外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用

最終更新日:2023年09月13日

外国人就業規制

外国人の就労が認められない業務分野はない。

UAEには、外国人の就労が認められない分野はない。

在留許可

UAE国内で就業を予定する外国人は、UAE入国前に労働許可を取得し、入国後に居住ビザ等を取得する。

2021年連邦法No.33の規定(以下、「連邦労働法」)により、労務を提供する場合、人的資源・自国民化省(Ministry of Human Resource and Emiratisation:MOHRE)から、労働許可を取得しなければならない。
外国人の場合、MOHREから労働許可を取得する(雇用主を通じ、入国前に取得可能)。入国後、各首長国の保健当局(ドバイ首長国であればドバイ保健局)にて血液検査等の健康診断を受け、[1]連邦アイデンティティ・市民権庁(Federal Authority For Identity and Citizenship)よりIDカード(Emirates ID)、[2]内務省(窓口は各首長国の居住外事総局(General Directorate of Residency and Foreigners Affairs:GDRFA))より居住ビザ、[3]MOHREより労働者カードをそれぞれ取得する。なお、投資家の場合は、投資家ビザを取得できる。
また、ドバイ首長国を中心としたいくつかのフリーゾーンでは「フリーランサー」と呼ばれる個人事業主としての事業活動が可能になるライセンスが導入されており、付随して自身や家族のビザ取得も可能となっている。

労働許可と居住ビザの有効期間は、原則として2年間。ただし、JAFZA、DAFZA等のフリーゾーン企業で働く従業員には、3年間の労働許可と居住ビザが発給される。また、2019年以降、所定の条件を満たす投資家や起業家、専門技術者(医者、科学者等)については、10年間のゴールデンビザや5年間のグリーンビザが発給されるようになった。

2022年6月1日より、UAE国内の企業は次のとおり分類され、このカテゴリーの分類によって労働許可取得料が異なる。労働許可取得料は、UAEを含むGCC(湾岸協力会議)加盟国の国籍所有者を雇用する際には免除される。

各カテゴリーの定義は次のとおり。

カテゴリー1:連邦労働法およびMOHRE発行の関連法令(UAE国民及び外国人の労働許可及び契約、並びに賃金保護システム(Wage Protection System)について)に100%従っており、次のいずれか一つを満たす企業。

  • 関連法令に定められている自国民化目標率を毎年3倍以上達成していること。
  • 自国民技能競争力審議会(Emirati Talent Competitiveness Council:Nafis)に協力し、毎年最低500人のUAE国民の採用および研修を行っていること。
  • 首長国または連邦レベルで若いUAE国民がオーナーである中小企業または革新的な性質を有する中小企業。
  • 労働市場の文化的人口統計学的多様性を促す人材計画を取り入れている研修および雇用センター。
  • MOHREの提案に沿って内閣が決定した特定の経済分野および活動に属すること。
  • Higher Corporation for Specialized Economic Zones(Zone Corp)の企業。

カテゴリー2:前記カテゴリー1の項目は満たさないものの、連邦労働法およびMOHRE管轄の関連法令に従っている企業。

カテゴリー3:連邦労働法違反を1つ以上犯し、労働市場の文化的人口統計学的多様性を促す人材計画に従っていない企業。

【新規】労働許可取得料(単位:ディルハム)UAE国内
労働許可の種類 取得料
青少年労働許可 50
一時労働許可 50
パートタイム労働許可 50
研修労働許可 50
労働者試用許可 50
居住ビザ保有者労働許可 50
ゴールデンビザまたはフリーランス労働許可(2年間) 250
【新規】労働許可取得料(単位:ディルハム)UAE国外
労働許可の種類 カテゴリー1
取得料
カテゴリー2
取得料
カテゴリー3
取得料
労働許可の申請 50 50 50
労働許可の発行(2年間) 250 1,200 3,450
【更新・変更】労働許可関連取得料(単位:ディルハム)
労働許可の種類 カテゴリー1
取得料
カテゴリー2
取得料
カテゴリー3
取得料
労働許可の更新(2年間) 250 1,200 3,450
雇用契約の修正 50 50 50
労働許可の種類変更 50 50 50
雇用主変更に伴う労働許可 250 1,200 3,450

2016年1月1日より、新規雇用者の入国または居住ビザの資格変更前(UAE国内での転職の場合)に、MOHREの指定の雇用内定通知を作成し同省へ提出が求められるようになった。入国後、内定通知を踏まえた雇用契約書の作成および提出も必要である。詳細については、ジェトロ「法務関連ビジネス情報」のページ内「UAE労働省の新省令:雇用契約の新書式(2016年3月)」を参照。

2016年6月末より、ドバイ首長国では健康保険への加入が義務付けられた。これによりドバイ首長国に所在する事業者は、居住ビザのスポンサーになっている従業員などに対してドバイ保健局の基準に適合した保険を提供しなくてはならず、こうした保険に加入しない従業員には、居住ビザの取得・更新が行われなくなった。詳細については、ジェトロ「法務関連ビジネス情報」のページ内「ドバイ健康保険加入義務化の最新状況(2015年7月)」を参照。
なお、アブダビ首長国に所在する事業者にも従業員などの健康保険の加入が義務付けられているが、他首長国に所在する企業にはそうした義務はない。

2018年10月より、労働者カードの取得時に雇用保険への加入が義務付けられた。詳細はジェトロの記事「UAE、雇用時の銀行保証金の撤廃に伴う新保険を導入(2018年11月6日付)」を参照。

現地人の雇用義務

特定業種の企業に対し、あるいは企業の規模に応じて、UAE国民の雇用義務がある。

周辺国同様、労働力の自国民化政策(Emiratization)を進めるUAEには、同政策を所管するMOHREがあり、次のような業種別のUAE国民雇用義務を規定する。

  • 従業員数50人以上の輸入・卸売・小売等の流通業(Trading):全従業員に占めるUAE国民雇用義務の割合を、2%にする。
  • 保険業:同じく5%にする。
  • 銀行業:同じく4%にする。

なお、前記業種に加え、従業員100人以上の企業では、ビザ発行等の手続きを行う渉外担当社員(PRO)は、UAE国民でなければならないとされる。

2022年6月から、50人以上を雇用する企業については、2023年から2026年まで、高度技能者に関するUAE国民の割合を半年ごとに1%ずつ上げ、2026年に10%にしなければならないとされた。また、技能者が0~50人の場合は1人、51~100人は2人、101~150人の場合は3人、151人以上の場合は、50人ごとに1人のUAE国民を、最低でも雇用しなければならないとされた。

求められるUAE国民の雇用を達成できない企業は、2023年については、未達成の人数1人につき、毎月AED6,000を支払わなければならず、当該金額は、翌年以降、毎年月額AED1,000ずつ増加される。当該金額を支払わない場合、当該企業の従業員に対する労働許可の新規発行および更新の停止等のペナルティを受ける。

また、2023年7月には適用対象が拡大され、従業員数が20~49人の企業においても2024年までに少なくとも1人、2025年までに追加でもう1人のUAE国民の雇用が義務付けられた。
ジェトロの記事「UAE政府が自国民雇用制度の適用企業拡大を発表、中小企業も対象に」(2023年7月14日付)

なお、フリーゾーンでは、UAE国民の雇用を求められていない。

その他

雇用・労務に関する法制度は、主に連邦労働法で定められているが、一部フリーゾーンは異なる法体系に属している。
2020年の新型コロナウイルス感染拡大に伴い、一部で特別措置が定められた。

雇用・労務に関する法制度

UAEにおける雇用・労務に関する法制度は、どの首長国においても連邦労働法が適用される。首長国やフリーゾーンによっては、独自の労働に関する規則が定められている場合もあるが、連邦労働法の範囲内で策定されている。
ただし、ドバイ首長国のドバイ国際金融センター(Dubai International Financial Centre : DIFC)と、アブダビ首長国のアブダビグローバルマーケット(Abu Dhabi Global Market : ADGM)は、他のエリアと異なる法体系に属し、法律や裁判所も独自のものを有し、労働法についても、連邦労働法と異なる法律が存在する。

ジェトロ:アラブ首長国連邦における雇用及び労務に関する法制度PDFファイル(776KB)

失業保険

2023年1月から失業保険制度が導入された。UAEの居住者は、UAE国民か外国人かにかかわらず、40~100ディルハムを毎年失業保険スキームのために支払うことで、失業時に、毎月基本給与の60%(ただし、最大毎月2万ディルハム)を受領できることになる。失業保険制度は、一次的雇用の従業員、投資家、家事労働者、年金受領者および18歳未満の者は対象外となる。