ベルギーの貿易と投資(世界貿易投資動向シリーズ)

要旨・ポイント

  • 2022年の実質GDP成長率は3.2%と前年の6.3%から鈍化。
  • 貿易はエネルギー価格高騰の影響を受け、鉱物性生産品の輸出入額が大幅に増加。
  • 対内直接投資はマイナスに転じるも、日米の化学、製薬企業を中心に投資が進む。
  • 対日貿易は医薬品などの化学工業品の輸出が拡大、貿易黒字に転じた。
  • 日本からの直接投資は金額ベースで前年比約10倍に。

公開日:2023年9月14日

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マクロ経済 
前年から減速も、内需が成長を支え3.2%の成長を維持

ベルギーの2022年の実質GDP成長率は、3.2%とプラス成長を維持した。新型コロナウイルス感染拡大後の回復によって6.3%を記録した前年と比べると、成長率は鈍化した。需要項目別では、民間最終消費支出と政府最終消費支出がそれぞれ前年比4.1%増、3.2%増となり、経済成長をけん引した。一方、国内総固定資本形成は、公共投資(1.3%減)や企業投資(1.4%減)のマイナス成長を受けて0.8%減となった。輸出・輸入はそれぞれ5.1%増、4.9%増となり、輸出の伸びが輸入を上回った。

産業別では、農業、工業(建築業を除く)、建築業、サービス業の全部門で成長幅が縮小した。成長を支えたのはサービス業で、全体では前年の7.3%増から4.3%増と減速したものの、情報・通信は6.8%増、卸売り・小売り(運輸、宿泊・飲食業を含む)は5.7%増、芸術・娯楽は15.6%増を維持した。建設業は前年の1.6%増から0.3%増、工業は前年の1.2%増からマイナスに転じ、0.3%減となった。農業は前年の3.8%減から11.7%減とマイナス幅が拡大した。

表1 ベルギーの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2021年 2022年 2023年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1
実質GDP成長率 6.3 3.2 0.6 0.5 0.3 0.1 0.4
階層レベル2の項目民間最終消費支出 5.5 4.1 △ 0.6 1.1 0.6 0.9 0.6
階層レベル2の項目政府最終消費支出 5.0 3.2 1.5 △ 0.7 0.5 △ 0.1 △ 0.7
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 5.1 △ 0.8 2.1 △ 1.6 △ 0.2 0.3 1.9
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 11.3 5.1 0.5 0.2 1.5 △ 0.6 △ 0.8
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 10.7 4.9 0.1 0.3 1.9 △ 0.5 △ 0.7

〔注〕四半期の伸び率は前期比。季節調整値。
〔出所〕ベルギー国立銀行(NBB)

貿易 
化学工業品などの輸出が拡大するも、貿易赤字は拡大

2022年の貿易全体では、輸出が前年比34.7%増の4,402億1,200万ユーロ、輸入は34.5%増の4,481億ユーロで、ともに前年から拡大した。貿易収支は78億8,800万ユーロの赤字で、貿易赤字は前年から15億5,900万ユーロ拡大した。

輸出を品目別にみると、最大輸出品目の化学工業品(構成比26.5%)が、前年比21.2%増の1,166億6,400万ユーロと好調だった。化学工業品の大半を占める医薬品(16.5%)が引き続き、新型コロナウイルスワクチンの需要を背景に16.5%増と寄与した。前年から品目別2位に浮上した鉱物性生産品(20.5%)は、エネルギー価格の高騰を背景に、輸出額が約3倍に伸びた。この他、輸送用機器(8.4%)、機械および電気・電子機器(8.1%)、金属及び金属加工品(7.1%)もそれぞれ、8.8%増、14.4%増、15.9%増と、輸出全体の伸びに寄与した。

輸出を国・地域別にみると、全体の7割近くを占めるEU(構成比64.8%)は、前年比39.1%増の2,851億5,400万ユーロとなった。最大の輸出相手国であるドイツ(20.2%)や、続くオランダ(14.1%)がそれぞれ59.6%増、54.6%増と拡大した。EU域外で最大の輸出相手国である米国(6.8%)は32.4%増、英国(5.1%)も11.6%増となった。アジア大洋州で最大の輸出相手国である日本(2.1%)は35.5%増、前年に同地域3位だったインド(1.5%)は13.3%増となり、中国を抜き2位に浮上した。前年2位だった中国(1.4%)は、0.2%増とほぼ横ばいだった。

主要国からの輸入が堅調に拡大、鉱物性生産品が最大輸入品目に

輸入を品目別にみると、輸出同様、エネルギー価格の高騰から、鉱物性生産品(構成比25.9%)の輸入額が、前年に比べ約2.4倍に拡大し、主要品目別の構成比で2位から1位に浮上した。化学工業品(22.2%)も、ワクチン需要から医薬品(11.1%)が25.0%増となり、化学工業品全体で21.3%増となった。機械および電気・電子機器(11.4%)、輸送用機器(9.0%)もそれぞれ、17.6%増、10.1%増となり、輸入全体を押し上げた。

輸入を国・地域別にみると、全体の約6割を占めるEU(構成比61.8%)は、前年比21.7%増と拡大した。最大の輸入相手国であるオランダ(20.5%)、続くドイツ(12.5%)、フランス(10.4%)がそれぞれ31.1%増、4.4%増、36.3%増となった。英国(6.3%)は、鉱物性生産品の輸入額が7倍以上増加したことで、全体の輸入額も約3倍に拡大した。欧州以外の国では前年に引き続き、米国(5.3%)が最大の輸入相手国で、中国(3.6%)が続き、それぞれ46.7%増、53.0%増だった。日本(1.9%)は、引き続きアジア大洋州で2位となり、13.3%増だった。

表2 ベルギーの主要品目別輸出入(単位:100万ユーロ、%)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
化学工業品 96,236 116,664 26.5 21.2 81,898 99,353 22.2 21.3
階層レベル2の項目医薬品 62,297 72,570 16.5 16.5 39,826 49,782 11.1 25.0
階層レベル2の項目有機化学品 14,685 17,812 4.0 21.3 27,103 29,470 6.6 8.7
鉱物性生産品 30,042 90,071 20.5 199.8 49,409 116,191 25.9 135.2
階層レベル2の項目鉱物燃料、鉱物油及びその蒸留製品 28,834 88,622 20.1 207.4 46,065 111,964 25.0 143.1
輸送用機器 34,055 37,068 8.4 8.8 36,718 40,415 9.0 10.1
階層レベル2の項目自動車(鉄道用または軌道用除く) 33,038 36,125 8.2 9.3 33,888 38,694 8.6 14.2
機械および電気・電子機器 31,313 35,819 8.1 14.4 43,480 51,153 11.4 17.6
階層レベル2の項目原子炉・ボイラー、機械類、同部品 20,926 23,388 5.3 11.8 24,694 26,754 6.0 8.3
階層レベル2の項目電気機器 10,387 12,431 2.8 19.7 18,792 24,400 5.4 29.8
金属及び金属加工品 27,120 31,433 7.1 15.9 24,649 27,959 6.2 13.4
階層レベル2の項目鉄鋼 13,518 16,499 3.7 22.1 10,059 11,243 2.5 11.8
プラスチック・ゴム、同製品 24,084 27,357 6.2 13.6 15,599 18,867 4.2 20.9
調整食料品、飲料・アルコール、たばこ 19,124 22,251 5.1 16.4 12,746 14,349 3.2 12.6
真珠・貴石・貴金属 18,573 20,650 4.7 11.2 16,750 18,876 4.2 12.7
動物・動物性生産品 7,732 9,428 2.1 21.9 6,909 8,442 1.9 22.2
光学・精密機器 8,720 9,228 2.1 5.8 8,832 9,798 2.2 10.9
繊維、同製品 6,260 9,070 2.1 44.9 6,750 7,961 1.8 17.9
植物性生産品 6,670 7,361 1.7 10.4 9,569 11,391 2.5 19.0
合計(その他含む) 326,709 440,212 100.0 34.7 333,038 448,100 100.0 34.5

〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕ベルギー国立銀行(NBB)

表3 ベルギーの主要国・地域別輸出入(単位100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
自国を除くEU26 204,927 285,154 64.8 39.1 227,711 277,130 61.8 21.7
階層レベル2の項目ユーロ圏 181,436 257,152 58.4 41.7 207,364 253,443 56.6 22.2
階層レベル3の項目ドイツ 55,657 88,803 20.2 59.6 53,564 55,925 12.5 4.4
階層レベル3の項目オランダ 40,295 62,281 14.1 54.6 70,206 92,036 20.5 31.1
階層レベル3の項目フランス 44,919 54,576 12.4 21.5 34,302 46,751 10.4 36.3
階層レベル3の項目イタリア 13,181 16,576 3.8 25.8 14,546 19,499 4.4 34.0
階層レベル3の項目スペイン 8,647 11,176 2.5 29.2 7,046 8,264 1.8 17.3
階層レベル2の項目非ユーロ圏 23,491 28,002 6.4 19.2 20,347 23,688 5.3 16.4
階層レベル3の項目ポーランド 7,977 9,495 2.2 19.0 5,442 6,674 1.5 22.6
階層レベル3の項目スウェーデン 5,203 6,400 1.5 23.0 5,325 5,904 1.3 10.9
階層レベル3の項目チェコ 2,951 3,721 0.8 26.1 3,646 4,213 0.9 15.5
階層レベル3の項目デンマーク 2,406 2,916 0.7 21.2 1,417 1,608 0.4 13.5
英国 20,252 22,603 5.1 11.6 9,438 28,085 6.3 197.6
スイス 4,258 5,310 1.2 24.7 7,057 8,339 1.9 18.2
トルコ 4,393 5,198 1.2 18.3 2,924 3,542 0.8 21.1
ロシア 3,195 2,629 0.6 △ 17.7 6,331 10,571 2.4 67.0
アジア大洋州 31,014 36,471 8.3 17.6 33,237 44,883 10.0 35.0
階層レベル2の項目日本 6,984 9,464 2.1 35.5 7,488 8,482 1.9 13.3
階層レベル2の項目インド 5,832 6,607 1.5 13.3 4,036 5,462 1.2 35.3
階層レベル2の項目中国 6,024 6,035 1.4 0.2 10,563 16,164 3.6 53.0
階層レベル2の項目韓国 2,618 2,899 0.7 10.7 2,263 2,786 0.6 23.1
階層レベル2の項目オーストラリア 2,005 1,787 0.4 △ 10.9 696 1,087 0.2 56.2
北米 26,854 34,691 7.9 29.2 22,080 30,788 6.9 39.4
階層レベル2の項目米国 22,571 29,887 6.8 32.4 16,297 23,900 5.3 46.7
階層レベル2の項目カナダ 3,154 2,869 0.7 △ 9.1 2,665 3,629 0.8 36.2
湾岸協力会議(GCC)諸国 5,608 6,896 1.6 23.0 3,701 9,664 2.2 161.1
階層レベル2の項目アラブ首長国連邦(UAE) 3,238 3,971 0.9 22.6 1,384 1,919 0.4 38.7
アフリカ 11,043 20,776 4.7 88.1 7,205 9,490 2.1 31.7
合計(その他含む) 326,709 440,212 100.0 34.7 333,038 448,100 100.0 34.5

〔注〕 (1)アジア大洋州はASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、マカオおよび台湾を加えた合計値。
北米は、米国、カナダ、メキシコの3 カ国の合計値。
湾岸協力会議(GCC)は、UAE、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアの6 カ国の合計値。
(2)EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕ベルギー国立銀行(NBB)

対内・対外直接投資 
対内直接投資は化学や製薬、情報通信で活発な動き

2022年の直接対内投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は、28億4,300万ユーロの引き揚げ超過となり、前年の97億1,500万ユーロからマイナスに転じた。国・地域別にみると、ルクセンブルクからの投資が67億2,400万ユーロと最も多く、前年の5億1,700万ユーロから拡大した。次いで投資額が多いのはオランダだった。前年に最多の投資額を記録したフランスは、37億5,000万ユーロの引き揚げ超過となった。2022年は化学や製薬、情報通信関連の投資の動きが目立った。日本企業については後述するが、カネカや武田薬品工業が大型の投資を発表した。米製薬大手のファイザーは2022年12月、プールスの同社の製薬工場の設備拡大のため、今後3年間で12億ユーロ超を投資すると発表。また製薬の研究開発を手掛ける米アッヴィは2022年3月、同業のシンデシ・セラピューティクスの買収を完了したと発表した。

情報通信分野では、報道によれば、米IT大手グーグルが2022年10月、新しいデータセンターを建設する可能性を視野に入れ、ブリュッセル南方のフェルイに、約36ヘクタールの土地を購入した。フランスの建設大手で通信事業なども手掛けるブイグは2022年10月、61億ユーロを投じ、建設とファシリティマネジメントを手掛けるエクアンスの全株式取得を完了したと発表した。

環境に配慮した生産や技術への対外直接投資が進む

2022年の対外直接投資は、前年の275億9,700万ユーロから縮小し、223億6,400万ユーロとなった。国・地域別でみると、前年に続きフランス向けが最も多く、51億3,300万ユーロとなった。次いで米国が34億ユーロとなった。

2022年の主な対外直接投資事例をみると、環境配慮型の生産や技術に対する投資が目立った。非鉄金属・化学大手のユミコアは2022年7月、カナダ・オンタリオ州ロイヤリストに、15億カナダ・ドル(約1,605億円、1カナダ・ドル=約107円)を投じ、電気自動車(EV)用バッテリーの正極材(CAM)と、その前駆体材料(pCAM)の生産拠点を建設すると発表した。化学大手ソルベイは2022年11月、同業の米オルビアと共同で、8億5,000万ドルを投じ、リチウム電池などに活用されるポリフッ化ビニリデン(PVDF)製造に向けた合弁事業を設立する契約を締結したと発表した。北米最大の生産拠点を目指すとともに、バッテリーのサプライチェーン強化への貢献を目指すとしている。投資の一部は米国エネルギー省(DOE)からの総額1億7,800万ドルの助成金によって賄われる。食品分野では、ビール大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ傘下のババリアが2023年1月、4億1,300万ドルを投資し、コロンビア北部に新工場を建設すると発表した。高い環境基準を満たす持続可能な工場を目指し、2024年中ごろの稼働を目指す。

表4 ベルギーの国・地域別対内・対外直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 金額 金額
欧州 5,230 △ 8,323 16,244 17,516
階層レベル2の項目EU 9,390 △ 6,984 11,361 13,365
階層レベル3の項目ユーロ圏 8,363 △ 3,431 8,728 9,161
階層レベル4の項目フランス 6,170 △ 3,750 4,896 5,133
階層レベル4の項目イタリア n.a. n.a. 2,095 1,981
階層レベル4の項目ルクセンブルク 517 6,724 △ 1,097 1,793
階層レベル4の項目ドイツ △ 3,275 n.a. 1,869 616
階層レベル4の項目ポルトガル n.a. n.a. n.a. 138
階層レベル4の項目オランダ 3,630 6,221 4,375 △ 404
階層レベル4の項目オーストリア n.a. n.a. 147 △ 351
階層レベル3の項目デンマーク 129 n.a. △ 27 252
階層レベル2の項目EU以外 △ 4,160 △ 1,339 4,883 4,151
階層レベル3の項目英国 △ 2,334 278 3,760 1,112
階層レベル3の項目スイス △ 2,162 △ 1,435 612 n.a.
アジア 3,015 1,900 6,019 507
階層レベル2の項目日本 266 2,569 450 195
階層レベル2の項目中国(香港除く) n.a. n.a. 328 △ 432
米州 50 599 5,529 4,093
階層レベル2の項目米国 n.a. n.a. 3,466 3,400
アフリカ 1,933 2,666 △ 270 82
大洋州 △ 430 299 74 166
合計(その他含む) 9,715 △ 2,843 27,597 22,364

〔出所〕ベルギー国立銀行(NBB)

表5-1 ベルギーの主な対内直接投資案件(2022年~2023年1月)[M&A以外]
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
化学 カネカ 日本 2022年8月 50億円 欧州での旺盛な需要に対応するため、ウエステルロー市にある同社工場で、建物の断熱改修や省エネ化を背景に需要増が期待される変成シリコーンポリマーの生産能力拡大を決定したと発表。生産能力を年産1万トン増強し年間4万3,000トンの生産を目指し、2024年6月の稼働を見込む。
化学 カネカ 日本 2023年1月 20億円 リエージュにある同社工場でDNAからタンパク質合成の遺伝情報を写し取り伝えるmRNA(メッセンジャーRNA)の生産能力拡大を決定したと発表。生産能力は現状の約5倍を目指し、2023年末から順次稼働を見込む。mRNAは、新型コロナウイルスワクチンだけでなく、他の感染症ワクチン、遺伝子疾患や、がんなどに対する治療薬への応用が期待されている。
製薬 ファイザー 米国 2022年12月 12億ユーロ超 米製薬大手ファイザーは、同社のプールスの製薬工場に今後3年間で12億ユーロ超の投資を発表。同工場の生産能力向上、冷蔵貯蔵の増強、包装プロセスの拡大を行う。
製薬 武田薬品工業 日本 2022年9月 3億ユーロ レシーヌにある血漿(けっしょう)分画製剤の製造施設の拡大と二酸化炭素排出量実質ゼロ(ネットゼロカーボン)を実現する倉庫の建設への投資を発表。安定的な成長が見込まれる血漿分画製剤の増産と効率化を目指す。
情報通信 グーグル 米国 2022年10月 非公表 報道によれば、米IT大手グーグルは、新しいデータセンターを建設する可能性を視野に入れ、ブリュッセル南方のフェルイに、約36ヘクタールの土地を購入した。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表5-2 ベルギーの主な対内直接投資案件(2022年)[M&A]
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
建設 エクアンス ブイグ フランス 2022年10月 61億ユーロ フランスの建設大手で通信事業なども手掛けるブイグは、建設とファイシリティマネジメントを手掛けるエクアンスの全株式取得が完了したと発表。
人材 アッカ・テクノロジーズ アデコグループ スイス 2022年5月 15億ユーロ スイスの総合人材サービス、アデコグループは、ハイテクエンジニアリングのコンサルティングサービスを提供するアッカ・テクノロジーズの完全子会社化が完了したと発表。アデコは傘下のモディスを通じて同社を取得する意向を2021年7月に発表していた。
製薬 シンデシ・セラピューティクス アッヴィ 米国 2022年3月 1億3,000万ドル 製薬の研究開発を手掛けるアッヴィは、同業のシンデシ・セラピューティクスの買収完了を発表。
製薬 ADxニューロサイエンシズ 富士レビオ・ホールディングス 日本 2022年6月 4,000万ユーロ 富士レビオ・ホールディングスは、検査薬のスタートアップ、ADx ニューロサイエンシズ(本社:ヘント)を買収すると発表。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-1 ベルギーの主な対外直接投資案件(2022年~2023年1月)[M&A以外]
業種 企業名 投資先国 時期 投資額 概要
非鉄金属・化学 ユミコア カナダ 2022年7月 15億カナダ・ドル(約1,605億円、1カナダ・ドル=約107円) ユミコアは、カナダ・オンタリオ州のロイヤリストに電気自動車(EV)電池用の正極材(CAM)と、その前駆体材料(pCAM)の生産拠点を建設すると発表。2023年に着工し、2025年末の稼働を目指す。
化学 ソルベイ 米国 2022年11月 8億5,000万ドル 同業の米オルビアと共同で、リチウム電池などに活用されるポリフッ化ビニリデン(PVDF)製造に向けた合弁事業を設立する契約を締結したと発表。北米最大の生産拠点を目指すとともに、バッテリーのサプライチェーン強化への貢献を目指すとしている。投資総額の一部は米国エネルギー省からの総額1億7,800万ドルの助成金によって賄われる。
飲料 アンハイザー・ブッシュ・インベブ コロンビア 2023年1月 4億1,300万ドル ビール大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ傘下のババリアは、コロンビア北部に新工場を建設すると発表。高い環境基準を満たす持続可能な工場を目指し、2024年中ごろの稼働を目指す。
半導体 メレキシス マレーシア 2023年1月 7,000万ユーロ 半導体メーカーのメレキシスは、マレーシアのクチンにある同社施設の製造能力を2倍にするための増資を行うと発表。出荷や保管、オフィス用の新棟などの新設を含み、今後5年間で7,000万ユーロ相当の投資を行う。
化学 ソルベイ 米国 2022年7月 年間300万ドル以上 ソルベイは、成長する米国の半導体製造市場に対応し、アリゾナ州カサグランデに半導体洗浄用化学製品である過酸化水素を製造する新施設への投資を発表。約25エーカーに及ぶ施設は、最初の生産ラインの建設を2023年に開始し、将来的な需要に応じて拡張していく予定。 同施設では、30人のフルタイムの雇用が創出される他、メンテナンスおよびアップグレード、従業員のトレーニング、税金、地元企業や地域社会への貢献など、年間300万ドル以上の投資を見込む。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-2 ベルギーの主な対外直接投資案件(2022年)[M&A]
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
KBC 金融 ライファイゼンバンク(ブルガリア) ブルガリア 2022年7月 10億900万ユーロ 国内銀行大手KBCは、オーストリアの同業、ライファイゼンバンク・インターナショナル(RBI)から同行のブルガリア事業の買収が完了したと発表。
グループ・ブリュッセル・ランバート 医療診断サービス アフィデア オランダ 2022年7月 10億ユーロ 投資会社グループ・ブリュッセル・ランバート(GBL)は、医療診断サービスを手掛けるアフィデアの過半数の株式を取得する契約を締結したと2022年4月に発表。同年7月に株式取得を完了。
ディエテレン 自動車部品の販売 パーツ・ホールディング・ヨーロッパ フランス 2022年8月 5億7,100万ユーロ 自動車ディーラー大手ディエテレンは、パーツ・ホールディング・ヨーロッパ(PHE)の買収完了を発表。PHEは自動車用スペアパーツを販売しており、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、イタリア、スペインの6カ国に拠点を持つ。
エテックス 建材 ウルサ スペイン 2022年6月 非公開 建材を販売するエテックスは、断熱材の製造販売を手掛けるウルサの買収が完了したと発表。ウルサは、グラスミネラルウールと押出法ポリスチレンフォーム(XPS)の生産拠点を13カ所擁し、20カ国以上で事業を展開している。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

対日関係 
生産能力拡大に向けた日本からの直接投資が拡大

2022年の日本からの直接投資受入額は、25億6,900万ユーロと前年から10倍近くに拡大した。カネカは2022年8月と2023年1月に、ベルギー国内の製造拠点の生産拡大に向け、合計約70億円の投資を発表した。一つは建物の断熱改修や省エネ化を背景に需要増が期待される、変成シリコーンポリマーの生産能力の強化のため、約50億円を投資する。残りの20億円は、新型コロナウイルスワクチンをはじめ、その他の感染症ワクチン、遺伝子疾患、がんなどに対する治療薬への応用が期待されているmRNA(メッセンジャーRNA)の生産能力の拡大に充てる。武田薬品工業は2022年9月、血漿(けっしょう)分画製剤の製造施設の拡大と二酸化炭素排出量実質ゼロ(ネットゼロカーボン)を実現する倉庫の建設に向けて、3億ユーロの投資を発表した。安定的な成長が見込まれる血漿分画製剤の増産と効率化を目指す。2021年8月に実施した、肺気腫(きしゅ)治療薬の生産ライン新設に続く投資となる。また、臨床検査大手H.U.グループホールディングス傘下の富士レビオ・ホールディングスは2022年6月、4,000万ユーロを投じ、神経疾患分野のバイオマーカー開発を行うADxニューロサイエンシズを買収すると発表した。

対日貿易は医薬品の輸出拡大を背景に、貿易黒字に転換

2022年の対日輸出は前年に続き拡大し、35.5%増の94億6,400万ユーロとなった。輸入も84億8,200万ユーロと前年比13.3%増となった。輸出の伸びが輸入を大きく上回り、貿易黒字に転じた。最大の輸出品目である医薬品(構成比76.5%)が42.5%増と大幅に拡大した。結果、化学工業品(81.9%)全体で、42.5%増となった。輸送用機器(3.7%)、機械・電気機器(3.2%)、光学・精密機器(3.1%)もそれぞれ、5.4%増、14.0%増、14.3%増となり、輸出拡大に貢献した。輸入を品目別でみると、最大輸入品目の輸送用機器(66.2%)と、続く機械・電気機器(13.0%)がそれぞれ、13.8%増、0.3%増となった。化学工業品(6.1%)は、2.6%減とわずかに縮小した。

表7 ベルギーの対日主要品目別輸出入[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
化学工業品 5,438 7,748 81.9 42.5 530 516 6.1 △ 2.6
階層レベル2の項目医薬品 5,079 7,239 76.5 42.5 170 147 1.7 △ 13.3
階層レベル2の項目有機化学品 145 234 2.5 62.0 196 187 2.2 △ 4.4
輸送用機器 336 354 3.7 5.4 4,931 5,612 66.2 13.8
階層レベル2の項目自動車 336 353 3.7 5.2 4,930 5,611 66.2 13.8
機械・電気機器 268 305 3.2 14.0 1,096 1,100 13.0 0.3
階層レベル2の項目原子炉、ボイラー等 163 168 1.8 3.2 593 635 7.5 7.0
階層レベル2の項目電気機械・同部品 105 137 1.4 30.8 503 465 5.5 △ 7.5
光学・精密機器 260 297 3.1 14.3 354 422 5.0 19.2
調製食料品、飲料・アルコール、たばこ 185 226 2.4 22.3 9 10 0.1 8.9
階層レベル2の項目ココア・同調整品 65 77 0.8 19.0 0 0 0.0 △ 2.3
金属及び金属加工品 129 145 1.5 12.5 87 124 1.5 42.9
プラスチック・ゴム製品 148 145 1.5 △ 1.8 334 495 5.8 48.3
真珠・貴石・貴金属材料 78 54 0.6 △ 30.4 40 38 0.4 △ 4.2
繊維製品 44 53 0.6 20.7 19 67 0.8 252.6
合計(その他含む) 6,984 9,464 100.0 35.5 7,488 8,482 100.0 13.3

〔出所〕ベルギー国立銀行(NBB)

基礎的経済指標

人口
1,158万人 (2022年1月時点)
面積
3万689平方キロメートル(2022年)
1人当たりGDP
5万114 米ドル (2022年)
(△はマイナス値)
項目 単位 2020年 2021年 2022年
実質GDP成長率 (%) △ 5.4 6.3 3.2
消費者物価上昇率 (%) 0.4 3.2 10.3
失業率 (%) 5.8 6.3 5.6
貿易収支 (100万ユーロ) 6,178 4,016 △ 17,344
経常収支 (100万ユーロ) 5,082 2,159 △ 19,610
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 19,470 28,565 28,023
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ、期末値) 342,624 339,004 292,668
為替レート (1米ドルにつき、ユーロ、期中平均) 0.8755 0.8455 0.9496

注:
実質GDP成長率:2021~2022年は暫定値
貿易収支:財のみ
貿易収支、経常収支:国際収支ベース
出所:
人口、面積:ベルギー連邦政府統計局
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率、貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):ベルギー国立銀行(NBB)