外国企業の会社設立手続き・必要書類

最終更新日:2023年12月01日

外国企業の会社設立手続き・必要書類

オーストラリア法人を設立する際にはオーストラリア証券取引員会に法人の登録を申請し、オーストラリアン・カンパニー・ナンバー(ACN)を、外国企業の支店を開設する際にはオーストラリアン・レジスタード・ボディ・ナンバー(ARBN)を取得する。このほか、税務対応上、オーストラリア事業者番号(ABN)などの取得も必要。

法人設立

次の手順に従い、オーストラリア証券取引委員会(Australian Securities Investments Commission:ASIC)に法人の登録を申請する。以下は主な手順であり、詳細はASICのサイトを要参照。

  1. 法人形態の決定
    法人の形態には主に、事業による営利を目的とした会社(Company)のほか、非営利または慈善団体(Not-for-profit or Charitable Organisations)、特別目的会社(Special Purpose Company)なども存在するが、会社(Company)の設立手順については以下。
  2. 会社名の決定
    会社名には主に次のルールが定められている。詳細は、ASICのサイトを要参照。
    1. 既存の会社と同一名であってはならない。
      希望する会社名が既存の社名または商号(Business name)と重複するかどうかは、ASICの次のサイトで検索することができる。
      Check name availability (ASIC)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
    2. 社名に使用する文字、単語に関する制限
      英語のアルファベット、ローマ数字、特定の記号以外を使用してはならない。また、誤解を与える可能性があるため、例えば「bank」(銀行)、「trust」(受託団体)、「Royal」(王立)など政府の許可なしに社名に使用してはならない単語やフレーズがある。このほか、不快な単語や違法行為を示唆する単語も、認められない可能性がある。
    3. 社名には会社の株主形態を示す必要がある。
      株式会社の形態には、株主の責任が有限(limited)であるか無限(unlimited)であるか、公開会社(public company)であるか非公開会社(proprietary company)であるかといった違いがあり、会社名の末尾に、以下のような株式の所有形態を示す単語またはフレーズを明記する必要がある。 例:「○○Proprietary Limitedまたは略称Pty Ltd等」(○○非公開有限責任株式会社)、「○○Limitedまたは略称Ltd」(○○公開有限責任株式会社)
  3. 会社の運営形態の決定
    定款または置き換え可能なルール(Replaceable rule)を選択する必要がある。
  4. 運営責任者の義務
    取締役(Director)または秘書役(Secretary)といった会社の運営責任者(Officeholder)は、会社の記録を常に更新すること、必要に応じて申請手数料や年間更新手数料を支払うことなど、会社法(Corporations Act)が定める法的義務を遵守しなければならない。
  5. 運営責任者の同意
    取締役(Director=18歳以上)、秘書役(Secretary=18歳以上)、株主(Member=少なくとも1人必要)による書面での同意が必要である。非公開会社の場合、少なくとも取締役および秘書役1人ずつが、オーストラリアに在住していなければならない。公開会社の場合、少なくとも2人の取締役がオーストラリアに在住している必要がある。
  6. 会社登録
    オーストラリア政府の法人登録サービス(Business Registration Service=BRS)から、オンラインで会社登録を申請する(一部の例外を除き書面申請は不可)。会計士や弁護士等が代理で登録することも可能。申請が認められれば、ASICからオーストラリア会社番号(ACN)、登録証明書、オンライン・サービスの利用に必要な数字8桁の暗証番号(Corporate key)が付与される。会社名の登録予約手数料は55豪ドル、株式会社の登録申請手数料は538豪ドル。

オーストラリア証券投資委員会(ASIC):

ジェトロ調査レポート:オーストラリアにおける企業設立および税務等に関するガイド(2023年改定版)

支店開設

外国企業がオーストラリアに支店を開設する場合、次の手順に従って外国企業登録を申請する。

    1. 会社名の決定
      1. 既存の会社と同一名であってはならない。
        希望する会社名が既存の社名または商号(Business name)と重複するかどうかは、ASICの次のサイトで検索することができる。
        Check name availability (ASIC)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
      2. 社名に使用する文字、単語に関する制限
        英語のアルファベット、ローマ数字、特定の記号以外を使用してはならない。また、誤解を与える可能性があるため、例えば「chamber of commerce」(商工会議所)、「trust」(受託団体)、「Royal」(王立)など政府の許可なしに社名に使用してはならない単語やフレーズがある。このほか、不快な単語や違法行為を示唆する単語も、認められない可能性がある。
    2. 必要書類の記入・送付
      1. 外国企業登録申請書(Form 402PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(211KB)
        前記ASICウェブサイトからダウンロードしたForm 402に必要事項を記入し、紙の書面を以下住所に郵送して申請する。オンラインによる申請は2023年12月時点で不可。外国企業登録申請手数料は538豪ドル。Form 402とともに小切手または郵便小切手(money order)で送付する。なお、外国企業の取締役は事前に「取締役特定番号」(Director Identification Number)を登録することが法律で義務付けられている。取締役の名前が同番号に登録されていない場合、申請が却下されるため注意が必要である。詳細は「取締役特定番号」の項を参照。

        送付先住所:Australian Securities and Investments Commission
        PO Box 4000
        Gippsland Mail Centre VIC 3841 Australia

      2. 添付書類
        • Form 402に以下の書類を添付して送付する(英語以外の言語で記載されている場合は英語の翻訳文も添付)。
        • 有効な会社登録証明書の認証付き写し
        • 有効な定款の認証付き写し
        • 現地代理人(local agent)の任命覚書(memorandum of appointmentForm 418PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(121KB))または法定委任状(power of attorney)。Form 418または法定委任状を執行する代理人は、当該外国企業に代わって手続きを行う権限を与えられたオーストラリア居住者の個人または会社でなければならない。
        • Form 402に記載された取締役リストに記載されたオーストラリア居住者および現地取締役会の構成員の権限について記載した覚書
    3. 外国企業登録
      オーストラリア登録法人番号(ARBN)と登録外国企業としての義務
      これらの申請により、外国企業登録申請が承認されると、ARBNが付与される。銀行または他の預金預け入れ機関を除き、外国企業は、[1]本社がある国・地域名、[2]登録された事務所である場合は「registered office」、[3]該当する場合は株主の有限責任(社名の末尾に"Limited"または"Ltd"が含まれない場合)、をそれぞれ、すべての事務所および事業所の前に掲示することが義務付けられている。また、すべての公的書類にARBNを記載しなければならない。

オーストラリア証券投資委員会(ASIC):

共通(法人設立/支店開設)

このほか、納税手続きのため、オーストラリア商務登記官(Australian Business Register:ABR)が発行する11ケタのABNの取得も必要である(無料)。
ABNを取得すると、オーストラリア税務当局(Australian Taxation Office:ATO)に対して、GST(Goods and Service Tax)登録、PAYG(Pay As You Go:源泉課税、連結納税ベース)などの登録などの納税手続きができるようになる。ABRのサイトのほか、政府のポータルサイト「Business Registration Service外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」でABNの取得、GSTなどの税登録など同時に登録可能。

政府ビジネス・ポータル “Support for businesses in Australia外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
オーストラリア商務登記官 “Applying for an ABN外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

取締役特定番号

連邦政府は2021年11月1日、企業経営者の身元の不正利用やなりすましを防止するため、取締役特定番号(Director Identification Number)を導入した。同番号は15桁から成り、取締役1人に対して登録できる番号は生涯1つで、一度登録すれば転職や異動の際に更新する必要はない。連邦政府のアプリ「myGovID外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」からオンラインで登録できる。外国企業の現地法人を含む、オーストラリア国内で登記された法人の取締役約270万人が対象。新たに就任する取締役の登録期限は、就任日以前。

オーストラリア証券投資委員会(ASIC):取締役特定番号 “Director identification number 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

外国企業の会社清算手続き・必要書類

外国企業の撤退・解散・清算は一定の要件を満たせば可能である。

会社登録を自発的に取り消す場合(Voluntary deregistration

次の要件をすべて満たした場合、ASICは会社の登録を取り消すことができると規定している。

  1. 会社のすべてのメンバーが同意すること
  2. 既に事業を行っていないこと
  3. 総資産が1,000豪ドル未満であること
  4. 支払われていない従業員の権利を含む未処理の負債を抱えていないこと
  5. いかなる法的紛争にも関与していないこと
  6. 2001年会社法に定められた手数料および違反金の支払いを完了していること

そのほか、ASICのページに記載の推奨事項も要参照。
自発的に登録を抹消する場合の申請書類(Form 6010PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(32KB))はASICのウェブサイトからダウンロード可能である。

オーストラリア証券投資委員会(ASIC):自発的な会社登録の抹消 "Voluntarily deregistering a company外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

負債の支払いが可能な会社を解散する場合(Winding up solvent company

ASICが定めた手順は次のとおり。ステップごとに申請書類があり、ASICに提出する。

  1. 統制の取れた形で会社の課題を整理する。取締役が解散の宣言をする。申請書類(Form 520PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(97KB))を提出する。
  2. 社内において解散についての特別決議で可決させる、また、会社の資産を処理する作業を管理するため清算人を任命する。申請書類(Form 205PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(32KB))を提出する。
  3. 会社を解散する決議の通知をASICに対して行う。
  4. 清算人が清算を終了し、ASICに対して申請書類(Form 523)を提出する。

オーストラリア証券投資委員会(ASIC):負債の支払いが可能な会社の解散 "Winding up a solvent company外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

破産(Insolvency

負債の支払いが困難となり経営破たん状態に陥った場合、破産手続きとして次の選択肢がある。

  1. 任意管理手続き(Voluntary administration
    会社が破産または破産状態にあると取締役会が判断した場合、任意管理人(voluntary administrator)を任命し、会社の再生または清算に向けた手続きを一任することができる。経営破たん状態に陥った会社を処理する方法として一般化している。
  2. 清算(Liquidation
    取締役会の同意に基づき、清算人または裁判所への申請によって会社を清算することができる。
  3. 管財人の管理下に置くこと(Receivership
    債権者は管財人を任命して破産した会社を債権者の管理下に置き、債務の回収を図ることができる。

破産法の改正

改正破産法が2021年1月1日に施行された。100万豪ドル未満の負債を抱え、破産状態または近い将来破産することが見込まれている小規模企業を対象に、債務の返済手続きに携わる専任の「再建実務者」(restructure practitioner、ASICに登録された清算人(registered liquidator)が務める)が新設されるなど、再建・破産手続きの迅速化・簡素化が図られた。

オーストラリア証券投資委員会(ASIC):

その他

外国人投資家・企業がオーストラリアへ投資を行う場合は、連邦政府の外国投資審査委員会(FIRB)の事前承認が必要か確認する必要がある。

詳細は、「外資に関する規制」を参照。