技術・工業および知的財産権供与に関わる制度

最終更新日:2023年10月31日

技術・工業および知的財産権供与に関わる制度

ロイヤルティーへの源泉課税率は10%。商標、著作権、集積回路レイアウト・デザイン、特許、植物品種、意匠権などが保護される。

税制および助成制度

概要

非居住者に対して、著作権、意匠権やノウハウなどの使用に対する一般的なロイヤルティーを支払う場合の源泉課税率は、2005年1月1日より10%に引き下げられた。知財立国を目指すシンガポールの政策として、知的財産に力をいれて利益を上げている国際的企業の誘致を重視している。1990年代以降、シンガポールで研究開発や特許等登録を行う海外企業の免税措置が拡大され、2003年には関連するほぼすべての企業所得が免税されるようになった。すなわち、シンガポールで取得された広範な知的財産(特許権、著作権、商標権、意匠権、企業秘密情報など)については、それがシンガポールの法人に帰属することを条件として、キャピタルアローワンス(税務上の減価償却)や研究開発事業資金免税のほか、特許権については特許登録費用の所得控除なども認められている。
次に、知的財産関連のインセンティブ制度を紹介する。

  1. 企業向け研究インセンティブ制度(Research Incentive Scheme for Companies:RISC)

    企業が科学技術に関する研究開発(R&D)活動に対して相当の投資を行う際、人件費、研修費、装置、知的財産権管理や専門サービス等をはじめとする諸費用について最大30%を助成する制度。地場企業は最大50%の援助を得ることが可能。科学者・エンジニアの雇用促進と固定資産への投資等が対象となる例として挙げられる。

    申請窓口:EDB "Incentives & Schemes外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

  2. 知的財産の開発奨励制度(Intellectual Property Development Incentive:IDI)
    知的財産の開発奨励制度(IDI)は、研究開発活動により生じる知的財産権の利用および商業化を奨励する目的で設置された。

    当該奨励制度に選ばれた企業は、2018年7月1日以降の奨励期間中に得た知的財産権に基づく収入に応じて、5%ないし10%の法人税の減税を受けることができる。減税の割合は、特定のアプローチ(修正連結アプローチ)に基づき決定される。優遇税率についても、所得税法に規定されているとおり、一定期間ごとに0.5%ずつ引き上げられる。

    適格知的財産所得とは、適格であるとされた知的財産権(例:ソフトウエアに存在する特許や著作権)の商業的な利用の対価として、当該奨励制度に選ばれた会社が受領する利用料その他の所得をいう。なお、適格知的財産権から当該奨励制度の対象となった場合、当該指定を取り消すことができない。

    奨励期間は、10年を超えない期間に限定されており、さらに10年を超えない期間につき、延長することができる。企業は、適格知的財産所得以外の所得(非適格所得)について、適格知的財産所得とは別個の勘定とする必要がある。非適格所得は、当該奨励制度の対象とならない。2028年12月31日以降、当該奨励制度に該当するか否かについての審査は廃止される。

    当該奨励制度への申請は、シンガポール経済または世界的な先端産業の向上のために多額の投資を行う準備ができている企業を対象とする。応募企業は優れた実績を持ち、シンガポールでのプロジェクトを拡充していく必要があることに加え、必要限度の経済的貢献をする必要がある。

    申請窓口:EDB "Incentives & Schemes 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

    知的財産取得に係る減価償却控除(所得税法19B項:Writing Down Allowance for Intellectual Property Acquisition
    事業者は、自己の営業または事業の用に供する知的財産権を取得するために要した支出に関する減価償却費について、賦課年度の末日までに生じた支出に関する分を請求することができる。当該知的財産権取得に要した支出に関する減価償却費の計上については、2025年賦課年度末日まで延長されている。減価償却費の形状に関するその他の条件は変更されておらず、2023年現在も本制度は引き続き申請が可能である。

    本制度は、2017年賦課年度以前であれば、企業が第三者の保有する知的財産権を取得する際に、5年間の自動減価償却をすることで、全額を税額控除ができるようになる制度である。2017年賦課年度以降、納税者は、減価償却期間を、柔軟に選択することができる。すなわち、会社は、知的財産権取得のための資本支出があった賦課年度から始まる、減価償却控除期間を5年間、10年間、15年間の中から選択することができる。

    知的財産権取得のための資本支出に関する減価償却は、2025年賦課年度までとなっており、2009年1月22日以降に取得するフィルム、テレビ番組、デジタルアニメ、デジタルゲーム、その他のメディアコンテンツのうち、認定された知的財産権は、2018年賦課年度まで2年間の加速的な減価償却が認められていた。

    本スキームの終了に伴い、メディアおよびデジタルエンターテイメント会社は、前述の知的財産権取得のための資本支出に関する減価償却控除を行うに際し、減価償却期間を5年間、10年間、15年間の3つの期間の中から選択することが可能となる。この知的財産権買収に係る減価償却は、PICスキーム(後述の「6.生産性・革新クレジット」を参照)を活用することにより、さらに最高400%まで適格とされる支出の税額控除を受けることができる。

    2023年度予算案において、財務省(Ministry of Finance)は、企業による知的財産に関連する活動や技術革新活動の促進を奨励する目的で既存の税制措置を強化し、新たな企業技術革新スキーム(Enterprise Innovation Scheme;EIS)を導入することを発表した。本スキームでは、適格知的財産権に関連した費用について、以下の適用が受けられる。

    • 2024賦課年度から2028賦課年度までの各所定期間における適格知的財産権に関連した費用40万シンガポール・ドル(Sドル)を上限として、現行の100%相当額に対し400%相当額の損金算入
    • 適格知的財産権に関連した費用40万Sドルを超える金額について、100%相当額の損金算入

    なお、適用を受ける賦課年度の年間売上高が5億Sドル未満の事業が対象となる。

    申請窓口:IRAS "Writing-Down Allowances for Intellectual Property Rights外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

  3. 研究開発支出の追加控除(所得税法14DA項および14E項)

    企業がシンガポール国内でR&D業務を行う場合、もしくは国内の第三者機関にR&D業務を委託する場合、適格とされるR&D支出の200%(14項、14D項、14DA項、14E項)までの追加的な税額控除が認められる制度である。

    14DA項の規定は2014年度政府予算案により2025賦課年度まで10年間延長されている。2023賦課年度以降、EISの対象となる事業は、各賦課年度において、EISに基づく全ての適格支出合計の10万Sドルを上限として、減価償却および/または損金算入の代わりに20%相当額を現金として受領することができる。2024賦課年度から2028賦課年度までの各賦課年度における現金受領額の上限は2万Sドルである。

    一方、14E項の規定は2014年度政府予算案により2020年3月31日まで5年間延長され、PICスキームの上限を超える部分にも適用することができた。なお、14E項の規定は、2020年度政府予算案により2020年3月31日までとされた。

    2023年度予算案において、自国のイノベーション促進を支援するために、政府はシンガポールで実施された特定のR&Dに支出された人件費における最初の40万Sドルや消費財の課税控除を250%から400%へ増加させるという発表がなされた。その他のスキームの条件に変更はない。この変更は、2024年賦課年度から2028年賦課年度の間については有効となる。

    ポリテクニック、技術教育機関またはその他認定パートナー(以下、「認定パートナー」)との既存技術や革新技術向上を奨励するために、2024賦課年度から2028賦課年度までの各賦課年度において、該当するプロジェクトに関する適格革新支出における最初の5万Sドルについて400%相当額の損金算入が認められる。対象となる支出には、該当するプロジェクトについて受給した補助金や助成金を差し引いた事業者が負担した金額に基づいて算出される。EISの趣旨に鑑みると、該当するプロジェクトにはオスロマニュアル2018(Oslo Manual 2018外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で定義される以下の活動を1つ以上含むことが必要とされている。

    • 研究開発に関する活動
    • エンジニアリング、デザインその他創造的な活動
    • 知的財産に関する活動
    • ソフトウエア開発、データベースに関する活動

    パートナー機関が運用を行い、該当するプロジェクトの適格性の評価を行う。認定パートナー以外で発生した支出については対象とならない点に留意が必要である。

    参考:
    課税控除に関する発表(IRAS)"Research and Development Tax Measures外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(1.21MB)"
    2023年度予算案"Budget 2023 – Overview of Tax Changes外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(199KB)"
    オスロマニュアル2018"Oslo Manual 2018外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

  4. 事業開発の助成制度(Enterprise Development Grant:EDG)

    2018年10月25日にスタートした、事業開発助成制度(EDG)は、従来の能力助成制度(Capability Development Grant:CDG)やグローバル企業パートナー助成制度(Global Company Partnership Grant:GCPG)に取って代わる制度で、能力開発および国際化の点から、[1]コア機能および能力、[2]イノベーションおよび生産性、[3]市場およびビジネス開発、の3領域において企業を援助する。当該助成制度は、SME企業は該当活動につき最大70%、非SME企業は最大50%の助成を受けることができる。さらに、2023年4月1日から2026年3月31日まで、SME企業は持続可能性に関連するプロジェクトにつき最大70%の助成を受けることができる。

    EDへの申請にあたっては、以下の要件を満たす必要がある。

    • シンガポールで登録および事業を営んでいること
    • 現地の企業および人が最低30%の株式を保有していること
    • 本制度を開始・遂行するための財政的な見込みがあること

    参考:Enterprise Singapore "Enterprise Development Grant外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

  5. 市場対応の助成制度(Market Readiness Assistance Grant:MRAG)
    市場対応助成制度(MRAG)は、海外進出を検討している企業を対象としている。MRAGは、海外市場における設立支援、海外取引先の発掘支援、海外市場開拓支援などを中心とする助成制度である。中小企業は、海外での事業展開を支援する同制度の利用により、国際進出への足がかりとすることができる。
    1. 同制度の対象となる中小企業は、以下の助成を受けることができる。
      1. 関連する費用の最大70%(2020年4月1日から2023年3月31日までの期間において、1企業当たり新市場参入につき年間の支援上限は10万Sドル)
      2. 海外市場開拓(年間の支援上限は2万Sドル)
      3. 海外での事業展開(年間の支援上限は5万Sドル)
      4. 海外市場における設立(年間の支援上限は3万Sドル)
      5. 1つの申請につき1つの対象活動のみが対象(例:市場参入や見本市への参加など)
        市場助成対応制度は、最大70%の助成を受けることができ、2023年3月31日まで延長されることが決まっている。
    2. MRAGの対象企業となるための要件としては、以下を充足する必要がある。
      1. シンガポールにおいて会社設立登記がなされていること
      2. 「新市場」参入要件:対象となる海外の国において、申請企業の過去3年間の売上高が10万Sドルを超えない国であること
      3. 現地資本比率が30%以上であること
      4. 直近の監査報告において、グループ会社の年間売上高が1億Sドル以下、またはグループ合計の従業員数が200人以下であること
    3. MRAGにより支援可能な主な活動は次のとおり。
      1. 登録名称検索、知的財産検索および申請に関するアドバイスや、書面作成等の法的費用
      2. 販売事務所、代表事務所、または出資企業の申請および登録
      3. 奨励されている税制の実施
      4. 輸出入ライセンスの取得、フランチャイズ契約、ライセンス契約、代理店契約、販売店契約、および合弁契約等の草稿

    参考:
    Enterprise Singapore "Market Readiness Assistance Grant外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"
    市場対応助成制度(MRAG)の対象リスト "Supportable Activities外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(248KB)"

  6. 生産ソリューションの助成制度(Productivity Solution Grant:PSG)

    生産ソリューション助成制度は2018年4月1日から開始された助成制度であり、業務プロセス改善のためにITソリューションやIT機器を導入する予定の企業を援助し、最大70%の助成を受けることができた。当該助成は、第一段階として、セクターごとを基準とする助成を行う。助成対象となるのは、小売、食品、ロジスティック、精密工学、建設や造園業の他、デジタル顧客関係管理や人的資本管理システム等の業種を超えたソリューションへの援助も対象としている。

    2020年補足予算で発表されたように、生産性ソリューション助成制度は、企業がデジタル化と生産性向上の取り組みを継続するよう奨励するための制度である。2023年4月1日から、ITソリューションに関する助成が70%から50%へ縮小された。

    参考: Enterprise Singapore "Productivity Solutions Grant外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"
    問い合わせ窓口:IRAS "Productivity and Innovation Credit Scheme外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

税制および助成制度に関する問い合わせ先

知的財産権の登録手続き

シンガポール知的財産庁(IPOS)では知的財産の権利とするための特許、意匠や商標等のあらゆる知的財産に関する申請について、IP2SGというオンラインポータル出願サービス(e-Filing)を提供している。さらに、知的財産の創造で重要となる研究開発の許認可や補助金等の申請、免税等の申請などの手続きも電子政府の一環としてオンライン化されている。これらの手続きに要する期間は短く、シンガポールにおける知的財産経営の促進や、海外からの優秀な企業の誘致や人材確保に貢献しているといわれる。

知的財産のインフラ関連

  1. 政府は、商標、特許に関する規制や登録事務を手掛けていた団体を2001年4月、法務省傘下の法定機関としてシンガポール知的財産庁(IPOS)に改組した。
    2002年9月には特許や商標、著作権などを専門に取り扱う「知的財産裁判所(Intellectual Property Court)」が高等裁判所(High Court)ビル内に設置されている。この法廷は、特許・意匠・商標事件の第1審裁判所であり、第2審を担当する控訴裁判所(Court of Appeal)とともに侵害事件を審理する。
    2022年4月1日、知的財産権(IP)紛争に関する最高裁判所規則2022(Supreme Court of Judicature (Intellectual Property) Rules 2022)が施行された。新規則により、知的財産権に関する紛争の迅速・簡易な解決を可能にする、「簡易訴訟手続き(Simplified Process for certain Intellectual Property Claims)制度」が導入された。
    本制度は、以下に該当する場合に利用が好ましいとされている。
    • 特許、商標、著作権、詐称通用、機密情報/企業秘密に関する知的財産権の紛争
    • 訴訟金額が50万Sドル以上ではないまたはそれ以上となる可能性がなく、当事者全員が本制度の適用に同意する場合
    • その他、当事者が本制度を利用してのみ請求が可能であり、裁判における審理手続きが2日を超える場合

    簡易訴訟手続き制度の導入に加え、これら新規則は知的財産権における訴訟手続きの一本化を目指すものである。当該新規則の導入により、当事者は、最高裁判所における特定の知的財産権の手続きについて意匠、地理的表示、特許および商標の登録機関に対して通知する義務があり、知的財産権の異なる領域における手続きの調和を図るものである。
    参考:Singapore Statutes Online "Supreme Court of Judicature (Intellectual Property) Rules 2022外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

  2. 2023年7月3日、シンガポール知的財産庁(IPOS)は、世界知的所有権機関(WIPO)と連携しWIPO-シンガポールASEAN調停プログラム(the World Intellectual Property Organization- Singapore ASEAN Mediation Program; AMP)を開始することを発表した。知的財産や技術に関する紛争または知的財産または技術契約の締結で調停を必要とする個人や法人は、調停ごとに最大8,000Sドルの補助が得られ、別段の合意がない限り、当事者間で平等に分配する。個人の申請は、2023年7月3日から2023年12月31日または予算がなくなるまでのいずれか早い方の日まで行うことができる。
    本プログラムの適用を受けるには以下の要件を満たす必要がある。
    • 少なくとも一方の当事者は、ASEAN加盟国の国民または法人である
    • 調停人はシンガポールに拠点を置く必要がある
    • 当事者らは指名公表(和解条件の詳細を除く)に同意する
    • 当事者らは調停についての評価を行う

    参考:IPOS "IPOS Press Release外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

  3. 知的所有権の保護や管理などについて講習や訓練を行う「知的所有権アカデミー(IP Academy)」も2003年1月に開設された。

    IPOS:IP Academy外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

  4. シンガポール知的財産庁(IPOS)の組織は、最高責任事務所(Chief Executive Office)のもとに、コーポレートサービスクラスター(Corporate Services Cluster)、政策実行クラスター(Policy and Engagement Cluster)、登録クラスター(Registries Cluster)、およびIPOS Internationalの4部で構成される。登録クラスターの中に、[1]特許、意匠、植物品種登録局(Registries of Patents, Designs & Plant Varieties)と、[2]商標登録局(Registry of Trade Marks)、および[3]地理的表示登録局(Registry of Geographical Indications)の3局が設置されており、それぞれの審査・登録業務が行われている。

    参考:IPOS "Organisational Chart外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

  5. 2013年3月、知的財産権(IP)ハブマスタープランが発表され、シンガポールをアジアにおける「IPハブ」と位置付け、同国が権利保護の強化やIPそのもの、またはこれを利用した国内・国際取引の拡大を図るための、信頼性ある中立的な拠点となることが提唱された。このIPハブマスタープランでは、[1]IP取引・管理、[2]IP出願、[3]IP紛争解決、のハブとなることの3点を通じて、シンガポールがIP関連取引の活発かつ持続的な拠点になることを掲げている。

    2017年5月、IPハブマスタープランが改訂され、大きな進展が見られた。革新的企業がIPをベースとして商業化および収入化できるような次のステップが、以下の3つの目標により推し進められている。1つ目はIP専門家を増やすことによるIP専門家領域の拡大である。2つ目はシンガポールにおけるIPおよびイノベーション計画の改良である。そして3つ目は、2019年までに1,500の企業が、それぞれが有するIPの価値を理解できるような市場の創設に努めること、および企業の性質に合ったIP監査人の提供、そして150の企業に対するIPの戦略的支援である。

    2021年4月、シンガポール知的財産庁(IPOS)は、前述の2013年のIPハブマスタープランにより構築された基盤を下に、さらに進化し続けるためのシンガポールIP戦略2030(SIPS 2030)を発表した。具体的には以下の構想が検討されている。

    • 革新的企業を支援するための次世代IP出願システムを構築し、2022年中期までに新しいプラットフォームの導入を目指すこと
      2022年6月2日、シンガポール知的財産庁(IPOS)は新しいプラットフォーム "IPOS Digital Hub外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます" を導入した。
    • シンガポールがIP紛争解決のハブとなること
    • 企業の国際的な取り組みを支援するために、シンガポールとASEAN諸国、ひいては世界各国とのIPにおける連携を強化すること
    • シンガポールだけではなく、海外でもIA/IP(無形財産/知的財産)サービスおよびリソースを企業に提供できるIPGrowと呼ばれる新たなオンラインプラットフォームを導入する

    SIPS2030の発表をきっかけに、企業が無形財産である知的財産の保護、管理および取引しやすい環境であり続けるために、シンガポールにおけるIPの基盤は、新たなイニシアチブにより進化し続けることが期待される。

    参考:
    IPOS:IPハブマスタープラン改訂版
    "UPDATE TO THE Intellectual Property Hub Master Plan外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(2.0MB)"
    SIPS2030の構想 "IPOS Official Media Release外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(312KB)"

    問い合わせ先:
    シンガポール知的財産庁(The Intellectual Property Office of Singapore:IPOS外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
    所在地:1 Paya Lebar Link, #11-03
    PLQ 1, Paya Lebar Quarter
    Tel:+65-6339 8616
    Fax:+65-6339 0252

シンガポールで保護される知的財産権の概要

シンガポールは1990年に世界知的所有権機関(WIPO)設立条約に加盟し、1995年に世界貿易機関(WTO)の貿易関連知的所有権協定(TRIPS)、パリ条約、特許協力条約(PCT)、2000年に商標の国際登録に関するマドリッド議定書、2004年に植物新品種保護条約(UPOV)、2020年にロカルノ協定(the Locarno Agreement)などと主要な知的財産に関する条約に加盟し、それとともに知的財産法制の整備も進めてきた。シンガポールはコモンローの国であり、知的財産権は制定法とコモンローの両方によって保護されている。
制定法としては、特許法(Patents Act)、登録意匠法(Registered Designs Act)、著作権法(Copyright Act)、集積回路配置設計法(Layout-Design of Integrated Circuits Act)、地理的表示法(Geographical Indications Act)、植物品種保護法(Plant Varieties Protection Act)が制定されている。また、営業秘密やグッドウィルは、コモンローによって保護されている。

特許権

  1. 1994年にシンガポール特許法が制定されるまでは、英国を指定国とした出願を行い、英国の特許法または欧州特許条約(EPC)に基づき、特許が保護されていた。
  2. シンガポールはパリ条約(Paris Convention)、特許協力条約(PCT)、ブダペスト条約(Budapest Treaty)などに加盟している。
  3. シンガポールで特許の保護を得るには、[1]国内ルート、すなわちIP2SGと呼ばれるIPOSにより創設された電子ポータルサイトを利用して、パリ条約上の優先権制度とともにシンガポール国内から直接申請する手段、または、[2]IP2SGを用いたシンガポールでの申請とともに、PCTを利用してシンガポールを指定国とすることによる出願のいずれかが考えられる。
  4. 出願人は、シンガポール以外の国に同一の発明を出願(対応外国出願)する。オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国、韓国、米国、日本および欧州特許庁(英語による出願申請)のいずれかで認められた場合、当該国での最終調査および審査結果もしくはシンガポールで認められた特許審査に対して、依拠することができる。この制度は補充審査と呼ばれる。補充審査の際、IPOSは、方式要件(クレーム内容がシンガポール以外の国でのクレームと一致しているか、公序良俗に反しないか、医療手法に該当しないか、診断に関するサポート要件でないか、関連性、二重特許や新規事項の有無)について審査を実施する。しかし、自国で実体審査はほぼ実施せず、外国の所定特許庁の審査結果をそのまま認証する方向で、調査と審査報告書の添付もしくは、認められた特許および当該クレームとの関連性を示すクレーム対応表の提出を義務付けるにとどめている。もっとも、シンガポールにおいて付与される特許の質を改善すべく、特許制度が強化されることに伴い、2020年1月1日以降、出願人は、以下の事項につき補充審査を請求することができなくなったので、注意が必要である。
    1. 通常出願およびPCT出願
    2. 分割出願

    参考:IPOS

  5. 特許権の存続期間は、出願日から20年である。
  6. 日本の特許庁とIPOSは2009年6月、特許審査手続きの迅速化に向けて「特許審査ハイウェイ(PPH)」と呼ぶニ国間協力の枠組みを導入することで合意した。PPHは、一方の国で認められたものと同じ内容の特許出願を他方の国が受けた場合に、相手国の審査結果を活用することで審査作業の重複を省く仕組みである。特許審査期間の短縮や特許の質の向上、特許審査機関の負担軽減といった効果が見込まれている。シンガポールは米国と2009年2月からPPHの試行を開始しており、ニ国間PPHでは日本が2国目となる。
  7. 2019年11月14日、日本の工業所有権協力センター(IPCC)とシンガポール知的財産庁(IPOS)インターナショナル(シンガポール知的財産庁の企業対象部門)との間で、相互連携強化のため覚書を締結した。同協定に基づき、IPCCとIPOSインターナショナルは、互いをそれぞれの国における特許調査および分析業務の支店として任命した。そのため両国の企業は、日本語および中国語の両方で特許調査および分析による専門的情報にアクセスすることが可能となった。

    参考:IPOS "IPCC starts international cooperation with IPOS International外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

  8. 2014年2月に改正特許法が施行され、特許審査における「自己評価」制度から「Positive Grant System」への変更、弁理士(Patent Agent)制度の一部自由化、医薬品の所管法令変更などが行われた。
  9. 2017年10月30日、修正特許法および修正特許規則が施行された。当該修正法および規則には猶予期間の拡張および補充審査の変更という重要な点が含まれる。猶予期間の拡張期間中、出願人は特許出願の前に開示されている状態であっても、特許保護を受けることとなる。補充審査に関しては、2020年1月1日以前の出願についてのみ利用可能であり、2020年1月1日以降の出願については利用することができなくなった。

    参考:Singapore Statutes Online

  10. 2020年5月4日から、IPOSは、すべての技術分野における特許出願の付与を6カ月に短縮するための試験的プログラムを提供している。シンガポール特許ファストトラックと呼ばれるこのプログラムは、この種の申請プロセスとしては世界最速のものとなる。技術中立的なプログラムは、持続可能な開発、特に現代における公共医療の世界的な発展に取り組むために、イノベーターとその解決策を支援する際にIPOSが果たす重要な役割を反映している。当該プログラムを享受することができるテクノロジーの例を以下に列挙する。
    • 社会的影響のある技術(例:持続可能な食料生産、気候変動、廃棄物、水およびエネルギー管理に関するグリーンテック)
    • とりわけ医療に影響を及ぼす技術(例:デジタルヘルスソリューション、追跡アプリ、人工呼吸器、診断キット)
    • 新興技術(例:フィンテック、Industry 4.0、人工知能)

    当該プログラムの下では、イノベーターは、通常2年以上の期間を要する申請承認が、早ければ6カ月で認められるとされている。試験的出願は2022年4月29日に終了する予定であったが、2024年4月30日まで延長された。
    参考:IPOS "Launch of SG Patent Fast Track Programme外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(157KB)"

  11. 2021年10月1日、特許法規則(改正)2021が施行された。本改正により新たに以下2つの制度が導入された。すなわち、[1]登録付与前の第三者による審査見直し、および[2]登録後の再審査である。第三者による審査見直しの目的は、特許性の判断を広く公衆にも提供することにより、審査の是正を図るためである。申立を受け取った審査官は、書面にて特許出願人へその旨通知しなければならない。また、登録後の再審査については、特許付与された特許について再審査の請求をすることができる。当該再審査の請求は、手数料および請求の理由とともに所定の様式にて請求する。審査官が当該請求の趣旨を認め、特許権者により特許を維持することができない場合には、特許が取り消されることがある。

    参考:Singapore Statute Online:特許法規則(改正)"Patents (Amendment) Rules 2021外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

  12. 2022年5月26日、知的財産法の改正により、特許法の一部が改正された。本改正により、手続きの簡素化が期待される。
    1. 本改正の施行日以後の国際特許出願において、国内移行時の英語の翻訳文公開にかかる手数料の支払いが不要となる。つまり、出願から18月の出願公開時または早期公開の請求に従い、シンガポール知的財産庁(IPOS)に提出された英語の翻訳文は自動的に公開される。
    2. シンガポール知的財産庁(IPOS)は、特許出願に関連するあらゆる情報または文書について、特別な請求がない場合においても、公開することができるようになる。ただし、特別な事由(例えば、機密文書である場合)を除く。
    3. もう一つの注目すべき改正点は、特許審査に関する手続きの簡素化である。改正以前は、特許出願が特許登録要件を満たさない場合、審査官は見解書を発行しなければならなかった。今回の改正により、審査官が見解書を発行しなくても拒絶理由が軽微な補正で解消できると判断した場合、審査官が出願人に補正を求める通知を行うことができるようになった。出願人は、当該通知に対し補正を行うまたは当該通知への応答を拒否することができる。本改正により、特許出願にかかる期間が大幅に短縮されることが期待される。
    4. 本改正により、出願人は、以下の場合に先の関連する出願の写し(先の関連する出願がすでに提出されている場合)または英語の翻訳文の提出が不要となる。
      • 特許出願の明細書中に含まれている場合
      • 出願の欠落部分を追補する場合
      • 優先権主張を伴う出願の場合

      また、登録官が出願人に対して英語での調査報告書または国際調査報告書の写しを提出している場合には、出願人は審査報告書を申請する際に調査報告書の写しを提出する必要がなくなる。さらに登録官は、出願人または権利者の詳細、優先権に関する事項等について異議申立て、明細書の軽微な訂正または特許登録(第三者の利益に影響を及ぼす可能性がある事項)において裁量で公告または公表することができる。
      参考:Ministry of Law:知的財産法(改正) "Intellectual Property (Amendment) Act 2022外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

意匠権

  1. シンガポール独自の登録意匠法が2000年11月に施行され、シンガポールで意匠の保護を求めるにはオンライン出願サービス「IP2SG」を利用するか、またはシンガポール知的財産庁(IPOS)の意匠登録局へ出願しなければならない。
  2. シンガポールでは、意匠出願に関し方式的な審査のみで、実体審査は行われない(意匠法19条は登録要件を審査しない旨を明記している)。ただし、明らかに新規性がない、あるいは不登録事由に該当しているとIPOSが判断した場合、出願は拒絶される。
  3. 2005年1月に施行された意匠(改正)法で、国際登録協定である「ハーグ協定」に加盟することにより意匠の国際登録が簡素化された。「ハーグ協定」に加盟すれば世界知的所有権機関(WIPO)を窓口とした意匠登録が加盟国内で一括して適用されるようになる。
  4. 意匠権の存続期間は登録日から当初5年間で、以後2回まで更新可能で、最長存続期間は15年間となる。
  5. 2017年10月30日、修正登録意匠法およびそれに対応する規則が施行された。当該修正法規の特徴は以下の3点である。
    1. 登録可能な意匠の範囲を拡張し、現在は非物質的商品に適用される意匠の特徴や意匠の特徴の一つである色の特徴などが含まれた。
    2. 意匠の権利は原則として設計者に帰属するが、これは職務中の設計であるか否かによる。
    3. 設計者が、意匠を開示した場合に保護される範囲が拡張し、猶予期間が意匠申請日までの直近12カ月に拡張された。
  6. 近年改正された登録意匠法により、著作権法70条、73条、および74条がそれぞれ修正され、シンガポールにおいて著作権と意匠権が相互にカバーしていた領域がより明確になった。重要な点として、量産品のデザインに知的財産の保護を求める場合、その保護は登録意匠法で行われ、著作権法での保護はなされない。そのため、製品が量産品であるという判断がなされた場合、著作権の保護からは外れることになる。
  7. 2020年初頭、シンガポールはロカルノ協定に調印した。ロカルノ協定は、国際的に標準化された工業意匠の分類システムであり、WIPOが管理する多国間条約である。また、ロカルノ分類とも呼ばれ、異なる工業意匠データベース間の検索プロセスを簡素化し、出願人が工業意匠保護を出願する際に、その出願が属する特定の分類を特定するのに役立つ。シンガポールはロカルノ協定に加盟することで、WIPOが管理する条約の締約国として、日本、ドイツ、イタリアといった他の工業デザイン大国の一員に加わることになる。条約の加盟国として、シンガポールはWIPOの適切なプラットフォームの一員となり、シンガポールの意匠界の利益のためにロカルノ分類の発展に影響を与えることが見込まれている。
  8. 2022年5月26日、知的財産法の改正により、意匠法の一部が改正された。
    1. 意匠法における「物品」および「非物理的製品」には、「物品および被物理的製品の組み物」が含まれる。
    2. 出願人または意匠権者は、登録意匠における特記事項を任意で追加することができ、登録簿に記載される。
    3. 優先権主張を伴う出願の場合、登録官からの請求日から3カ月以内に提出しなければならない。提出しない場合には、優先権の主張は取り消される。
    4. 登録官は、出願人または意匠権者の詳細、優先権に関する事項等の出願書類または登録事項における誤記の訂正(第三者の利益に影響を及ぼす可能性がある事項)について異議申立てにおいて裁量で公告または公表することができる。

参考:Singapore Statute Online

商標権

  1. 商標法は1998年施行されており、シンガポールが加盟している主な国際条約は、WTO、パリ条約、マドリッド議定書、ニース協定などがある。
  2. シンガポールでの出願は、オンライン出願サービス「IP2SG」を利用するか、またはシンガポール知的財産庁(IPOS)商標登録局に提出した上で、出願された商標が不登録事由に該当しないときは、実体要件についての審査が行われる。この審査後、出願が公告され、2カ月以内に異議申立がなければ登録される。
  3. シンガポール知的財産庁(IPOS)は、2019年8月、世界で初となる商標登録のための携帯端末アプリ「IPOS GO」を導入した。同アプリを通じて、直接、シンガポール知的財産庁(IPOS)に商標を出願可能。これにより、従来45分から60分とされる出願時間が10分以内まで短縮される。出願人が直接シンガポール知的財産庁(IPOS)へ出願できるため、出願費用の削減も期待される。本アプリはApple store、Google Playで入手が可能。

    参考:IPOS "eServices外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

  4. 2004年7月に施行された2004年商標(改正)法において、周知商標の定義が明確化され、周知商標と類似する商標の登録拒否と周知商標所有者に対する保護が法制化されている。
  5. 商標権の存続期間は出願日から10年間であり、その後、10年ごとに更新ができる。
  6. 2022年5月26日、知的財産法の改正により、商標法の一部が改正された。
    1. 本改正により、多区分の国内出願において、部分的な登録が認められるようになる。すなわち、審査官が拒絶理由を発見しない商品および役務の区分に関しては、シンガポール知的財産庁(IPOS)はその登録を認めるというものである。改正以前は、審査官が1区分の商品および役務でも拒絶理由を発見した場合には、すべての拒絶理由が解消されるまで当該出願全体が保留になっていた。本改正により、審査官が拒絶理由を発見しない商品および役務については、登録の可能性が示唆されることになる。
    2. 出願手続きにおける法定期限徒過後の救済措置に関する改正がある。改正以前は、出願人は通常、期限徒過後6カ月以内に出願の回復を申請することができた。本改正では、回復申請の期間が短縮され、2カ月以内に限り出願人は出願の継続を求めることができる。これは、出願の回復に要する期間よりも手続きの処理の迅速化を目的としているものと考えられる。また、本改正は、出願人が出願の見直しをする動機付けになると同時に、同一または類似の商標の出願を検討する第三者にとっても出願是非の判断に役立てられるものと考えられる。
    3. 更新または回復の可能性がある登録商標は、「先の出願」としてみなされる。
    4. 優先権主張を伴う場合には、出願日から3カ月以内に先の出願番号を提出しなければならない。提出がない場合には、優先権の主張は取り消される。
    5. 登録官は、出願人または意匠権者の詳細、優先権に関する事項等の出願書類または登録事項における誤記の訂正(第三者の利益に影響を及ぼす可能性がある事項)について異議申立てにおいて裁量で公告または公表することができる。

    参考:Ministry of Law:知的財産法(改正) "Intellectual Property (Amendment) Act 2022外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

著作権

  1. 著作権法は1987年に制定された。シンガポールはベルン条約およびWTOのTRIPS協定に加盟しており、当条約の下で、著作権を有している者は、シンガポールで権利を登録することなく、著作権は自動的に保護される。シンガポール国民または居住者によって創造された作品(出版されているか否かを問わない)は、通常、米国やカナダ等ベルン条約やWTOのTRIP協定の加盟国で著作権を出願している。そのため、著作権者となれば、シンガポールのみならず米国、日本など100以上の加盟国で著作権が保護される。シンガポールはこの他、パリ条約、パテント協力条約、ブダペスト条約という3つの国際的著作権協定のメンバーである。
  2. 著作権法は、2005年1月に改正法が施行され、インターネットを通じた音楽、映画、コンピュータープログラムの不法ダウンロードは犯罪行為と見なされ、2万Sドル以下の罰金か6カ月以下の禁固、あるいはその両方が科される。従来規定では、著作権者が、侵害を行った者を相手取り民事訴訟を起こす必要があり、罰金額も不法行為対策、訴訟にかかる費用以下というケースが多かった。改正により、米国・シンガポール自由貿易協定(FTA)の要件を満たすため、甚だしく、あるいは商業的利益を目的に著作権を侵害したものは起訴されることがある。
  3. さらに著作権法は、2014年12月に改正法が施行され、音楽や動画ファイルなどの違法ダウンロード対策として、ケーブルテレビ会社などのコンテンツ保有者は裁判所から命令を取得し、インターネット接続事業者(ISP)に対して、著作権を著しく侵害する違法サイトへのアクセスを遮断させることを求めることが可能となった。
  4. 著作権に関する侵害については「著作権仲裁所(Copyright Tribunal)」が担当しており、著作権に関する紛争解決、著作物の使用に際する公正な報酬の決定等を手掛けている。著作権仲裁所の事務局はIPOSが担当している。
  5. 著作権の存続期間は、次のとおりである。
    1. 公表された文学作品、ドラマ、ミュージカル、美術作品の場合、創作者の没後70年間。創作者の没後に初めて公表された作品は、初公表日から70年間。
    2. 文学作品、ドラマ、ミュージカル、美術作品の編集著作物(配列)は、最初の編集日から25年間。
    3. テレビ番組、ラジオ番組の場合、最初の放送日から50年間。
    4. 音楽、映画作品の場合、最初の発表日から70年間。
    5. 演劇の場合、最初の公演日から70年間。
  6. 2021年11月21日、旧法著作権法2017に代わり著作権法2021が施行された。
    1. 録音物が放送または公に演奏された場合、新たな衡平法上の報酬請求権を有する。
    2. 委託された特定の種類の作品(写真、肖像画、彫刻、録音物、映画等)について、創作者に既定の権利が付与される。当該権利は、委託契約において変更することができる。
    3. 契約による別段の変更がない限り、雇用主は、従業員が職務上創作した録音物および映画の著作権者となる。
    4. 創作者や実演家の作品や演奏が公共の場で使用される場合、著作者人格権を有する。ただし、当該権利は創作者または実演家が不明の場合または2021年11月21日以前に利用者が著作物を利用する権利を取得している場合にはこの限りではない。
    5. 保護対象である実演の著作物おおよび録音物の商業的/非商業的な使用に関し、コンピュータによるデータ分析(例えば、センチメント分析、テキストマイニング、データマイニング、機械学習のトレーニング等)のための著作物の利用は、一定の条件下で許可される。なお、当該利用を契約により制限することはできない。
    6. 未発表の著作物も一定の条件下で同様の保護を受けられる。未発表の著作物は、著作者の死後70年間、著作物の創作後70年間、最初の発表日または利用可能日から70年間、限定的な保護を受ける。

参考:Singapore Statutes Online

集積回路配置設計

  1. 1999年2月に集積回路配置設計法が施行され、集積回路(IC)の配置設計の権利者に対して制定法上の保護が与えられた。
  2. シンガポールでは集積回路配置設計について法的な保護を受けるためには、出願・登録は不要であり、配置設計の権利者がシンガポール、WTO加盟国または別途規定される特定国の市民または居住者であれば、集積回路配置設計法において定められた保護条件を満たす限りにおいて、自動的に保護される。
  3. 集積回路配置設計の存続期間は、配置設計完成から5年以内に商業生産が開始された場合には、商業生産の開始時から10年間、または配置設計の完成時点から15年間である。

地理的表示

  1. 地理的表示とは、特定の品質、評判、または地理的起源に起因するその他特徴を有する製品を特定するために使用される名称をいう。地理的表示によって識別される製品は、通常、食料品、飲料、および農産物等である。地理的表示は、通常、製品の原産地を含む。有名な地理的表示には、シャンパン(フランスのシャンパン地方)やスコッチウイスキー(スコットランド)などがある。
  2. シンガポールにおける地理的表示を規制する法律としては、2014年に制定された「地理的表示法」があり、2019年に同法に基づき「地理的表示法規則」が制定された。
  3. 未登録の地理的表示については、世界貿易機関(WTO)が定めた知的財産権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)による保護を受ける。
    1. 地理的表示によって表示された場所を原産地としない商品については、当該商品の真実の地理的原産地について公衆を誤認させる場合には、当該地理的表示を使用することができない。
    2. ぶどう酒または蒸留酒を特定する地理的表示は、地理的表示の有無にかかわらず、地理的表示によって表示された場所を原産地としないぶどう酒または蒸留酒には使用することができない(例:「シャンパン風スパークリングワイン」等)。
  4. 保護の高度な必要性がある場合、農産物または食品を特定する地理的表示を登録することができる。
  5. TRIPS協定による保護を受けるためには、必ずしも、シンガポールにおいて地理的表示の登録をする必要はないが、地理的表示を登録した場合、侵害訴訟においてより保護される傾向がある。
  6. 地理的表示の登録により付与される保護期間は、登録日から最初の10年間であり、登録は10年ごとに更新されれば無期限に存続させることができる。
  7. 知的財産法の改正により、登録官は、出願人または権利者の詳細、優先権に関する事項等の出願書類または登録事項における誤記の訂正(第三者の利益に影響を及ぼす可能性がある事項)について異議申立てにおいて裁量で公告または公表することができる。

参考:Singapore Statute Online "Geographical Indications Act外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

植物品種保護

  1. 植物品種保護法が2004年6月に制定され、この法律により植物の新品種に対する開発者の権利保護が認められるようになった。植物品種保護法の下で保護されている新品種は蘭8種、観葉・水生植物5種、地元の野菜2種である。植物品種保護法および植物品種保護規則は2014年7月30日付で一部改正され、同法の適用範囲が、現在15品種からすべての品種に拡大され、審査手続きにつき、他国の審査官への権限を移譲することができるようになった。
  2. 植物品種の存続期間は権利が付与された日から25年間である。
  3. 2022年5月26日、知的財産法の改正により、植物品種保護法の一部が改正され、植物新品種保護国際同盟(International Union for the Protection of New Varieties of Plants)が認可している「育種試験(breeding testing)」が導入された。これにより、申請者は登録官および審査官と連携して審査の手続きを進めることができる。育成者は、区別性、均一性、安定性に関する試験(Distinct, Uniform, Stable("DUS") test、以下「DUS試験」)を実施し、その結果を登録官または審査官へ提出し承認を得る。DUS試験は審査手続きを補完するに過ぎず、審査手続きに代わるものではなく、登録官または審査官は実地試験を実施するように要請することができる。
    また、登録官は、出願人または権利者の詳細、優先権に関する事項等の出願書類または登録事項における誤記の訂正(第三者の利益に影響を及ぼす可能性がある事項)について異議申立てにおいて裁量で公告または公表することができる。

参考:シンガポール知的財産庁(IPOS):IP関連法規の改正状況 "Intellectual Property (Amendment)Bill外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"
「知的財産に関する情報」のページもご参照ください。