外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用

最終更新日:2023年11月10日

外国人就業規制

特定の役職は、一部の例外を除き、原則ベネズエラ人が就く必要がある。

企業組織において、工業担当長、人事担当長、船長、パイロット、現場監督などの地位は、ベネズエラ人のために留保されている(それぞれ「労働および労働者組織法」第14条、第27条)。
ただし、労働と社会保障を管轄する省の許可を得た次のような場合、一時的な例外措置が認められる(「労働および労働者組織法」第27、28条)。

  1. 当該ポストに就く人物には特別な技術知識が必要で、ベネズエラ人の中には適切な人材がいない場合。
  2. 当該ポストをベネズエラ人労働者が占めて業務を遂行することは難しいと、労働および社会保障を管轄する省庁が認めた場合。
  3. 当該ポストに就く予定の人物が、政府もしくは政府から委託を受けた機関との直接契約、あるいは国際協定に基づいて入国する移住者である場合。
  4. 当該ポストに就く予定の人物が、国際法により難民と認定された人の場合。
  5. 当該ポストが中小企業のポストである場合。

労働および労働者組織法(LOTTT)(2012年4月30日付特別官報6076号公布の政令8938号)"LEY ORGÁNICA DEL TRABAJO, LOS TRABAJADORES Y LASTRABAJADORASPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2.52MB)"

在留許可

国内企業との特定期間の雇用に基づき、ビザの取得をする必要がある。

国内の企業との特定期間の雇用契約に基づき、入国を希望する外国人に対してビザが発行される。
ビザ発行は、司法省管轄の外国人・移住・身分証明管理庁(Servicio Administrativo de Identificacion, Migracion y Extranjeria:SAIME)が担当。

ベネズエラへの入国方法には2004年5月24日付官報37944号で公布された外国人登録・移民法(Ley de Extranjeria y Migracion)および2000年1月5日付特別官報5427号で公布されたビザ発行手続き規則(Normas de Procedimiento para la Expedicion de Visados)に基づき次の3通りがあり、そのうち1.が最も一般的である。

  1. Visa de Transeunte de Negocios(非居住者ビジネスビザ):数次ビザ、1年間有効(延長不可)、最大180日間の滞在が可能。
  2. Visa de Transeunte Inversionista(非居住者投資家ビザ):数次ビザ、3年間有効(延長可能)、滞在日数の制限なし。ベネズエラの公的機関により投資が承認され、関連連絡先が記載された信頼できる書類により、会社を設立したことを証明できる人に付与される。
  3. Visa de Transeunte Laboral(非居住者労働ビザ):数次ビザ、1年間有効(1年間の延長が可能)、滞在日数の制限なし。出身国に所在する企業の子会社などがベネズエラ国内にあり、そこで活動するために渡航する人に付与される。

政令第3090号により、移民または乗換えの目的以外でベネズエラ国内に滞在し、収入を外貨で受け取るすべての外国人は、入国管理に関するすべての活動および書類に関する支払いを米ドルで行わなければならない(2017年9月22日付官報第41242号)。
その他、在留許可に関する情報は、在日本ベネズエラ大使館領事部外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの情報を参照。

現地人の雇用義務

現地人雇用義務、増給義務、残業手当、事前解雇告知、夜勤手当、週就業時間規程、一定の休暇日数

現地人の雇用義務

10人以上の労働者を抱える企業は、90%以上がベネズエラ人であること、給与総額の80%はベネズエラ人への給付であることが必要(労働および労働者組織法第27条)。ただし、専門的な知識が必要なため、ベネズエラ人労働者がその職務を果たすことができないなど、次のa.~d.のいずれかに該当すると管轄機関が認めた場合は、特別に移行措置として前記割合を超えて外国人を雇用することができる。ただし、それはあくまでも暫定措置であり、最終的にはベネズエラ人に置き換えなければならない(同第28条)。

  1. 当該ポストに就く人物には業務上特別な技術知識が必要であり、ベネズエラ人に適切な人材がいない場合。
  2. ベネズエラ人労働者の中に、当該ポストの職務を果たし得る人物がいないと、労働および社会保障を管轄する省庁が認めた場合。
  3. 当該ポストに就く予定の人物が、政府もしくは政府から委託を受けた機関との直接契約、あるいは国際協定に基づいて入国する移住者である場合。
  4. 当該ポストに就く予定の人物が、国際法により難民と認定された人物である場合。

その他、労働条件など

2012年4月に労働組織法(1997年施行)が全面的に改正され、労働および労働者組織法が施行された。この改正により、労働時間の短縮、退職金の計算方法の変更、ボーナス・手当の増額、労働基準監督局(Inspector del Trabajo)の許可のない解雇の禁止など、労働者保護に関する規則が強化された。次に紹介する各規則の末尾にあるカッコ内は、「労働および労働者組織法」の該当条文を指す。

  1. 労働時間
    • 昼勤の時間帯は午前5時~午後7時、夜勤は午後7時~午前5時(第173条)。
    • 昼勤の労働時間は1日8時間、1週間に40時間を超えてはならない(第173条)。
    • 夜勤の労働時間は1日7時間、1週間に35時間を超えてはならない(第173条)。
    • 昼勤・夜勤混合の労働時間は1日7.5時間、1週間に37.5時間を超えてはならない(第173条)。
    • 24時間連続操業体制の企業でシフト制の場合、1日・1週間当たりの上限を超えてもよいが、各労働者につき8週間における勤務時間合計の1週間当たりの平均が42時間を超えてはならない。6日働いた週は、追加で1日の休暇が与えられなければならない(第176条)。
    • 夜勤手当は、午後7時以降30%割増(第117条)。
    • 1週間のうち勤務日は5日を超えてはならず、休日は2日連続でなければならない(第173条)。

    なお、旧労働組織法では、昼勤の労働時間は1日に8時間、1週間に44時間を上限、夜勤の場合は1日7時間、1週間に40時間、昼勤・夜勤混合の労働時間は1日に7.5時間、1週間に42時間を上限としていた。また、労働時間の短縮には準備期間が設けられており、公布日から1年後に有効となった。労働時間の短縮により、いかなる方法であれ、給与がカットされてはならないとされた(移行規定の3)。

  2. 休暇
    • 有給休暇日数は、1年間勤続で15日。以降、1年経過するごとに1日増しとなる。最高で年間30日(第190条)。
    • 労働者が休暇を取る際は、給与の最低15日分(以降、1年経過するごとに1日分が追加され、最高で30日分)が休暇手当(Bono Vacacional)として支給される(第192条)。
      なお、旧労働組織法では、休暇手当(Bono Vacacional)は給与の最低7日分(以降、1年経過するごとに1日分が追加され、最高で21日分)と規定されていた。
  3. 残業
    • 労働者に残業をさせる場合、労働基準監督局(Inspectoria del Trabajo)の許可が必要(第182条)。
    • 労働基準監督局の許可を得ずに残業させた場合、残業手当は2倍となる(第182条)。
    • 残業を含め、1日当たりの労働時間が10時間を超えてはならない(第178条)。
    • 1週間当たりの残業時間が10時間を超えてはならない。同様に、年間の残業時間が100時間を超えてはならない(第178条)。
    • 残業手当は、午後7時までは時給の50%増、午後7時以降は80%増(残業手当50%+夜勤手当30%)となる(第117~118条)。
  4. 解雇の禁止
    • 役員(Trabajadores de Direccion)あるいは勤務1カ月目の労働者以外、正当な理由がなければ解雇できない(第85および87条)
    • 解雇の「正当な理由」とは、職務における不誠実・背徳行為、暴力行為、雇用主およびその同居家族に対する重大な侮辱・不敬、健康・労働上の安全に影響を与えかねない意図的な行為あるいは過失、労働上の安全・衛生に重大な影響を及ぼしかねない怠慢・過失、1カ月間に3日以上の正当な理由がない欠勤、意図的あるいは重大な過失による会社の機械・工具・道具・動産・原材料・製造品・作物などへの物的損害、製造工程上の秘密の漏えい、労使関係が定める責務の重大な不履行、職務の放棄、職場ハラスメントおよびセクシュアル・ハラスメントがあった場合など(第79条)。
      前記解雇理由の根拠となる資料を労働監督官(Inspetor del Trabajo)に提出し、解雇許可を得た場合に解雇できる。
    • 妊婦・母親およびその夫(妊娠が判明してから出産後2年までの間)、3歳未満の乳幼児を養子にした労働者(養子にしてから2年間)、自分で身の回りのことができない障害・病気を患う子供をもつ労働者等は、特別解雇禁止措置(Inamovilidad Laboral)によって解雇が禁止されている(第420条)。
    • 2024年12月31日まで正当な理由がない限り労働者の解雇が禁止されている(法令4753号2022年12月20日臨時官報6723号)。
  5. 退職金
    • 労働者が自己都合によって退職する場合、事前通告しなくても罰則は伴わない(第81条)。
    • 退職金に係る時効は10年(第51条)。
    • 退職金計算方法
      1. 四半期ごとに、最終月の給与の15日分を退職金の「保証」として積み立てる。これに加え、2年目からは1年につき1度、2日分(最大30日分)を追加で積み立てる(第142条)。
      2. 労使関係の終了時、最後の給与をベースに「勤務年数×給与30日分」として退職金を計算する(勤務期間が1年未満の場合でも、6カ月超であれば1年としてカウントする)。勤続年数の計算時に過去に遡る上限は、1997年6月19日(第142条および移行規定の2)。
      3. a.とb.を比較し、金額が多い方が支給される(第142条)。
    • 退職金は、労使関係の終了後、5日以内に支払われなければならない。遅延の場合は、遅延利息が適用される(第142条)。
  6. 社会保険料
    社会保険料は、雇用主と労働者が費用を分担して支払う。その場合、雇用主が労働者へ支払う賃金から労働者負担分の費用を差し引き、雇用主がまとめて社会保険庁へ支払う。雇用主の負担額は、労働者への支払い給料の9~11%、労働者の負担は4%。雇用主の負担率は、業務の危険度によって異なる。
  7. 失業保険
    労働者給与の2%分を雇用主が失業保険向けに負担し、労働者は0.5%分を負担する。雇用主が給与支払い時に労働者への賃金から労働者負担分の費用を差し引き、雇用主がまとめて社会保険庁へ支払う。
  8. 社会教育技能育成金
    雇用主が、労働者に支払う月額給与の2%相当額を、四半期ごとにまとめて国家社会教育育成組織に拠出する。この拠出は、5人以上労働者を雇用している会社に適用される。労働者は年末ボーナスの0.5%を拠出する。労働者の拠出分は、雇用主がボーナス支払い時に差し引いて、まとめて支払う。
  9. 住宅積立金
    月額収入の3%相当分を、住宅メンテナンス用の積立金として積み立てることが義務化されている。3%のうち2%は雇用主負担、1%は労働者負担とされる。
  10. 食料福利厚生
    2023年5月1日以降、補助は月間1,000ボリバルに定められた。またそれに加え「経済戦争に対するボーナス」として月間750ボリバルを支給することになっている(法令4805号、2023年5月1日付臨時官報6746号)。
  11. 幼児負担金
    労働者を20人以上雇用している雇用主は、従業員の幼児向け保育施設を用意しなければならない。もしくは、同福利を保証するため、雇用主は従業員の子どもが5歳になるまで、毎月最低賃金の5倍を限度とする金額を、子どもの親である従業員に支払わなければならない。
  12. ボーナス
    雇用主は、少なくとも年間純利益の15%を労働者にボーナスとして分配する必要がある(労働者1人当たり、少なくとも給与の30日分、最大4カ月分)(第131条)。
  13. その他
    • 労働者への指示、コミュニケーション、研修(マニュアルを含む)等は、スペイン語で行われなければならない(第14条)。
    • 下請け(Tercerizacion)の禁止(第48条)。
    • 労働者が1,000人以上で、かつ職場が教育施設のある都市から100km以上離れている場合、雇用主は労働者の子弟向けに、初等・中等教育施設を設置する義務を負う(第161条)。
    • 労働者が1,000人以上、かつ職場が病院サービスを受けられる都市から100km以上離れている場合、あるいは50km以上離れていて輸送手段が存在しないために病院サービスを受けることができない場合は、雇用主は医療施設を設置する義務を負う(第163条)。
    • 法令4653号(2022年3月15日付臨時官報第6691号)により、最低賃金は130ボリバルに引き上げられた。
    • 最低賃金は毎年5月1日に公表される。2023年は引き上げがなく月間130ボリバルとなった。一方で食料補助が大幅に引き上げられた。

その他

特になし。