日本からの輸出に関する制度

水産物の輸入規制、輸入手続き

品目の定義

本ページで定義する水産物のHSコード

0302:
魚(生鮮、冷蔵。第0304項のものを除く。)
0303:
⿂(冷凍。第03.04項のものを除く。)
0304:
⿂のフィレその他の魚肉(生鮮、冷蔵)
0305:
⿂(乾燥、塩蔵、塩水漬け、くん製)、食用の魚粉等
0306:
甲殻類(活、生鮮、冷蔵、乾燥、塩蔵、塩水漬け、くん製等)、食用の甲殻類の粉等
0307:
軟体動物(活、生鮮、冷蔵、乾燥、塩蔵、塩水漬け、くん製)、食用の軟体動物の粉等
0308:
水産無脊椎動物(活、生鮮、冷蔵、乾燥、塩蔵、塩水漬け、くん製。0306および0307を除く。)、食用の水産無脊椎動物の粉等(0306および0307を除く。)
0309:
魚並びに甲殻類、軟体動物及びその他の水棲無脊椎動物の粉、ミール並びにペレット(食用に適するものに限る。)
1604:
魚(調製しまたは保存に適する処理をしたもの)、キャビアおよびキャビア代用物
1605:
甲殻類、軟体動物およびその他の⽔棲無脊椎動物(調製しまたは保存に適する処理をしたもの)

具体的な製品の内容により異なる場合があるため、詳細は必ず確認してください。

関連リンク

米国の輸入規制

1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)

調査時点:2024年1月

米国政府は、水産物の輸入に際し、米国の食品安全基準やラベル規制などに準拠していることの証明、米国側でのサンプリング検査などを課しています。準拠していないと判断されると出荷物が拘留されるため注意が必要です。輸入警告(インポートアラート)は米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)のウェブサイトで公開されていますが、その内容は頻繁にアップデートされているため、注意が必要です。

2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)

調査時点:2024年1月

水産物の輸出に際して、米国海洋大気庁(NOAA)がかかわるものとそれ以外のものがあります。次の1.から4.の4つはNOAAにかかわるもので、NOAA関係以外のものは次の5.から7.があります。

1. 水産物輸入監視制度(U.S Seafood Import Monitoring Program:SIMP)

特定の水産物(優先魚種)を米国に輸入する場合、輸入事業者(Importer)を通じて漁獲情報や陸揚げ情報などを米国当局へ提供・報告することが義務付けられています。
*なお、米国を原産国とする特定の優先魚種を加工用原料として使用した水産加工品を米国へ輸出する場合にも、この水産物輸入監視制度の対象となります。

概要

米国海洋大気庁(NOAA:National Oceanic Atmospheric Administration)は、2016年12月9日に水産物輸入監視制度(SIMP)を設立する最終規則を公表しました。SIMPは、特定の魚介類製品の米国への輸入について、違法、無報告、無制限(IUU=Illegal, Un-reported, Un-regulated)の漁業を撲滅するために、必要な漁獲報告および記録保持要件を定め、偽装された水産物が米国に輸入されることを防止することにより、米国経済、世界的な食糧安全保障および海洋資源の持続性を目的とする制度です。

SIMPは、IUU漁業、または水産物偽装のターゲットとなりやすい特定の優先魚種の輸入について、漁業許可、漁獲報告および記録保持要件を定めています。これらの収集されたデータにより、合法的に漁業生産されたかを証明し、これらの優先魚種が米国へ輸入される時点で、漁獲から流通までトレースすることを可能にしようとするものです。

優先魚種一覧
※米国関税率表(United States Harmonized Tariff Schedule:HTS)における当該規制の対象品目のHTSコードについては、「米国水産物輸入監視制度(SIMP)の対象品目一覧表」を参照。
  • アワビ(Abalone)
  • 大西洋タラ(Atlantic Cod)
  • ワタリガニ(大西洋)(Blue Crab)
  • シイラ(マヒマヒ)(Dolphinfish)
  • ハタ類(Groupers)
  • タラバガニ(レッドキング)(King Crab)
  • 太平洋タラ(Pacific Cod)
  • レッドスナッパー(タイ類)(Red Snappers)
  • ナマコ類(Sea Cucumber)
  • サメ類(Sharks)
  • エビ類(Shrimp)
  • メカジキ(Swordfish)
  • マグロ類(ビンナガ、メバチ、カツオ、キハダ、クロマグロ)(Tunas)

※NOAAは2022年12月に、優先魚種の拡大を含む規則案を提案していましたが、パブリックコメントの結果を踏まえ、当該規則案は2023年11月に撤回されました。

執行
水産物輸入監視制度(SIMP)に記載されている優先魚種で、エビ類とアワビを除くものは2018年1月1日から義務化されています。次にエビ類とアワビは、2018年4月23日付け米国海洋大気庁(NOAA)の告知により、2018年12月31日から義務化(2019年4月1日までは移行期間)されました。輸入品についても同じ順守日です。
収集される情報
  1. 漁獲または生産者
    • 漁獲船舶の船名と旗国
    • 漁業権の証拠(許認可番号)
    • 特定可能な船舶識別名(もしあれば)
    • 養殖施設の名称
    • 漁具の種類

    漁獲海域(または漁場)および漁具の種類は、所管する所管官庁が使用する報告規則およびコードに従っての記載を要します。報告要件が存在しない場合は、食糧農業機関(FAO)の海域(または漁場)と漁具コードの使用が推奨されています。

    • 魚の種類‐水産科学漁業情報システム(ASFIS)3アルファコード
    • 水揚げ日
    • 最初の水揚げ地
    • 水揚げ時の水産物の形態- 製品の数量および重量
    • 天然または養殖による漁獲水域
    • 当該の魚の水揚げ先または配送先(加工事業者)の名称
  2. 登録輸入者
    • 名前、所属、連絡先
    • NOAA漁業は国際漁業貿易許可証(IFTP: International Fisheries Trade Permit)番号を発行(なお、国際漁業貿易許可証は毎年更新する必要があります。米国居住の輸入業者、輸出業者、または代理人が、NOAA 漁業許可(NOAA Fisheries Permits)のページからオンラインで申請可能です。)
    • 輸入者は、これらの情報についての記録を保管する責任を持つ。
    • 水産物の洋上転載に関する履歴情報(漁船名、船荷証券、船荷目録)
    • 製品の加工処理、再加工処理、混載に関する記録

2. ドルフィンセーフ認証制度

ツナ缶の原料になるマグロやカツオが、イルカをはじめとする海産哺乳類にダメージを与えずに漁獲されたことを証明する必要があります。このプログラムの条件を満たす原料を使用したツナ缶は「ドルフィンセーフ・ラベル」を貼付することが許されます。ラベルの貼付自体は販売上必須ではありませんが、ドルフィンセーフ制度に対応・準拠していない場合にはマグロ・カツオ類を米国に輸出することはできません。ただし、生鮮は対象外です。

※マグロ・カツオ類を「ドルフィンセーフ」として米国に輸出するには、米国NOAAが定める様式「漁業起源証明書」(Fisheries Certificate of Origin:NOAA Form 370)と、それに対応した「船長による保証陳述書」(Captain’s Statement)を提出する必要があります。船長はNOAAが公開しているテキスト「船長用イルカ無害研修コース」を受講する(読む)必要があります。
保護の対象となるのは、マイルカ類(いわゆる典型的なイルカの仲間)のすべての種類になります。

認証対象になる魚種および製品のHSコードは関連リンクを参照してください。

3. ウミガメ保護のためのエビ輸入法(エビ・カメ法)

1989年11月21日に制定された公法101-162、セクション609(16 U.S.C. 1537)により、ウミガメに悪影響を与える可能性のある商業漁業技術で収穫されたエビは米国に輸入することができません。
米国国務省がこの法律の主要な実施機関であり、NOAAが技術顧問を務めています。

エビ輸入法では、絶滅危惧種であるウミガメの保護のため、天然エビの底引き網採取において、ウミガメの混獲の可能性がない物のみを輸入許可します。水産庁では北海道の一部海域で採取されたエビ(カメのいない冷水域であること)と養殖エビ(漁獲前日までに30日以上飼育)についてのみ証明書を発行し輸出が許可されています。

4. 海産哺乳類を混獲する漁業による水産物の輸入規制(海産哺乳類保護の混獲削減プログラム):2026年1月から開始

1972年に施行された海産哺乳類保護法(MMPA: Marine Mammal Protection Act)は、国際的な商業漁業に伴う海産哺乳類(クジラ、イルカ、アザラシなどの海に棲息する哺乳類)の混獲を減らすことを目的としており、2017年1月1日に施行された米国海産哺乳類保護法に基づく輸入規制により、米国に魚や水産物を輸出する外国の漁業に対して海産哺乳類の混獲を一定水準以下にするように求めており、米国と同等の混獲削減措置(米国は監視員の乗船、混獲上限の設定、漁具の改良等を実施している)を導入していない漁業によって漁獲された水産物の輸入を禁止しています。外国の漁業国が米国のプログラムに匹敵する有効な規制プログラムを構築する時間を与えるため、輸出国には2025年12月31日までの猶予期間を設定しています。
この猶予期間の間に、(1)外国漁業の特定、(2)海産哺乳類の規制プログラムの構築、および(3)米国の基準との同等性の認定(当該漁業において海産哺乳類の混獲に対する対応が米国と同等であると認められること)、を実施すること、としており、水産物および水産加工品を米国に輸出する国に対する規制の構築とその進捗を米国へ報告することを義務付けています。
NOAAは、輸出国における海産哺乳類の混獲レベルに基づき外国漁業リスト(LFF: List of Foreign Fisheries)を作成しており、米国に水産物や水産加工品を輸出する漁業国について、当該国の漁業が「輸出漁業」または「免除漁業」に該当するかを確認することができます。「輸出漁業」とは、海産哺乳類の混獲がほとんどあり得ないとは言い切れない、もしくは海産哺乳類への影響に関する情報が不十分な漁業のことを指し、「免除漁業」とは、海産哺乳類の混獲がほぼあり得ない漁業を指します。
各国は2021年11月30日までに同等性認定申請書を提出し、2022年12月31日までに、米国に魚や水産物を輸出するための商業漁業に関する同等性認定を受けることとなっていましたが、猶予期間を2025年末まで延長し2026年1月から施行する旨が2023年11月17日に公表されました。米国が申請国の漁業において米国と同等の混獲削減措置が導入されていないと判断した場合には、当該漁業で漁獲された水産物および水産加工品の対米輸出が不可となります。また、混獲の恐れがあると判断した場合や、混獲の恐れはないものの米国が特定するHSコードに対象の水産物および水産加工品が含まれる場合には、禁輸漁業の漁獲物が含まれていないことを証明する認容証明書の提出が必要となります。

このほか、NOAAが関係する以外では、次のものがあります。

5. 施設登録・事前通知

許可やライセンス、商品の登録などは特に必要ありませんが、FDAへの食品関連施設登録と事前通知が必要です。

【FDA食品施設登録】
バイオテロ法により、米国内でヒトや動物の消費に供するための食品を製造/加工・梱包・保管する米国内外の施設の所有者、経営者またはエージェントは、FDAに食品関連施設を登録することが義務付けられています。さらに食品安全強化法により、登録は偶数年の10月1日から12月31日の間に更新することが義務付けられています。

【FDA向け事前通知】
食品の到着までに事前通知を提出する必要があります。(連邦規則集第21巻第1.279(c):21 CFR 1.279(c))

6. 全米貝類衛生プログラム(National Shellfish Sanitation Program:NSSP)

次の(1)~(4)に該当する(※)二枚貝(カキ、アサリ、またはムール貝など)を米国に輸出する場合には、貝類の衛生管理を促進および改善することを目的とした全米貝類衛生プログラム(National Shellfish Sanitation Program:NSSP)を順守するとともに、同プログラムの登録リスト(Interstate Certified Shellfish Shippers List:ICSSL)に掲載される必要があります。2024年1月時点で、日本はICSSLに含まれていないため、加工されていない二枚貝の輸出はできません。ただし、ホタテ貝柱については、「二枚貝」の定義から外れているため、日本からの輸出が可能です。

※次のいずれの状態でもNSSPの対象となる。
(1)剥いたもの、または殻付きのもの
(2)生のもの(水揚げ後処理も含む)
(3)冷凍されたもの、または冷凍されていないもの
(4)ホール、またはその一部

7. 密封容器入りの低酸性缶詰と酸性化食品

次のカテゴリーに入る水産加工品については、輸入前の手続きが必要なため該当するかどうかを確認してください。

密封容器(レトルトパウチ、缶詰、瓶詰など)入りの低酸性缶詰(常温流通)と酸性化食品(常温流通)
  • 水分活性が0.85より高く、pHが4.6より高い、密封・常温で流通する食品は、低酸性缶詰食品として、連邦規則集第21巻第108条および第113条(21CFR Part108,113)が適用されます。当該食品を製造/加工、梱包する施設は、食品缶詰施設登録様式FDA-2541、またはFDA産業システム(FDA Industry Systems)により施設登録を行う必要があります。また、それぞれの食品、容器の大きさと種類、製造方法ごとに、殺菌条件などの製造工程に関する情報を様式FDA-2541dもしくは2541f,2541gなどの適切なフォームによってFDAに提出しなければなりません。
  • 水分活性が0.85より高く、酸または酸性食品を加えることによりpHを4.6以下の低酸性状態にした加工食品を密封・常温で流通する商品は、酸性化食品として、連邦規則集第21条第108条および第114条(21CFR Part108,114)が適用されます。当該食品を製造/加工、梱包する施設は、食品缶詰施設登録様式FDA-2541、またはFDA産業システム(FDA Industry Systems)により施設(FCE)登録を行う必要があります。また、それぞれの食品、容器の大きさと種類、製造方法ごとに、殺菌条件などの製造工程に関する情報をFDAに提出しなければなりません。

なお、一貫して冷蔵または冷凍で保存・流通する場合は、FCE登録や製造工程情報の提出は不要です。

関連リンク

関係省庁
米国海洋大気庁(NOAA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農務省・動植物検疫局(APHIS)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農務省・食品安全検査局(FSIS)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
米国国土安全保障省・米国税関国境取締局(CBP)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省・動物検疫所外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
マグナソン・スティーブンス漁業保存・管理法
食品需給研究センター:米国水産物輸入監視制度(和訳)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.0MB)
全米貝類衛生プログラム(NSSP)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
バイオテロ法(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(401KB)
連邦食品医薬品化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act:FD&C Act)(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2.7MB)
米国連邦規則集
海洋哺乳類保護法の水産物輸入規定に基づく期限の変更について(連邦官報)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)から入手できる主な情報
経済産業省から入手できる主な情報
農林水産省から入手できる主な情報
水産庁から入手できる主な情報
水産物トレーサビリティ協議会から入手できる主な情報
ジェトロから入手できる主な情報

3. 動植物検疫の有無

調査時点:2024年1月

なし