外資に関する規制

最終更新日:2023年07月19日

規制業種・禁止業種

勅令第664号(1999年4月23日付)により、外国投資はこれまで、原則として自由化されていたが、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、外国投資の一部が2020年3月より制限され、戦略的業種に該当する企業のEUおよび欧州自由貿易連合(EFTA)域外からの買収にあたっては、管轄省庁からの事前認可が必要となっている。

ジェトロ:対内外投資に関する勅令第664/1999号 仮訳PDFファイル(306KB) 

投資の自由化により、投資手続きは原則として事後届出(実施後30日以内)のみとなった。

  1. 通常届出
    投資を行った非居住者が行う。
  2. 特別届出
    1. 通常の証券投資により、投資サービス会社・信用金庫・その他金融機関などが証券の購入、譲渡、保有や管理を行った場合は、投資の届出が必要。
      関連法令:証券取引法〔立法勅令4/2015号-2015年10月22日付〕
    2. 流通していない証券への投資の場合、証券を保管・管理する機関が届出を行わなければならないが、その他の企業・証券会社・信用金庫が当該投資を仲介した場合は、仲介企業が届出を行う。
    3. 記名株への投資の場合、投資を行う個人または企業、あるいはその代理人が届出を行う。
    4. 投資信託の場合は、投資の諸手続きを行った機関・企業が届出を行う。

事前届出および事後届出が必要な場合

タックス・ヘイブン国・地域からの投資には事前届出および事後届出が必要となるが、次の場合は事前届出が不要となる。なお、タックス・ヘイブン国・地域は、勅令1080/1991号(1991年7月5日付)で規定されている。

  • 通常の証券投資、および証券取引委員会(CNMV)に登録された投資信託への投資
  • 外資比率の合計が、資本金の50%を超えない場合
  1. 届出先
    産業・商業・観光省 貿易投資局(Direccion General de Comercio e Inversiones, Secretaria de Estado de Comercio, Ministerio de Industria, Comercio y Turismo
    所在地:Paseo de la Castellana, 162, 28046 Madrid.

    ※外国投資に関する質問・手続きなどの問い合わせ先
    Tel:+34-91-258-2852
    E-mail:invextran@mincotur.es

  2. 届出の手続き(2001年5月28日付で公布された経済省省令の新施行細則に従う)

    通常の事後届出手続きの場合は、次のとおり。

    1. 投資が行われてから30日以内に行う。
    2. 提出文書
      1. 現行の指定届出用紙
      2. 投資を行った者が非居住者であることの証明書
      3. 投資の主要な特徴を記した書類(必ず投資の額面価額および実質価額を記入)
      4. 投資が行われたスペイン企業や在スペイン支店の納税番号証(CIF)のコピー
      5. 事前許可書(事前許可が必要な案件の場合)

その他関連法令:マネーロンダリング・テロ資金予防法10/2010、およびその施行細則(勅令304/2014)、改正証券取引法6/2007、上場企業の透明性に関する勅令1362/2007、資本移動、外国取引およびマネーロンダリング防止に関する法19/2003、2001年5月28日付経済省令(Orden 28 de mayo de 2001)、2001年5月31日付貿易投資局訓令(Resolucion 31 de mayo de 2001
これらの法令によって法人の所有者・名義の特定が強化された。

その他

  1. 証券取引委員会への連絡
    外国投資家は、在スペイン上場企業の株式保有率(議決権付)に変更が生じた場合、証券取引委員会および当該企業に対し、その旨の通知が義務付けられている。
    関連法令:勅令1362/2007
  2. 外資が保有するスペイン企業と在スペイン支店は、産業・商業・観光省 貿易投資局外国投資部に対し、投資推移に関する年次報告書を提出しなければならない。

投資規制

ジェトロ:投資規制PDFファイル(215KB)

  1. 規制業種
    産業・商業・観光省 貿易投資局による規制は廃止されたが、業種監督官庁が別途定める制度により規制が設けられている。
    該当業種:航空輸送、テレビ・ラジオ放送、鉱物・鉱物性資源・鉱脈権、ギャンブル、通信、警備保障、民間使途の武器・弾薬・爆薬等の製造・販売や流通・販売、国防関連業種
  2. 国防関連業種
    国防と直接関連する業種(武器・弾薬・爆薬、軍需品の製造・流通)への投資は、国防省担当局の事前許可の申請が必要。許可の可否は、外国投資委員会の報告書に基づき、内閣が決定する。なお、産業・商業・観光省 貿易投資局への申請は不要。
  3. 新型コロナウイルス感染拡大を受けた事前審査制度

    EUおよび欧州自由貿易連合(EFTA)域外の外国企業(外資比率が25%以上のEUおよびEFTA域内の企業も含む)が、主に以下の業種・種類のスペイン企業について10%以上の株式取得を行う場合、政府の事前承認を得ることが無期限に義務付けられている。

    1. 重要インフラ(エネルギー、輸送、水、医療、通信・メディア、データ処理・保管、航空宇宙、国防、選挙、金融など)
    2. 重要技術および軍民両用技術(通信、人工知能(AI)、ロボット、半導体、サイバーセキュリティ、航空宇宙、防衛、エネルギー貯蔵、量子・原子力、ナノ/バイオテクノロジー、先端材料、先端製造システムなど)。
    3. エネルギーや戦略的情報通信サービス、原材料、食料などの安定供給
    4. 機密情報・個人情報管理
    5. その他、[Ⅰ]外国投資が直接・間接的に第三国の公的機関、防衛当局に支配されている場合、[Ⅱ]別のEU加盟国の安全保障、公序良俗、公衆衛生に影響を与える分野、[Ⅲ]スペインの安全保障、公序良俗、公衆衛生にリスクがある場合。

    また2020年11月より(勅令法34/2020)、EUおよびEFTA域内の企業による、スペインの上場企業の株式10%以上の取得、または非上場企業への5億ユーロ超の投資についても、その業種を問わず、事前承認を取得することが義務付けられている(ただし、この措置は、2024年12月31日までの時限的適用)。

    関連法令:勅令法8/2020外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます勅令法34/2020外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます法19/2003外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(Agencia Estatal Boletín Oficial del Estadoウェブサイト)

出資比率

業種によっては、外資比率を制限するなどの規制がある。

  1. 規制業種
    例:情報通信分野への投資
    EU加盟国からの投資は制約を受けないが、EU域外国からの投資には、原則として外資比率が制限されている。
    その他業種については、各現行規制を確認する必要がある。
  2. 原則として規制はないが、出資比率によって、事前許可申請や届出等の義務が生じるのは、次の場合である。
    1. タックス・ヘイブン国・地域からの投資で、外資比率の合計が資本金の50%超の場合は、事前届出が必要。
    2. 国防関連業種では、上場企業への投資の場合、外国投資家の出資比率が資本金の5%を超えるか、それ以下でも経営に影響を及ぼし得る場合は、事前許可の申請が義務付けられる。

規制業種・禁止業種」の項を参照。

外国企業の土地所有の可否

規制はない。ただし、300万5,060.52ユーロ超の不動産投資などについては、原則として産業・商業・観光省 貿易投資局への事前と事後の届出が必要。外資比率が20%に満たない場合など、届出が不要になる場合もある。

産業・商業・観光省 貿易投資局への届出が必要な不動産投資は、次のとおり。

  • スペイン国内で計300万5,060.52ユーロを超える不動産購入
  • タックス・ヘイブン国・地域からの、すべての不動産投資

規制業種・禁止業種」の項を参照。

資本金に関する規制

資本金の額については、原則として自由。スペイン国内への投資は、貿易投資局への事後の届出を要する。上場企業への参入には、勅令1362/2007(EU透明性指令のスペイン国内法)を順守しなければならない。

その他規制

一般的に、スペイン国内市場向け製品については、国産化率が問題にされることはない。また、輸出を義務付ける法令はない。