税制

最終更新日:2023年11月01日

法人税

2021年4月11日に発効したCREATE法(共和国法第11534号)により、30%であった法人所得税率は、2020年7月1日から原則的に25%に引き下げられた。

  1. 課税所得と適用税率
    法人税の課税所得は、対象法人が「国内法人」「居住外国法人」「非居住外国法人」のいずれであるかによって異なる。
    国内法人(フィリピン法の下で設立された法人)は、すべての課税所得(総所得から許容される控除を差し引く)に対して2020年7月1日から25%の税率で課税される。また、課税所得が500万ペソ以下、かつ、総資産(事務所、工場および設備が所在する土地を除く)が1億ペソ以下の内国法人については、2020年7月1日から20%の税率で課税される。
    フィリピン国内で事業に従事する支店などの居住外国法人は、フィリピン源泉の課税所得に対してのみ、国内法人と同じ税率で課税される。
    フィリピン国内で事業に従事しない非居住外国法人は、2021年1月1日よりフィリピン源泉の総所得に対して25%の税率で課税される。
  2. 最低法人所得税(Minimum Corporate Income Tax:MCIT)
    課税年度末時点で総所得(売上から原価等を控除したもの)の2%のMCITが課せられる。ただし、2020年7月1日から2023年6月30日までは税率を1%とする。MCITの適用を受けるのは、当該法人が事業の4年度目以降にあり(事業が1~3年度目に当たる法人にMCITは適用されない)、算出されるMCITが、通常の所得税額すなわち課税所得の25%(課税所得が500万ペソ以下、かつ総資産が1億ペソ以下の法人の場合は20%)(通常所得税、NT)の金額よりも大きい場合である。なお、2007年第3四半期以降、MCITの申告は四半期ごととなった。

二国間租税条約

フィリピンは、日本を含む43カ国と二国間租税条約を締結している(2023年11月時点)。日本フィリピン租税条約は2008年末に改正手続きが終了し、2009年1月1日より新税率が適用されている。改正議定書は財務省、外務省のウェブサイト等を参照のこと。
日本フィリピン租税条約に基づき、利子送金課税は10%、配当金送金課税は、出資比率10%以上であれば10%、出資比率10%未満であれば15%、ロイヤルティー送金課税は10~15%。

  1. 二国間租税条約
    43カ国の内訳は次のPDF参照。
    ジェトロ:フィリピン 二国間租税条約 詳細PDFファイル(73KB)
  2. 租税条約適用申請手順のガイドライン(歳入覚書命令(Revenue Memorandum Order:RMO)第72-2010号(RMO第8-2017号により改定))では、租税条約適用申請に必要な提出書類を定めている。
    1. 概要
      • 申請・書類提出は、内国歳入庁(Bureau of Internal Revenue:BIR)の国際税務部(International Tax Affairs Division:ITAD)で行う。
      • 租税条約適用申請は課税取引(後述のとおり、RMO第8-2017号により配当、利子およびロイヤルティーの受領は除かれる)前に行わなければならないと定められている。1999年に出された歳入覚書回状(Revenue Memorandum Circular:RMC)第01-2000号においては、申請は取引15日前に行わなければならないとされていたが、現在その規定は適用されていない。
      • ITADに提出された書類に不足や内容が不十分であった場合、ITADが申請書類を受け取ってから7営業日以内に申請者に通知される。申請者は同通知を受け取った日から15営業日以内に不足書類を提出しなければならない。租税条約適用申請の必要書類は次のとおり。
    2. 一般的な必要提出書類
      1. 居住証明
      2. 会社定款
      3. 特別委任状(様式に定めはなく、日本フィリピン租税条約の適用申請について委任する旨を記載する)
      4. フィリピンでの事業証明
      5. 係争中の訴訟案件がないことの証明
      6. ⅰ.~ⅴ.の必要提出書類に加え、所得の種目ごとに細かく提出書類が定められている。
  3. 最高裁による、租税条約適用について事前申請必要性の否認(2014年1月)
    フィリピン内国歳入庁(BIR)が発行したガイドライン(歳入覚書回状(RMC)第01-2000号および歳入覚書回状(RMC)第72-2010号)の中で、「租税条約の適用申請は、BIR国際税務部(ITAD)に対して取引(ロイヤルティー、配当の支払い等)前に行わなければならない」と定められ、申請が遅れた場合、BIRは租税条約の適用を否認してきた。

    このBIRの判断に異議を唱えたDeutsche Bank AG Manila BranchはBIRを相手取って訴訟を起こした。その結果2013年8月、最高裁は、BIRは、事前申請がなかったことをもって租税条約の適用を否認できない、という趣旨の判決を下した。これに対し、BIRは最高裁に対して異議申し立てを行っていたが、2013年10月に最高裁はBIRの申し出を退けた。2014年1月にはその判決内容が税務裁判所(CTA)にも送られたことで、本件は終結した。

  4. 非居住者の配当、利子およびロイヤルティーによる所得
    RMO第8-2017号により、非居住者の配当、利子およびロイヤルティーによる所得については、フィリピンで有効なすべての租税条約によって優遇税率による恩恵を受け、または免税を受けるために、居住者性の証明を目的とした租税条約のための居住証明書(CORTT)の作成およびその他一定の手続きが必要となった。これに伴い、配当、利子およびロイヤルティーによる所得との関係では、課税取引前に行わなければならないと定められていた租税条約適用申請のITADへの提出は不要となった。

その他税制

付加価値税(VAT)、百分率税(売上税の一種)、物品税、印紙税、付加給付税、地方税、個人所得税などの各税制がある。また、会計制度、電子申告制度、新様式税務申告書、その他課税に関する変更点や制度がある。

詳細は次のPDF参照。
ジェトロ:フィリピン その他税制 詳細PDFファイル(504KB)