外国企業の会社設立手続き・必要書類

最終更新日:2023年07月26日

外国企業の会社設立手続き・必要書類

チリ非居住の自然人または法人がチリで経済活動を始めるには、1.委任状により代表者を指定し投資活動を行う、2.租税協定に基づき支店または代理店等の恒久的施設を開設する、3.チリの法律に従い現地法人を設立する、の3形態が考えられる。

代表者による投資活動

外国投資家はチリ在住の自然人または法人と契約を結び、委任状により、投資者の名前と責任において、チリで取引を行う権限を与えることができる。

例:外国企業が企業への共同出資、不動産購入などの投資活動のみを行なう場合や、外国人がチリで投資による所得を受ける場合など。

支店または代理店等の恒久的施設の開設

現地法人を設立せずに、租税協定で規定されている恒久的施設(代理店、事務所、支店など)を通じて、経済活動を行うことができる。その際には、次の3形態が挙げられる。

  1. 外国の株式会社の代理店の開設
  2. 外国企業の代理店、その他の営利会社の開設
  3. 外国企業の代表事務所の開設

外国の株式会社の代理店の開設

株式会社法〔法18046号・1981年10月22日官報掲載〕

株式会社法121~124条の規定に従い、代表者を指名し、その代表者が外国法人名義で設立証書を公正証書化した後、摘要の登記・官報掲載を行う。

  1. 法的代表者の指名
    次の書類(自国語とスペイン語訳)のアポスティーユ(注)を受け、チリ国内の公証役場(NOTARIA)でそれを登録する。
    1. 外国において、その法人が法的に設立されたことを証明する書類
    2. 現在その法人が存在することを証明する書類
    3. その法人の現在の定款の真正コピー
    4. その法人が法的代表者に授与した権限を示す委任状

    注:株式会社法121条には、「認証(legalizado)」とあるが、〔外務省令228号・2016年3月24日官報掲載〕により、2016年8月30日付で、外国公文書の認証を不要とするハーグ条約の締結国に追加された。

  2. 設立証書の公正証書化、摘要の登記・官報掲載

    法的代表者は、外国法人名義で設立証書(会社定款)を公正証書にしたものに署名しなければならない。

    設立証書(会社定款)には次の事項を記載する必要がある。

    1. 会社名、目的。
    2. チリの法規を知っていること。
    3. 会社の財産はチリの法律の適用を受けること。
    4. チリでの義務を果たすために実施しやすい財を維持すること。
    5. チリの支店または代理店に指定された資本金の金額、チリへの送金日、送金方法。
    6. チリにおける主な支店または代理店の住所。

    公証役場にて設立公正証書(会社定款)完成後60日以内に、商業登記所にて設立公正証書(会社定款)の摘要を登録する。公証人がその電子版コピーを官報発刊者に送付すれば、摘要が官報に掲載される。

外国企業の代理店、その他の営利会社の開設

〔商法447~450条〕の規定に従い、代表者を指名し、その代表者が外国法人名義で設立証書を公正証書化した後、摘要の登記・官報掲載を行う。
必要な書類・手続きは「外国の株式会社の代理店開設」と同じ。法的代表者に授与される権限が異なる。

外国企業の代表事務所の開設

調査、情報交換、観測、コンタクト、販売促進などの活動のみを行う(契約書の署名は行わない)ために、代表事務所(銀行を除く)を設置する場合、チリの法による規制はなく、そのプロセスも定められていない。
ただし、国税局(SII)の通達において、外国企業の代表事務所は「外国企業の代理店」と類似の扱いとされる例があり、便宜上これに準じた方法で設立されている。
なお、代表事務所の法的代表者に授与される権限は、より限定的なものとなる。

※日チリ租税協定で規定されている恒久的施設は次のとおり。
第5条:

  1. 「恒久的施設」とは、事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部または一部を行っているものをいう。
  2. 「恒久的施設」には、特に次のものを含む。
    1. 事業の管理の場所
    2. 支店
    3. 事務所
    4. 工場
    5. 作業場
    6. 鉱山、石油または天然ガスの坑井、採石場その他天然資源を採取する場所
  3. 「恒久的施設」には次のものを含む。
    1. 建築工事現場、建設もしくは据付けの工事またはこれらに関連する監督活動。ただし、これらの建築工事現場、工事または活動が6カ月を超える期間、存続する場合に限る。
    2. 企業が行う役務の提供(コンサルタントの役務を含む)であって、使用人その他の個人(当該役務の提供のために採用されたものに限る)を通じて行なわれるもの。
      ただし、このような活動が、当該課税年度内に開始または終了する、いずれかの12カ月の期間において、合計183日を超える期間、一方の締約国内において行われる場合に限る。

その他詳細は、協定条文を参照。

現地法人の設立

外国企業がチリで会社を設立するには、個人有限責任会社(E.I.R.L.)、有限責任会社(LTDA.)、株式会社(S.A.)、簡易株式会社(SpA)などの形態が考えられる。

いずれの場合も、代表者を指名し、設立書の公正証書化、その摘要の登記・官報掲載を行なえばよい。
ただし、株式公開会社以外の現地法人設立に関しては、〔法20659号・2013年2月8日官報掲載〕により、手続きが簡素化され、ウェブサイト上で電子様式に必要事項をすべて記載し、電子署名すれば、1日で会社の設立(修正、変更、合併、分割、解散手続きも可能)ができる。
電子様式への署名日が法的行為の実行日となる。
電子署名の手続きは、公証人事務所で行うこともできる。複数の署名が必要な場合、1人が署名した後、60日以内にすべての出資者、株主が署名しなければならない。

経済・観光振興省(Ministerio de Economia, Fomento y Turismo): 企業、機関の登録(Registro de Empresas y Sociedades外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

個人有限責任会社 (E.I.R.L.)

〔法19857号・2003年2月11日官報掲載〕

  1. チリ人または外国人の自然人1人により設立される。
  2. 出資者の責任範囲は出資額のみで、個人の資産と会社への出資資産の分離が認められている。
  3. すべての商業、市民活動を営むことができるが、業種は1つに限定されている。
  4. 会社名には、出資者の氏名、業種を含め、最後に「empresa individual de responsabilidad limitada」または「E.I.R.L.」を付ける。
    そのため、後から出資者を追加する場合は、有限責任会社または簡易株式会社(SpA)への変更が必要。

有限責任会社 (LTDA.)

〔法3918号・1923年3月14日官報掲載〕

  1. 出資者2~50人により設立される。
  2. 出資者は、チリ人、外国人、自然人、法人のいずれでもかまわない。
  3. 出資額または設立公正証書(会社定款公正証書)に定められた額までが、各々の責任範囲となる。
  4. 出資者全員の同意により、出資者を追加できる。
  5. 最低資本金の規定はない。ただし、法律上の一般的な要件として、資本の額は正常の範囲に設定することが求められるため、会社の設立目的と照らして合理的な水準とする必要がある。
  6. 複数の業種の活動を行うことができるが、銀行業を営むことはできない。
  7. 会社名には、出資者の名前または業務目的を含め、最後に「 Limitada(有限会社)」を付ける。
  8. 合名会社〔商法349~423条〕の規則が適用される。

株式会社(S.A.)

〔法18046号・1981年10月22日官報掲載〕

  1. 自然人または法人2人以上の株主により設立される。
  2. 出資者の責任範囲は各々の出資額に限定される。
  3. 最低資本金の規定はない。ただし、法律上の一般的な要件として、資本の額は正常の範囲に設定することが求められるため、会社の設立目的と照らして合理的な水準とする必要がある。
  4. 株式会社は、公開、特別、非公開の3つに分類される。なお、株式公開会社と特別株式会社は、証券保険監督局(SVS)の監査を受ける。
    1. 株式公開会社:証券登記所(REGISTRO DE VALORES)に登録される場合。
    2. 特別株式会社:保険会社、再保険会社、ミューチャーファンド、証券取引所、AFPなど。
    3. 株式非公開会社:上のいずれにも該当しない場合。

簡易株式会社(SpA)

〔商法424~446条〕
株式非公開会社の1形態で、〔法20190号・2007年6月5日官報掲載〕により導入された。

  1. 自然人または法人1人以上で設立可能(最高株主数は自然人499人、法人99人)。
  2. 自由に株の取引ができ(配偶者間での売買は不可)、株式の売買により出資者の変更ができる。
  3. 出資者の責任範囲は各々の出資額に限定される。
  4. 最低資本金の規定はない。ただし、法律上の一般的な要件として、資本の額は正常の範囲に設定することが求められるため、会社の設立目的と照らして合理的な水準とする必要がある。
  5. 複数の業種の活動を行うことができる。

ジェトロ調査レポート:チリ会社設立の概要(2019年3月)

外国企業の会社清算手続き・必要書類

国税庁に対し、インターネット上または書面にて活動終了通知を行なえば、法人税(第1カテゴリー税)の納税対象外となる。また、地方税を納税していた市役所に通知すれば、地方税登記書からデータが削除される。内部手続きは、会社の形態や解散理由等により若干異なる。

有限会社(LTDA.)

解散の主な理由として、次の3通りが挙げられる。

  1. 有限責任会社の定款によるもの。
  2. 共同経営者全員の合意によるもの。
  3. 有限責任会社の権利の100%が1人に集中した場合。

いずれの場合も、解散および解散理由を公正証書にし、その抜粋を商業登記所に登記して、官報で公表する。
その後、定款に従い清算手続きを行う。ただし、他社による買収(編入による合併)の場合、清算手続きは不要。

また、納税の対象外となるために、国税局(SII)で活動終了(Término de Giro)の手続きが必要。
SIIへの通知提出期限は活動停止から2カ月で、SII発行の活動終了証明書を取得後、公証人は会社解散の公正証書に署名を行う。
SIIでの手続きは、インターネットまたは管轄のSII業務部営業終了課で行う。
その際、必要な書類は次のとおり。

  1. 活動終了通知および申告書(書式:2121)
  2. 会社の納税番号(RUT)
  3. 手続きを行う者の身分証明書
  4. 委任状(手続きを行う者が会社の代表者でない場合)
  5. 証印を押してあるが未使用となっている書類(インボイス、送り状、領収書など)
  6. 前年度の所得税申告書(F22)
  7. 宣誓申告(F18XX)
  8. 過去3カ月間の付加価値税(IVA)の申告(F29)
  9. 過去1カ月間に財務局が発行した国庫負債証明書
  10. その他の書類:納税者が第1カテゴリー税の課税対象であり(商業、鉱業、工業、建設など)、最終会計で実質所得がある場合。
    1. 在庫一覧表、過去3年間のバランスシートおよび再投資収益基金(FUT)の記録
    2. 過去3年間の購入・販売帳
    3. 固定資産または換金可能な資産の売却を裏付ける書類、または、営業中のビジネスの全部を売却する場合には、該当する契約書の写し
    4. 会社設立の公正証書(および、その改定の証書)

    さらに、地方税を支払っていた管轄の市役所に対して通知を行えば、地方税登記書から会社のデータが削除される。

株式会社(S.A.)

解散理由により、内部手続きは若干異なるが、その後の清算手続き、SIIおよび地方税を支払っていた管轄の市役所での手続きは、有限会社と同じ。

  1. 解散理由
    解散理由は株式会社法〔法18046号〕103条により、次の6つに分類されている。
    1. 期限満了によるもの
    2. すべての株式が1人に集中した場合
    3. 臨時株主総会における合意によるもの
    4. 法により存在承認が取消された場合(年金基金管理会社等、政府の承認を要する株式会社の場合)
    5. 裁判所の判決によるもの(非公開株式会社の場合)
    6. 定款において規定されているその他の原因によるもの
  2. 内部手続き
    内部手続きは解散理由により、次の3通りのいずれかの方法で行わなければならない。
    1. 解散理由 a. b. f.の場合
      理事会が30日以内に解散理由を公正証書にし、その抜粋を商業登記所に登記し、官報で公表する。
    2. 解散理由 c.の場合
      1. 株式会社を解散するための臨時株主総会の招集を決める理事会を開催。
      2. 株式会社解散の決議を行うための臨時株主総会を開催。決議採択に必要な定足数は発行された投票権付株式の3分の2。
      3. 解散が決議されたら議事録を作成し、それを公正証書にしなければならない。
      4. 公正証書の合法化された抜粋を、公正証書作成後60日以内に商業登記所に登記し、官報で公告する。
    3. 解散理由 d. e.の場合
      理事会は、会社登記書の欄外にその状況の注釈を記入し、官報に1度だけ公告を掲載し、その出来事を報告しなければならない。

簡易株式会社(SpA)

解散理由として、次の3通りが挙げられる。

  1. 定款に規定されている期限満了によるもの。
  2. 株主総会の合意によるもの。
  3. 定款において規定されているその他の原因によるもの。

解散のための内部手続きは、株式会社の規準が適用される。その後の清算手続き、SIIおよび地方税を支払っていた管轄の市役所での手続きは共通。

外国の株式会社の代理店

株式会社法〔法18046号〕122条2項においては、外国の株式会社の代理店解散に関する特別な規定はなく、チリの株式会社と同じ規定を適用するものと理解されている。
具体的には次のとおり。

  1. 本社の担当組織(理事会、株主など)が発行する裁定書または合意書を通じて、解散の承認が必要。
    その書面作成で、留意すべき事項は次のとおり。
    1. 本社のある国の言語で作成。
    2. 代理店の解散、解約および清算を特別に許可する条項を記載する。
    3. チリの法律に従い、代理店の代表者が解散に必要なすべての手続きを行えるような許可条項を含める。
    4. その書面をチリの法律に従い、合法化しなければならない。
  2. 代表者はチリにおける代理店の解散および解約の公正証書に署名しなければならない。
  3. 前2項の公正証書の合法化された抜粋は、公正証書作成後60日以内に商業登記所に登記し、官報で公告する。

その後、SIIおよび地方税を支払っていた管轄の市役所での手続きは共通。

その他

特になし。