税制

最終更新日:2023年07月19日

法人税

法人税率は25%。

法人税率は25%(業種によって特別税率があり、一般金融機関は30%)。外資のみを対象とした軽減税率などはない。
課税対象所得には、キャピタル・ゲイン、受取配当金、受取利子が含まれる。

    1. 新規設立企業や小規模零細企業向け軽減税率
      新規設立企業を対象として、設立後、初めて利益を計上する年度を含む2カ年度にわたり、軽減税率15%を適用する減税措置がある。また、2023年より、前年度の売上高が100万ユーロ未満の法人に軽減税率23%が適用される。ただし、ここでの法人税軽減税率は、企業グループに属する事業体には適用されないため、日系企業のスペイン子会社には適用できない場合が多い。
    2. 外形標準課税の導入

      2022年度より[i]前年度の年間売上高が2,000万ユーロ以上、または[ii]連結納税制度を利用する場合(売上高に関わらず)、元の課税標準額に対して15%の最低税率が導入された。
      これにより、以下をはじめとする税制優遇措置が制限を受ける。

      • 研究・開発・イノベーション税額
      • 映画制作などの税額控除
      • 新規雇用創出

これらの制限により控除できなかった分の残高は、次年度以降に控除できる。この最低税額は、当該税額控除に影響を与える一方、分割納税には影響しない。

  1. 特別税率
    0%(年金基金)、1%(不動産投資会社・団体・基金など)、10%(特定の基金など)、20%(協同組合)、25%(相互保険会社、労災共済保険組合、信用協同組合・地方貯蓄協同組合など)、30%(炭化水素分野の調査・採掘活動に従事する団体など。ただし、精製業など一部の業種は25%)
  2. 金融費用の控除制限
    1. 2012年より、グループ会社間の株式購入、または資本金・自己資本の出資を実行するためのグループ内金融費用について控除を受けるためには、当該融資に関する経済的理由が必要となった。
    2. 純金融費用控除額は営業利益額(特定の株式から生じる配当金を加算した額)の30%に制限されている。
      営業利益額とは無関係に、最低純金融費用100万ユーロが認められる。これを超える費用については無期限で繰延べ相殺でき、また費用が限度額以下の場合、限度額との差額を、5年間、限度枠として加算することができる。
    3. 2024年より、配当や株式譲渡による所得、海外の恒久的施設からの所得などの非課税所得については、この金融費用の控除限度額の計算から除外できる。
  3. 内部留保の積立て強化による課税所得の減額
    企業の財務体質強化を促進するための優遇策。純資産の充実のために、当期利益を積み立てた(5年間の維持が条件)企業は、積立額の10%が課税所得から減額される。ただし、減税額は、課税所得額の10%相当額が上限とされている。

二国間租税条約

2021年5月より日西新租税条約が発効。2022年度(暦年)より、出資比率が10%以上、かつ12カ月以上継続して株式を保有した場合、配当に対する源泉税率は免税、それ以外の配当の場合は5%または10%。ロイヤルティーに対する源泉税率や利子に対する源泉税率は免税。

出所:国税庁(源泉所得税の改正のあらまし外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(198KB)

  1. スペインと二重課税防止条約を締結している国
    アイスランド、アイルランド、アゼルバイジャン、アラブ首長国連邦、アルジェリア、アルゼンチン、アルバニア、アルメニア、アンドラ、イスラエル、イタリア、イラン、インド、インドネシア、ウクライナ、ウズベキスタン、ウルグアイ、英国、エクアドル、エジプト、エストニア、エルサルバドル、オーストラリア、オーストリア、オマーン、オランダ、カザフスタン、カタール、カナダ、カボベルデ、韓国、キプロス、キューバ、ギリシャ、キルギス、クウェート、ジョージア、クロアチア、コスタリカ、コロンビア、サウジアラビア、ジャマイカ、シンガポール、スイス、スウェーデン、スロバキア、スロベニア、セネガル、セルビア、タイ、タジキスタン、チェコ、中国、チュニジア、チリ、デンマーク、ドイツ、ドミニカ共和国、トリニダード・トバゴ、トルクメニスタン、トルコ、ナイジェリア、日本、ニュージーランド、ノルウェー、パキスタン、パナマ、バルバドス、ハンガリー、東ティモール、フィリピン、フィンランド、ブラジル、フランス、ブルガリア、米国、ベトナム、ベネズエラ、ベラルーシ、ペルー、ベルギー、ポーランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ボリビア、ポルトガル、北マケドニア(旧マケドニア)、マルタ、マレーシア、南アフリカ共和国、メキシコ、モルドバ、モロッコ、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、ルクセンブルク、ロシア
  2. 二重課税防止条約締結の合意には至っているが、最終署名がされていない国
    シリア、ナミビア、バーレーン、モンテネグロ、パラグアイ

出所:財務・公共省(Convenios de Doble Imposición (01-06-2023)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

その他税制

スペインの持株会社または法人が、国外の子会社から受けた配当所得について、2021年から非課税枠は95%までとなった。この持株会社特別税制を適用し、受取配当金をさらに国外へ配当した場合は、源泉非課税。

スペイン持株会社/他のEU諸国より有利な税制

スペインに持株会社を設置し、国外の子会社(日本本社から見れば孫会社)より配当を受けた場合には、次のような税務上の優遇措置を受けられるため、他の欧州諸国と比較し、大きな節税が可能である。
また、既存の現地法人がある場合、従来業務を継続しつつ、同時に持株会社としての認可も受けられるため、新たに持株会社を新設する必要がない。

国外からの受取配当金やキャピタル・ゲインは、2021年より非課税枠が95%に制限された。課税枠5%のみに法人所得税率25%が適用され、実質税率は1.25%となる。
当該受取配当金を、さらに現地法人の親会社(日本)へ配当する場合は、源泉非課税扱い。
つまり、スペイン持株会社を利用することにより、スペイン経由で、スペイン以外の第三国からの配当やキャピタル・ゲインを日本に1.25%の課税で還流できる。
ただし、こうした税務上の特典を受けるには、次の条件を満たしている必要がある。

  1. 会社の目的が、主にスペイン非居住法人(子会社)の株式管理であること(同持株会社自体が、課税所得となる営利活動を行っているか否かは問わない)。
  2. 国外子会社への最低出資比率(直接・間接)が5%、あるいは出資額が2,000万ユーロ以上であること。
  3. 持ち株の最低保有期間は1年。受取配当受領後に、この要件を満たすことでも可。
  4. スペイン持株会社に、持株を管理する物理的組織、および担当従業員(兼務可)が存在すること。
  5. 子会社の所在国において、当該子会社が法人税もしくは法人税に相当する税額を課税所得に対して10%以上納付していること。
    タックス・ヘイブン国・地域などに所在する子会社からの配当は適用外。

国外子会社からの受取配当所得に対する優遇税制

スペインの法人が、国外子会社から受ける配当やキャピタル・ゲインについても、次の条件を満たすことにより、持株会社ではなくとも、受取配当金の最大95%までを法人税の課税対象外所得として取り扱うことができる。
なお、国外子会社の株式譲渡益について、当該株式の保有期間中に次の条件を満たさない年度があったとしても、キャピタル・ゲイン免税の部分的適用は可能。

  1. 子会社への出資比率が5%以上、あるいは出資額が2,000万ユーロ以上あること。
  2. 当該子会社もしくは支店が、所在国の法人税を課税所得に対して10%以上納付していること。

法人税以外に課せられる主な公租公課(地方税など)

  1. 市町村税
    1. 経済活動税
      手続きなど行政処理は、国の関係当局と共同で実施する。納税対象は、スペイン国内の芸術活動や経済活動を実施する当事者である。
      税率は業種や活動拠点の所在地によって異なり、利益を計上しない場合にも課税されるが、税額はきわめて小額。
      農業・牧畜業・林業・漁業活動は対象外。ただし、牧畜業に関して独立自営業者とみなされる場合は、課税対象となる。
    2. 固定資産税
      不動産および不動産権利の所有者に対して課せられる税。都市部(住宅地域、工業地域など)と農山村部では、税率が異なる。
    3. 地価増加税
      定期的に行われる土地評価によって地価が増加したと認められる場合に徴収される税で、売買取引などに伴う名義人変更の際に課せられる。
    4. 建設設置工事税
      原則として、事前ライセンスの取得が必要な建設設置工事の原価に対し課せられる税。
      納税者は物件の所有者であるか否かを問わず、当該物件の経営責任者(個人または法人)。
      税率は、地方自治体によって異なる。
      (例)マドリード市の場合、税率は工事費用の4%。
  2. 州税
    1. 相続・贈与税
      納税者は、相続人・受贈者・受益者である個人。税率は、原則として7.65~34%であるが、州によって異なる。
      相続の場合は基礎控除が適用されるが、贈与の場合は適用外となる。
      なお、納税者が法人の場合は、法人税の枠内で課せられる。
    2. 資産移転法文書税
      納税者はスペイン居住者。
      商品の販売やサービスの提供など、通常の商取引以外の資産および権利の譲渡や、公文書や取引証書の作成などに課せられる税。
      (例)不動産の譲渡の場合、譲渡額の2~10%、動産の場合:同4%。

    ただし、法人が不動産を譲渡する場合、本税か付加価値税(21%)のうち、いずれかを選択することが可能。
    法人は、事業活動において売買行為を行う際に発生した受取および支払の付加価値税については、申告時に双方を相殺することが許されているため、法人の場合には、付加価値税を選択するのが一般的である。

移転価格税制

法人税法(LEY)36/2006に基づき、2006年12月1日以降の事業年度から、移転価格税制が適用されている。
そのため、スペイン現地法人と関連会社との取引においては、あらかじめ十分な市場価格調査を実施し、市場価格と照合可能な取引価格を設定することが重要となる。
また、関連会社間の取引にかかる移転価格文書についても、保管が義務付けられている。
法人税申告書には、年間25万ユーロ以上の取引については価格算定方法などのデータを記載する義務があり、価格調査や文書作成は非常に複雑なため、移転価格税制の専門家に相談することが望ましい。

  1. 関連文書開示要件法人税法施行細則(勅令634/2015)により、2016年以降、移転価格関連文書の開示要件が大幅に変更された。

    グループの前年連結売上が7億5,000万ユーロ以上で、税務当局の裁量によってローカル・ファイルを要請される場合は、国別報告書(CbCレポート)の提出が必要になった。その際、親会社が自国の税務当局にCbCレポートを提出することが認められている。
    スペイン税務当局が租税条約に基づく情報交換ができない場合、あるいは親会社の所在国がCbCレポートを導入していない場合は、スペイン子会社にCbCレポートの提出義務がある。

    1. グループの連結売上が4,500万ユーロ以上で、常にローカル・ファイルが要請される場合、次の情報を含むマスター・ファイルの提出が必要。
      1. 企業グループの組織、法的な事業構造
      2. グループの活動
        • グループが事業活動を行う市場
        • グループの総収益の10%超の有形財・サービスについて、バリュー・チェーンと関連する収益源
        • グループ関連会社の機能、リスクおよび資産
        • グループが採用する移転価格政策
        • 組織再編や企業買収、資産のライセンス
      3. 無形資産
        • R&D戦略、無形資産のライセンス、無形資産の所有者
        • 会社間の取引高
        • ライセンス契約および費用分担契約
        • その他の関連する無形資産の譲渡
      4. 資金調達
        • グループの資金調達源の概要
        • 会社間の資金調達活動に参加する関連会社の特定
        • 債券発行国
        • 会社間の資金調達に適用される移転価格政策の説明
      5. 財務諸表
        グループの連結財務諸表および事前合意制度(APA)適用のリスト
    2. グループの連結売上が4,500万ユーロ未満の場合、次の情報を含むローカル・ファイルの提出が必要。
      1. 納税者情報
        • 組織図を含む組織・経営構造と、スペイン関連会社の企業報告で連結される関連会社のリスト
        • 事業活動および戦略だけでなく、組織再編、重要な無形資産取引にかかる関連情報
        • 競合他社の情報
      2. 関連会社間の取引情報
        • 関連会社間取引の概要、特徴および取引高
        • 関連会社間取引に参加する取引相手の情報
        • 機能分析および比較可能性分析
        • 採用する移転価格算定方法
        • 関連会社間のサービス・チャージ算定に使用される費用配分の要因
        • 既に合意された事前合意制度(APA)
      3. 財務・経済データ
        • 財務諸表
        • 移転価格算定方法を適用するために使用した財務データと年次財務諸表との関係
        • 経済分析の比較対象に使用された財務データ
  2. 罰則規定
    罰則ならびに罰金規定は次のとおり。
    • 文書の未作成・未保管、記載内容の不備・虚偽:データ文書1点につき1万ユーロ(個別データ1点につき1,000ユーロ)。税務調査の対象年度の売上高の1%、あるいは関係会社間取引額の10%のいずれかの低い金額が、罰金の最高額となる。
    • 課税所得額に誤りがあった場合(市場価格と異なる価格で、関連会社間取引を行った場合):更正額の15%。

    なお、適切な文書保管義務が遵守され、法人税の申告時に関連会社間取引価格がその文書に明記されている場合は、仮に所得申告の訂正が発生しても、これらの罰金は科せられない。