オンラインビジネスを行うにあたっての留意点:シンガポール

シンガポールでのオンラインによるコンテンツ等の販売規制や手続きについて教えてください。また、サーバーがシンガポール以外にある場合もビジネスは可能ですか。

シンガポールにおいてオンラインビジネスを行うにあたっては、メディア開発庁(Media Development Authority: MDA)による規制、放送法による規制等に留意する必要があります。

I. MDA規制、根拠法

  1. メディア開発庁(MDA)
    シンガポールでは、MDAがインターネット、テレビ、映画等の各種メディアを規制・監督しています。MDAは「インターネットは社会にとって有益なもので、過度に規制すべきではない」というスタンスをとっており、必要最低限の規制を設け、企業活動には最大限の柔軟性を持たせるとしています。またインターネットなどボーダレスのメディアについては、国内のみの規制では限界があるとの認識から、「企業の自主規制」と「公共教育の努力」を推奨しています。
  2. 放送法(Broadcasting Act)

    インターネット・コンテンツは、メディア・コンテンツの放送とみなされ、放送法の定める規定に準拠する必要があります。軽度な規制の枠組みとして、インターネット・コンテンツ・プロバイダー(ICP)向けの「クラスライセンス」があり、一定の範囲に該当する者が通知または登録を行えば、クラスライセンスが与えられます(放送法第9条)。詳細は文末の「クラスライセンスの条件」を参照ください。

    すべてのクラスライセンス保持者は、MDAの「インターネット行動規範(Internet Code of Practice)」を遵守する必要があるほか、自主規制および自社制度を持つよう推奨されます。クラスライセンスは、シンガポール国内で電子商取引のウェブサイトを所有・運営する事業者などが取得することができます。また、以下に該当するICP事業者は、MDAへの登録義務があり、発信内容が政府により常に監視されます。

    1. シンガポールで登録された政党で、インターネットを通してウェブ上でコンテンツを発信する者
    2. シンガポールの政治的・宗教的問題に関してインターネットを通してウェブ上で議論に携わっている団体・組織・法人
    3. シンガポールの政治的・宗教的問題に関してインターネットを通してウェブ上で議論に携わり、MDAにより識別されている個人
    4. インターネットを通して購読料またはその他の対価を目的にオンラインニュースを配信する者

    なお、上記a.~d.に該当するICP事業者は、所定フォームでMDAへオンライン登録申請する必要があります。登録費用は無料です。

  3. ニュースサイトのライセンス制度
    2013年6月1日、MDAはシンガポールを拠点とするインターネット上のニュースサイトを対象に、ライセンス制度を導入しました。新たな枠組みでは、以下に該当するサイトには、1年ごとのライセンス取得に加え、新聞・活字メディア同様、5万シンガポールドルの履行保証金の支払いが求められます。シンガポール政府は、ネット上のニュース媒体と閲覧者数の増加に対応し、既存の活字・テレビニュースと同様の枠組みを設けることで、規制の統一を目指しています。
    1. 2カ月の平均で週1本以上、シンガポールに関するニュース記事を報道するニュースサイト
    2. 毎月5万件以上、2カ月にわたってシンガポール国内からアクセスのあるニュースサイト

    ニュースサイトは従来の放送法の対象であるため、ライセンス認可に伴うコンテンツの判断基準に変更はありません。ただし、新たな枠組みの下では内容にも規制が及び、MDAのコンテンツ基準に違反する場合には、MDAからの要請に基づき、24時間以内にコンテンツを削除することが求められます。

  4. 一般電子商取引に関わる事業者
    以下の例に示すように、放送法以外の法令に抵触する場合があり、注意を要します。
    1. インターネット上で英会話等の語学教室を開設する場合
      教材の準備や配信、添削や指導、受講料の徴収をシンガポール国内で実施する場合、教室など施設を保有していなくても、国内外10名以上の生徒に対しサービスを提供する場合、教育法(Education Act)上の「学校」とみなされ、教育法に基づく登録が必要です。
    2. インターネット上で証券に関するアドバイスや証券取引を行う場合
      窓口販売を行う通常の証券会社と同様に、証券先物法(Securities and Futures Act)に基づくシンガポール通貨管理庁(Monetary Authority of Singapore: MAS)の認可が必要です。無認可で証券業務を行えば、証券業法違反で1万シンガポールドル以下の罰金が科されます。
    3. 医薬品をオンライン取引で販売する場合
      毒物法(Poisons Act)の下、保健科学庁(Health Science Authority: HSA)の取り締まりを受けます。処方箋薬や偽の医薬品をオンライン販売した場合、最長2年の禁固刑、最大1万シンガポールドルの罰金が科せられます。
    4. その他
      上記以外では、以下のような関連法令があり、各法令に基づき、事前のライセンス等が必要になります。

      中古品のオンライン取引: 中古品取扱事業者法(Second Hand Dealers Act)
      オンラインギャンブル: 賭博法(Betting Act)または普通賭博場法(Common Gaming Houses Act)
      オンラインプロモーション活動: 公衆娯楽法(Public Entertainment Act)
      家電製品のオンライン販売: 消費者保護(取引表示・安全要件)法〔Consumer Protection (Trade Descriptions and Safety Requirements)Act〕
      音楽・映画・ドラマ・アニメ・書籍など著作物のインターネット配信: 著作権法(Copyright Act)
      商標の使用: 商標法(Trademark Act)
      クレジットカード決済におけるデータ保護: コンピュータ誤用法(Computers Misuse Act)
      電子商取引の契約関係: 電子商取引法(Electronic Transaction Act)、不公正契約条項法(Unfair Contract Terms Act)、物品販売法(Sale of Goods Act)、不当表示法(Misrepresentation Act)

II. サーバーがシンガポール以外にある場合

現行国内法では、MDAはシンガポールを拠点としないコンテンツプロバイダーに対する国外管轄権がありません。ただし、シンガポール政府は、国民の安全を脅かす情報、人種差別的発言、宗教的調和を脅かす情報のインターネットを介した流布には、断固とした措置を取ることを表明しています。2014年に放送法を改定し、シンガポールの読者をターゲットとする海外拠点のニュースサイトも規制の対象になり得るとの認識を示しています。

関係機関

メディア開発庁(Media Development Authority: MDA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

関係法令

Attorney General’s Chambers:
放送法(Broadcasting Act)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
放送(クラスライセンス)通達(Broadcasting(Class Licence)Notification)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

関係情報

メディア開発庁(Media Development Authority: MDA):
インターネット規制枠組み(Internet Regulatory Framework)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
インターネット行動規範(Internet Code of Practice)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(50KB)
インターネットサービス・コンテンツプロバイダ向けクラスライセンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
オンラインニュースサイトに対するライセンス規制外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2017/2

記事番号: S-140103

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