税制

最終更新日:2024年03月15日

法人税

加盟各国法規に従う。租税回避対策

法人税の課税は、加盟各国法規に従う。EU域内での税制調和という目標はあるものの、各国の歳入に影響を与えるため、その進展は遅い。最近、一部加盟国で引き下げの動きがみられる。

租税回避対策

  1. 基本法令
  2. 概要

    EUは2016年7月、域内市場に直接影響を与える租税回避策の防止に向け、欧州理事会指令2016/1164(租税回避対策指令、指令2017/952により改正)を採択した。同指令は、多国籍企業の過剰な節税への批判の高まりを受け、EUの租税回避防止に向けた一連の施策をまとめた「租税回避対策パッケージ」の柱となるもので、控除対象となる利子の上限を定める利子制限や、知的財産権の域外への移動に対して課税する出国課税、低税率国に移転した利益に課税する外国子会社(CFC)ルール、異なる税務管轄での法令の差異に基づく二重非課税などの効果(ハイブリッド・ミスマッチ)の解消策などが規定されている。
    加盟国は、原則的に2018年末までに同指令に準拠した国内法を整備し、2019年1月からこれを適用する。ただし、リバース・ハイブリッド・ミスマッチ(ある法主体が、その設立国の法令では納税義務者と認識されないことで生じるハイブリッド・ミスマッチ)への対策については、2022年1月から、それ以外のハイブリッド・ミスマッチおよび出国課税については、2020年1月から適用されている。

    なお、EUでは2016年5月、同パッケージの一環で、租税の透明性の向上と公平な競争条件の確保に向け、課税分野の行政協力に関する欧州理事会指令2011/16/EU(行政協力指令)を改正する欧州理事会指令2016/881を採択した。同指令では、多国籍企業に対して国別報告(CbCR)の提出を義務付け、加盟国間で自動的に交換・共有する企業情報を拡大している。同指令は、2017年6月5日に適用が開始された。

    EUは2022年12月、世界共通の最低法人税率に関する欧州理事会指令2022/2523を採択した。OECDの財源浸食と利益移転(BEPS)に関する包摂的枠組みで合意された内容を受け、軽課税国への利益移転に対抗する措置として導入される。大規模多国籍企業を対象に、グローバルな税源浸食防止ルール(GloBEルール)に基づき、世界共通の最低法人税率15%を適用する。加盟各国は2023年12⽉31⽇までに国内法を整備することが求められる。

    2020年12月末に英国のEU離脱に伴う移行期間が終了したことから、英国法人は2021年1月以降、これらのEU指令を考慮する必要がなくなった。ただし、英国は二国間租税条約や税源浸食と利益移転(BEPS)に関する行動計画等のOECDの枠組みには留まっている。

二国間租税条約

加盟各国ごとの二国間条約に基づく。

その他税制

付加価値税(VAT)、物品税

付加価値税(VAT)

  1. 基本法令
  2. 概要
    EUは、付加価値税(VAT)の調和に向けた努力を続けているが、原則税率15%以上とする(ただし、食品等一定の分野には軽減税率が認められている)という取決めにとどまっており、国によって大きな差がある。付加価値税の域内における共通システムは、理事会指令2006/112/EC(VAT指令)により規定されている。同指令は、先行指令である理事会指令77/388/EECや、加盟国の売上高税法の調和に関する指令67/227/EECを含む一連の関連法をまとめたもので、課税対象者、課税取引、課税地、課税対象事項、控除などの要件が規定されている。

    2020年12月末に英国のEU離脱に伴う移行期間が終了し、2021年1月以降、EU域外の第三国となった英国に対してはEU・VAT指令やVAT還付にかかるEU制度は直接適用されない。ただし、英国からEUへの物品の輸入には、EU域外の第三国からの輸入として、EU・VATが課される。EU・VAT還付のルールも、EU域外国に設置された事業者として適用される。

    VAT指令では、原則として物品やサービスの供給地で課税する仕組みとなっていたが、理事会指令2008/8/ECにより、サービスの一部について、消費地課税方式の採用が決まった。これにより、サービスの事業者間(B to B)取引一般については、原則的に、サービス受益者の所在地で課税されることとなった。また、通信や放送を含む電子サービスについても、2015年1月以降消費地課税に移行した。

    なお、域外の第三国から提供される電子サービスについては、理事会指令2002/38/ECにより、消費地課税方式が採用されており、現在では域内・域外企業にかかわらず、電子サービスについては、消費者の居住国の税率が適用されている。一方、これらの電子サービスを除く消費者向け(B to C)サービスについては、従来どおり供給地で課税される。

    消費地課税方式の施行に向けて必要となる詳細な定義や要件は、理事会実施規則1042/2013に規定されている。

    昨今問題視されているVAT不正への対策として、理事会指令2018/2057(2022年6月30日に失効)は、加盟国が欧州委員会に申請を行うことで、買主側がVATを申告する「一般リバースチャージ方式」(GRCM:Generalised Reverse Charge Mechanism)を2022年6月30日までの期間、1万7,500ユーロを超える加盟国内の事業者間の取引を対象に導入することを許容。GRCMは理事会指令2022/890により2026年12月31日まで延長された。

物品税

  1. 基本法令
  2. 概要
    EUでは間接税として、たばこ、アルコール、エネルギー製品などに物品税を課している。理事会指令2020/262は、物品税の課税対象となる製品カテゴリーや課税原則、物品税対象品の移動や管理などに関する域内共通ルールや物品税一時停止措置を含む物品の移動を管理するための電子システムや通知内容などについて定めている。欧州委員会規則389/2012は物品税分野の加盟国間の協力についてまとめている。

    なお、EUでは、物品税が保留されている物品の移動・管理システム(EMCS)を導入している。EMCSは、物品税未納のたばこ、アルコール、エネルギー製品の動きをリアルタイムで把握することが可能で、域内8万以上の事業者がこれを活用している。

    2020年12月末に英国のEU離脱に伴う移行期間が終了し、英国は完全にEUを離脱した。そのため、EU加盟国と英国との物品税対象品の移動は2021年1月以降、EU域外国との輸出入の扱いとなり、前述のEMCSシステムの運用対象から除外された。