オランダの貿易と投資(世界貿易投資動向シリーズ)

要旨・ポイント

  • 2022年のGDP成長率は4.3%と前年を下回ったものの、引き続き好調を継続。
  • 貿易はエネルギーや商品価格の上昇を受け、輸出入ともに過去最高額となった。
  • 対内直接投資は低調だったが、対外直接投資は大幅に増加した。
  • 対日貿易は輸出入ともに拡大し、対日貿易赤字は前年より縮小した。

公開日:2023年9月13日

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マクロ経済 
内外需ともに好調で2年連続の高成長に

2022年のオランダの実質GDP成長率は4.3%と、前年の6.2%を下回ったものの2年連続で4%を超える成長となった。景気をけん引したのは、民間最終消費支出(6.6%増)と財貨・サービスの輸出(4.5%増)だった。新型コロナウイルス感染拡大防止のための規制策は2022年3月まで続いたが、2021年に1年のほぼ半分をロックダウン下に置かれた反動もあり消費意欲は旺盛で、特に宿泊、外食、レクリエーション、文化、交通、通信などのサービスへの支出が増えた。オランダ経済政策分析局(CPB)は8月17日、2023年の実質GDP成長率を0.7%と予測した。第1四半期は前期比マイナス0.4%で、前期の0.9%からマイナス成長に転じた。第2四半期もマイナス0.3%となり、テクニカルリセッション(2四半期連続での前期比マイナス成長)入りが確認された。

表1 オランダの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2021年 2022年 2023年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2
実質GDP成長率 6.2 4.3 0.5 1.8 △ 0.2 0.9 △ 0.4 △ 0.3
階層レベル2の項目民間最終消費支出 4.3 6.6 0.8 1.3 0.5 1.6 △ 0.2 △ 1.6
階層レベル2の項目政府最終消費支出 5.0 1.6 △ 0.6 0.6 1.0 0.8 0.4 0.7
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 2.9 1.8 △ 0.3 3.4 △ 1.9 1.7 2.7 1.3
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 8.0 4.5 2.1 2.5 △ 1.1 1.1 0.2 △ 0.7
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 6.2 3.8 2.2 1.4 △ 0.7 1.2 0.4 0.5

〔注〕四半期の伸び率は前期比。季節調整値。2023年8月16日改定値。2021年のみ確定値、他は暫定値。
〔出所〕オランダ中央統計局(CBS)

貿易 
燃料や商品価格の高騰で輸出入ともに過去最高額を更新

2022年の貿易は、輸出が前年比29.8%増の8,485億700万ユーロ、輸入は31.5%増の7,433億4,200万ユーロとなり、ともに過去最高額を更新した。貿易収支は1,051億6,500万ユーロの黒字と初めて1,000億ユーロを突破した。輸出入ともに大幅に増加した原因について、オランダ中央統計局(CBS)は「ひとえに商品価格の高騰による」と説明し、価格上昇分を除いた貿易数量は輸出入ともに2.3%増と分析している。輸出の42.4%を占める再輸出は39.5%増の3,595億7,300万ユーロ、57.6%を占めるオランダ原産品の輸出額は23.5%増の4,889億3,400万ユーロとなった。再輸出の割合が最も高い品目は雑製品で74.6%、次いで機械類・輸送用機器が57.0%だった。再輸出の割合を国・地域別にみると、EU向けが54.5%と5割を超え、高い順にブルガリアの75.3%、フィンランドの64.6%、ラトビアの63.4%と続いた。中・東欧諸国はほとんどの国で5割を超えた。EU域外ではオセアニアが28.3%で最大だったが、その他の地域では、アジアの20.7%、アフリカの18.3%などいずれも2割程度かまたはそれ以下だった。

輸出を品目別(国際収支ベース)にみると、最大の輸出品目である機械類・輸送用機器(構成比20.5%)が前年比14.4%増と好調だった。特に電気・電子機器(4.0%)の37.0%増、通信・録音機器(3.5%)の26.2%増、道路用車両(2.9%)の21.8%増が大きく伸びた。次に輸出額が大きい鉱物性燃料・潤滑油・その他(17.6%)も、原油や天然ガスの価格高騰を受けて2.4倍となり、輸出額全体を押し上げた。化学製品(13.6%)も20.7%増だった。そのうち、有機化学品(2.8%)の24.0%増、医薬品(3.3%)の11.2%増、プラスチックの一次製品(2.1%)の15.1%増がけん引した。

輸出を国・地域別にみると、全体の62.6%を占めるEUは前年比32.9%増となった。最大の輸出先であるドイツ(構成比22.1%)は42.3%増と大幅に拡大した。鉱物性燃料・潤滑油・その他(29.6%)が3倍に急増した。前年の最大品目の機械類・輸送用機器(17.3%)も22.3%増、化学製品(13.0%)も23.5%増など多くの品目で拡大した。その他、2位ベルギー(9.8%)の40.7%増をはじめ、3位フランス(7.3%)の27.7%増など、EU加盟国は軒並み大幅増となった。

EU域外では、英国を抜いて米国(構成比6.2%)が前年比34.0%増で首位に立った。ドル高ユーロ安とエネルギー価格の高騰の影響が大きいとみられるが、最大品目の機械類・輸送用機器(20.0%)の22.5%増、化学製品(12.2%)の40.5%増、鉱物性燃料・潤滑油・その他(8.8%)の64.5%増がけん引した。2020年1月末にEUを離脱した英国(6.2%)も22.2%増と好調だった。石油・石油製品(8.9%)が2.1倍となった影響で鉱物性燃料・潤滑油・その他(10.6%)が61.3%増、道路用車両、電気・電子機器、通信・録音機器の大幅増により機械類・輸送用機器(22.7%)が20.4%増と増加したことが寄与した。対英輸出額は英国のEU離脱にもかかわらず堅調であり、離脱前の2019年と比較すると21.7%増加した。対英輸出の33.6%を占める再輸出は2.5%増にとどまっているのに対し、66.4%を占めるオランダ原産品の輸出額が34.3%増と大幅に増加した。一方、ロシア(0.5%)は42.8%減と急減した。経済制裁などにより機械類・輸送用機器(18.0%)が71.2%減だったのをはじめ、その他の品目で軒並み大幅減となったが、人道的見地から輸出が継続している医薬品(20.9%)は38.8%増となった。アジア大洋州(8.7%)は9.4%増だった。中国(2.4%)は、機械類・輸送用機器(27.4%)、食料品・動物(16.8%)がそれぞれ6.1%増、32.2%増と好調だったが、工業製品(原料別製品)(4.3%)、鉱物性燃料・潤滑油・その他(0.5%)、動植物性油脂(0.0%)がそれぞれ15.1%減、60.4%減、93.2%減と落ち込んだため、全体では4.0%増にとどまった。機械類・輸送用機器のうち、最も寄与度が高い電気・電子機器(7.4%、45.9%増)には半導体が含まれるが、オランダ政府は安全保障の観点から同品目の対中輸出規制強化を2023年6月30日に発表、同年9月1日から施行された(2023年07月10日付ビジネス短信参照)。

輸入を品目別にみると、最大の輸入品目である機械類・輸送用機器(構成比21.6%)は前年比9.9%増だった。とりわけ、電気・電子機器(4.9%)が29.1%増、通信・録音機器(4.2%)が19.9%増と好調だった。次に輸入額が大きい鉱物性燃料・潤滑油・その他(21.0%)は2.1倍に急増し、輸入額全体を押し上げた。その他、化学製品(11.2%)は有機化学品(2.7%)が45.9%増と大幅に伸びたことにより、全体で23.9%増となった。

輸入を国・地域別にみると、全体の45.0%を占めるEUが前年比21.6%増だった。最大の輸入元であるドイツ(構成比15.0%)が15.6%増、続くベルギー(8.8%)も33.4%増となり、EU加盟国の多くが2桁の伸びとなった。EU域外では、米国(8.9%)が63.4%増で首位に立ち、中国(8.2%)の19.9%増を追い抜いた。鉱物性燃料・潤滑油・その他(26.6%)が2.9倍に拡大したことが寄与した。同品目の主力輸入元であるノルウェー(3.2%)、英国(5.9%)もそれぞれ86.9%増、50.1%増と大幅な伸びをみせた。また、統計で確認できる2015年から2021年まで同品目の最大の輸入元だったロシア(2.5%)は18.7%増だった。ロシアからの輸入の85.6%が同品目で占められている。

2023年上半期(1~6月)の貿易は、輸出が前年同期比6.7%増の4,221億5,500万ユーロ、輸入が4.2%増の3,632億8,300万ユーロだった。輸出入ともに最大品目は機械類・輸送用機器で、伸び率は輸出では14.2%増、輸入では6.3%増となった。輸入では、鉱物性燃料・潤滑油・その他が4.2%減だった。ロシアは72.7%減と大幅に落ち込んだ。一方、米国が53.3%増と急増し、同品目の最大の輸入元となった。

表2 オランダの主要品目別輸出入[国際収支ベース](単位:100万ユーロ、%)
品目 輸出(FOB) 輸入(FOB)
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械類・輸送用機器 152,025 173,876 20.5 14.4 146,199 160,656 21.6 9.9
鉱物性燃料・潤滑油・その他 63,495 149,302 17.6 135.1 72,982 156,024 21.0 113.8
化学製品 95,497 115,254 13.6 20.7 66,958 82,938 11.2 23.9
食料品・動物 68,820 81,666 9.6 18.7 43,278 52,595 7.1 21.5
雑製品 67,856 80,463 9.5 18.6 64,484 79,331 10.7 23.0
工業製品(原料別製品) 46,468 56,160 6.6 20.9 47,859 59,490 8.0 24.3
非食品原材料 28,055 28,886 3.4 3.0 17,038 18,312 2.5 7.5
動植物性油脂 5,173 6,905 0.8 33.5 5,762 8,774 1.2 52.3
飲料・たばこ 5,817 6,504 0.8 11.8 4,248 4,711 0.6 10.9
合計(その他含む) 653,717 848,507 100.0 29.8 565,439 743,342 100.0 31.5

〔注〕2021、2022年ともに暫定値。再輸出を含む総額。
〔出所〕オランダ中央統計局(CBS)

表3 オランダの主要国・地域別輸出入[国際収支ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(FOB)
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
欧州 476,014 620,924 73.2 30.4 348,096 437,902 58.9 25.8
階層レベル2の項目EU 399,591 530,944 62.6 32.9 274,891 334,238 45.0 21.6
階層レベル3の項目ドイツ 131,744 187,505 22.1 42.3 96,642 111,684 15.0 15.6
階層レベル3の項目ベルギー 58,987 83,017 9.8 40.7 49,243 65,667 8.8 33.4
階層レベル3の項目フランス 48,358 61,734 7.3 27.7 21,956 27,803 3.7 26.6
階層レベル3の項目イタリア 28,311 34,448 4.1 21.7 16,391 17,875 2.4 9.1
階層レベル3の項目スペイン 21,175 26,915 3.2 27.1 12,292 15,356 2.1 24.9
階層レベル3の項目ポーランド 17,802 21,953 2.6 23.3 13,764 16,482 2.2 19.7
階層レベル2の項目英国 42,993 52,518 6.2 22.2 29,313 43,989 5.9 50.1
階層レベル2の項目スイス 10,315 12,344 1.5 19.7 7,368 7,187 1.0 △ 2.5
階層レベル2の項目ノルウェー 5,151 7,232 0.9 40.4 12,902 24,108 3.2 86.9
階層レベル2の項目ロシア 6,919 3,958 0.5 △ 42.8 15,666 18,601 2.5 18.7
アジア大洋州 67,811 74,219 8.7 9.4 114,670 136,934 18.4 19.4
階層レベル2の項目中国 19,360 20,130 2.4 4.0 50,898 61,008 8.2 19.9
階層レベル2の項目ASEAN 12,150 12,717 1.5 4.7 32,412 37,537 5.0 15.8
階層レベル2の項目台湾 9,632 11,555 1.4 20.0 5,748 6,364 0.9 10.7
階層レベル2の項目韓国 8,780 9,677 1.1 10.2 4,472 5,838 0.8 30.5
階層レベル2の項目日本 6,736 7,810 0.9 15.9 8,970 9,788 1.3 9.1
北米 45,897 61,822 7.3 34.7 44,484 73,343 9.9 64.9
階層レベル2の項目米国 39,205 52,529 6.2 34.0 40,648 66,411 8.9 63.4
アフリカ 16,471 23,182 2.7 40.7 11,312 22,437 3.0 98.3
合計(その他含む) 653,717 848,507 100.0 29.8 565,439 743,342 100.0 31.5

〔注〕(1)2021、2022年ともに暫定値。再輸出を含む総額。
(2)アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。北米は米国、カナダ、メキシコの3カ国の合計値。
〔出所〕オランダ中央統計局(CBS)

対内・対外直接投資 
対内は5年連続の引き揚げ超過、対外は大幅増

オランダ国立銀行によると、2022年の対内直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は153億1,800万ユーロの引き揚げ超過となった。前年の1,146億7,900万ユーロの引き揚げ超過からは減少したものの、2018年以降引き揚げ超過が続いている。米国の934億8,400万ユーロの引き揚げ超過、ルクセンブルクの334億7,500万ユーロの引き揚げ超過などが大きく影響した。EU全体では216億6,300万ユーロの引き揚げ超過だった。最大の投資国は英国で766億7,900万ユーロ、次いでドイツの122億8,900万ユーロ、スイスの118億1,600万ユーロと続いた。

対内直接投資案件では、再生可能エネルギー関連の投資が目立った。フィンランドの石油精製大手ネステが2022年6月、19億ユーロを投じてロッテルダムの製油所を拡張すると発表した。2026年上期に稼働予定で、需要が急増する持続可能な航空燃料(SAF)などの再生可能燃料の年間生産量を現在の140万トンから270万トンに拡大する。また、前年に引き続きアムステルダム近郊を欧州のデータハブにする動きが続いている。4月にフランスのクラウドコンピューティング会社スケールウェイ、6月に米国のオンラインバックアップサービスのiドライブ、9月に米国の情報通信大手アカマイ・テクノロジーズがデータセンターの新設計画を発表した(金額非公表)。この他、オランダの物流機能への投資も盛んだった。米国の投資会社ブラックストーンが4月にラストマイル輸送事業を拡大するため、都市型倉庫を運営するマイルウェイへの210億ユーロの追加出資を完了した。

2022年の対外直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は1,146億9,800万ユーロと前年の90億3,900万ユーロから大幅増となった。最も大きかったのはドイツ向けで418億8,800万ユーロ、次いでスウェーデンの184億7,700万ユーロだった。対外直接投資案件では、自動車大手ステランティスが2022年3月、韓国のLGエナジーソリューションと合弁で、50億カナダ・ドルを投じてカナダ・オンタリオ州に電気自動車(EV)用電池セルおよびモジュール製造工場を建設すると発表した。同社はこれに加え5月に、同州2工場でのEV生産のため、36億カナダ・ドルを投資すると発表した。M&A案件は外国企業の持ち株会社による投資が多かった。グローバル企業の多くがオランダの企業優遇税制を活用するためにオランダに持ち株会社を置き、取引を行っているためである。最大の案件は、米たばこ大手のフィリップ モリス インターナショナルによる11月のスウェーデンの嗅ぎタバコ大手スウェディッシュ・マッチの買収(160億ドル)だった。これに次ぐのが、ドイツの自動車大手BMWグループによる2月の中国の合弁会社、華晨宝馬汽車への出資比率の拡大(50%から75%)である。追加出資額は37億3,500万ユーロだった。

なお、2022年の2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、ロシアから事業の撤退や停止、縮小を決定したオランダ大企業としては、ハイネケン(飲料)、ステランティス(自動車)、DAF(トラック)、ING(銀行)、ラボバンク(銀行)、KPMG(コンサルタント)、NXP(半導体)などが挙げられる。

表4 オランダの国・地域別対内・対外直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 金額 金額
欧州 △ 7,915 69,260 25,403 87,135
階層レベル2の項目EU 20,665 △ 21,663 35,393 84,263
階層レベル3の項目ドイツ 14,664 12,289 15,707 41,888
階層レベル3の項目アイルランド 20,038 9,416 △ 34,399 9,184
階層レベル3の項目チェコ △ 84 2,517 109 765
階層レベル3の項目イタリア 7,189 2,516 17,877 14,398
階層レベル3の項目オーストリア △ 643 1,516 △ 1,751 △ 2,037
階層レベル3の項目フランス △ 31,285 △ 1,877 23,210 9,942
階層レベル3の項目スウェーデン 810 △ 2,400 3,325 18,477
階層レベル3の項目スペイン 3,648 △ 5,252 △ 1,241 1,576
階層レベル3の項目ベルギー △ 5,937 △ 5,646 417 2,684
階層レベル3の項目ルクセンブルク 6,291 △ 33,475 12,454 △ 8,658
階層レベル2の項目英国 △ 22,871 76,679 5,336 △ 2,828
階層レベル2の項目スイス △ 4,693 11,816 △ 1,472 9,792
階層レベル2の項目ノルウェー 2,920 3,208 849 1,753
階層レベル2の項目ロシア △ 4,776 △ 4,287 △ 16,389 △ 2,881
オフショア金融センター △ 51,149 9,799 8,386 △ 16,137
ブラジル △ 2,045 9,299 △ 3,181 12,313
中国 420 2,557 6,783 3,919
日本 7,606 1,325 △ 6,713 1,992
インド 814 1,054 △ 468 1,348
香港 △ 2,717 △ 222 1,309 △ 5,094
カナダ 1,189 △ 16,850 3,842 3,780
米国 △ 76,983 △ 93,484 △ 46,800 2,763
合計(その他含む) △ 114,679 △ 15,318 9,039 114,698

〔注〕2023年6月23日改定値。
〔出所〕オランダ国立銀行(DNB)

表5-1 オランダの主な対内直接投資案件(2022年)[M&A以外]
業種 企業名 投資国 時期 投資額 概要
石油精製 ネステ フィンランド 6月 19億ユーロ ロッテルダムの製油所を拡張すると発表。持続可能な航空燃料(SAF)などの再生可能燃料の年間生産量を現在の140万トンから270万トンにする。2026年上期に稼働予定。
物流 GXO 米国 11月 非公表 英国のスポーツ用品小売大手JDスポーツ向けの配送センターを南部ヘールレンに建設すると発表。同社の欧州事業の中心的な物流ハブとなる。新たに1,500人を雇用し、2024年開業予定。
再エネ アージェントエナジー 英国 12月 非公表 バイオ燃料メーカーのアージェントエナジーはアムステルダム港にて、精製グリセリンの生産工場の建設を開始したと発表。年産5万トンを見込む。
化学 HyCC オーストラリア 7月 非公表 アムステルダム港地域に500メガワット(MW)のグリーン水素プラントを建設すると発表。2027年に稼働予定。
物流 ドバイ国立航空運送協会(DNATA) アラブ首長国連邦(UAE) 1月 2億ユーロ スキポール空港内に完全自動化貨物センターを建設すると発表。年間85万トン以上の貨物を取り扱うことになる。2024年に稼働予定。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表5-2 オランダの主な対内直接投資案件(2022年)[M&A]
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
物流 マイルウェイ ブラックストーン 米国 4月 210億ユーロ 米投資会社ブラックストーンはラストマイル輸送事業を拡大するため、都市型倉庫運営において欧州最大手のマイルウェイへの追加出資を完了したと発表。
建築用品 ハンターダグラス 3G キャピタル・パートナーズ 米国 2月 71億ドル 米投資会社3Gキャピタル・パートナーズはカーテン、ブラインド製造のハンターダグラスの株式75%を取得したと発表。
飲料 エカテラ CVC キャピタル・パートナーズ 英国 7月 45億ユーロ ユニリーバは、同社の紅茶事業を手掛けるエカテラを英投資会社CVC キャピタル・パートナーズへ売却を完了したと発表。
EV充電システム アレゴ スパルタン・アクイジション・コーポレーションIII 米国 3月 31億4,000万ドル アレゴは、欧州での電気自動車充電網の構築に向けて、米投資会社との経営統合が完了したと発表。
金融 NNインベストメント・パートナーズ ゴールドマン・サックス 米国 4月 17億ユーロ 米金融大手ゴールドマン・サックスはオランダの資産運用会社NNインベストメント・パートナーズの買収を完了したと発表。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-1 オランダの主な対外直接投資案件(2022年)[M&A以外]
業種 企業名 投資先国 時期 投資額 概要
自動車 ステランティス カナダ 3月 50億カナダ・ドル 韓国のLGエナジーソリューションと合弁で年間生産能力45ギガワット時(GWh)規模のEV用電池セルおよび電池モジュール製造工場を建設すると発表。建設地はカナダ・オンタリオ州。新たに2,500人を雇用し、2024年第1四半期に稼働予定。
不動産 カダンス・サイエンスパートナー 英国 3月 非公表 欧州最大級の商業用のウェットラボを建設するため、不動産会社カナリー・ワーフ・グループとの合弁会社を設立すると発表。建物の完成は2026年の予定。
情報通信 ビットフューリー カナダ 2月 非公表 オンタリオ州にデータセンターを開設したと発表。最大200メガワット(MW)の受電容量を備えることが可能。
物流 ニューコールド 米国 10月 3億3,300万ドル ジョージア州に大規模なコールドチェーン(低温物流)倉庫を建設・運営すると発表。新たに170人を雇用予定。
飲料 ハイネケン ブラジル 2月 3億2,000万レアル サンパウロ州の工場で、バイオマスボイラーなどの再生可能エネルギーの利用拡大や、水の効率化を図ると発表。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-2 オランダの主な対外直接投資案件(2022年)[M&A]
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
フィリップ モリス インターナショナル たばこ スウェディッシュ・マッチ スウェーデン 11月 160億ドル 米たばこ大手フィリップ モリス インターナショナルはオランダ法人を通じてスウェーデンの嗅ぎタバコ大手スウェディッシュ・マッチへのTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表。
BMWグループ 自動車 華晨汽車集団 中国 2月 37億3,500万ユーロ 独自動車大手BMWグループはオランダ法人を通じて、華晨汽車集団が保有する華晨宝馬汽車の株式25%の取得を完了したと発表。これにより、BMWグループの合弁会社「華晨宝馬汽車」への出資比率は50%から75%に引き上がった。
VIP II ブルー 石油・石油製品卸売 ヴィヴォエナジー 英国 7月 23億ドル 資源商社大手ビトル・グループの投資ビークルであるVIP II ブルーは英国の石油卸会社ヴィヴォエナジーの買収を完了したと発表。
モビレ オンライン食品配送 アイフージ ブラジル 11月 15億ユーロ ブラジルのモバイルアプリ提供会社モビレ(オランダの投資会社プロサスの傘下)は、オランダ法人を通じて、オンライン食品デリバリー欧州大手ジャスト・イート・テイクアウェー・ドットコムが保有するアイフージの株式33.3%の取得を完了したと発表。
シェルオーバーシーズインベストメント 再生可能エネルギー スプリングエナジー インド 8月 15億5,000万ドル 英石油大手シェルは、オランダの100%子会社を通じて、インドの太陽光・風力発電大手スプリングエナジーの買収を完了したと発表。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

対日関係 
日本企業はスタートアップのM&Aを実施

2022年の対日輸出は前年比15.9%増の78億1,000万ユーロ、対日輸入は9.1%増の97億8,800万ユーロだった。対日輸出の25.2%を占める再輸出は32.0%増の19億7,100万ユーロ、74.8%を占めるオランダ原産品の輸出額は11.4%増の58億3,900万ユーロだった。貿易赤字は19億7,800万ユーロで前年より2億5,600万ユーロ縮小した。

対日輸出を品目別にみると、最大の輸出品目である機械類・輸送用機器(構成比24.8%)が前年比38.3%増と大きく回復した。その中では特定産業機械(10.8%)の86.7%増が大きく寄与した。次に輸出額が大きい化学製品(15.5%)も、医薬品(8.6%)の48.4%増がけん引し、全体で45.5%増と大幅に増加した。この他、食料品・動物(9.0%)が23.1%増となった。そのうち、乳製品(2.7%)が55.9%増、肉・肉調製品(2.3%)が12.7%増と好調だった。

対日輸入を品目別にみると、最大の輸入品目である機械類・輸送用機器(構成比51.1%)が前年比0.4%増にとどまった。特定産業機械(11.1%)が14.5%増、通信・録音機器(4.1%)が25.5%増、原動機(2.6%)が24.8%増と好調だったものの、道路用車両(6.8%)が半導体不足による生産制約の影響で26.9%減と不振だったことによる。次に輸入額が大きい雑製品(15.2%)は、写真用機器・光学製品(4.1%)が72.8%増と伸長し、全体で21.7%増と拡大した。

オランダ国立銀行によると、2022年の日本からの直接投資受入額は13億2,500万ユーロ、日本への対外直接投資額は19億9,200万ユーロとなった。

日本企業による対内直接投資案件としては、大和証券グループでM&A案件に特化したコンサルタント会社DCアドバイザリーによる2022年1月のアムステルダム拠点の開設、精密機器大手のキヤノンによる2月のフェンロー拠点でのインク生産工場の開設、センサー・計測類のオプテックスによる6月の欧州統括拠点(アムステルダム)の開設が挙げられる。日本企業によるM&A案件としては、倉庫・物流サービスのロジスティード(旧:日立物流)が11月、国際フォワーディング会社サイバーフレートインターナショナルホールディングを買収、子会社化した。この他、産業機械のヤンマーホールディングスが4月に先進的なバッテリーシステム技術を持つスタートアップ、エレオ・テクノロジーズの株式の過半数を取得した事例、総合電機のソニーが11月に人工知能(AI)を使ったスポーツデータの分析と可視化の技術を持つスタートアップ、ビヨンドスポーツを買収した事例などが挙げられる。また、総合商社の双日は3月、オランダの中間会社(Glover Gas & Power)の株式取得を通じて、アフリカ特化ファンドの英ヘリオス・インベストメント・パートナーズから、ナイジェリアの産業顧客向けにガスを供給しているアクセラの株式25%を取得した。

一方、オランダから日本への直接投資案件では、7月にドイツの美容用品大手ヘンケルのオランダ子会社による、資生堂のアジア太平洋地域におけるプロフェッショナル事業の株式80%の取得(123億円)が挙げられる。

表7 オランダの対日主要品目別輸出入[国際収支ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(FOB)
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械類・輸送用機器 1,398 1,933 24.8 38.3 4,985 5,004 51.1 0.4
化学製品 833 1,212 15.5 45.5 1,112 1,071 10.9 △ 3.7
雑製品 872 923 11.8 5.8 1,219 1,484 15.2 21.7
食料品・動物 568 699 9.0 23.1 74 99 1.0 33.8
工業製品(原料別製品) 235 217 2.8 △ 7.7 373 545 5.6 46.1
非食品原材料 189 111 1.4 △ 41.3 80 93 1.0 16.3
飲料・たばこ 60 67 0.9 11.7 34 39 0.4 14.7
鉱物性燃料・潤滑油・その他 3 21 0.3 600.0 21 40 0.4 90.5
合計(その他含む) 6,736 7,810 100.0 15.9 8,970 9,788 100.0 9.1

〔注〕2021、2022年ともに暫定値。再輸出を含む総額。
〔出所〕オランダ中央統計局(CBS)

基礎的経済指標

人口
1,781万人 (2023年1月1日)
面積
4万1,543平方キロメートル(2023年)
1人当たりGDP
5万6,489 米ドル(2022年)
(△はマイナス値)
項目 単位 2020年 2021年 2022年
実質GDP成長率 (%) △ 3.9 6.2 4.3
消費者物価上昇率 (%) 1.3 2.7 10.0
失業率 (%) 4.8 4.2 3.5
貿易収支 (100万ユーロ) 61,718 73,169 73,565
経常収支 (100万ユーロ) 40,956 105,462 88,349
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 16,734 28,630 27,666
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ、期末値) 3,578,658 3,572,836 3,590,012
為替レート (1米ドルにつき、ユーロ、期中平均) 0.8755 0.8455 0.9496

注:
実質GDP成長率:2022年は暫定値。
失業率:15~75歳。
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)、2021年および2022年は暫定値。
経常収支:2021年および2022年は暫定値。
出所:
人口、面積、実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:オランダ中央統計局(CBS)
1人当たりGDP:IMF「世界経済見通し(2023年4月)」
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):オランダ国立銀行(DNB)
外貨準備高(グロス)、為替レート: IMF