中国企業に生産を委託する方法について:中国

質問

中国企業に生産を委託する方法と留意点について教えてください。

回答

以下では、「加工貿易」と「一般貿易」の各々の形式で生産を委託する方法およびこの2つの方法の比較についてメリット・デメリットを詳しく紹介します。

1. 加工貿易と一般貿易の各々の形式で生産を委託する方法

中国企業に、最終製品の加工を委託する方式として、「加工貿易」と「一般貿易」という2つの貿易方式があります。以下詳細説明します。

(1) 加工貿易

  1. 定義
    加工貿易(保税加工貿易)とは、中国企業が全部あるいは一部の原材料と補助材料、部品、コンポーネント(装置として機能するパーツ群)、包装材料を保税で輸入し、加工あるいは組み立て後に完成品を再輸出する経営活動を指します。委託加工を委託する日本企業(以下「日本企業」という)と、委託加工を受託する中国企業(規定では、経営企業) (以下「中国企業」という)との間で、委託加工契約を締結して進めることになります。
  2. 種類
    1. 加工貿易は、来料加工と進料加工が一般的な方法です。
    2. 来料加工とは、輸入材料が日本企業から無償で提供され、日本企業の要求に基づき加工あるいは組み立てを行って加工賃を受領し、完成品を日本企業に輸出する形態です。税関は、来料加工の輸入材料に対して保税監督管理を行います。また、来料加工は日本企業(加工委託者)と来料加工企業が、必ず一対一となります。
    3. 進料加工とは、中国企業が、原材料などを保税貨物として日本企業から購入するか、中国企業が独自に輸入し、完成品に加工して、材料輸入代金を中国企業により対外送金し、中国企業から日本企業に輸出し、完成品の契約代金を日本企業から受領する形態です。税関は、進料加工の輸入材料に対して保税監督管理を行います。なお、いずれの形式でも中国企業は保税輸入する原材料等の他に、国内で原材料を調達することもできます。(以下6-f参照)
  3. 加工貿易の前提条件
    1. 加工貿易実⾏可能性の可否判断
      輸⼊原材料および完成品の輸⼊、または輸出が、中国政府によって制限もしくは禁⽌されている商品ではないかを確認します。加工貿易制限類および禁⽌類の品⽬については、加工貿易制限類目録外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますおよび加工貿易禁止類商品目録外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照ください。加⼯貿易の分類品⽬⽬録は頻繁に変更されますので、必ず最新情報を確認してください。
    2. 中国企業に対する要求
      中国企業は所轄の税関において輸出入貨物の受取人および荷送人の届出を申請し、輸出入経営権を有していなければなりません。中国企業は「インターネット+税関」一体化プラットフォーム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますまたは国際貿易「単一窓口(ワンストップサービス)」標準版で税関に申請し、「税関機関届出情報表」を提出する必要があります。
  4. 加工貿易の手続き
    1. 中国企業は「加工貿易企業の経営状況および生産能力情報システム」に登録し、「加工貿易企業の経営状況および生産能力情報表」に記入する必要があります。
    2. 中国企業の主管部門に対する加工貿易手冊の登録手続き(中国語:加工贸易货物手册设立手续)

      中国企業は「インターネット+税関一体化オンラインサービスプラットフォーム」または国際貿易「単一窓口(ワンストップサービス)」でオンライン申請を行います。中国企業はオンライン上で、貿易方式、単耗(歩留り)、輸出入港および輸入材料と輸出製品の商品名称、HSコード、規格、単価および原産地などの内容を記入し、日本企業と締結した契約書を提出する必要があります。また、第三者会社に加工委託を行う場合は、第三者会社と締結した委託加工契約書などの資料を提出する必要があります。

    3. 中国企業の主管税関に対する無償提供する輸入設備手冊の登録手続き(詳細は下記((6)-(e)項ご参照)
      加工貿易業務において、中国企業が日本企業の無償提供する設備を使用する場合、「インターネット+税関一体化オンラインサービスプラットフォーム」または国際貿易「単一窓口(ワンストップサービス)」を通して、オンラインで無償提供設備の登録データを入力する必要があります。
  5. 加工貿易契約について注意すべき点
    1. ⽣産委託者(日本企業)と⽣産受託者(中国企業)の義務と責任の範囲
      1. (ア)契約条件の明確化
        ⽣産を委託するうえで想定される以下の内容を含むあらゆる事項について、両当事者で討議したうえで、⽣産委託契約書に条項として以下の合意事項を盛り込みます。
        現地調達部材の特定と品質管理;中間検査と最終検査要領;生産品の仕様および合格品と不合格品の処理;包装および梱包仕様;加工および生産上の歩留り率;立ち入り検査;合格品の納期;日本企業での品質検査と保証;生産対価とその範囲および決済⽅法;加工や⽣産上の技術指導などにかかわる対価と費用;その移転技術や加工と⽣産上のノウハウの守秘義務;工業所有権;無償提供設備に関する取扱い;その他一般契約条項(契約期間;輸出許可;契約解除;紛争処理;不可抗力条項;仲裁条項;準拠法など)
      2. (イ)中国企業に順守を求めるべき項目
        1. 委託⽣産品の仕様変更
          日本企業の事前承認をとる;生産品の原材料のうち現地調達されるものは、中国企業の自己責任と費用で第三者から調達する;契約先が下請⼯場を利⽤する場合も、日本企業の同意を得る など。
        2. 第三者への輸入原材料の販売禁止
        3. ⽣産された商品を、日本企業の了承なく第三者に販売しない
        4. 提供した技術や⽣産上のノウハウおよび契約内容などが、第三者に洩れないよう守秘義務を守る
        5. 商標ラベルを作成する場合、⽇本側が加⼯を委託した製品以外に日本の商標を使⽤しない など
      3. (ウ)加工貿易契約における⽣産受託者の管理責任の明確化
        1. 原材料・製品の管理責任
          ⽀給原材料の特定、引渡し、保管;危険負担;所有権留保;原材料の残余物(端材);加⼯や⽣産⼯程上の失敗材料の処置および半製品や完成品の管理。
        2. 日本企業による関税と増値税の保税・還付⼿続きの実⾏ 所轄税関へ届出手続きを行う;加工貿易手冊を取得する;中国企業は、日本企業が無償で提供する加工生産に必要な設備を使用する場合、無償提供輸入設備手冊の登録を行う;規定された輸⼊原材料やその加⼯品を管理する;所轄税関へ国内仕入れ材料の届出手続きを行う など。
          中国企業が材料を輸入する際、税関は保税監督管理を行います。国内仕入れ材料について、来料加工は仕入れ増値税還付不可、進料加工は可能となります。
    2. その他加工貿易契約に明⽰すべき事項
      1. (ア)中国側への設備品貸与
        中国企業に加工機械、冶⼯具やその他設備品などを貸与する場合は、随時別途契約を交わすか、本契約書に追加条項を設けることが必要です。
      2. (イ)技術指導
        ⽣産開始時期の遅れなどを回避するため、日本企業の提案した技術習得スケジュールを厳守させること、また技術指導の範囲、対価および費⽤についての両当事者の合意も必要です。
      3. (ウ)輸入材料の商品代⾦の決済方式
        進料加工において、中国企業が輸入材料の商品代金を適時に支払うことを保証するため、契約書に中国企業と具体的な代金の決済方式を明記する必要があります。代金の決済方式が信⽤状の場合、船積書類の到着が製品の到着より遅くなることが往々にしてありますので、電信送⾦による決済など代金決済の方法を検討する必要があります。
      4. (エ)日本企業側が提供した技術や生産上のノウハウおよび契約内容などが第三者に漏れないよう中国企業側に守秘義務を課すことが重要です。
  6. 留意点
    1. 加工貿易の保証金
      中国企業が加工貿易を初めて展開するなどの状況が存在する場合、手冊の登録手続きを行う際、中国企業は納付すべき税額に相当する保証金または銀行、非銀行金融機関による保証状の提供を要求することができます。 税関は企業に対して信用度を審査しています。高級認証企業、企業、信用喪失企業に分類されます。高級認証企業は保証金の納付が免除されますが、信用喪失企業は保証金を全額納付しなければならないとしています。高級認証企業、信用喪失企業ではないその他の企業は、保証金の金額を引き下げることができ、その具体的な金額は各税関により決定されます。委託加工する相手側の企業が税関における信用度がどの分類に含まれているのかを確認することが重要です。
    2. 加工貿易貨物の核銷
      核銷とは、中国企業が加工して再輸出するあるいは国内販売などの税関手続き後、税関へ報告し、税関が調査後に対象となる保税輸入原材料の在庫の監督管理を終了する行為を指します。中国企業は加工貿易手冊の最後の完成品を輸出したあるいは加工貿易手冊期限満了の日から30日以内に、「インターネット+税関一体化オンラインサービスプラットフォーム」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますまたは国際貿易「単一窓口(ワンストップサービス)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを通して、オンラインで税関に核銷申請を行い、輸入材料、輸出製品、端材、余剰材料、単耗(歩留り)などの状況を事実通りに報告する必要があります。
    3. 加工貿易単耗の管理
      1. (ア)単耗(歩留り)とは、中国企業が正常な加工条件の下、加工する完成品単位において使用される輸入材料の量を指します。中国企業は、加工貿易手冊登録の段階で税関へ単耗の備案を行わなければならず、また完成品の輸出、深加工結転(下記(g)項ご参照)または国内販売の前に、税関に対し単耗の状況を事実通りに報告する必要があります。
      2. (イ)日本企業は、加工の現場で監督管理を行い、中国企業が製品に使用する輸入材料の量を厳格に制限し、無駄遣いを防止する必要があります。
    4. 加工貿易の端材
      1. (ア)端材とは、中国企業が加工再輸出業務に従事しており、税関が査定した単耗(歩留り)、生産加工の過程において発生する当該加工貿易契約下の輸出製品の加工に使用することができない合理的なくず・余材を指します。また、端材を勝手に捨ててはならないとしています。
      2. (イ)中国企業が所轄の税関において国内販売に使用する端材を申請する場合、税関はその検査申請の状況に基づいて照合した後に適用される税率と価格に基づいて税金を徴収し、税金延滞利息を計算します。
    5. 加工貿易の無償輸入設備
      1. (ア)無償輸入設備(中国語:不作价进口设备)とは、中国企業が外貨を送金する必要はなく、加工賃または差額での返済を必要としない方法で、中国企業に提供する加工生産に必要な設備を指します。
      2. (イ)中国企業は、独立して加工貿易に特化した(すなわち、国内販売製品の加工生産に従事しない)工場または作業場を設置しなければならず、無償提供設備は当該工場または作業場でのみ使用となります。また、もし中国企業が上記の要求を満たしていない場合は、その年間加工製品の輸出比率が70%以上でなければなりません。
      3. (ウ)無償提供輸入設備は、輸入段階の関税は保税扱いとされます。輸入段階での税関監督期間は5年間です。従い、その期間を超えて処分した場合は関税の納付は免除されます。(増値税は免除されません。)
    6. 国内材料の仕入れ
      1. (ア)税関は、中国企業が国内材料を仕入れることを許可しています。
      2. (イ)現在、国内材料の仕入れの審査手続きの規定に関する明確な法律文書はなく、実務においては税関が定めています。
        北京税関は、中国企業が国内材料を仕入れる前に「インターネット+税関一体化オンラインサービスプラットフォーム」または国際貿易「単一窓口(ワンストップサービス)」を通して、オンラインで加工貿易手冊の変更手続きを行い、保税材料の割合のデータを調整した後、国内材料の仕入れ業務を展開することができるよう要求しています。後続企業が加工貿易手冊の核銷を行う場合、国内材料を仕入れるための発票を併せて提出する必要があります。また、上海税関は、中国企業が国内材料を仕入れる前に手続きを行う必要はないとしており、後続企業が加工貿易手冊の核銷を行う場合は、国内材料を仕入れるための発票を併せて提出する必要があると要求しています。
        さらに、中国企業は国内材料を仕入れる前に、事前に主管税関と具体的な手続きを確認する必要があります。
    7. 加工貿易の応用形態
      1. (ア)深加工結転とは、中国企業が保税輸入材料の加工製品を他の加工貿易企業に移転してさらに加工した後、再輸出する経営活動を指します。中国企業は「インターネット+税関一体化オンラインサービスプラットフォーム」または国際貿易「単一窓口(ワンストップサービス)」で加工貿易の深加工結転業務を行う必要があります。
      2. (イ)外注加工とは、中国企業が請負人に加工貿易貨物加工を委託し、規定期限内に加工後の商品を最終的に再輸出する行為を指します。中国企業は「インターネット+税関一体化オンラインサービスプラットフォーム」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますまたは国際貿易「単一窓口(ワンストップサービス)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを通して外注加工を行う場合、外注日から3営業日以内に税関に「外注加工申告表」を申告します。
    8. 加工貿易における国内販売の可否
      1. (ア)2016年9月1日から、商務部は加工貿易の保税輸入材料ならびに完成品の国内販売への使用に対する審査認可手続を廃止しました。中国の税関は、中国企業が「インターネット+税関一体化オンラインサービスプラットフォーム」または国際貿易「単一窓口(ワンストップサービス)」を通して、オンラインで国内販売の納税手続きを行った後、中国国内において販売できます。また、来料加工においては原則国内販売できません。
      2. (イ)上記方法とは別の方法として、みなし輸出入の方式および香港・マカオ一日遊の方式もあります。みなし輸出入の説明については、「税関特殊監管区域を活用した中国国内でのみなし輸出入取引」を参照ください。

(2)一般貿易の形式で生産を委託する場合

  1. 概要
    一般貿易とは、中国国内で輸出入経営権を有する企業が輸入関税・輸入増値税を払って、商品を流通させていく貿易形態を指します。
    一般貿易の形式で、日本企業が中国企業に生産を委託することができます。その場合、加工原材料の輸入時に輸入関税および増値税がかかります。輸入増値税は輸出時に原則として仕入れ増値税還付を受けることができます。
  2. 設備の無償貸与は可能か、可能な場合の方法は
    1. 一般貿易において、中国企業が日本企業の無償提供する輸入設備を使用して加工を行い、最終的に設備を日本企業に返却しない行為に対し、税関は「その他輸入品は無償で提供する」という方式で、中国企業により輸入通関手続きを行うことを許可しています。
    2. 中国企業は対外送金する必要はありませんが、関税、増値税、消費税およびアンチダンピング関税を支払わなければならないとしています(具体的な税種や税率は輸入設備の種類により異なる)。
  3. 「その他輸入品は無償で提供する」という監督管理方式の適用範囲は、日本企業が経済貿易活動において贈った物品、外国人による寄贈物品、在外中国資本機構が国内企業に贈った物品、経済貿易活動において日本企業が無償提供する試験材料、消耗品などが含まれます。

2. 生産委託における保税加工貿易、一般貿易の比較

  1. 税金
    税関は、加工貿易に対して保税監督管理を行っていますが、一般貿易における加工業務に対しては、貨物の輸入の際に、税関は中国企業に関税・増値税などの納付を要求しています。ここからわかるように、加工貿易においては、中国企業は税金を節約することができるためコストを下げることができます。一方、一般貿易においては、中国企業は関税・増値税などを負担しなければならないためコストの増加を招いています。ただし、製品の輸出時においては、輸入時に負担した仕入増値税は還付を受けられます。
  2. 税関監督管理
    税関は、加工貿易業務に対して全過程監督モデルを採用していますが、一般貿易業務に対しては、中国企業が輸出入段階で発生する可能性のある低輸入価格、密輸・脱税、高価格輸出などの違法行為を監督することに重点を置いています。このように、加工貿易業務は一般貿易における加工業務と比べ、税関のより厳格な監督管理を受けていることがわかります。
  3. 企業内部管理
    加工貿易を展開する中国企業は、税関に対し常に報告する義務を負っていることから、コンプライアンス意識を強化し、合法的に加工業務を展開しなければならず、従業員の業務遂行能力に対してより高い要求を求められる立場にあります。一方、一般貿易の加工業務を展開する中国企業は、加工貿易企業に要求される報告義務を負いません。

関係機関

関係法令

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「中華人民共和国税関加工貿易貨物監督管理弁法(2020年改正版)」(中華人民共和国税関総署令第247号、2021年2月1日実行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
「税関総署による「商務部、税関総署の2016年45号公告」の執行における関連問題の公告(税関総署公告 2016年第56号、2016年9月18日実行) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
「中華人民共和国税関登録登記および備案企業信用管理弁法」(中華人民共和国税関総署令 第251号、2021年11月1日実行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
「中華人民共和国税関加工貿易単耗管理弁法(2018年11月改正)」(中華人民共和国税関総署令 第243号、2018年11月23日実行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
「加工貿易の監督管理に係る事項に関する税関総署の公告」(税関総署公告2018年第104号、2018年8月13日実行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
「中華人民共和国 税関、加工貿易の端材、余剰材料、不良品、副産物および被災保税貨物に関する管理弁法(2018年11月改正)」(中華人民共和国税関総署令 第243号、2018年11月23日実行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
「税関総署による総合保税区内の企業が国内(区外)企業から委託加工業務を請け負うことを支援する公告」(税関総署公告2019年第28号、2019年1月29日実行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
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「加工貿易輸入設備の関連問題に関する対外貿易経済合作部および税関総署の通知」([1998]外経貿政発第383号、1998年7月1日実行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2008年1月
最終更新:2023年9月

記事番号: A-000959

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