ハンガリーの貿易と投資(世界貿易投資動向シリーズ)

要旨・ポイント

  • 2022年の実質GDP成長率は年後半の高インフレによる個人消費減の影響で4.6%に留まった。
  • 貿易はエネルギー価格の高騰を受けエネルギー関連品目の輸入額が大幅増、14年ぶりに貿易赤字を計上。
  • 対内直接投資はアジアからのEV関連が続伸し過去最高額を更新。
  • 日本からの直接投資も自動車関連が目立った。

公開日:2023年10月31日

3分解説動画

動画再生のためのモーダルウィンドウを開く

マクロ経済 
新型コロナ禍を克服もウクライナ侵攻の影響で経済は減速

2022年のハンガリー経済は、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、世界経済と同様に、実質GDP成長率は前年の7.2%から4.6%に減速した。四半期別にみると、2022年第3四半期から3期連続のマイナス成長に陥り、リセッション(景気後退)入りしている。なお、ハンガリーの名目GDP総額は、すでに2021年に新型コロナウイルス禍前の2019年の水準を超える回復を見せた。

2022年のGDP成長率を需要項目別にみると、民間最終消費支出が前年比5.8%増となり、成長の押し上げに貢献した。ハンガリー政府による、20歳未満でかつ就学中の子供のいる世帯に対し2021年に支払った個人所得税の全額または一部を還付する制度や、一部食料品の価格引き下げとガソリン価格の上限設定、法定最低賃金引上げなど、個人消費を喚起する政策が奏功した。しかし、第3四半期以降は高インフレの影響で落ち込んだ。財貨・サービスの輸出は11.8%増と堅調に推移したものの、同輸入も11.1%増と増加したため、外需(純輸出)の貢献は限定的だった。

産業別にみると、個人消費拡大を反映したサービス部門の前年比7.2%増、製造部門の5.9%がけん引したが、夏期の干ばつの影響を受けた農業部門の30.9%減が下押し要因となった。

表1 ハンガリーの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2021年 2022年 2023年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1
実質GDP成長率 7.2 4.6 1.5 0.6 △ 0.8 △ 0.6 △ 0.3
階層レベル2の項目民間最終消費支出 4.0 5.8 1.8 0.4 △ 0.4 △ 0.6 △ 1.3
階層レベル2の項目政府最終消費支出 2.5 △ 1.3 0.7 △ 1.6 △ 0.9 △ 0.6 △ 0.2
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 6.5 1.2 1.2 △ 0.9 △ 2.1 △ 5.2 1.4
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 8.8 11.8 6.7 1.3 4.4 △ 0.4 1.3
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 7.7 11.1 7.6 0.3 3.8 △ 1.7 △ 0.4

〔注〕四半期の伸び率は前期比。物価、季節、稼働日調整済み。
〔出所〕ハンガリー中央統計局

2023年の実質GDP成長率の見通しについて、ハンガリー政府は2023年5月に1.5%と発表した。政府はエネルギー・原材料市場の不安定さや対ロシア制裁による供給網混乱の恐れ、高インフレ抑制のための世界各国の金融政策(高い政策金利など)、内陸国であるためのエネルギー多様化の難しさが主な景気阻害要因になると指摘し、インフレ率は15%と予測した。

貿易 
輸出入とも過去最高、ロシアからエネルギー関連品目の輸入増

2022年の貿易は、輸出が前年比19.3%増の1,421億8,900万ユーロ、輸入は28.2%増の1,507億8,100万ユーロとなり、ともにデータが公開されている2001年以降最高を更新した。貿易収支は輸入の伸びが輸出を大きく上回ったことで85億9,200万ユーロの赤字となり、2008年以来の赤字転落となった。

輸出を品目別にみると、電子・電気機器(構成比15.9%)が前年比28.7%増で、2013年以来最大の輸出品目だった道路走行車両を上回った。道路走行車両(14.7%)も13.3%増で、輸出の伸びに貢献した。

表2 ハンガリーの主要品目別輸出(FOB)(単位:100万ユーロ、%)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
電気・電子機器 17,605 22,651 15.9 28.7
道路走行車両 18,397 20,838 14.7 13.3
通信・録音機器 10,367 10,745 7.6 3.6
発電機器 7,601 9,054 6.4 19.1
医薬品 6,182 6,892 4.8 11.5
事務用機器・コンピュータ 4,169 5,793 4.1 38.9
一般機器 5,014 5,672 4.0 13.1
雑製品 3,348 3,624 2.5 8.2
金属製品 2,765 3,386 2.4 22.4
科学・制御機器 2,951 3,290 2.3 11.5
合計(その他含む) 119,228 142,189 100.0 19.3

〔注〕EU 域外貿易は通関ベース、EU 域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕ハンガリー中央統計局

輸出を国・地域別でみると、全体の8割近くを占めるEU(構成比76.7%)が前年比19.4%増だった。最大の輸出先であるドイツ(25.1%)は12.5%増で、電子・電気機器の34.4%増がけん引した。ドイツへの主要輸出品目である道路走行車両は7.9%減で、輸出を押し下げた。EU域外での最大の輸出先は米国(3.5%)で43.4%増だった。アジアでの最大の輸出先の中国(1.5%)は4.6%増だった。

表3 ハンガリーの主要国・地域別輸出入(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU 91,337 109,048 76.7 19.4 84,249 103,564 68.7 22.9
階層レベル2の項目ユーロ圏 68,958 82,231 57.8 19.2 64,760 79,446 52.7 22.7
階層レベル3の項目ドイツ 31,769 35,741 25.1 12.5 27,912 31,941 21.2 14.4
階層レベル3の項目イタリア 6,967 8,048 5.7 15.5 5,217 6,147 4.1 17.8
階層レベル3の項目スロバキア 6,184 7,247 5.1 17.2 6,932 10,025 6.6 44.6
階層レベル3の項目オーストリア 5,420 6,397 4.5 18.0 7,195 10,826 7.2 50.5
階層レベル3の項目フランス 4,989 6,012 4.2 20.5 3,699 4,257 2.8 15.1
階層レベル2の項目非ユーロ圏 22,378 26,818 18.9 19.8 19,489 24,118 16.0 23.8
階層レベル3の項目ルーマニア 6,307 7,578 5.3 20.1 3,341 4,893 3.2 46.5
階層レベル3の項目ポーランド 5,112 6,104 4.3 19.4 6,725 8,423 5.6 25.3
階層レベル3の項目チェコ 4,948 5,898 4.1 19.2 5,685 7,158 4.7 25.9
英国 3,724 4,523 3.2 21.4 1,128 1,295 0.9 14.8
アジア大洋州 5,218 6,574 4.6 26.0 18,673 24,067 16.0 28.9
階層レベル2の項目中国 2,084 2,179 1.5 4.6 8,280 10,225 6.8 23.5
階層レベル2の項目日本 695 902 0.6 29.6 1,394 1,401 0.9 0.5
階層レベル2の項目ASEAN 668 870 0.6 30.3 2,600 2,907 1.9 11.8
階層レベル2の項目韓国 505 642 0.5 27.3 3,667 5,844 3.9 59.4
北米 3,733 5,344 3.8 43.2 2,557 2,943 2.0 15.1
階層レベル2の項目米国 3,492 5,007 3.5 43.4 2,482 2,854 1.9 15.0
セルビア 2,225 3,469 2.4 55.9 1,552 2,464 1.6 58.7
ウクライナ 2,758 2,265 1.6 △ 17.9 1,817 2,505 1.7 37.9
ロシア 1,739 1,311 0.9 △ 24.6 3,599 9,257 6.1 157.2
合計(その他含む) 119,228 142,189 100.0 19.3 117,605 150,781 100.0 28.2

〔注1〕アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔注2〕EU 域外貿易は通関ベース、EU 域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕ハンガリー中央統計局

輸入を品目別でみると、電気・電子機器(構成比14.0%)が前年比23.0%増で、続く道路走行車両(7.8%)は14.2%増だった。輸入額全体を大きく押し上げたのは価格が高騰したエネルギー関連品目で、天然ガスおよび製造ガス(6.3%)が3.1倍、電力(4.8%)が2.3倍の大幅増となった。

表4 ハンガリーの主要品目別輸入(CIF)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
電気・電子機器 17,160 21,099 14.0 23.0
道路走行車両 10,288 11,751 7.8 14.2
天然ガスおよび製造ガス 3,011 9,479 6.3 214.8
電力 3,100 7,235 4.8 133.4
一般機器 6,127 7,067 4.7 15.3
通信・録音機器 7,485 6,907 4.6 △ 7.7
石油製品 4,318 5,684 3.8 31.6
発電機器 4,480 5,315 3.5 18.6
医薬品 5,094 5,012 3.3 △ 1.6
金属製品 4,076 4,940 3.3 21.2
合計(その他含む) 117,605 150,781 100.0 28.2

〔注〕EU 域外貿易は通関ベース、EU 域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕ハンガリー中央統計局

輸入を国・地域別でみると、EUが全体の7割近く(構成比68.7%)を占めて前年比22.9%増、最大の輸入元は輸出同様にドイツ(21.2%)で14.4%増だった。ひときわ目立った変化があったのがロシア(6.1%)の2.6倍で、輸入額全体の押し上げに最も寄与した。天然ガスおよび製造ガス(67.1%)の4.0倍、石油製品(28.0%)の76.8%増がロシアからの輸入額の伸びの要因となった。

対内・対外直接投資 
対内直接投資が拡大、EV関連で活発な動き

ハンガリー国立銀行によると、2022年の対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は前年比37.3%増の77億400万ユーロだった。

業種別にみると、製造業では電気機器の15億5,400万ユーロ、ゴム・プラスチックの9億8,100万ユーロ、自動車・輸送用機器の8億8,100万ユーロが上位となった。サービス業では小売り・卸売り・車両修繕への投資が拡大し、11億4,100万ユーロとなった。

表5 ハンガリーの業種別対内・対外直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
業種 対内直接投資 対外直接投資
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 伸び率 金額 金額 伸び率
製造業 3,901 5,467 40.1 376 △ 152
階層レベル2の項目電気機器 1,007 1,554 54.4 C 16
階層レベル2の項目ゴム・プラスチック 105 981 837.5 43 65 52.6
階層レベル2の項目自動車・輸送用機器 228 881 285.7 △ 20 415
階層レベル2の項目食品・飲料・たばこ 217 560 157.4 120 97 △ 19.0
階層レベル2の項目機械 380 433 13.8 C 3
階層レベル2の項目化学・化学製品 807 285 △ 64.6 37 47 28.5
階層レベル2の項目その他の非金属鉱物製品 24 269 1,014.4 12 44 266.1
階層レベル2の項目医薬品 111 219 96.7 96 396 310.4
階層レベル2の項目木材・製紙 116 69 △ 40.4 △ 3 10
階層レベル2の項目コークス・石油 △ 12 43 △ 11 △ 1565
階層レベル2の項目繊維・衣料品・皮革製品 △ 31 37 3 1 △ 57.9
階層レベル2の項目基礎金属・金属加工製品 157 22 △ 85.7 19 97 411.1
階層レベル2の項目電子・光学機器、コンピュータ 838 △ 307 △ 38 281
サービス業 1,146 1,717 49.7 2048 2437 19.0
階層レベル2の項目小売り・卸売り・車両修繕 680 1,141 67.8 △ 7 880
階層レベル2の項目情報通信 △ 277 268 18 331 1,767.8
階層レベル2の項目専門・科学・技術 △ 475 166 202 538 166.5
階層レベル2の項目金融・保険 381 144 △ 62.3 1571 735 △ 53.2
階層レベル2の項目不動産 991 143 △ 85.6 93 39 △ 58.1
階層レベル2の項目宿泊・飲食 △ 44 △ 98 9 △ 7
階層レベル2の項目運輸・倉庫 △ 72 △ 203 52 40 △ 22.8
建設 181 271 50.0 △ 32 20
不動産取引 184 258 40.0 652 843 29.3
農業、狩猟、林業 27 33 20.8 △ 3 △ 6
鉱業、採石 △ 30 10 △ 391 122
上水道、下水道、廃棄物管理 19 △ 3 1 △ 4
電気・ガス・冷暖房供給 184 △ 62 2 △ 12
合計(その他含む) 5,612 7,704 37.3 2,654 3,518 32.6

〔注〕「-」は負の値に関わる伸び率。「C」は該当企業が3社未満のための非公表。
〔出所〕ハンガリー国立銀行

国・地域別にみると、2022年の最大の投資元は韓国で18億8,100万ユーロとなった。これにドイツの16億7,200万ユーロ、ルクセンブルクの14億3,400万ユーロが続いた。

表6 ハンガリーの国・地域別対内・対外直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 伸び率 金額 金額 伸び率
EU 2,625 6,472 146.5 710 1,839 158.8
階層レベル2の項目ユーロ圏 2,445 6,283 157.0 150 249 65.5
階層レベル3の項目ドイツ 452 1,672 269.8 29 471 1,529.1
階層レベル3の項目ルクセンブルク 646 1,434 121.9 △ 1,586 554
階層レベル3の項目オランダ 961 1,349 40.4 449 △ 222
階層レベル3の項目オーストリア 473 1,346 184.6 0 △ 44
階層レベル3の項目アイルランド 36 209 477.9 180 △ 8
階層レベル3の項目フランス △ 26 146 89 1 △ 98.7
階層レベル3の項目キプロス △ 228 87 496 707 42.5
階層レベル3の項目マルタ 78 74 △ 5.0 44 29 △ 34.3
階層レベル2の項目非ユーロ圏 180 189 4.7 560 1,590 183.9
階層レベル3の項目デンマーク 108 318 195.4 C 0
階層レベル3の項目ポーランド 62 135 116.2 △ 9 273
階層レベル3の項目チェコ 62 △ 38 175 581 232.1
階層レベル3の項目ルーマニア △ 207 △ 396 206 160 △ 22.3
英国 219 △ 124 △ 93 226
スイス 295 △ 1,290 1,345 △ 79
ウクライナ 28 57 100.3 77 133 73.4
ロシア 21 38 81.4 91 145 59.1
米国 275 1,350 391.0 86 △ 29
韓国 1,153 1,881 63.1 0 △ 8
香港 197 89 △ 55.0 △ 16 21
日本 88 79 △ 10.2 4 2 △ 41.7
中国 90 66 △ 27.3 △ 1 33
タイ △ 6 13 0 0
合計(その他含む) 5,612 7,704 37.3 2,654 3,518 32.6

〔注〕「-」は負の値に関わる伸び率。「C」は該当企業が3社未満のための非公表。
〔出所〕ハンガリー国立銀行

外国からの投資誘致を所管するハンガリー投資促進庁(HIPA)によると、2022年に発表された対内直接投資案件は92件で、総額では2021年の過去最高額58億7,900万ユーロを上回る64億9,300万ユーロとなった。アジア諸国からの投資額が約28億ユーロとなり、最大の投資国は2021年に続き韓国だった。また、投資額の43%が電機産業への投資であり、多くは電気自動車(EV)関連の事業だった。

2022年の主な対内直接投資案件をみると、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)は8月、蓄電池工場を建設すると発表した。年間生産能力は110ギガワット時(GWh)で、製品はメルセデス・ベンツ、BMW、ステランティス、フォルクスワーゲン(VW)などに納入する。自動車メーカーの投資も目立ち、7月にはドイツのメルセデス・ベンツがバッテリー式電気自動車(BEV)生産強化のため既存工場を拡張すると発表した。9月には中国の新興EVメーカーの上海蔚来汽車(NIO)がEV用充電設備の欧州製造センターやサポートセンター、開発研究センターとしての役割が期待される生産拠点をブダペスト近郊に開設すると発表した。11月にはドイツのBMWが建設中の同社完成車工場敷地内にEV用高電圧電池の組立工場を建設すると発表した。

2022年の対外直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は前年比32.6%増の35億1,800万ユーロだった。

表7-1 ハンガリーの主な対内直接投資案件(2022年~2023年1月)[M&A以外]
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
車載用蓄電池 寧徳時代新能源科技(CATL) 中国 2022年8月 73億4,000万ユーロ 東部デブレツェンに蓄電池工場を建設すると発表。年間生産能力は110ギガワット時(GWh)。同工場で生産する蓄電池セルとモジュールは、メルセデス・ベンツ、BMW、ステランティス、フォルクスワーゲン(VW)などの欧州系自動車メーカーに納入する。CATLの欧州工場としてはドイツ・チューリンゲン州に次いで2番目。ハンガリーにとって史上最高額の外国企業による投資となった。
自動車 BMW ドイツ 2022年11月 20億ユーロ デブレツェンに電気自動車(EV)用高電圧電池の組立工場を建設すると発表(投資額10億ユーロ)。2025年末までに生産開始、500人を雇用予定。組立工場は、2022年6月に定礎式を行い建設工事中の完成車工場(投資額10億ユーロ)の敷地に併設し、2工場合計で1,500人を雇用予定。
自動車 メルセデス・ベンツ ドイツ 2022年7月 10億ユーロ 中部ケチケメート工場でのバッテリー式電気自動車(BEV)生産を強化するため、新たに工場建屋と生産設備を設置すると発表。新しいBEV用アーキテクチャー(プラットフォーム)であるMMA(小型・中型車用)とMB.EA(中・大型乗用車用)をベースとしたBEVが、2020年代半ばから生産される予定。
素材 ダブル・スコープ 日本 2022年10月 7億2,000万ユーロ 北東部ニーレジハーザに建設するリチウムイオン電池用セパレータフィルム工場の定礎式を行った。 2024年に稼働を開始し、年間生産能力は12億平方メートルになる予定。1,200人を雇用する見込み。
食品 ネスレ スイス 2023年1月 1,400億フォリント 西部ビュックのペットフード生産工場の拡張と設備投資を発表。設備投資により、充填・包装ラインが2本追加され、250人の新規雇用が創出される。同工場は東欧で最大規模のペットフード工場となり、生産量の95%が輸出される。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表7-2 ハンガリーの主な対内直接投資案件(2022年)[M&A]
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
素材 東レ LG Chem(LG化学) 韓国 2022年6月 3億7,500万ドル LG化学は、東レ傘下のリチウムイオン電池用セパレータフィルム製造のToray Industries Hungary(東レハンガリー)の株式を取得し、東レハンガリーを存続会社とする合弁会社「LG Toray Hungary Battery Separator」を設立した。出資比率は2社で均等とした。
エネルギー MOL PKNオルレン(現:オルレン) ポーランド 2022年12月 2億2,900万ユーロ PKNオルレン傘下で製油・石油化学事業を行うオルレン・ウニペトロルは、MOLのガソリンスタンドの買収取引を完了したと発表。最終的に買収したMOLのガソリンスタンドは、ハンガリー国内143カ所、スロバキア国内39カ所となった。 欧州委員会は、ポーランドのPKNオルレンに対し、同じくポーランドのロトスの買収承認の条件として、PKNオルレンの資産の売却を要求しており、同社の資産はMOLが引き受けることとなっていた。同時にMOLはPKNオルレンに自社のガソリンスタンドを売却することで合意していた。
IT セオン クレアンダム、ポートフォリン、IVP 米国 2022年4月 9,400万ドル ベンチャーキャピタルのクレアンダム、ポートフォリオン、IVPを主体にした投資家グループは、ブダペストと米国テキサス州を拠点にIT分野での不正対策サービスを提供するセオンに投資した。セオンはシリーズB(ビジネスが軌道に乗り始めた段階)での資金調達に成功。
オンライン旅行予約 サラシュ ビルトゥアルナ・ポルスカ・ホールディング ポーランド 2022年9月 8,200万ユーロ オンラインのメディア、広告、電子商取引を事業とするビルトゥアルナ・ポルスカ・ホールディングは、中・東欧のオンライン宿泊予約分野での有力企業であるサラシュを買収すると発表。自社のオンライン宿泊予約事業と合併させ、同事業の拡張を図る。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表8-1 ハンガリーの主な対外直接投資案件(2022年~2023年4月)[M&A以外]
業種 企業名 投資先国 時期 投資額 概要
航空機 マグナス・エアクラフト 中国 2022年9月 8,839万ユーロ 軽飛行機製造のマグナス・エアクラフトの中国子会社は、江蘇省無錫市恵山区人民政府と投資契約を調印。同契約に基づき、ブダペストに拠点を置くオブダ大学とハンガリー外務貿易省との協力の下、中国に3つの製造ユニット(複合材、航空機組立、整備)、中国・ハンガリーハイテク開発センター、ショールームを設立する。製造ユニットでは、9年以内に、ハンガリーで開発された2人乗り機を2,800機以上、4人乗り機を400機以上生産できる見込み。
食品 ヘル・エナジー ルーマニア 2023年4月 1,800万ユーロ エナジー飲料製造のヘル・エナジーは、ルーマニア中央部にルーマニア本社ビルと物流倉庫の建設が完了したと発表した。本社ビルのオフィスは3,800平方メートル、物流倉庫は1万平方メートル。配送の効率化を図る。
建築資材 マスタープラスト イタリア 2022年4月 1,000万ユーロ イタリア北部での子会社の設立が完了したと発表。続いて、子会社近くでのポリエチレン断熱材の製造工場の建設計画を発表。製造工場への投資額は450万ユーロ。子会社設立も含めると投資総額は最大で1,000万ユーロの見込み。イタリアでは建物の断熱性を高めるため、断熱材の需要が高まると見越した進出。
IT アリズ・テクノロジーズ インドネシア 2023年3月 非公表 ビッグデータ、機械学習、アプリ開発、クラウドサービス提供が専門のアリズ・テクノロジーズが、クラウドベースのソリューションを提供するためにインドネシアの首都ジャカルタにオフィスを開設。同社にとってハンガリー国外で4番目のオフィスとなる。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表8-2 ハンガリーの主な対外直接投資案件(2022年~2023年2月)[M&A]
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
MOL エネルギー PKNオルレン(現:オルレン)、ロトス ポーランド 2022年11月 6億1,000万ドル PKNオルレンと同社傘下のロトスから、ポーランド国内410カ所超のガソリンスタンドの買収を完了したと発表。MOLは、欧州委員会がポーランドのPKNオルレンに対し、PKNオルレンによるロトスの買収承認条件として資産売却を要求したことを受け、2022年1月にロトスのガソリンスタンド買収契約に調印、これと引き換えにMOLは、自社のガソリンスタンド185カ所をPKNオルレンに2億5,900万ドルで売却することを決定していた。
OTP銀行 金融 アルファ銀行 アルバニア 2022年12月 5,500万ユーロ OTP銀行は2022年7月にギリシャのアルファ銀行のアルバニア子会社の買収を完了。統合プロセスの次のステップとして、OTP銀行のアルバニア子会社とアルファ銀行のアルバニア子会社を1つの法人に統合し、2022年12月以降、OTP銀行アルバニアの名称で営業することを発表。統合の結果、OTP銀行アルバニアは、アルバニアでの個人向けローンの市場シェア16.3%で、市場3位のプレーヤーとなった。
リヒター・
ゲデオン
医薬品 OCディストリビューターズ アイルランド、
英国
2023年2月 3,250万ポンド 英国の医薬品製造などのコンシリエント・ヘルスから、アイルランドを拠点とする女性用ヘルスケア製品のマーケティング・流通のOCディストリビューターの買収完了を発表。アイルランドと英国での自社医薬品販売を強化する。
ドゥナ・ハウス ローン・
不動産等仲介
Hグループ イタリア 2022年1月
2023年1月
非公表 不動産仲介のドゥナ・ハウスは、ローン・不動産等仲介のHグループの株式70%を取得したことを発表。将来的には全株式の取得も可能にする契約で、2023年1月には持ち株比率77%超となったことを発表。
ドゥナ・ハウスがHグループの全株式を所有するのに必要な投資額は公表されていないが、当初の株式70%取得時には株式価格の44.8%に相当する1,125万4,432ユーロを、77%超の取得時には260万ユーロを支払った。
MVM エネルギー エネルゴテクニカ・ユージュナ・バーチカ、
エレクトロモンタージャ
セルビア 2022年3月 非公表 国有エネルギーグループのMVMは、セルビアのマネクス・グループと、同国最大のエネルギーインフラ建設のエネルゴテクニカ・ユージュナ・バーチカとエレクトロモンタージャの株式いずれも33.4%をマネクス・グループから取得することで合意したと発表。MVMとマネクス・グループは、ハンガリーとセルビアにおけるエネルギー関連分野での建設事業での協力関係を構築する。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

対日関係 
対日貿易は輸出が大幅増、投資は自動車分野が活発

2022年の対日輸出は前年比29.6%増の9億200万ユーロ、対日輸入は0.5%増の14億100万ユーロだった。

輸出では、道路走行車両(構成比39.5%)が59.3%増の大幅増だったほか、事務機器・コンピュータ(12.4%)が52.6%増、電気・電子機器(5.3%)が59.0%増と、対日輸出増をけん引した。

輸入では、発電機器(構成比12.3%)の前年比16.4%減、化学材料・製品、その他(2.1%)の36.5%減、道路走行車両(19.7%)の5.2%減が響き、電気・電子機器(26.9%)の19.5%増、科学・制御機器(3.0%)の66.2%増を打ち消したため、対日輸入は全体として微増にとどまった。

表9-1 ハンガリーの対日主要品目別輸出(FOB)
[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
道路走行車両 223 356 39.5 59.3
事務機器・コンピュータ 73 112 12.4 52.6
通信・録音機器 49 55 6.1 11.3
電気・電子機器 30 48 5.3 59.0
医薬品 57 47 5.2 △ 17.7
有機化学品 39 47 5.2 18.7
一般機械 35 38 4.2 8.5
科学・制御機器 30 33 3.7 12.6
非金属鉱物製品 28 28 3.1 1.3
金属製品 15 18 2.0 18.3
合計(その他含む) 695 902 100.0 29.6

〔出所〕 ハンガリー中央統計局

表9-2 ハンガリーの対日主要品目別輸入(CIF)
[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
電気・電子機器 316 377 26.9 19.5
道路走行車両 291 276 19.7 △ 5.2
発電機器 207 173 12.3 △ 16.4
一般機械 166 167 11.9 0.5
通信・録音機器 54 61 4.3 12.4
科学・制御機器 26 43 3.0 66.2
非金属鉱物製品 44 36 2.6 △ 18.4
金属製品 33 31 2.2 △ 8.5
化学材料・製品、その他 47 30 2.1 △ 36.5
プラスチック 15 27 1.9 78.1
合計(その他含む) 1,394 1,401 100.0 0.5

〔出所〕 ハンガリー中央統計局

2022年の日本からの投資受入額は、前年比10.2%減の7,870万ユーロだった。主な投資案件としては、日本製紙が2022年9月に資本金1,000万ユーロで新会社を首都ブダペストに設立した。2023年2月の同社発表によると、EV用リチウムイオン電池の負極用増粘剤の生産を2024年12月から稼働させる予定だ。また、音響機器メーカーのフォスター電機は10月、車載用スピーカーと関連部品の製造・販売を行う新会社を資本金300万ユーロで設立すると発表した。同年12月に北西部モールに設立を完了し、2024年10月から量産を開始する予定だ。また、2023年5月には、福井県の繊維メーカー、セーレンが南部ペーチにおいて、自動車用合皮シート材を生産する新工場の開所式を行った。同社は2021年4月、ブダペストに資本金9億ユーロの新会社を設立する計画と、約4,200万ユーロを投じて従業員数170人の新工場を建設する計画を発表していた。

基礎的経済指標

人口
969万人 (2022年1月、暫定値)
面積
9万3,026平方キロメートル(2022年)
1人当たりGDP
1万7,301米ドル (2022年、推計値)
(△はマイナス値)
項目 単位 2020年 2021年 2022年
実質GDP成長率 (%) △4.7 7.2 4.6
消費者物価上昇率 (%) 3.3 5.1 14.5
失業率 (%) 4.1 4.1 3.6
貿易収支 (100万ユーロ) 2,670 313 △ 7,150
経常収支 (100万ユーロ) △ 1,543 △ 6,508 △ 13,896
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 39,434 37,954 35,713
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ、期末値) 82,457 94,211 108,660
為替レート (1米ドルにつき、フォリント、期中平均) 308.00 303.14 372.60

注:
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
人口、面積、実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:ハンガリー中央統計局
1人当たりGDP:IMF「世界経済見通し(2023年4月)」
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):ハンガリー国立銀行
外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF