外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用

最終更新日:2024年03月25日

外国人就業規制

特にない。国内法に基づく。

在留許可

ビジネスビザ、到着ビザ、就労ビザ、オーバーステイ(超過滞在)の課徴金、延長ビザがあり、それらは日本では在日パキスタン大使館および領事館で発行される。

2019年4月より、ビザ申請用のE-Visaポータルが国家データベース登録局(National Database & Registration Authority:NADRA)のウェブサイトに新設された。ビザ各種(ビジネス、観光、就労ビザ等)の申請書は、このシステムを介し、インターネット上で提出する必要がある。

ビジネスビザ

在外パキスタン公館は、日本を含む「ビジネスビザ・リスト(BVL)※」に掲げる108カ国のビジネスパーソンに対し、5年間有効のマルチビザ(指定期間内であれば何度でも出入国可能)を発行することができる。

必要書類
  1. 証明写真
  2. パスポート
  3. 招待状を発行した会社の登録証明書(パキスタン証券取引委員会SECP/商工会議所の証明書)
  4. 次のいずれかの書類
    1. 該当国の商工会議所からの推薦状
    2. パキスタンの関連業界団体が正式に推薦する企業からの招待状
    3. 商務官、または投資庁の名誉投資顧問からの推薦状

ビジネスビザを申請する前に、ビジネス招待状(ビザ申請の必須書類)をパキスタンの「e-business invitation letter system」から取得する必要がある。
2021年4月以降、ビジネス招待状はNADRAポータルから取得することができる。
ビザの延長は、州都およびイスラマバードの地域パスポートオフィスで、条件に従い、なされる。延長の場合は、有効なパキスタン・ビザを所持し、パキスタンにいること。

  • 国家データベース登録局(NADRA):ビジネスビザ "Business Visa外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"
※ビジネスビザ・リスト(BVL)

アフガニスタン、アルジェリア、アンゴラ、アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、アゼルバイジャン、バーレーン、バングラデシュ、ベラルーシ、ベルギー、ベナン、ブータン、ブラジル、ブルガリア、カンボジア、カメルーン、カナダ、チリ、中国、コロンビア、コモロ、コンゴ、コートジボワール、クロアチア、チェコ、デンマーク、ジブチ、エクアドル、エジプト、エストニア、フィンランド、フランス、ガンビア、ドイツ、ガーナ、ギリシャ、グアテマラ、ギニア、ギニアビサウ、ホンジュラス、ハンガリー、インドネシア、イラン、イラク、アイルランド、イタリア、日本、ヨルダン、カザフスタン、ケニア、韓国、クウェート、キルギス、ラトビア、レバノン、リトアニア、マレーシア、モルジブ、マダガスカル、マラウイ、モーリシャス、メキシコ、モンテネグロ、モロッコ、モザンビーク、ミャンマー、ネパール、オランダ、ニュージーランド、ナイジェリア、ノルウェー、オマーン、パナマ、パラグアイ、ペルー、フィリピン、ポーランド 、ポルトガル、カタール、ルーマニア、ロシア、ルワンダ、サウジアラビア、セネガル、シエラレオネ、シンガポール、スロバキア、スロベニア、南アフリカ共和国、南スーダン、スペイン、スリランカ、スウェーデン、スイス、タンザニア、タイ、トーゴ、チュニジア、トルコ、ウクライナ、アラブ首長国連邦、英国、米国、ウズベキスタン、ベトナム、ザンビア、ジンバブエ。

ビジネス向けアライバルビザ

前述「ビジネスビザ」に記載した日本を含む「※ビジネスビザ・リスト(BVL)」に掲げる108カ国のビジネスパーソンは、アライバルビザを取得できる。このビザは30日間有効のシングルエントリービザであり、ビザの取得にはパキスタン到着予定日から、最低48~72時間前に電子渡航認証(ETA)を申請する必要がある。ETAは発行日から90日間有効である。申請者が所定の期間内に渡航しない場合、ビザ申請はキャンセルされる。

必要書類(ビジネスビザと同様)
  1. 証明写真
  2. パスポート
  3. 招待状を発行した会社の登録証明書(パキスタン証券取引委員会SECP/商工会議所の証明書)
  4. 次のいずれかの書類
    1. 当該外国の商工会議所からの推薦状
    2. パキスタンの関連業界団体が正式に推薦するビジネス団体からの招待状
    3. 商務官、または投資庁の名誉投資顧問からの推薦状

就労ビザ

パキスタン政府は2019年4月29日から192カ国に対してビザのオンライン申請「E-Visaポータル」を始めた。在外パキスタン公館は、投資庁の勧告に基づき、192カ国の外国人に対して1年間有効(マルチ)の就労ビザを認めることができる。このビザは1年ごとに更新が可能。
ビザの申請はE-Visaポータルで行い、雇用先の企業の詳細や雇用契約等、様々な資料を管轄機関へ提出する必要がある。
就労ビザの発行および延長の申請は、投資局(BOI)によって4週間以内に処理される。
安全検査などの必要事項は、4週間以内に保安機関から連絡される。
BOIへのビザ申請費用は1人1年につき100米ドル。

  • 国家データベース登録局(NADRA):就労ビザ "Work Visa外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"
  • 投資庁(BOI):就労ビザ "Work Visa外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

オーバーステイ(超過滞在)への課徴金

内務省は、外国人のオーバーステイ(超過滞在)に対し、次の課徴金を課している。

超過滞在期間 課徴金
2週間まで なし
2週間超~1カ月 50ドル
1カ月超~3カ月 200ドル
3カ月超~1年間 400ドル

延長ビザの申請

ビザの延長には、まず前述のビザ申請用ポータルで申請手続きをし、申請後に発行される照会番号を得る必要がある。その後、当番号をもとに、投資庁(BOI)で延長を申請する。
延長に必要な書類はビザの種類によって異なるが、多くの場合に、申請者は有効なパキスタン・ビザを所有し、パキスタンに居住(滞在)している必要がある。
ビジネスビザおよび就労ビザの延長には、処理に約4週間(営業日)必要となる。

在日大使館

パキスタン・イスラム共和国大使館
Embassy of the Islamic Republic of Pakistan in Japan
所在地:〒106-0047 東京都港区南麻布4-6-17
Tel:03-5421-7741、7742
Fax:03-5421-3610

現地人の雇用義務

制限なし。

その他

労働・雇用関連法としては、社会保障・福利厚生に関する法律、賃金水準に関する法律、勤務環境・労働条件に関する法律、労使関係に関する法律、解雇に関する法律、休暇に関する法律がある。

労働と雇用に関連する主な法律は次のとおり。なお、各州独自の法律がある。連邦政府の法に基づいて作成されている州法に関しては、内容が類似している。その他、独自の労働関連法もある。

社会保障・福利厚生に関する法律

  1. 従業員老齢年金法(1976年)(EOBI)
    1. 対象:5人以上を雇用するすべての企業または事業所。ただし、2006年7月1日以降に設立された企業または事業所については、10人から20人とする。10人未満の企業または事業所については、自主的に法を適用する。
    2. 内容:年金への加入が求められ、企業は最低賃金の5%相当を、従業員は最低賃金の1%相当を、毎月支払わなければならない。
    3. 連邦政府は、2020年1月1日より、EOBIの最低年金を月額6,500ルピーから8,500ルピーに引き上げ、さらに年金も30%増額することを許可した。
    4. 2023年7月1日より、連邦政府のすべての市民年金受給者に対し、純年金額の17.5%の引き上げが行われた。最低年金額も現行の1万ルピーから1万2,000ルピーに引き上げられた。2023年7月1日から適用。
  2. 州従業員社会保障法(1965年)
    1. 対象:州政府の通知によって指定された企業・業種分野
    2. 内容:職業病、疾病、妊娠のほか、傷害・死亡などの労災が起きた場合、従業員に保障金が支払われる。企業は、従業員数に応じた所定の金額を基金へ支払う。
    3. 制度の対象となる雇用者は、保険をかけるべき労働者に支払われる賃金の6%をスキームに支払う。
  3. 労働者福祉基金法(1971年)(2014年シンド労働者福祉基金法)
    1. 対象:年間50万ルピー以上の総所得がある企業
    2. 内容:従業員用の住宅地を開発する際や、研修・教育、寄付などに利用される基金。総所得の2%の拠出を求められる。
  4. 西パキスタン出産給付法(1958年)
    1. 対象:すべての組織、商業施設や工場における、出産日の4カ月以上前に雇用者に給付申請した女性
    2. 内容:すべての女性従業員には、出産手当を受け取る資格があり、雇用主はその責任を負うものとする。出産日前後最大12週間の休暇を取得でき、出産給付を受け取る権利がある。給付額は、直近に支払われた給与と同水準とする。また、出産から6週間経過していない女性は雇用できない。
  5. 西パキスタン工商業雇用法(1968年)
    1. 対象:20人以上を雇用する企業に適用
    2. 内容:労働者の分類、出席、賃金、ボーナス、グループ保険への加入義務、雇用契約の終了、解雇、退職、退職金の支払い義務など、雇用に関し規定している。
    3. 備考:退職金については、6カ月以上勤務した労働者が、辞職、または不正行為以外の理由で解雇された場合、同労働者は勤務年数1年につき、30日分の賃金に相当する謝礼を受ける権利がある。当労働者が固定賃金を得ていた場合には、勤務の最後の月に支払われた賃金に基づいて計算する。出来高制の場合には、過去12カ月間で得た最高額が計算の基準となる。
  6. 企業利益(労働者参加)法(1968年)
    1. 対象:従業員50人以上、資本金200万または500万ルピー以上、固定資産400万または2,000万ルピー以上のいずれかを満たす企業(設立年度によって異なる)。
    2. 内容:企業は基金を設立し、毎年度、その年の純利益の5%を、年度末から9カ月以内に、基金に納める。

賃金水準に関する法律

  1. 賃金支払法(1936年)
    1. 対象:すべての企業
    2. 内容:従業員の賃金は、同法律により認可された場合を除き、いかなる種類の控除もせず、当人に支払われるものとする。認められる賃金からの控除は、罰金、欠勤、社員住宅およびその他雇用主から提供された設備やサービスに対する控除や、賃金の過払いの調整または払い戻しのための控除などとする。
  2. 最低賃金法(1961年)
    1. 対象:すべての企業
    2. 内容:最低賃金委員会が州に助言し、州ごとに最低賃金を決定する。
  3. パキスタン非熟練労働者最低賃金法(1969年)
    1. 対象:50人以上の従業員を雇用する企業
    2. 内容:最低賃金を規定しており、シンド州の最低賃金は月額2万5,000ルピー(2022年6月1日から)。パンジャブ州は2万5,000ルピー。
  4. 徒弟法(1962年)
    1. 対象:50人以上を雇用するパキスタン企業が対象
    2. 内容:給与額など、見習い制度に関連する規程
  5. 賞与規定
    1. 対象:収益を上げた企業に90日以上在籍した従業員
    2. 内容:会計年度終了前3カ月以内に、1カ月分の給与に相当する賞与を受け取る権利がある。

勤務環境・労働条件に関する法律

  1. 店舗施設法(1969年)
    1. 対象:条例上、除外されているものを除くすべての施設
    2. 内容:労働時間、超過勤務、休日、疾病休暇、祭日、雇用契約の終了などについて規定している。法定労働時間は1日9時間。休憩は6時間ごとに1時間。時間外労働は通常の2倍の賃金。休日は週1回。最低年齢は15歳。有給休暇は14日、病欠休暇が8日、臨時休暇は10日、祭日休暇は10日などと定める。ただし、対象は非マネジメント層に限られる。
  2. 工場法(1934年)
    1. 対象:産業・商業施設
    2. 内容:労働時間、休日、給与支払日、給与水準などを規定している。包括的な内容となっており、労働環境についても定めている。労働時間は1日9時間まで。5時間ごとに30分の休憩。日曜日は休日とし、休日も労働する場合は代替休日を取得する必要がある。年間14日の有給休暇が与えられ、最大28日繰り越せる。臨時休暇は10日、疾病休暇は16日(給与半額)与えられる。
  3. 雇用(サービス記録)法(1951年)
    1. 対象:州政府が指定する地域の雇用主および労働者
    2. 内容:雇用主は従業員に関する記録帳をつける義務がある。記録帳には賃金水準、賃金増、解雇、罰金などの履歴を記載する。

労使関係に関する法律

  1. シンド州労使関係法(2013年)
    1. 対象:政府関連(国防、国営航空公社、国営印刷公社、国営の医療関連機関等)を除くすべての施設・分野。
    2. 内容:労働組合組成の規定、労使改善に関する規定、異議係争の回避や解決手段などについて記載されている。雇用主は従業員投票のため、3カ月以上雇用している従業員を登録し、初期代理人を決定する。集団的交渉代理人は投票によって決定する。10人を超えない範囲で労使の合同会議が設立される。会議メンバーの40%以上は労働者側から出し、議長は雇用主側が務める。労使間の係争について交渉する。和解案の交渉中、労働裁判所の仲裁中には、ロックアウトや解散は認められない。また、法律の下に労働者へ保証されている権利に関し、労働者の救済についても記載している。
  2. その他各州の労使関係法
    バロチスタン州 "Baluchistan Industrial Relations Act, 2010"
    パンジャブ州 "Punjab Relations Act, 2012"
    カイバル・パクトゥンクワ州 "Khyber Pakhtunkhwa Relations Act, 2010"

解雇に関する法律

一般規定として、規則違反などの行為がある場合を除き、1カ月前の解雇通知、または1カ月分の賃金の支払いを必要とする。解雇が不当であった場合、労働裁判所は12~30カ月分の基本給および住宅手当の支払いを企業に命じるか、職場復帰させる。