原産地規則と原産地証明書:オーストラリア

質問

オーストラリアとの輸出入にあたって、経済連携協定による特恵関税を利用するための手続きについて教えてください。

回答

特恵関税の適用を受けるには、協定で定められた原産地規則を満たし、それを証明することが必要です。

I. 原産地規則

  1. 原産地規則と原産地基準
    原産地規則(Rules of Origin: ROC)とは、輸入する産品の原産地(=物品の「国籍」)を決定するためのルールです。自由貿易協定(Free Trade Agreement: FTA)などに基づいて、他国との貿易取引に課税される一般関税(WTO協定税率、MFN関税などともいいます)より低率の特恵関税(Preferential Tariff)の適用を受けるためには、それぞれの協定で定められた原産地規則を満たし、産品が締約国の原産品であると認定されることが条件となります。原産地規則は、原産地基準(原産地を定める基準)、積送基準(貨物が到着する前に原産品としての資格を失っていないこと)、および手続的規定(原産地基準と積送基準を満たしていることを税関に証明すること)の3要素で構成されています。原産地基準は協定ごとおよび品目ごとに個別に規定されていますが、共通する基本的な原産品判定基準は次のとおりです。
    1. 完全生産品(Wholly Obtained: WO)
      締約国で自然に産出ないし生産されたもの
    2. 原産材料のみで生産されたもの(Produced entirely: PE)
      締約国の原産材料のみで締約国内で生産されたもの
    3. 実質的変更基準を満たす産品(Product specific rules: PSR)
      非原産材料を使用していても協定の品目別原産地規則(PSR)を満たしたものは、締約国での加工などの結果として、実質的に締約国で生産されたものになります。 原材料から産品への生産で、関税分類番号に変更をもたらす場合(Change in Tariff Classification: CTC、関税分類変更基準)、付加された価値が閾値以上の場合(Regional Value Content: RVC、付加価値基準)、化学製品においての化学反応工程など特定の加工工程が施された場合(Specific Process Rule: SPR、加工工程基準など、協定ごとおよび品目ごとに品目別原産地規則が定められています。
    4. その他
      僅少の非原産材料を非原産材料として考慮しない規定(デミニマス規定)や他の締約国の付加価値や生産工程を累積する規定(累積規定)など
  2. 特恵関税の適用対象国
    1. オーストラリアは下記の経済連携協定/自由貿易協定を締結しています。これらの締約国は特恵関税の適用対象です。(カッコ内は略称及び発効日)
      • オーストラリア・ニュージーランド経済緊密化協定(ANZCERTA)(1983年1月1日)
      • シンガポール・オーストラリア自由貿易協定(SAFTA)(2003年7月28日)
      • オーストラリア・米国自由貿易協定(AUSFTA)(2005年1月1日)
      • オーストラリア・タイ自由貿易協定(TAFTA)(2005年1月1日)
      • オーストラリア・チリ自由貿易協定(ACI-FTA)(2009年3月6日)
      • アセアン・オーストラリア・ニュージーランド自由貿易協定(AANZFTA)(2010年1月1日)
      • マレーシア・オーストラリア自由貿易協定(MAFTA)(2013年1月1日)
      • 韓国オーストラリア自由貿易協定(KAFTA)(2014年12月12日)
      • 日本・オーストラリア経済連携協定(JAEPA)(2015年1月15日)
      • 中国・オーストラリア自由貿易協定(ChAFTA)(2015年12月20日)
      • 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)(2018年12月30日)
      • オーストラリア・香港自由貿易協定(A-HKFTA)(2020年1月17日)
      • ペルー・オーストラリア自由貿易協定(PAFTA)(2020年2月11日)
      • インドネシア・オーストラリア包括的経済連携協定(IA-CEPA)(2020年7月5日)
      • 太平洋諸国経済緊密化協定(PACER-Plus)(2020年12月13日)
      • 地域的な包括的掲載連携協定(RCEP)(2022年1月1日)
      • オーストラリア・インド経済連携協定(AI-ECTA)(2022年12月29日)
    2. 開発途上国向けの一般特恵関税(Generalized System of Preferences: GSP)
      UNCTADの枠組合意に基づき、オーストラリアの関税定率法(Customs Tariff Act 1995)により開発途上国向けに一般特恵関税を供与しています。

II. 原産地証明書

原産地証明書(Certificate of Origin: COC)とは、輸入する貨物が原産地基準を満たす原産品であることを証明する書類で、特恵関税の適用を要求する場合に必要になるものと特恵関税以外の目的で使用する非特恵の原産地証明書があります。

  1. 輸入時の原産地証明書
    1. 自由貿易協定/経済連携協定に基づいて特恵関税の適用を受ける場合 自由貿易協定/経済連携協定に基づく特恵関税の適用を要求するには、協定で定められた有効な原産地証明書の税関への提示が必要です。
    2. 一般特恵制度による特恵関税の適用を要求するには、一般特恵用の原産地証明書(Form A)の税関への提示が必要です。
    3. その他の場合(非特恵の原産地証明書)
      特定国からの輸入が禁止または制限されている物品を輸入する場合、ワシントン条約の対象となっているものを輸入する場合等、個別の法律・規則に基づく要請により税関が要求したときに提示する必要があります。また、契約や信用状で指定がある場合など、輸入者から原産地証明書を求められる場合があります。
  2. 輸出時の原産地証明書
    オーストラリアにおける原産地証明発給機関はAustralian Industry Group(AI Group)Australian Chamber of Commerce and Industry(ACCI)及びthe International Export Certification Services(IECS)の3機関です。
    2015年1月15日に日本・オーストラリア経済連携協定(Japan-Australia Economic Partnership Agreement: JAEPA)が発効し、第三者証明制度とともに自己申告制度が導入されました。2018年12月30日に発効した環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPPまたはTPP11)では自己証明制度のみが採用されました。2022年1月1日に発効した地域的な包括的経済連携協定(RCEP)では第三者証明制度、認定輸出者制度及び自己申告制度が併用されています。自己申告制度の利用可能時期は国によって異なりますが、オーストラリア、ニュージーランド及び日本は、発効当初から自己申告制度を利用することができます。オーストラリアからは日本及びニュージーランド向けのみ、日本からはオーストラリア及びニュージーランド向けのみ自己申告制度を利用可能です。
  3. 日本からオーストラリアへの輸出
    1. 第三者証明制度を利用する場合
      日本の特定原産地証明書の発給機関は、日本商工会議所です。輸出者および原産品判定依頼を行う生産者の企業登録を日本商工会議所で行います。当該産品が原産地規則を充足する原産品確認書及びその根拠書類を準備して、オンラインで「特定原産地証明書発給システム」にアクセスし、必要情報を入力して判定を依頼します。必要に応じて申請にかかる物品の原産品確認書、関係者への照会あるいは調査が行われる場合があります。原産品と判定されれば原産品判定番号が付与されます。その後特定原産地証明書発給を申請し、原産地証明書が発給されます。
    2. 自己申告制度を利用する場合
      輸出者、生産者あるいは輸入者が原産品申告書を作成することが可能です。原産性の根拠書類として契約書、総部品表、製造工程表、関税分類変更基準の場合は対比表、付加価値基準の場合は計算ワークシート等を用意します。原産性の根拠書類は5年間保存義務があります。

関係機関

関係法令

関税法(Customs Act 1901)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
関税定率法(Customs Tariff Act 1995)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

参考資料・情報

オーストラリア外務貿易省(Department of Foreign Affairs and Trade):
Free Trade Agreements外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
Japan-Australia Economic Partnership Agreement(JAEPA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
Guide to using JAEPA to export or import外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
Guide to obtaining preferential tariff treatment when exporting and importing goods using CPTPP外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
Regional Comprehensive Economic Partnership外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
外務省:
日・オーストラリア経済連携協定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
地域的な包括的経済連携(RCEP)協定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
内閣官房:
環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP、TPP11)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ:
TPP11解説書PDFファイル(14.3MB)
RCEP協定解説書PDFファイル(11.9MB)
日本商工会議所:
EPAに基づく特定原産地証明書発給事業外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2016/09
最終更新:2023/05

記事番号: A-051010

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