チェコの貿易と投資(世界貿易投資動向シリーズ)

要旨・ポイント

  • 2022年のGDP成長率は2.4%で、民間最終消費支出以外の需要項目が好調でプラスを維持。
  • 貿易は最大シェアの機械類・輸送用機器が輸出入ともに増加し、輸出入額は過去最高額を更新。
  • 対内直接投資額は前年比22.5%増。部門別では小売・卸売が倍増。自動車への投資も好調。
  • 対日貿易は輸出0.4%増、輸入5.1%増で貿易赤字が拡大。
  • 日系企業は環境関連製品の導入・生産拠点の拡大など、引き続き投資を展開。

公開日:2023年9月15日

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マクロ経済 
民間消費減少も、経済成長はプラスを維持

2022年の実質GDP成長率は2.4%と、前年に続きプラス成長を維持した。成長率を需要項目別にみると、企業投資の活性化により国内総固定資本形成が前年比3.0%増となり成長をけん引した。産業別にみると、情報・通信が12.4%増、製造業が7.5%増と伸びが目立った。また、EU統計局(ユーロスタット)によると、2022年のチェコ失業率はEU加盟国で最も低い状況が続いている。一方、エネルギー価格の高騰、高いインフレ率(同年平均15.1%)を反映して、民間最終消費支出は前年の4.1%増から0.7%減とマイナスに転じ、GDP成長率を押し下げた。

2023年第1四半期の実質GDP成長率は0.0%と、テクニカルリセッション入りが確認された前期から横ばいに推移した。2023年は、依然として民間消費支出の低迷が継続することから、チェコ国立銀行(中央銀行)は成長率が0.5%にとどまると予測している。

表1 チェコの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2021年 2022年 2023年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1
実質GDP成長率 3.5 2.4 0.6 0.2 △ 0.2 △ 0.4 0.0
階層レベル2の項目民間最終消費支出 4.1 △ 0.7 △ 1.3 △ 0.8 △ 2.0 △ 1.3 △ 1.8
階層レベル2の項目政府最終消費支出 1.4 0.6 △ 2.1 0.4 0.9 1.4 0.4
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 0.7 3.0 1.2 0.1 △ 0.1 △ 0.4 △ 1.1
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 6.8 7.2 4.2 1.4 4.3 0.6 0.6
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 13.2 6.3 3.6 0.9 2.8 0.6 △ 1.0

〔注〕四半期の伸び率は前期比。季節調整済み。
〔出所〕チェコ統計局

貿易 
輸出入ともに過去最高額を更新

2022年の貿易は、輸出が前年比19.7%増の2,301億4,700万ユーロ、輸入が24.9%増の2,248億4,800万ユーロで、ともに1993年の共和国独立以降の最高額を更新した。貿易収支は52億9,900万ユーロの黒字だったが、黒字額は前年から56.8%減少した。

輸出を品目別にみると、最大の輸出品目である機械類・輸送用機器(構成比55.5%)が前年比19.1%増と好調だった。同品目全体の約3分の1を占める道路走行車(17.6%)が17.5%増、通信・録音機器(8.3%)が41.2%増と大幅に増加したほか、電気機器(10.5%)が19.6%増加し、輸出全体の増加に貢献した。また鉱物性燃料(3.6%)が88.3%増と品目別で最大の伸び率を示したが、これは主として電力輸出が倍増したことによる。

輸出を国・地域別にみると、全体の約8割を占めるEUが前年比21.8%増大した。最大輸出先のドイツ(構成比32.8%)は21.1%増で、通信・録音機器(10.2%)が58.3%増と大幅に増加したほか、同国向けの最大輸出品目である道路走行車(16.0%)が17.1%増、電気機器(12.4%)が22.3%増と堅調な伸びを示した。また電力(3.2%)は3倍に増え、同国が電力の最大輸出先となった。ドイツに次いで輸出額が大きいスロバキア(8.3%)は23.9%増と好調な伸びをみせた。電力(9.1%)の63.1%増、ガス(2.6%)の32.6倍、道路走行車(13.8%)の20.5%増などがけん引した。EU域外では米国(2.5%)が28.2%増と好調な伸びを示した。電気機器(11.3%)、発電機器(6.6%)、一般産業機械・設備(9.9%)がそれぞれ29.1%増、43.0%増、23.3%増と大幅に増加した。一方、ロシア(0.6%)は、同国のウクライナ侵攻に伴うチェコ企業のロシア事業縮小・撤退の影響で、60.3%減と大幅に縮小した。特に前年の最大輸出品目であった道路走行車(8.2%)が82.5%減となった。

表2 チェコの主要品目別輸出入[通関ベース](単位:百万ユーロ 、%)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械類・輸送用機器 107,233 127,758 55.5 19.1 83,472 101,448 45.1 21.5
階層レベル2の項目道路走行車 34,438 40,466 17.6 17.5 15,749 18,406 8.2 16.9
階層レベル2の項目電気機器 20,179 24,142 10.5 19.6 21,105 26,958 12.0 27.7
階層レベル2の項目通信・録音機器 13,576 19,171 8.3 41.2 12,982 19,576 8.7 50.8
階層レベル2の項目事務機器 14,770 16,454 7.1 11.4 13,785 13,788 6.1 0.0
階層レベル2の項目一般産業機械・設備 12,740 14,143 6.1 11.0 8,935 10,038 4.5 12.3
原料別製品 28,407 33,731 14.7 18.7 28,676 34,300 15.3 19.6
階層レベル2の項目金属製品 9,013 10,576 4.6 17.3 6,693 7,679 3.4 14.7
階層レベル2の項目鉄、鉄鋼 5,203 6,151 2.7 18.2 7,998 9,827 4.4 22.9
雑製品 23,487 26,385 11.5 12.3 20,585 24,130 10.7 17.2
階層レベル2の項目専門、科学、検査器具 3,482 4,327 1.9 24.3 3,127 3,655 1.6 16.9
階層レベル2の項目家具 3,831 4,203 1.8 9.7 2,975 3,350 1.5 12.6
階層レベル2の項目玩具、スポーツ用品(SITC3) 3,796 4,085 1.8 7.6 1,866 2,077 0.9 11.3
階層レベル2の項目プラスチック製品(SITC3) 2,897 3,219 1.4 11.1 3,182 3,527 1.6 10.9
階層レベル2の項目衣類・服飾 2,584 2,891 1.3 11.9 3,532 4,278 1.9 21.1
化学製品 14,255 16,729 7.3 17.4 22,175 26,005 11.6 17.3
鉱物性燃料 4,429 8,340 3.6 88.3 10,367 21,275 9.5 105.2
食料品・生きた動物 6,555 8,299 3.6 26.6 8,010 9,817 4.4 22.6
食料に適さない原材料 5,150 5,707 2.5 10.8 4,021 4,585 2.0 14.0
飲料・たばこ 1,297 1,539 0.7 18.7 1,272 1,515 0.7 19.1
動植物性油脂 427 567 0.2 32.8 355 599 0.3 68.6
合計(その他含む) 192,238 230,147 100.0 19.7 179,979 224,848 100.0 24.9

〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕チェコ統計局

表3 チェコの主要国・地域別輸出入[通関ベース](単位:百万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU 154,025 187,653 81.5 21.8 105,378 122,792 54.6 16.5
階層レベル2の項目ユーロ圏 125,017 151,849 66.0 21.5 80,220 92,672 41.2 15.5
階層レベル3の項目ドイツ 62,262 75,378 32.8 21.1 39,712 44,463 19.8 12.0
階層レベル3の項目スロバキア 15,515 19,216 8.3 23.9 8,010 9,363 4.2 16.9
階層レベル3の項目フランス 8,864 10,703 4.7 20.7 5,130 6,151 2.7 19.9
階層レベル3の項目オーストリア 8,575 10,233 4.4 19.3 5,064 6,020 2.7 18.9
階層レベル3の項目イタリア 7,426 9,391 4.1 26.5 7,585 8,616 3.8 13.6
階層レベル3の項目オランダ 7,064 8,364 3.6 18.4 4,625 6,193 2.8 33.9
階層レベル2の項目非ユーロ圏 29,008 35,805 15.6 23.4 25,158 30,120 13.4 19.7
階層レベル3の項目ポーランド 12,964 16,310 7.1 25.8 14,667 17,984 8.0 22.6
階層レベル3の項目ハンガリー 6,341 7,870 3.4 24.1 4,560 5,149 2.3 12.9
階層レベル3の項目スウェーデン 3,235 3,760 1.6 16.2 1,392 1,703 0.8 22.3
階層レベル3の項目ルーマニア 2,900 3,594 1.6 23.9 2,405 2,660 1.2 10.6
英国 7,365 8,197 3.6 11.3 2,775 3,472 1.5 25.1
ロシア 3,650 1,450 0.6 △ 60.3 5,948 10,827 4.8 82.0
アジア大洋州 7,179 7,946 3.5 10.7 46,718 62,027 27.6 32.8
階層レベル2の項目中国 2,538 2,595 1.1 2.2 29,711 42,273 18.8 42.3
階層レベル2の項目日本 1,204 1,208 0.5 0.4 3,600 3,785 1.7 5.1
階層レベル2の項目インド 759 1,027 0.4 35.3 1,030 1,993 0.9 93.4
階層レベル2の項目オーストラリア 512 603 0.3 17.7 122 278 0.1 128.5
階層レベル2の項目韓国 473 526 0.2 11.3 4,248 4,292 1.9 1.0
階層レベル2の項目ASEAN 1,011 1,141 0.5 12.8 6,576 7,716 3.4 17.3
米国 4,553 5,839 2.5 28.2 4,409 5,870 2.6 33.1
中東 4,202 5,653 2.5 34.5 2,574 3,491 1.6 35.6
階層レベル2の項目トルコ 1,992 2,547 1.1 27.8 2,050 2,596 1.2 26.6
アフリカ 2,058 2,072 0.9 0.7 1,631 2,100 0.9 28.7
メキシコ 660 874 0.4 32.5 884 1,032 0.5 16.7
ブラジル 345 412 0.2 19.5 193 264 0.1 37.2
合計(その他含む) 192,238 230,147 100.0 19.7 179,979 224,848 100.0 24.9

〔注〕(1)EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
(2)アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕チェコ統計局

輸入を品目別にみると、最大の輸入品目である機械類・輸送用機器(構成比45.1%)が前年比21.5%増加した。特に通信・録音機器(8.7%)が50.8%増、電気機器(12.0%)が27.7%増と大幅な伸びを記録した。また価格高騰の影響で、ガス(4.2%)と石油・石油製品(3.9%)がそれぞれ3.1倍、56.8%増と大幅に増加した結果、鉱物性燃料(9.5%)が2.1倍となった。

国・地域別では、全体の54.6%を占めるEUが前年比16.5%増大した。最大の輸入元であるドイツ(構成比19.8%)は12.0%増だった。石油・石油製品(5.8%)が2.1倍、最大の輸入品目である道路走行車(13.0%)が14.0%増だったほか、電力(1.9%)が2.8倍と大幅な伸びを示し、輸入額全体を押し上げた。EU域外では、ドイツに次いで輸入額が大きい中国(18.8%)が42.3%増と大幅に増加した。同国からの最大の品目である通信・録音機器(33.7%)の67.5%増、電気機器(17.9%)の75.1%増がけん引した。対中貿易赤字額は前年比46.0%増の396億7,900万ユーロで、依然として2位以下を大きく引き離し最大貿易赤字相手国となっている。ロシア(4.8%)はガス(68.6%)が2.5倍、石油・石油製品(20.3%)が47.6%増と大幅に増加した結果、全体で82.0%増大した。対ロシアの貿易赤字額は4.1倍に増え、第2の貿易赤字相手国となった。

2023年上半期の貿易は、輸出は前年同期比8.7%増と増大傾向を維持したが、輸入は0.7%減とわずかながら減少した。輸出では、最大の輸出品目である道路走行車(構成比20.7%)が27.5%増と大幅に増加した。同品目の最大の輸出先であるドイツが25.5%増、スロバキア、フランスが、それぞれ28.4%増、22.2%増とEU加盟国が順調な伸びを示したほか、英国が37.1%増と伸長した。一方、ロシアは95.2%の大幅減を記録した。また電気機器(11.5%)は22.4%増、一般産業機械・設備(6.7%)は15.3%増、通信・録音機器(7.9%)は10.5%増と堅調だった。輸入では、ガス(1.9%)が52.9%減、鉄鋼(4.1%)が18.3%減、石油・石油製品(3.1%)が20.3%減と落ち込みが目立った。これらは主として2022年上半期に高騰した価格の低下、およびガス需要の減少による。一方、最大の輸入品目である電気機器(13.5%)は19.4%増、続く道路走行車(10.2%)は22.2%増とそれぞれ増大した。

対内・対外直接投資 
対内投資は増大、対外投資は大幅減

中央銀行によると、2022年の対内直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は前年比22.5%増の93億6,900万ユーロだった。業種別にみると、全体の75.0%を占めるサービス業が19.8%増大し、70億2,600万ユーロに達した。特に小売・卸売、自動車修理が2.2倍と大幅な伸びを示した。主な投資案件としては、2022年6月に、食品ネット販売大手のロフリーク・グループが、ベルギー、米国、英国の投資企業グループから2億2,000万ユーロの資金を調達したことなどが挙げられる。また製造業への投資も好調で、2.9倍の34億3,500万ユーロとなり、うち最大は自動車向けで18億8,600万ユーロとなった。同部門ではフォルクスワーゲングループ(ドイツ)のチェコ子会社シュコダ・オートが1億3,000万ユーロを投じて、電気自動車(EV)用バッテリーシステムの製造を2022年5月に開始した。

対内投資を国・地域別にみると、全体の約7割を占めるEUからの投資は前年の70億4,200万ユーロから65億5,300万ユーロに減少した。EU域内の最大の投資元はルクセンブルクで、投資額は16億7,200万ユーロだった。同国からの投資案件としては、2022年12月に完了した投資会社キューブ・インフラストラクチュアによる、熱供給大手MVVエネルギエCZの買収が挙げられる(投資額は非公表)。この他にEU域内で投資額が10億ユーロを超えた国は、11億8,500万ユーロのドイツと、10億7,300万ユーロのオランダの2カ国だった。オランダの投資案件としては、チェコで設立後に本社をオランダに移転したPPFグループが2022年4月に発表した、チェコ国内での住宅造成案件(投資額40億コルナ)がある。EU域外では、米国の投資額が17億1,800万ユーロで、前年の引き揚げ超過から大幅に増加した。同国の投資案件としては、2022年6月に完了した投資会社ベインキャピタルによる、チェコのソフトウエア開発企業アタカマ・ソフトウエアへの1億5,000万ドルの投資などが挙げられる。

表4 チェコの業種別対内・対外直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:百万ユーロ、%)(△はマイナス値)
業種 対内直接投資 対外直接投資
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 伸び率 金額 金額 伸び率
サービス業 5,863 7,026 19.8 6,057 2,674 △ 55.9
階層レベル2の項目小売・卸売、自動車修理 1,314 2,829 115.3 250 621 148.8
階層レベル2の項目金融・保険 2,208 1,737 △ 21.3 4,326 1,643 △ 62.0
階層レベル2の項目不動産 677 856 26.5 483 165 △ 65.9
階層レベル2の項目情報・通信 581 717 23.5 1,022 △ 74
階層レベル2の項目専門・科学・技術 599 429 △ 28.3 △ 9 92
階層レベル2の項目管理・支援 163 368 126.1 △ 106 23
階層レベル2の項目宿泊・飲食サービス △ 61.4 △ 90 3 23 803.7
製造業 1,196 3,435 187.2 526 100 △ 81.0
階層レベル2の項目自動車 △ 264 1,886 254 △ 50
階層レベル2の項目石油、化学、医薬品、ゴム、プラスチック製品 834 969 16.2 112 △ 75
階層レベル2の項目卑金属、金属製品 678 825 21.6 70 △ 5
階層レベル2の項目コンピューター、電子・光学製品 △ 630 159 △ 4 1
階層レベル2の項目食品、飲料、タバコ製品 25 △ 170 84 92 9.1
階層レベル2の項目自動車以外の輸送機器 4 △ 366 11 36 227.5
建設 62 302 385.5 △ 675 1
上下水道、廃棄物管理 24 61 150.6 16 △ 1
農林水産業 38 15 △ 60.7 20 0 △ 99.9
鉱業 △ 130 △ 24 5 0 △ 96.1
電気・ガス等供給 △ 218 △ 1,341 564 △ 411
合計(その他含む) 7,651 9,369 22.5 6,538 2,352 △ 64.0

〔注〕2022年は暫定値。
〔出所〕 チェコ国立銀行

表5 チェコの国・地域別対内・対外直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:百万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 伸び率 金額 金額 伸び率
EU 7,042 6,553 △ 6.9 4,141 2,946 △ 28.8
階層レベル2の項目ユーロ圏 5,829 6,403 9.8 4,793 2,825 △ 41.1
階層レベル3の項目ルクセンブルク 1,823 1,672 △ 8.2 1,892 1,304 △ 31.0
階層レベル3の項目ドイツ 345 1,185 244.0 512 271 △ 47.1
階層レベル3の項目オランダ 863 1,073 24.3 1,653 87 △ 94.7
階層レベル3の項目ベルギー 562 614 9.2 16 △ 27
階層レベル3の項目キプロス 651 612 △ 6.0 857 465 △ 45.7
階層レベル3の項目イタリア △ 15 431 732 383 △ 47.7
階層レベル3の項目フランス 82 394 380.0 △ 76 △ 234
階層レベル3の項目スロバキア 907 218 △ 76.0 △ 774 512
階層レベル3の項目オーストリア 809 174 △ 78.4 6 18 193.4
階層レベル3の項目スペイン △ 129 △ 110 △ 56 9
階層レベル2の項目非ユーロ圏 1,212 150 △ 87.6 △ 652 122
階層レベル3の項目スウェーデン 365 285 △ 21.8 12 △ 15
階層レベル3の項目ハンガリー △ 5 230 127 30 △ 76.2
階層レベル3の項目ポーランド 426 △ 317 △ 178 △ 98
英国 △ 211 2 1,013 △ 1,175
スイス 275 855 210.6 447 609 36.2
ロシア △ 209 △ 217 144 △ 34
ウクライナ 5 19 261.5 △ 192 56
米国 △ 48 1,718 753 146 △ 80.6
韓国 625 305 △ 51.2 n.a. n..a.
中国 214 136 △ 36.6 △ 18 △ 51
香港 △ 54 66 △ 3 13
中南米 △ 11 10 132 18 △ 86.3
階層レベル2の項目ブラジル △ 6 △ 11 6 △ 5
階層レベル2の項目メキシコ △ 8 45 97 7 △ 92.9
アフリカ 91 1 △ 98.8 14 38 167.4
インド △ 7 △ 3 240 △ 10
日本 22 △ 71 0 △ 23
台湾 △ 274 △ 96 0 n.a.
合計(その他含む) 7,651 9,369 22.5 6,538 2,352 △ 64.0

〔注〕2022年は暫定値。
〔出所〕 チェコ国立銀行

2022年の対外直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は23億5,200万ユーロで、前年の65億3,800万ユーロから64.0%減と大きく後退した。業種別にみると、金融・保険が前年の43億2,600万ユーロから62.0%減少し16億4,300万ユーロだった。同部門では保険会社レノミアが2022年3月に、ポーランド同業のアルファ・ブローカーズの過半数株式を取得することを発表した(投資額非公表)。また、製造業への投資も81.0%減少し、1億ユーロにとどまった。

対外投資を国・地域別にみると、EU域内への投資は前年比28.8%減の29億4,600万ユーロだった。最大の投資先は前年同様ルクセンブルクで、投資額は13億400万ユーロだった。以下、スロバキアが5億1,200万ユーロ、キプロスが4億6,500万ユーロと続いた。EU域外の最大の投資先はスイスで6億900万ユーロだった。続いて米国への投資額は1億4,600万ユーロだった。同国への投資例としては、2022年6月に世界最大手のレコード製造GZメディアが、テネシー州ナッシュビルに開設した北米第3の製造拠点で生産を開始した130万ドル超の案件、およびチェコ投資会社KKCGグループがウェスト・バージニア州に開設したメタノール工場で、2023年4月に生産を開始した案件などが挙げられる(投資額非公表)。

表6-1 チェコの主な対内直接投資案件(2022年~2023年5月)[M&A以外]
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
不動産 PPFリアル・エステート・ホールディング オランダ 2022年4月 40億コルナ チェコのディベロッパー、カルリーン・グループと提携して、チェコ国内の住宅造成プロジェクトに着手すると発表。
家電 パナソニック 日本 2022年9月 200億円(2025年まで) チェコ事業所においてヒートポンプ式温水暖房機の生産を拡大すると発表。2025年までに年産50万台規模の体制を目指す。
自動車 フォルクスワーゲングループ ドイツ 2022年5月 1億3,000万ユーロ グループの100%子会社、シュコダ・オートの本社工場(ムラダー・ボレスラフ、中央ボヘミア)で電気自動車(EV)用バッテリーシステムの製造を開始した。
眼鏡 フィールマン・グループ ドイツ 2022年8月 6,500万
ユーロ
ホムトフ(北ボヘミア)に眼鏡製造ハイテク工場およびフルフィルメントセンターを建設すると発表。2024年に稼働予定。
軸受
(ベアリング)
大同メタル工業 日本 2023年5月 60億円 大同メタルチェコ(ブルノ市)敷地内に洋上風力発電機用主軸受の生産工場を設立すると発表。2023年4月に着工した。2025年に生産開始予定。
繊維 東レ 日本 2022年9月 非公表 チェコ既存製造拠点に自動車用極細吸音材の生産設備を新設し、10月より量産を開始すると発表。
印刷・包装材 凸版印刷 日本 2023年3月 非公表 透明バリアフィルムの生産工場を新たに設立し、2024年末に稼働を開始すると発表。

〔出所〕 各社発表から作成

表6-2 チェコの主な対内直接投資案件(2022年)[M&A]
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
食品ネット販売 ロフリーク・グループ ソフィナ、
インデックス・ベンチャーズ 他
ベルギー、米国、英国 2022年6月 2億2,000万ユーロ ロフリーク・グループは、未公開株の売却により、新たな投資会社ソフィナを中心とする複数の投資会社(現株主のインデックス・ベンチャーズなど)より資金を調達したと発表。
ホテル管理システム ミュース・システムズ キンネビク 他 スウェーデン、米国、フランス 他 2022年12月 1億8,500万
ドル
ホテル管理向けクラウドサービスを提供するミュース・システムズは、未公開株の売却により、キンビネクを中心とする投資会社より資金を調達したと発表。
ソフトウエア開発 アタカマ・ソフトウエア ベインキャピタル 米国 2022年6月 1億5,000万
ドル
未公開株の売却により、米国のベインキャピタルより資金調達を完了したと発表。
エネルギー MVV エネルギエ CZ キューブ・インフラストラクチュア ルクセンブルグ 2022年12月 非公表 チェコ国内15都市で暖房用の熱を供給する同部門大手MVVの買収を完了したと発表。

〔出所〕 各社発表から作成

表7-1 チェコの主な対外直接投資案件(2022年~2023年4月)[M&A以外]
業種 企業名 投資先国 時期 投資額 概要
不動産 アコラデ・ホールディング ポーランド 2022年1月 6,000万ユーロ超 ポーランド西部スレフフに7万6,000平方メートルの工業団地を建設すると発表。
レコード製造 GZメディア 米国 2022年6月 130万ドル超 世界最大のレコード生産会社GZメディアが北米3カ所目の生産拠点をテネシー州ナッシュビルに開設したと発表。255名の新規雇用を見込む。
エネルギー エネルゲティツキー・ア・プルーミスロビー・ホールディング(EPH)、PPF ドイツ 2022年9月 非公表 EPH、PPFが50%ずつ所有するドイツのLEAG社が、2030年までにドイツ東部・ラウジッツに国内最大規模の再生可能エネルギーセンターを設立する計画を発表。
化学 KKCGグループ 米国 2023年4月 非公表 KKCGグループとUSメタノールLLCが、ウェスト・バージニア州に開設したメタノール工場で生産を開始したと発表。

〔出所〕 各社発表から作成

表7-2 チェコの主な対外直接投資案件(2022年~2023年3月)[M&A]
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
トリゲア・リアル・エステート・ファンド 不動産 エコ・インベストメント ポーランド 2023年3月 約4,500万
ユーロ
ワルシャワのオフィスビル建設プロジェクトを買収したと発表。
レノミア 保険 アルファ・ブローカーズ ポーランド 2022年3月 非公表 チェコ最大の保険会社レノミアがポーランドの同業アルファ・ブローカーズの過半数株式を取得することを発表。

〔出所〕 各社発表から作成

対日関係 
対日貿易赤字額は2009年以降で最大

2022年の対日輸出は前年比0.4%増の12億800万ユーロ、輸入は5.1%増の37億8,500万ユーロで、貿易赤字額は7.5%増の25億7,600万ユーロに拡大し、2009年以降で最大となった。日本は中国、ロシア、韓国に次ぐ第4の貿易赤字相手国となっている。

対日輸出を品目別にみると、最大の輸出品目である金のくず(構成比43.1%)は前年比15.1%減少したが、その他はほぼ全ての品目が前年度を上回る結果となった。機械類・輸送用機器(26.8%)が16.9%増と堅調な伸びを示し、特に事務機器(6.5%)が68.9%増、通信・録音機器(7.0%)が35.8%増と大幅に増大した。なお、ビールの原料であるホップ(1.0%)は36.5%増加し、日本はドイツを抜いて、中国に次ぐ第2の輸出相手国となった。

表8-1 チェコの対日主要品目別輸出(FOB) [通関ベース](単位:百万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
他に分類されない品目 614 521 43.2 △ 15.1
階層レベル2の項目金のくず(金を使った金属のくずを含む) (SITC5) 614 521 43.1 △ 15.1
機械類・輸送用機器 278 324 26.8 16.9
階層レベル2の項目通信・録音機器 63 85 7.0 35.8
階層レベル2の項目事務機器 47 79 6.5 68.9
階層レベル2の項目一般産業機械・設備 80 72 5.9 △ 10.0
階層レベル2の項目電気機器 43 41 3.4 △ 2.8
雑製品 110 124 10.3 13.1
階層レベル2の項目専門、科学、検査器具 71 78 6.5 10.4
化学製品 66 72 6.0 10.1
原料別製品 54 59 4.9 8.9
階層レベル2の項目鉄、鉄鋼 21 27 2.3 30.0
食料品・生きた動物 40 51 4.2 29.4
階層レベル2の項目動物用飼料 21 29 2.4 34.9
階層レベル2の項目野菜、果物 9 12 1.0 36.6
階層レベル2の項目ホップ(SITC5) 9 12 1.0 36.5
食料に適さない原料 42 51 4.2 21.9
飲料・タバコ 1 5 0.4 352.9
合計(その他含む) 1,204 1,208 100.0 0.4

〔出所〕 チェコ統計局

表8-2 チェコの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:百万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
機械類・輸送用機器 2,174 2,464 65.1 13.3
階層レベル2の項目電気機器 599 821 21.7 37.1
階層レベル2の項目道路走行車 597 495 13.1 △ 17.0
階層レベル2の項目発電機器 248 306 8.1 23.3
階層レベル2の項目一般産業機械・設備 252 286 7.6 13.6
階層レベル2の項目事務機器 205 272 7.2 32.5
雑製品 471 522 13.8 10.8
階層レベル2の項目専門、科学、検査器具 204 236 6.2 15.8
階層レベル2の項目楽器(SITC3) 80 92 2.4 14.4
化学製品 675 486 12.8 △ 28.1
階層レベル2の項目化学物質、製品
(「担体付き触媒 貴金属またはその化合物を使用したもの」を含む)
531 179 4.7 △ 66.2
階層レベル2の項目無機化学薬品 3 142 3.8 4139.9
原料別製品 262 288 7.6 9.9
階層レベル2の項目金属製品 112 102 2.7 △ 9.3
食料に適さない原料 10 12 3.2 16.4
階層レベル2の項目生ゴム(合成ゴム及び再生ゴムを含む) 9 11 0.3 15.9
鉱物性燃料 2 6 0.2 269.7
食料品・生きた動物 3 4 0.1 33.7
合計(その他含む) 3,600 3,785 100 5.1

〔出所〕 チェコ統計局

対日輸入を品目別にみると、全体の65.1%を占める機械類・輸送用機器が前年比13.3%増大した。特に電気機器(21.7%)が37.1%増と大幅に増大したが、これは蓄電池(2.4%)が5.2倍に増えたことなどによる。また事務機器(7.2%)は32.5%増、発電機器(8.1%)は23.3%増、一般産業機械・設備(7.6%)は13.6%増、といずれも2桁の伸びを示した。一方、乗用車(6.7%)が26.1%減少した影響で、道路走行車(13.1%)は17.0%減少した。

日系企業の投資は、環境関連製品の導入・生産拠点の拡大が中心

2022年の日本からチェコへの投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は7,100万ユーロの引き揚げ超過となり、2012年以来10年ぶりにマイナスを記録した。日系企業の個別案件をみると、2022年9月にパナソニックが現地法人パナソニックAVCネットワークス チェコ(2023年4月にパナソニック・ヒーティング&ベンティレーション・エア・コンディショニングに社名変更)がヒートポンプ式温水暖房機の生産拡大計画を発表した。2025年までに200億円を投じて、従来の室内機に加えて室外機の生産も開始する。同月には東レもチェコの生産拠点に自動車用極細吸音材の生産設備を新設することを発表し、2022年10月に量産を開始した(投資額非公表)。さらにスタンレー電気が株式37.5%を保有するルマックス・インダストリーズ(インド)は、2022年9月に同社チェコ法人を介して、インド市場向け自動車用照明の技術開発を目的としたテクニカルセンターを開設した(投資額非公表)。

2023年3月には凸版印刷が透明バリアフィルムの生産工場を設立し、2024年末から稼働すると発表した(投資額非公表)。さらに同年5月に大同メタル工業が60億円を投じて、現在、主に自動車向けの軸受を生産している既存製造拠点の敷地内で、欧州向け洋上風力発電機用主軸受の生産工場の建設を開始したと発表した。2025年に生産開始を目指すとしている。

基礎的経済指標

人口
1,053万人 (2022年12月)
面積
7万8,871平方キロメートル(2022年)
1人当たりGDP
2万7,613米ドル (2022年)
(△はマイナス値)
項目 単位 2020年 2021年 2022年
実質GDP成長率 (%) △ 5.5 3.5 2.4
消費者物価上昇率 (%) 3.2 3.8 15.1
失業率 (%) 3.5 3.8 3.4
貿易収支 (100万ユーロ) 10,618 2,616 △ 4,043
経常収支 (100万ユーロ) 4,394 △ 6,639 △ 16,914
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 165,549 172,999 139,284
対外債務残高(グロス) (100万米ドル、期末値) 202,047 205,850 196,923
為替レート ( 1 米ドルにつき、チェコ・コルナ、期中平均) 23.21 21.68 23.36

注:
人口、1人当たりGDP:暫定値
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
経常収支:国際収支ベース
出所:
人口、 面積、 実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:チェコ統計局
1人当たりGDP:IMF「世界経済見通し(2023年4月)」
外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):チェコ国立銀行