外資に関する規制

最終更新日:2023年12月06日

規制業種・禁止業種

規制業種や禁止業種は一般的にない。例外として、国家経済にとって重要と指定される国有企業については、株式取得に制限がある。また、国家安全保障の観点から重要な分野で外国企業が出資する場合、所管省大臣への届け出を義務付けている。

外国企業の法人設立、株式取得に対する規制は、以下の例外を除き、一般的にない(内外無差別)。
例外についての詳細は以下のとおり。

  1. 国家経済にとって重要とされる国有企業については、国家資産に関する法(2011年制定 CXCVI号)によって政府の株式最低保有率が規定されているため、法改正が行われない限り買収には制限がある。
    (例:輸出入銀行、ハンガリー郵便会社、ハンガリー電力会社、ハンガリー国鉄、陶器メーカー「ヘレンド」、各地域の森林管理会社)。
  2. 国家安全保障の観点から重要な分野において、外国企業が株式を取得する場合、また子会社を設立する場合、所管省大臣への届け出を義務付けている(「ハンガリー国家安全保障を損なう外国投資家の考査に関する法」2018年制定 LVII号。2019年1月1日施行)。
    1. 届け出対象分野の例
      1. 武器一部の軍事技術、諜報関連機器
      2. デュアル・ユース品(民生用、軍事用の両方に利用可能)
      3. 一部の金融サービス、決済システムオペレーション
      4. 電力エネルギー法の定めにより行う業務
      5. 天然ガス供給法の定めにより行う業務
      6. 水道事業法の定めにより行う業務
      7. 電子情報通信法の定めにより行う業務
      8. 国および地方自治体の電子情報セキュリティ法の定めにより行う情報システムの設計、開発、運用業務
    2. 届け出義務の対象者
      • EU、欧州経済領域(EEA:アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー)、スイス以外の国に登記している法人、また国籍保有者(注:新型コロナウイルス感染拡大による非常事態下では、EU、EEAおよびスイスに登記する法人、また国籍保有者も届出義務の対象者になる)
    3. 届け出義務が発生する取得株式の割合
      ハンガリーに登記されている前記の事業を行う企業の株式を
      1. 直接・間接的に25%以上を取得、またNyrt.(株式公開会社・資本金2,000万フォリント)であれば10%以上を取得する場合
      2. 民法下で定められる影響力を与える以上の株式を取得する場合

    また、企業設立に関しても届け出が必要となる。
    大臣に届け出を行い、大臣が国家安全保障上、問題がないかを調査する。調査は原則60日以内。大臣は、調査結果により、株式取得、子会社設立を禁じることもできる。外国企業は大臣の調査終了後に株式取得、子会社設立を行える。禁止の決定には、異議申し立てをすることができる。

出資比率

100%による外資出資も可能。

外国企業の土地所有の可否

農地以外の土地は、取得、所有とも可能である。

非居住者、外国国籍者、企業などの法人は、農地・森林でない限り、土地の取得、所有が可能である。2014年5月1日には新土地法が施行され、ハンガリー市民に加え、EU市民(自然人)による農地・森林の取得も可能となった。
しかし、農業従事者やその近親者は300ヘクタールまでの取得が可能だが、未経験者は1ヘクタールまでに制限される。また、こうした土地は、利用が農業目的などに限定される。

法人は、一定の例外を除き、引き続き取得は禁じられている(例外:国家、農協、宗教団体、当該農地が所在する地方公共団体など)。
ただし、地方自治体、同自治体が属する県当局が農地・森林指定を解除し、工業用地等へ転用すれば、取得、所有は可能になる。

資本金に関する規制

外国企業の資本参加の有無にかかわらず、会社の形態によって最低資本金額が定められている。

最低資本金額

  • 株式非公開会社(Zrt):500万フォリント(現物出資でも可能)
  • 株式公開会社(Nyrt):2,000万フォリント
  • 有限会社(Kft):300万フォリント(現物出資でも可能)
  • その他:合名会社、合資会社については、最低資本金の規定はない。

その他規制

国内外企業を問わず、金融保険業、飲食業、医療サービス、賭博業などは監督当局から許可を得ることが必要。
たばこの小売販売は、営業権(コンセッション)を得た事業者のみが可能。また、こうしたたばこ小売事業者へ直接販売ができるのは、国から営業権を得た「たばこ供給会社(卸売会社)」のみ。たばこメーカーおよび輸入業者は、「たばこ供給会社」を通してのみ、国内販売が可能である。
小売業については、新規店舗建設・増築に関する規制や赤字企業に関する規制がある。これらの措置は国内・外国資本を問わず、すべてに適用されるが、実際には規模や売上高の高い外資系の小売りチェーンが最も大きな影響を受けている。

小売業の新規店舗建設・増築・改築に関する規制

  1. 建設、増築の場合
    小売業の場合、400平方メートルを超える新規店舗建設および増築は原則禁止。
    例外扱いを求めるためには、政府内の小委員会に申請しなければならない。小委員会の審査結果を基に、中央政府ハイドゥ・ビハル県地方局が最終決定する。決定に対し異議申し立てがあった場合は、ヘヴェシュ県地方局が最終決定する。
    増築については、既存店舗床面積と併せて400平方メートル超になる場合は原則禁止となる。
  2. 改築の場合
    2018年8月より、改装の場合も建設当局の許可が必要になった。許可申請の際は、中央政府ハイドゥ・ビハル県地方局の意見書の添付が必要(背景:外資系スーパーが規制回避のために、ハンガリー資本スーパーの既存店舗を買収し、その後改装してリニューアルオープンするという方法への対抗措置である)。