貨物が船積書類より先に届いた場合に貨物の引き取りを迅速に行う方法:日本

質問

船積書類の到着が海上輸送で送った貨物の到着より遅れた場合に貨物の引き取りを迅速に行う方法を教えてください。

回答

貨物が到着しても船積書類のうち船荷証券(Bill of Lading: B/L)の原本がないと貨物を引き取ることができません。この対策として、船荷証券に代わる運送状やサレンダードB/Lを用いて貨物を引き取る方法と銀行保証を発行してもらって貨物を引き取る方法があります。

I. 船荷証券に代わる運送状を用いる方法

最初から船荷証券を使わず海上運送状(Sea Waybill)を用いることにより迅速に貨物を引き取ることができます。この書類は、運賃やその他の費用を払うことにより船会社等から荷渡指図書(Delivery Order: D/O)が発行されるため、原本が手元になくても輸入通関後速やかに貨物を引き取ることができます。ただし、輸入者側が輸出者に対し、この運送状の発行を依頼する必要があります。
海上運送状は、貨物の受領証と運送契約書を兼ねています。海上運送状は有価証券や流通証券ではないため、原本をやり取りする必要はありません。記名式で発行され、指図式(to order)では発行されません。貨物が仕向け地到着前に仕向け地にある本船船会社(または代理店)から荷受人(通関業者)に貨物到着案内(Arrival Notice)が送付され、荷受人(通関業者)を通じて船会社等に提出され、必要な費用を払うとD/Oが発行されます。正しい荷受人(通関業者)に貨物を渡すため、貨物到着案内に荷受人(通関業者)または海運貨物取扱業者(海貨業者)が署名します。手続きの詳細は海貨業者または船会社等に問い合わせてください。 海上運送状は担保価値がありませんが、信用状取引上の運送書類の一つとして規定されています(信用状統一規則UCP600第21条)。このため信用状取引でも使用できます。ただしこの場合、貨物の担保権を確保するため発行銀行を荷受人とするよう求められるのが一般です。

II. サレンダードB/L

サレンダードB/Lは、船会社により元地回収されたB/Lのことです。発行された場所での回収となるためB/Lの盗難や紛失がありません。B/L発行後、そのB/Lに「Surrendered」(元地回収済み)と押印されます。Telex ReleaseやAccomplishedと表現されることもあります。輸入者にはサレンダードB/Lのコピーが送付されます。船会社等はB/Lを元地回収後、その旨を陸揚げ港の代理店等に連絡します。運賃等必要な費用を払うと船会社等から輸入者にD/Oが発行されます。また、サレンダードB/Lの場合、到着地で正しい貨物受取人に貨物を引き渡すため、船会社は荷受人宛の記名式船荷証券以外は取り扱いません。しかし、サレンダードB/Lは信用状統一規則でも運送書類として規定がなく、トラブルも報告されていることから活用にあたっては注意が必要です。

III. 銀行保証を発行してもらう方法

船積書類として船荷証券を使う場合でかつ輸入取引を信用状や信用状なしの荷為替手形(D/P、D/A)で銀行を通じて決済する場合、本船が日本に到着しているにもかかわらず船荷証券が銀行に到着していないことがあります。このような場合、輸入者が船荷証券なしに輸入貨物の引き渡しを受けるために船会社に保証状(Letter of Guarantee: L/G)を差し入れる方法があります。通常は輸入者の取引銀行が連帯保証することが必要であるため、このL/Gのことを銀行連帯保証状(Bank L/G)といいます。

船荷証券は、指定された港で証券の正当な所持人に荷物を引き渡すことを約束する有価証券で、船荷証券と引き換えでなければ船会社に運送品の引き渡しを請求することはできません。しかし、船荷証券が到着するまで貨物の引き取りができなければ国内販売予定先への納入遅延、貨物の変質、市場価格の変動などの損害発生や倉庫会社への貨物保管料支払いなどの無駄な出費が発生してしまいます。銀行にとっても輸入貨物を早期に引き取らせて処分させる方が輸入者の資金繰りが円滑になります。関係当事者の実務的な必要性からL/G差し入れによる貨物引き取りが行われるようになりました。

輸入者が船会社に差し入れる保証状の留意点は次のとおりです。

  1. 輸入者が損害を賠償
    船荷証券を船会社に提出しないで貨物を引き取ることにより万一、船会社に第三者の船荷証券所持人が現れ、貨物引き取りや代金要求などの問題が発生し、訴訟等の関連費用など損害が発生した場合には輸入者がこれら一切の損害を負担します。輸入者の取引銀行は輸入者が船会社に対して負うべき上記の損害賠償責任について連帯責任を負うことになります。
  2. 船積書類のコピーを輸出者から入手
    貨物の輸入港到着に間に合わせるべく船積書類(Invoice、B/Lなど)のコピーを輸出者よりいち早く取り寄せ、当該船積書類と同一の正しい内容にてL/G申請することが必要です。間違った内容では銀行連帯保証付きのL/Gは入手できず、輸入手続きが中断してしまいます。
  3. ディスクレでも支払い拒絶できない
    L/G提出により貨物を引き取ってしまうことから船積書類到着時に輸入者は輸入代金の決済を必ず行う必要があり、支払い拒絶をすることができません。輸入者は、到着した船積書類に条件不一致(ディスクレ)があっても引取貨物が品質不良や契約違反でも当該荷為替手形を決済して船荷証券を船会社に提出する義務があるからです。
  4. 船荷証券を後日提出
    船荷証券を入手した時は速やかに船会社に提出します。

なお、信用状取引の場合には、信用状条件と受領した荷為替手形および付属書類がディスクレの有無にかかわらず輸入決済を行い、船荷証券のオリジナルを船会社に提出して先に差し入れたL/Gを回収します。回収したL/Gを銀行に提出して荷物引き取り保証を解除します。

調査時点:2011年8月
最終更新:2018年12月

記事番号: A-011132

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