ペルーの貿易と投資(世界貿易投資動向シリーズ)

要旨・ポイント

  • 2022年のGDP成長率は前年比2.7%、2年連続のプラス成長。
  • 銅価格の下落で貿易黒字幅が前年比で大きく縮小。
  • 三菱商事のケジャベコ銅鉱山が商業生産を開始、投資額で2022年ペルー最大を記録。
  • 対日貿易総額は前年比7.6%増の42億ドル。貿易黒字幅は8.1%増の2億5,700万ドル。

公開日:2023年11月6日

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マクロ経済 
コロナ禍以降初の2年連続でのプラス成長を達成

2022年の実質GDP成長率は2.7%と、中央準備銀行(BCR)の予測値の2.9%をわずかに下回ったものの、2年連続のプラス成長を達成した。成長の背景には新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)感染者数の減少と、それに関連する各種規制の撤廃がある。その他、雇用の回復(総労働人口(正規・非正規含む)では前年比3.7%増、正規雇用限定では6.5%増)や政府による新型コロナ禍経済対策として導入された「勤労時間補償(CTS) の全額引き出し許可」、「民間年金(AFP)の一部引き出し許可」などの各種特例措置、各種生活支援給付金などによる消費の活性化などが挙げられる。

BCRの分析では、新型コロナ禍前の2019年を100とした場合、2022年は内需106、輸出96、輸入104、全体104と輸出以外は回復していることがうかがえる。なお、輸出の伸び悩みの背景には「サービス輸出」分野のうち「郵便・運輸手数料や関連コスト」、「金融・通信・Eコマース」、「インバウンド観光」の3部門がそれぞれ対2019年比で7%減、8%減、43%減と、依然回復過渡期にあるためといわれている。特に、インバウンド観光分野においては、2022年に前年比4.5倍の200万人がペルーを訪れたが、新型コロナ前(2019年)の430万人の半数にも満たない状況であった。

国内総固定資本形成については、鉱業部門(前年比5.5%減)を中心とした民間投資の後退(0.4%減)が影響し、2022年は1.0%増にとどまった。ペルー最大の鉱山プロジェクトのケジャベコ銅鉱山(三菱商事・アングロアメリカン共同出資)が商業生産を開始し建設設備投資が一段落したことや、政治の混乱による新規鉱山プロジェクトが不在であった一方で、非鉱山部門ではチャンカイ港計画、リマメトロ第2号線計画(日立製作所参加)などの既存大型インフラプロジェクトが下支えした。

表1 ペルーの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2021年 2022年 2023年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1
実質GDP成長率 13.3 2.7 3.9 3.4 2.0 1.7 △ 0.4
階層レベル2の項目民間最終消費支出 12.4 3.6 4.8 4.6 2.9 2.3 0.7
階層レベル2の項目政府最終消費支出 10.9 △ 3.4 11.1 △ 2.8 △ 5.9 △ 11.2 △ 6.0
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 34.6 1.0 △ 0.6 1.4 1.6 1.6 △ 10.7
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 13.2 6.1 9.8 10.0 4.2 1.5 △ 1.1
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 18.0 4.4 4.8 3.4 6.9 2.4 △ 5.0

〔出所〕ペルー中央準備銀行 (Nota Semanal)

貿易 
中国の景気減速に伴う銅価下落が貿易黒字幅に影響

2022年の貿易(通関ベース)は、輸出が前年比4.1%増の631億3,100万ドル、輸入が18.3%増の602億4,600万ドルで、貿易収支は28億8,400万ドルとなり、前年の97億3,500万ドルから70.4%減と大きく後退した。貿易黒字幅が縮小した要因として、主に中国の景気減速に伴う銅価格の下落(BCR分析では11.1%下落)が挙げられる。また、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー価格が高騰し、インフレ抑制策としての利上げが製造業を直撃したドイツ向け銅輸出の減少も影響した。

相手国別では、輸出入ともに2014年に米国を抜いた中国(輸出構成比32.8%、輸入構成比26.1%)が首位を維持した。輸出は中国のゼロコロナ政策の影響により前年比1.6%減の207億1,900万ドル、輸入は7.5%増の157億4,500万ドルだった。2位も引き続き輸出入ともに米国となり、輸出は20.1%増の85億9,500万ドル、輸入は51.6%増の142億4,700万ドルであった。3位については、輸出では韓国が主に銅輸出で47.7%減少したため7.4%減の27億4,100万ドルで4位に後退し、代わりに日本が7.8%増の31億5,900万ドルで繰り上がった。輸入ではブラジルが24.7%増の42億600万ドルで3位にとどまった。

輸出を品目別でみると、依然として伝統産品が構成比の70.8%を占めているが、その割合は前年から2.3ポイント低下している。具体的には、鉱物資源が市場価格の下落に加えて、一部の鉱山での社会争議などによる生産量の減少などが影響して前年比マイナスに転じたものの、銅(地金・精鉱)が構成比30.7%の193億5,300万ドルで首位を維持した。その他、金(構成比12.1%)、亜鉛(地金・精鉱)(4.1%)、鉛(地金・精鉱)(2.8%)などが上位を占めている。魚粉や魚油については、原料であるカタクチイワシの漁獲量が前年比21.9%減の400万トンにとどまったことにより、輸出量も魚粉が0.6%増の18億1,700万ドル、魚油が7.4%増の5億6,900万ドルの微増に終わった。漁獲枠が前年より13.3%(450万トンから510万トンへ)拡大したにもかかわらず漁獲量が減少したのは、沿岸部の海面温度が下がる「ラニーニャ現象」と第2期漁の遅延が大きく影響している。他方、天然ガスについては、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で価格が高騰し、輸出額が85.9%増の31億6,600万ドル、輸出量も34.6%増の348万トンを記録した。主要輸出先は、英国が輸出額で89.9%増の14億1,100万ドル、輸出量も2.6倍の185万トンで首位のほか、韓国、日本が上位3カ国を占めた。なお、日本への輸出額は53.3%増の3億1,300万ドルだったが、輸出量は38.1%減の27万トンにとどまり、天然ガスの高騰ぶりがうかがえる。非伝統産品は12.8%増の181億9,900万ドルで、主にブルーベリーやブドウなどの生鮮果実(1.9%増、47億3,400万ドル)、化学品(23.3%増、23億4,800万ドル)、繊維製品(19.6%増、18億7,100万ドル)などが下支えした。

輸入を品目別でみると、原材料・中間財が 前年比32.5%増の330億1,500万ドルで全体の半数超を占めたほか、資本財(1.7%増、152億6,200万ドル)、消費財(8.9%増、119億5,900万ドル)もそれぞれ前年実績を上回った。原材料では、特にディーゼル燃料が市場価格の高騰も相まって98.0%増の50億7,900万ドル(3,400万バレル)で、うち93.4%が米国からであった。消費財では、衣類や靴などのアパレル製品が16.0%増の16億3,400万ドルで、特に衣類の多くは中国(構成比61.9%、5億7,600万ドル)やバングラデッシュ(12.0%、1億1,100万ドル)などから輸入された。耐久消費財は、自動車が20.4%増の16億4,600万ドルと最も多く、中国(25.6%、8億8,100万ドル)、ブラジル(18.8%、6億4,700万ドル)とアルゼンチン(12.8%、4億4,200万ドル)が上位3カ国を占めた。

表2-1 ペルーの主要品目別輸出(FOB) [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
伝統産品 44,351 44,688 70.8 0.8
階層レベル2の項目銅(地金・精鉱) 20,633 19,353 30.7 △ 6.2
階層レベル2の項目 7,815 7,608 12.1 △ 2.6
階層レベル2の項目亜鉛(地金・精鉱) 2,683 2,561 4.1 △ 4.6
階層レベル2の項目鉛(地金・精鉱) 2,029 1,773 2.8 △ 12.6
階層レベル2の項目魚粉 1,806 1,817 2.9 0.6
階層レベル2の項目天然ガス 1,703 3,166 5.0 85.9
階層レベル2の項目石油派生製品 1,718 2,230 3.5 29.8
階層レベル2の項目コーヒー 769 1,236 2.0 60.7
階層レベル2の項目魚油 529 569 0.9 7.4
非伝統産品 16,131 18,199 28.8 12.8
階層レベル2の項目農産品・加工食品 7,868 8,401 13.3 6.8
階層レベル3の項目果実 4,645 4,734 7.5 1.9
階層レベル4の項目生鮮ブドウ 1,249 1,352 2.1 8.3
階層レベル4の項目生鮮ブルーベリー 1,187 1,339 2.1 12.9
階層レベル4の項目生鮮・乾燥アボカド 1,014 890 1.4 △ 12.2
階層レベル3の項目野菜 726 702 1.1 △ 3.3
階層レベル4の項目生鮮アスパラガス 400 370 0.6 △ 7.3
階層レベル2の項目化学品 1,904 2,348 3.7 23.3
階層レベル2の項目繊維製品 1,565 1,871 3.0 19.6
階層レベル2の項目水産品 1,516 1,639 2.6 8.1
階層レベル3の項目冷凍赤イカ(ポタ) 426 443 0.7 4.1
階層レベル3の項目調製し又は保存に適する処理をしたイカ 158 165 0.3 4.5
階層レベル2の項目金属製品 1,491 1,625 2.6 9.0
階層レベル3の項目含有量が全重量の99.99%未満の亜鉛 279 317 0.5 13.3
階層レベル3の項目銅線 342 306 0.5 △ 10.4
階層レベル2の項目非鉄金属 675 1,093 1.7 62.0
階層レベル2の項目機械 569 658 1.0 15.6
階層レベル2の項目木材・紙 280 313 0.5 11.7
その他 182 244 0.4 34.3
合計(その他含む) 60,663 63,131 100.0 4.1

〔出所〕 国家税務監督庁(SUNAT)および輸出業協会

表2-2 ペルーの主要品目別輸入(CIF) [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
原材料・中間財 24,908 33,015 54.8 32.5
階層レベル2の項目工業用 16,376 19,349 32.1 18.2
階層レベル2の項目燃料・潤滑油 6,390 11,058 18.4 73.0
階層レベル2の項目農業用 2,142 2,608 4.3 21.8
資本財 15,010 15,262 25.3 1.7
階層レベル2の項目工業用 9,362 9,463 15.7 1.1
階層レベル2の項目輸送機器 3,564 3,787 6.3 6.3
階層レベル2の項目建築資材 1,881 1,808 3.0 △ 3.9
階層レベル2の項目農業用 203 205 0.3 1.1
消費財 10,981 11,959 19.9 8.9
階層レベル2の項目非耐久消費財 6,266 7,086 11.8 13.1
階層レベル2の項目耐久消費財 4,714 4,873 8.1 3.4
その他 29 10 0.0 △ 64.6
合計(その他含む) 50,928 60,246 100.0 18.3

〔出所〕 国家税務監督庁(SUNAT)および輸出業協会

表3-1 ペルーの主要品目別輸出(FOB)1Q[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2022年1月〜3月 2023年1月〜3月
金額 金額 構成比 伸び率
伝統産品 11,782 8,866 65.4 △ 24.7
階層レベル2の項目銅(地金・精鉱) 4,692 3,485 25.7 △ 25.7
階層レベル2の項目 1,963 1,631 12.0 △ 16.9
階層レベル2の項目魚粉 644 600 4.4 △ 6.9
階層レベル2の項目亜鉛(地金・精鉱) 715 440 3.2 △ 38.4
階層レベル2の項目天然ガス 1,281 629 4.6 △ 50.9
階層レベル2の項目鉄(地金・精鉱) 524 409 3.0 △ 21.8
階層レベル2の項目鉛(地金・精鉱) 422 433 3.2 2.6
階層レベル2の項目魚油 138 94 0.7 △ 31.9
階層レベル2の項目石油派生製品 520 565 4.2 8.8
階層レベル2の項目コーヒー 313 92 0.7 △ 70.6
非伝統産品 4,342 4,623 34.1 6.5
階層レベル2の項目農産品 1,951 2,099 15.5 7.6
階層レベル3の項目生鮮ブドウ 555 664 4.9 19.7
階層レベル3の項目生鮮マンゴ 190 186 1.4 △ 2.2
階層レベル3の項目生鮮ブルーベリー 124 156 1.2 26.0
階層レベル2の項目水産品 476 619 4.6 30.1
階層レベル3の項目冷凍赤イカ(ポタ) 77 243 1.8 217.2
階層レベル3の項目調製し又は保存に適する処理をしたイカ 27 77 0.6 186.4
階層レベル2の項目化学品 528 456 3.4 △ 13.5
階層レベル2の項目繊維製品 436 433 3.2 △ 0.7
階層レベル2の項目金属製品 450 384 2.8 △ 14.7
階層レベル3の項目銅線 96 85 0.6 △ 10.7
階層レベル3の項目含有量が全重量の99.99%未満の亜鉛 113 77 0.6 △ 32.0
階層レベル2の項目機械 152 175 1.3 14.9
階層レベル2の項目非鉄金属 205 320 2.4 56.5
階層レベル2の項目木材・紙 81 81 0.6 △ 0.9
その他 53 62 0.5 16.3
合計(その他含む) 16,178 13,551 100.0 △ 16.2

〔出所〕 国家税務監督庁(SUNAT)

表3-2 ペルーの主要品目別輸入(CIF)1Q[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2022年1月〜3月 2023年1月〜3月
金額 金額 構成比 伸び率
原材料・中間財 7,424 6,409 51.7 △ 13.7
階層レベル2の項目工業用 4,830 3,663 29.5 △ 24.2
階層レベル2の項目燃料・潤滑油 2,080 2,145 17.3 3.1
階層レベル2の項目農業用 514 601 4.8 17.0
資本財 3,758 3,333 26.9 △ 11.3
階層レベル2の項目工業用 2,389 2,157 17.4 △ 9.7
階層レベル2の項目輸送機器 829 823 6.6 △ 0.8
階層レベル2の項目建築資材 491 315 2.5 △ 35.8
階層レベル2の項目農業用 49 38 0.3 △ 21.9
消費財 2,781 2,658 21.4 △ 4.4
階層レベル2の項目非耐久消費財 1,618 1,541 12.4 △ 4.8
階層レベル2の項目耐久消費財 1,163 1,117 9.0 △ 3.9
その他 7 1 0.0 △ 91.2
合計(その他含む) 13,970 12,400 100.0 △ 11.2

〔出所〕 国家税務監督庁(SUNAT)

表4 ペルーの主要国・地域別輸出入[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
NAFTA 10,476 12,089 19.1 15.4 12,244 17,411 28.9 42.2
階層レベル2の項目米国 7,156 8,595 13.6 20.1 9,396 14,247 23.6 51.6
階層レベル2の項目カナダ 2,769 2,684 4.3 △ 3.1 971 1,158 1.9 19.2
階層レベル2の項目メキシコ 551 810 1.3 47.1 1,877 2,007 3.3 6.9
EU28 8,581 8,773 13.9 2.2 4,864 5,103 8.5 4.9
階層レベル2の項目英国 1,297 2,080 3.3 60.3 236 254 0.4 7.6
階層レベル2の項目オランダ 1,898 1,764 2.8 △ 7.0 238 262 0.4 10.2
階層レベル2の項目スペイン 1,573 1,628 2.6 3.5 856 905 1.5 5.7
階層レベル2の項目ドイツ 1,331 1,107 1.8 △ 16.8 1,161 1,167 1.9 0.5
スイス 1,934 1,988 3.1 2.8 132 152 0.3 14.9
アンデス共同体 2,506 3,182 5.0 27.0 2,806 3,486 5.8 24.2
階層レベル2の項目エクアドル 929 1,304 2.1 40.3 687 971 1.6 41.3
階層レベル2の項目コロンビア 868 1,055 1.7 21.5 1,193 1,249 2.1 4.7
階層レベル2の項目ボリビア 709 823 1.3 16.2 926 1,266 2.1 36.8
チリ 1,771 2,002 3.2 13.0 1,317 1,602 2.7 21.6
メルコスール 1,341 1,861 2.9 38.9 6,033 7,471 12.4 23.8
階層レベル2の項目ブラジル 1,129 1,586 2.5 40.5 3,373 4,206 7.0 24.7
階層レベル2の項目アルゼンチン 163 222 0.4 35.8 2,313 3,041 5.0 31.5
その他 34,054 33,235 52.6 △ 2.4 23,531 25,021 41.5 6.3
階層レベル2の項目中国 21,049 20,719 32.8 △ 1.6 14,649 15,745 26.1 7.5
階層レベル2の項目日本 2,932 3,159 5.0 7.8 1,026 1,093 1.8 6.6
階層レベル2の項目韓国 2,960 2,741 4.3 △ 7.4 969 1,000 1.7 3.2
階層レベル2の項目インド 2,542 2,261 3.6 △ 11.0 1,108 1,186 2.0 7.0
合計 60,663 63,131 100.0 4.1 50,928 60,246 100.0 18.3

〔注1〕アンデス共同体:ボリビア、コロンビア、エクアドル、ペルー
〔注2〕メルコスール:ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ
〔出所〕国家税務監督庁(SUNAT)

対内直接投資 
最大鉱山ケジャベコが商業生産開始、鉱業投資は2.1%増

エネルギー鉱山省(MINEM)によると、2022年の鉱業投資は前年比2.1%増となった。各社発表および報道ベースでの2022年の主な投資案件は(注)、三菱商事と英国アングロアメリカンがケジャベコ銅鉱山計画に10億6,700万ドルを投資し、前年に続いて首位を堅持した。同鉱山は2022年9月にMINEMからの最終商業生産ライセンス発給の認可を受け、本格的な銅鉱石や副産物のモリブデンと銀の商業生産に入っている。開発建設期間における約1万5,000人の雇用創出に加えて、今後の生産活動において約2,500人の雇用創出効果を見込んでいる。また、三菱商事はペルー北東部のアンタミナ銅鉱山にも前年に続いて4億5,900万ドルの追加投資を行っており、両鉱山を合わせてペルーの2022年における鉱業分野への投資の3割弱を占めている。その他、2022年における鉱業投資企業では米国ニューモント・マイニングが出資するミネラ・ヤナコチャが4億2,200万ドル(全鉱業投資の7.9%)、メキシコ資本のサザン・コッパーが3億5,000万ドル(同6.5%)と上位に並んでいる。

その他、インフラ分野では、ペルー公共交通施設投資監督庁(OSITRAN)によると、日立製作所グループ傘下の日立レール(HITACHI RAIL STS)がコンセッショネアメンバー企業として参加するペルー初の地下鉄であるリマメトロ第2号線計画に対して、官民連携(PPP)方式で2022年中に2億4,800万ドルの投資を行っており、2022年末時点で全計画の45.68%まで進んでいるという。日立レールは、同計画における完全自動運転レベル(GoA4)の自動運転制御システムと車両の納入を担っている。同社は既に全車両を納入しており、完成済みの「第1A区画(5駅5キロメートル)」内での試運転と車両メンテナンスを実施している。

表5 ペルーの国・地域別対内直接投資[申請ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域名 2021年 2022年 1980~2022年累計
金額 金額 構成比 伸び率 金額 構成比
英国 4 0 △ 100.0 5,427 18.0
スペイン 23 0 △ 100.0 5,228 17.3
チリ 3 0 △ 98.5 3,583 11.9
米国 0 0 3,232 10.7
オランダ 0 0 1,402 4.6
コロンビア 0 0 1,369 4.5
ブラジル 0 0 1,199 4.0
中国 465 0 △ 100.0 1,131 3.7
カナダ 0 0 1,123 3.7
パナマ 0 0 △ 100.0 885 2.9
グレートブリテン島 0 0 912 3.0
スイス 0 0 575 1.9
メキシコ 1 0 △ 100.0 601 2.0
ルクセンブルク 0 0 557 1.8
シンガポール 0 0 366 1.2
バミューダ諸島 0 0 293 1.0
日本 0 0 238 0.8
その他 15 0 △ 100.0 2,070 6.9
合計 511 0 △ 100.0 30,191 100.0

[注1]国際収支ベースの国・地域別統計は公表されていない。
[注2]国会決議(Decreto)662号第19条によって義務付けられる外国直接投資の事前申請ベース。
[注3]資本出資のみの統計。利益再投資や融資分は含まない。
[注4]同申請は投資実施期限の制約は設けていないため、計上と投資の実行にタイムラグが生じる。
[出所]民間投資促進庁(ProInversion)

表6 ペルーの業種別対内直接投資[国際収支ベース、ネット・フロー](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
業種 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
炭化水素 0 0
鉱業 6 0 △ 100.0
金融 465 0 △ 100.0
サービス(非金融) 36 0 △ 100.0
製造業 0 0
エネルギー・その他 5 0 △ 100.0
合計 511 0 △ 100.0

[出所]民間投資促進庁(ProInversion)

表7 ペルーの対内直接投資案件(単位:100万ドル)
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
鉱業 三菱商事、アングロアメリカン 日本 / 英国 2022年12月 1,067 ケジャベコ銅鉱山の建設投資は、2022年の国内全鉱業投資の19.9%を占める。
鉱業 アンタミナ鉱山会社 英国 / オーストラリア / スイス / カナダ / 日本 2022年12月 459 2022年の国内鉱山投資の8.6%を占める2番目に重要な案件。
インフラ メトロリマ2号線コンセッショネア イタリア / スペイン / ペルー 2022年12月 248 リマメトロ第2号線計画。全長27キロメートル(リマ国際空港までのアネックスを含めると35キロメートル)で27駅を予定しており、2022年末で全体の45.68%の進捗状況にある。
金融 Bci チリ 2022年7月 60 チリ資本の銀行。6,000万ドルの投資で、ペルーおよびチリ系のコーポレートおよび大企業を対象にオペレーションを開始。
通信 エンテル チリ 2022年12月 150 2022年12月時点で国内携帯電話市場の23.04%を占める同社は、2021年を上回る投資で、市場30%超を目指す。
小売り ファラベラ チリ 2022年10月 30 流通センター近代化・自動化への投資。ロジスティクスの改善および配達時間が短縮される見込み。

〔注〕時期は各社発表または報道された月
〔出所〕 各社発表および報道などから作成

対日関係(貿易投資) 
ケジャベコ銅鉱山参入が対日貿易黒字幅拡大の一因に

2022年の対日貿易総額は、前年比7.6%増の42億6,200万ドルと、前年に引き続きプラス成長を維持し、新型コロナ禍前の2019年比でも42.5%増を達成した。貿易黒字幅は、8.1%増の2億5,600万ドルに拡大した。輸出は、7.8%増の31億5,900万ドルに上った。品目別では、鉱物資源や炭化水素資源などを中心とした伝統産品が全体の92.3%を占めており、その中でも42.5%を占める銅(地金・精鉱)は6.9%増の13億4,400万ドルとなった。同資源の主な輸出元をみると、住友金属鉱山と住友商事が参加するセロベルデ銅鉱山が 24.7%増の8億6,200万ドルと、前年に続いてトップシェアを維持した。また、2022年から商業生産を開始した三菱商事が出資するケジャベコ銅鉱山が1億4,800万ドルでシェア2位に名を連ねた。非伝統産品では、水産品が54.5%増の1億1,500万ドルを記録した。同分野に参加するマルハニチログループ会社のサカナ・デル・ペルーも主力商品の冷凍アカイカ(ペルー名:ポタ)が2.1倍の86万ドル、冷凍アナゴが13.0%増の257万ドルと健闘した。

輸入は、前年比7.2%増の11億300万ドルと、新型コロナ規制の撤廃と雇用の回復などに後押しされた内需に支えられた。品目別では、例年通り自動車および同部品が全体の30.7%を占め3億3,900万ドルに上った。企業別では、31年連続でトップシェアを堅守したトヨタ自動車が1.3%減の1億ドル、GMが代理店を務めるいすゞ自動車が12.5%増の6,880万ドル、MC AUTOS DEL PERÚが販売する三菱自動車が6.7%増の4,300万ドル、デルコ(DERCO)取り扱いのマツダとスズキが28.2%減の3,100万ドル、日産自動車が47.5%増の2,330万ドル、INDUMOTORA DEL PERÚのスバルが13.6%減の2,000万ドルと上位を占めた。なお、新型コロナ禍の影響で、2021年に顕著になった海運コストの高騰は落ち着きつつある一方で、不足する車載半導体の確保が各社の新たな課題として挙がっている。

(注)BCRが毎年発表する対内直接投資(国際収支ベース)データは、同行発行の年鑑レポート内に含まれるが2022年については発表が見送られている。

表8-1 ペルーの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
伝統産品 2,744 2,916 92.3 6.3
階層レベル2の項目銅(地金・精鉱) 1,257 1,344 42.5 6.9
階層レベル2の項目亜鉛(地金・精鉱) 189 197 6.2 4.3
階層レベル2の項目鉄(地金・精鉱) 119 67 2.1 △ 43.7
階層レベル2の項目錫(地金・精鉱) 82 99 3.1 19.8
階層レベル2の項目鉛(地金・精鉱) 7 8 0.3 11.0
階層レベル2の項目原油・同派生製品 758 751 23.8 △ 0.9
階層レベル2の項目天然ガス 204 313 9.9 53.3
階層レベル2の項目魚粉 71 68 2.2 △ 3.9
階層レベル2の項目魚油 14 17 0.5 24.6
階層レベル2の項目コーヒー 12 32 1.0 160.1
非伝統産品 188 244 7.7 29.7
階層レベル2の項目農産品・加工食品 87 93 2.9 7.4
階層レベル3の項目果実 54 56 1.8 3.3
階層レベル4の項目生鮮アボカド 25 27 0.8 8.6
階層レベル4の項目冷凍マンゴー 5 7 0.2 51.2
階層レベル4の項目生鮮バナナ 5 5 0.2 0.1
階層レベル4の項目冷凍フルーツ 7 5 0.2 △ 30.4
階層レベル4の項目冷凍イチゴ 3 4 0.1 47.6
階層レベル4の項目マンダリン 6 4 0.1 △ 40.1
階層レベル3の項目野菜 19 15 0.5 △ 21.4
階層レベル4の項目冷凍アスパラガス 16 12 0.4 △ 25.3
階層レベル4の項目アスパラガス加工品 1 1 0.0 △ 46.7
階層レベル4の項目その他の野菜 1 1 0.0 5.4
階層レベル2の項目水産品 74 115 3.6 54.5
階層レベル3の項目冷凍赤イカ(ポタ) 20 33 1.0 64.8
階層レベル3の項目とびこ 14 26 0.8 80.4
階層レベル3の項目冷凍マスのフィレ 20 25 0.8 23.7
階層レベル2の項目亜鉛(合金を除く) 8 9 0.3 13.2
階層レベル2の項目衣類 9 10 0.3 13.0
階層レベル2の項目化学品 3 3 0.1 21.0
階層レベル3の項目植物性・動物性着色料 2 2 0.1 4.3
階層レベル2の項目繊維 2 2 0.1 △ 25.2
合計(その他含む) 2,932 3,159 100.0 7.8

〔出所〕国家税務監督庁(SUNAT)

表8-2 ペルーの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
自動車および同部品 337 339 30.7 0.4
階層レベル2の項目商用車・トラック 141 143 13.0 2.0
階層レベル2の項目乗用車 135 122 11.0 △ 9.6
階層レベル2の項目バス(10人以上乗り) 24 26 2.3 6.4
機械類および同部品 210 254 23.1 21.1
階層レベル2の項目ショベルカー 36 38 3.4 4.8
階層レベル2の項目印刷機・プリンター・複写機 20 28 2.6 38.8
階層レベル2の項目ブルドーザー・地ならし機 10 22 2.0 121.9
電気製品および同部品 24 25 2.3 4.2
階層レベル2の項目電話機器 2 2 0.2 1.2
階層レベル2の項目電動機および発電機(原動機とセットにした発電機を除く。) 2 2 0.2 △ 18.1
階層レベル2の項目デジタルカメラ・ビデオカメラ 3 0 0.0 △ 100.0
その他機械類 25 29 2.7 17.2
階層レベル2の項目化学分析用機器 10 9 0.8 △ 6.2
階層レベル2の項目医療用又は獣医用の機器 3 9 0.8 157.0
階層レベル2の項目X線機器 7 7 0.6 △ 4.9
化学品 173 200 18.1 15.7
階層レベル2の項目タイヤ(新品に限る) 112 135 12.3 21.2
鉄鋼・鉄鋼製品 109 169 15.3 55.4
階層レベル2の項目鉄フラットロール(めっきしたもの) 45 72 6.5 58.2
セメント(クリンカー) 15 34 3.1 124.7
その他 135 52 4.7 △ 61.5
合計(その他含む) 1,028 1,103 100.0 7.2

〔注〕寄付や外交サービスも含まれる。
〔出所〕国家税務監督庁(SUNAT)

基礎的経済指標

人口
3,347万人 (2022年6月30日、暫定値)
面積
128万5,216平方キロメートル(2022年)
1人当たりGDP
7,094 米ドル (2022年)
(△はマイナス値)
項目 単位 2020年 2021年 2022年
実質GDP成長率 (%) △ 11.0 13.3 2.7
消費者物価上昇率 (%) 2.0 6.4 8.5
失業率 (%) 7.4 5.7 4.3
貿易収支 (100万米ドル) 5,515 9,735 2,884
経常収支 (100万米ドル) 2,235 △ 5,064 △ 9,908
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 72,671
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ、期末値) 89,715 101,981 102,269
為替レート (1米ドルにつき、ソル、期中平均) 3.49 3.88 3.84

注:
失業率:全国都市部の失業率
貿易収支:通関ベース
出所:
人口、面積:ペルー情報統計院(INEI)
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、経常収支、対外債務残高(グロス):ペルー中央銀行「Nota Semanal」
失業率:ペルー中央銀行「Memoria Anual」
貿易収支:国家税務監督庁(SUNAT)