子供用玩具を輸出する際の留意点:米国向け輸出

質問

米国に子供用玩具を輸出する際の留意点を教えてください。

回答

米国への子供用玩具の輸出は、「消費者製品安全改善法(Consumer Product Safety Improvement Act:CPSIA、2008年8月成立)」とCPSIAを改正した「H.R.2715(2011年8月制定)」により規制されています。

CPSIAでは条項ごとに規制対象品の範囲と定義を細かく規定しています。また、CPSIAの施行に際しては、消費者製品の安全性問題を監督する独立の連邦機関である消費者製品安全委員会(Consumer Product Safety Commission:CPSC)が、さまざまな行政命令を定めています。詳細は官報に公布される連邦規則(Code of Federal Regulations:CFR)で確認してください。

また、子供用玩具が木製製品の場合には、違法伐採を規制する「改正レイシー法(Lacey Act)」を順守する必要があります。

I. CPSIAとH.R.2715による規定

  1. 対象と子供向け製品の定義
    CPSIAでは子供向け製品を「12歳以下の子供向けに企画された消費財」と定義しています(16CFR Part1200)。定義が適用される条件は以下のとおりです。
    1. メーカーによる製品使用説明(含ラベル表示)に12歳以下の子供向けと表示されている。
    2. 12歳以下の子供向けの使用に適切な包装、表示、販促、広告が行われている。
    3. 一般消費者に12歳以下の子供向けと認識されている。
    4. AGE DETERMINATION GUIDELINES(年齢基準書、文末の参考情報参照)とその修正版に順守するとみなされる。

    子供向け製品は一般的な玩具やぬいぐるみ、子供用アクセサリー、乳児用品、運動具、ゲーム、幼児教材、子供用ベッドなど、多岐にわたります。

    CPSIAとH.R.2715の具体的な規制内容については、以下、2〜6.で説明します。

  2. 鉛含有塗料規制・鉛含有量規制
    子供向け製品の鉛含有量規制を以下のように定めています(CPSIA第101条)。詳細はCPSCが随時発表する方針や見解、官報に公布されるCFRを確認してください。なお、自転車および関連製品の鉛含有量上限は300ppmです。
    1. 塗料および表面コーティング:
      2009年8月14日以降に製造された製品の鉛含有量は90ppm以下(第三者検査機関による検査と認定が必要) 。
    2. 塗料および表面コーティング以外:
      2011年8月14日以降に製造された製品の鉛含有量の上限は原則100ppmで、2012年1月1日以降に製造された製品は、第三者検査機関による検査が必要。ただし、100ppmの上限規則は、製品が以下の3つの要件をすべて満たす場合、適用除外が認められることがあります。
      1. 製品が機能するには鉛の利用が不可欠、あるいは技術的に除去が不可能であること
      2. 口腔内に入る、あるいは飲み込まれる蓋然性が低いこと
      3. 適用除外により公衆衛生に悪影響が及ばないことが証明されていること
  3. 特定フタル酸エステル類含有量規制対象となる玩具と育児製品
    特定フタル酸エステル類含有量について規制しているCPSIA第108条を受け、CPSCは特定のフタル酸(フタル酸ジ2−エチルヘキシル(DEHP)、 フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP))含有量が0.1%を超える玩具と育児製品の販売を恒久的に禁止しています。また、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジオクチル(DnOP)の含有量が0.1%を超える「子供が口に含む可能性がある玩具」と「育児製品」の販売を当面禁止しています。
    1. 子供が口に含む可能性がある玩具
      子供(12歳以下)が口に入れることができる玩具、噛む、しゃぶるなど口に含む部分がある玩具(なめるだけの製品については口に含む製品とはみなされません。玩具またはその一部の寸法が5センチ以下と小さいものは口に含むことができるとみなされます)。
    2. 育児製品
      3歳以下の幼児の眠りや食事を助ける、おしゃぶりや歯がため(sucking or teething)に役立つよう設計され、販売を意図された消費者製品

    なお、同含有量規制は、手で触れることができない部分(inaccessible component parts)に対しては適用されません(H.R.2715)。

  4. 磁石規制
    CPSCは2014年9月25日、磁石を用いた玩具の安全性基準の強化を発表しました。新しい基準では、玩具の小部品に該当する磁石または磁性部品の磁束指数は50(kG)2・mm2以下と規定しています。2015年4月1日以降に製造または輸入する製品に関しては、この安全性基準を順守することが義務付けられています。最新情報は文末の参考資料・情報「磁石規定」で確認ください。
  5. 表示規定、輸入製品トレーサビリティ
    12歳以下の子供向け消費者製品には追跡ラベル(tracking label)または明確にそれと識別できる恒久的マーク(distinguishing permanent mark)を付けなければならず、(CPSIA第103条)以下の基本情報の表示が必要です。
    1. メーカーまたはプライベート・ブランド名称
    2. 生産地
    3. 製造日
    4. 製造プロセス管理情報(ロット番号、バッチ製造番号等)

    CPSIA施行に先立ち、CPSCはラベルやマークの表示内容、位置や方法等について解釈をまとめた方針を発表しました。詳細は文末の「CPSCによる表示に関する方針」を参照ください。

  6. 第三者検査機関による子供向け製品検査の義務付け
    使用禁止物質や規制対象となる子供向け製品については、第三者検査機関による検査と認定が義務付けられています(CPSIA第102条)。また、第三者検査機関の検査と認定が優先的に求められる製品分野を規定しています。
    これを受けてCPSCは対象製品の安全基準や検査手順の検討、第三者検査機関の認定作業を進め、決定事項を随時告知しています。ただし、多くの子供向け製品で第三者検査機関による検査と認定の義務化が延期されています。対象物質と製品、第三者検査機関のリストは文末のCPSCのウェブサイトを参照ください。
    1. 検査の種類について
      子供向け製品の検査要件について16 CFR 1109で規程しています。第三者機関による検査は4種類あり、1)初期認定検査、2)材料変更検査、3)定期検査、4)部品検査に分かれます。初期認定検査は、製造会社が子供向け製品証明(Children’s Product Certificate: CPC)を発行する前に義務付けられています。材料変更検査は、材料の変更に伴う製品または部品の検査であり、部品検査の場合、部品供給会社の検査結果も16 CFR 1109の要求を満たす限り、認められます。定期検査を実施する間隔は、最低でも1年毎で、当該製造会社の生産検査計画によって2年ないし3年(ISO/IEC17025:2005の認定機関を使う場合)でも認められます。
    2. 通常の紙ベースの印刷物
      読書・教育を目的とする紙ベースの「通常の本(Ordinary Books)」、およびポスターやグリーティングカードなど「通常の紙ベースの印刷物(Ordinary paper based printed materials)」に関する第三者機関による検査義務を免除しています(H.R.2715)。ただし、金属やプラスチックなどの非紙ベースの材料を用いた本や印刷物は対象外です。また、3歳以下の子供を対象とする本、遊びの要素を含む本、本に付属して販売された玩具や製品は、「通常の本」とは見なされません。自転車の金属部品についても、第三者機関による検査義務が免除されています。
    3. 小規模生産者が製造する年間製造数が7,500個以下の製品
      年間総売上高が1,068,336ドル以下の小規模生産者(small batch manufacturer)が製造する年間製造数が7,500個以下の製品(covered product)について、第三者機関による検査義務を免除しています(H.R.2715、総売上高の金額については文末のSmall Batch Manufacturers and Third Party Testing参照)。CPSCは、covered productの規制順守を証明する他の検査方法を提示するか、検査方法がない場合には第三者機関による検査義務を免除します。この免除規定を利用するには、小規模生産者は事前にCPSCに登録する必要があります。なお、鉛含有塗料、ベビーベッド(Full-size、non full-size Cribs)、おしゃぶり、子供用金属製ジュエリー、赤ちゃん用のバウンサー、ウォーカー、ジャンパーおよびCPSIAの104(f)で定められた乳幼児用の耐久製品はこの免除規定の対象外です。
    4. 第三者機関発行の証明書
      英語で記載されている必要があります(他の言語の併記可)。また、証明書には、製造者もしくはプライベート・ブランドの所有者、検査機関が特定できる情報、製造・検査日時、場所が特定できる情報が含まれていなければなりません。必要とされる証明書がない製品は米国での輸入販売はできません。証明書は製品そのものか、積荷に貼付されていなければならず、米国税関・国境警備局(U.S. Customs and Border Protection:CBP)やCPSCの要求に応じて提示する必要があります。証明書が用意できない場合や虚偽の証明書を提出した場合は、製造者もしくはプライベート・ブランドの所有者が罰せられます。
    5. 玩具の安全基準(ASTM F963)義務付け対象製品
      CPSIAでは、国際標準化・規格設定機関の米国試験材料協会(American Society Fo. Testing and Materials:ASTM)が発行する自主的安全基準(ASTM F963)をCPSCの安全基準として採択し、順守を義務付けることを明記しています(第106条)。安全基準の対象は玩具すべてではなく、自転車、三輪車、凧、子供の遊び目的ではない趣味工芸品、プラモデル等は対象外です。

    CPSCは2012年2月、最新版の安全性基準であるASTM F963-11の採択を発表しました。これにより、2012年6月12日以降に製造された製品は、連邦規則としてASTM F963-11を順守することが義務付けられています。

    ASTM F963-11は、以前のバージョンであるASTM F963-08のすべてを変更するものではなく、第三者機関による検査・認定を定めたASTM F963-08の条項は現在でも有効です。

II. 改正レイシー法による規制

  1. 「2008年農業法(Food, Conservation, and Energy Act of 2008)」の成立に伴い、本来は野生生物保護を目的としたレイシー法が改正されました。これにより、米国法あるいは外国法に違反して取得・輸送・売買された木材および木材由来製品は、国際間取引、州間取引を問わず、輸出入、輸送、販売、受取り、取得、購入することができません。
  2. 「木材・木材製品」を米国に輸入する輸入業者には、品名・価格・数量とともに木材が伐採された国と木材の樹種の申告が義務付けられています。
    1. 申告
      PPQフォーム505を利用します。このフォームは、米農務省(United States Department of Agriculture:USDA)の動植物検疫局(Animal and Plant Health Inspection Service:APHIS)のウェブサイトで入手できます。
    2. 提出方法
      必要事項を記入し、通関地における審査の際に米国税関・国境警備局 (U.S. Customs and Border Protection:CBP)に写しを提出し、その後、USDAに原本を郵送します。
      オンライン申請する場合は、Lacey Act Web Governance System(LAWGS)を介してPPQ505のオンライン申請を行う方法と、CBPの電子通関システム(Customs Automated Broker Interface)を介して、PPQ505のオンライン申請を行う方法があります。
  3. 留意点
    1. 改正レイシー法は、貿易と国内取引のすべてを対象としています。木材製品に関しても、丸太や製材から合板や紙など最終製品までを対象にした広範囲に適用されます。PPQフォーム505の提出が義務付けられている「木材・木材製品」は、米国関税率表(United States Harmonized Tariff Schedule:HTSUS)の特定のコードに分類される品目に限定されています。

      PPQフォーム505の提出が義務付けられている「木材・木材製品」
      HTSコード44、66、82、92、93、94、95、 97章に分類される品目の一部(うち木製家具のHTSコードは、種類によって44章または94章)

    2. 木材が伐採された国や樹種がわからない場合には、当該木材が伐採された可能性のある国、当該木材製品に利用された可能性のある樹種をすべて記載します。改正レイシー法施行以前に製造された製品で産地や樹種の特定がきわめて困難である製品に関しては、米農務省の特別な使用の指定(Special Use Designations) を参照し、PPQ Form 505を記入します。最新情報は文末の「APHISのレイシー法関連情報」で確認ください。

関係機関

関係法令

記事番号: J-110602

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