。この法令はまた、法令に基づいて認識されるこのような権利が侵害された場合に、権利の所有者が訴訟を起こすことを認めている。同権利は、譲渡、ライセンス、遺言、または法の執行によって、部分的または全体的に移転することができる。

    同法は、マレーシアの電子産業に対する投資者に保証を提供し、マレーシアにおける技術の成長を確保するという目的に沿って、知的所有権の貿易に関連する側面に関する協定(Agreement on Trade Related Aspects of Intellectual Property Rights:TRIPS)に従って施行される。

    MyIPO:2000年集積回路の回路配置法 "Layout-Design of an Integrated Circuit Act 2000外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

  6. 地理的表示

    2022年地理的表示法(Geographical Indications Act 2022)は、生産された場所の地名を伴う製品に関し、登録後の保護を規定している。この保護は、ワインや蒸留酒のような天然の産物、農産物、手工芸品または産業に適用される。ただし、公序良俗に反する地理的表示は、保護の対象にならない。地理的表示の侵害に関する訴訟、処罰、救済措置は、商標に適用されるものと同様である。保護期間は申請日より10年で、10年ごとに更新可能である。
    2022年地理的表示法では、登録拒否事由を列挙した規定や罰則規定などが新設された。

    MyIPO:2022年地理的表示法、2022年地理的表示規則 "Geographical Indications Act 2022Geographical Indications Regulations 2022外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

  7. 機密情報および企業秘密

    マレーシアは、英国の裁判所で発達した秘密漏洩にかかわる慣習法(common law)を採用している。情報の機密性を保護し維持するために最も効果的な方法は、当該情報の利用と複製を制限することである。可能であれば、いかなる場合でも、機密情報に触れる機会があるあらゆる人物に、その情報が開示される前に、秘密保持契約の締結により秘密保持を義務付けるべきである。

    秘密漏洩に基づく訴訟を起こすには、開示された当該情報には秘密性があり、その情報は守秘義務を課せられるような状況下で伝えられたという条件に加え、当該情報に関する事実上または想定上の不正使用、もしくは開示があったことが証明されなければならない。秘密漏洩に対する救済措置としては、差止め命令および損害賠償がある。

    個人情報の保護に関する法律としては、個人情報保護局の管轄下にある個人情報保護法(Personal Data Protection Act 2010)がある。この法律の主な目的は、商取引における個人情報の取り扱いを規定し、情報の対象者の利益に保護を与えるものである。