外資に関する規制

最終更新日:2024年01月12日

規制業種・禁止業種

特定産業(軍需工業、旅客航空業、保険業、地下資源の開発など)については、外国企業による事業(活動)が禁止されており、私有化への参加(参入)、外資の出資比率、役員などの国籍要件などに制限がある。

概要

外国企業による事業(活動)が制限・禁止(外国企業のみならず、国内企業にも波及)される産業としては、一般的には、軍需産業、原子力産業などの「戦略的産業」が挙げられる。これらの産業では私有化が禁止される、あるいは厳格に制限されるケースが多い。
例えば、2003年3月26日付連邦法第36-FZ号「過渡期における電力事業の特例ならびに連邦法『電力事業について』の制定に伴うロシア連邦法の一部廃止について」の第9条により、特定企業については連邦政府が保有する資本金の割合を減らしてはならないことになっている。2004年8月4日付大統領令第1009号によって承認された「戦略的な意義を有する企業および株式会社のリスト」では、私有化が認められない企業(合計で約130社)が特定された。

なお外国投資について、1999年7月9日付連邦法第160-FZ号「ロシア連邦における外国投資について」(外国投資法)第4条1項では、外国投資家には、国内企業に対して与えられている待遇より不利でない待遇を許与しなければならないとされているが、同外国投資法第4条2項では、憲法体制の基礎、公序良俗、国民の健康、第三者の権利および合法的な利益の擁護、国防と国家の安全に必要な程度に限り、別途連邦法で規定を設けることができるとしている。

特定産業の制限

外国企業による事業(活動)に対する具体的な制限については、2008年4月29日付連邦法第57-FZ号「国防および国家安全保障について戦略的意義を有する事業者への外国投資の手続きについて」で規定されている。この制限は、特定の分野において活動を行う企業、および一定の基準に該当する地下資源埋蔵地を使用する企業にかけられる。制限分野としては、原子力関連施設・放射性廃棄物などの取扱い、兵器開発・製造、マスメディアなど、50項目が規定されている。

なお、閉鎖行政地域(軍需企業などが所在し、特別な管理体制の対象とされる地域)に外資企業を設立する際には、当該軍需企業などを担当する連邦行政機関、および取締当局による承認が必要要件となる。

  1. 地下資源関連産業

    地下資源については、ウラニウム、ダイヤモンド、高純度の水晶原石、イットリウム類希土類元素、ニッケル、コバルト、タンタル、ニオブ、ベリリウム、リチウムおよびプラチナ類金属、埋蔵量が7,000万トン以上の油田、同500億立方メートル以上の天然ガス田、同50万トン以上の金および銅鉱脈で、ロシア連邦の内海、領海、大陸棚にある地下資源鉱区は、「連邦管轄埋蔵地」として位置付けられている。埋蔵地(陸上埋蔵地や大陸棚・内海・領海の地下資源を合わせて、およそ1,300カ所。2009年3月5日にエネルギー省により発表され、現在に至るまで追加が行われてきた)を利用する企業は、制限の対象となる。

    制限の内容としては、株式購入などの方法によって、前記の制限対象に該当する企業の経営権を取得するためには、特別な事前承認手続きが必要となることである。なお、「連邦管轄埋蔵地」の利用者はロシア法人でなければならず、さらに大陸棚にある「連邦管轄埋蔵地」の利用者はロシア連邦の定款資本の持分が50%を超えるロシア法人でなければならない(1992年2月21日付連邦法第2395-I号「資源について」第9条)。

    大陸棚の資源開発に関しては、地下資源の発掘、探査、開発に関する入札への外国企業の参加を制限し、ロシア企業のみを対象とする入札を行うこともある(1995年11月30日付連邦法第187-FZ号「ロシア連邦の大陸棚について」)。

    また、2022年8月5日付大統領令第520号「特定の外国並びに国際機構の非友好的な行為に関連する金融分野および燃料エネルギー分野における特別経済措置の適用について」に従い、2025年12月31日まで非友好国に属するものが保有する以下の企業の株式や出資持分などの売買、譲渡、担保などが禁止された。

    1. 戦略的企業の株式、戦略的企業の子会社の株式や出資持分など。
    2. サハリン1およびハリヤガ油田採掘プロジェクトのそれぞれの生産物分与契約の当事者が有する同プロジェクトの持分など。
    3. 燃料・エネルギーの設備の製造、メンテナンス・修理を行う企業、熱エネルギー・電力発電企業、石油精製企業などの株式、出資持分。対象の企業は大統領令により該当の企業が定められる。
    4. 特定の金融機関。対象の金融機関は大統領令により該当の企業が定められる。
    5. 原油2,000万トン以上あるいは天然ガス200億立方メートル以上、あるいは石炭3,500万トン以上の石炭の埋蔵量、ウラン、ニッケル・コバルト・タンタル・ニオブ・ベリリウム。ロシア連邦の領土内に位置し、ダイヤモンド鉱床、金鉱山、内海、領海、大陸棚下の埋蔵地を運営する企業の株式、出資持分。対象の企業は大統領令により該当の企業が定められる。

    なお、2022年9月8日付大統領令第618号「一部の当事者間の特定の取引の種類の実施(履行)の特別規則について」に従い、非友好国に属するものがロシアの株式会社の株式や有限会社の出資持分の取得などの結果、当該企業の運営、あるいは(かつ)事業活動について決定権を獲得する場合、外国投資管理政府委員会の許可が必要とされる。
    2022年10月15日付大統領令第737号「特定の取引の種類の実施(履行)の一部の問題について」に従い、非友好国に属するものがロシアの銀行、保険会社、その他の金融機関の資本金の1%の取得の場合にも、同様に外国投資管理政府委員会の許可が必要とされる。

  2. 輸送関連産業

    外国企業が営業することが全面的に禁止されている業種として、ロシア国内の自動車運送事業(乗客・貨物とも)が挙げられる(1998年7月24日付連邦法第127-FZ号「国際自動車貨物事業に関する国家管理ならびにその事業に関する規則違反に対する責任について」第7条)。

    また、外国航空会社がロシアにおいて国内航空運送を行うには、民間航空を管轄する国家機関の特別免許を受けなければならず(1997年3月19日付連邦法第60-FZ号「航空基本法」第63条)、ロシア国内海運はロシアを旗国とする船舶のみが担うことができるとされているが(1999年4月30日付連邦法第81-FZ号「商業海運基本法」第4条)、連邦政府が締結する国際条約に別の定めがある場合は除外される。

    ただし、例外的に2020年12月7日付連邦政府決定第2033号に定められている場合、連邦政府の特別許可を得た上で、外国船籍の船舶も国内海運事業を担うことができる。なお、外国法人と外国船籍の船舶は、商業活動として漁業を行うことはできない(2004年12月20日付連邦法第166-FZ号「漁業および海洋生物資源の保護について」第16条第4項)。

  3. マスメディアなど

    1991年12月27日付連邦法第2124-1号「マスメディアについて」第19.1条によれば、外国法人、または外資系の出資率が50%以上を占めるロシア法人、または二重国籍を有するロシア人は、テレビ・ラジオのチャンネルの設立ならびに定期的に放送されるテレビ・ラジオ・ビデオ番組を制作することができず、また外国人、無国籍者、二重国籍を有するロシア人、外国法人、外資系の出資率が50%以上を占めるロシア法人は、ロシアの連邦構成主体(州など)の領域の半分以上をカバーし、あるいはロシア連邦の人口の半分以上が居住する地域をカバーする放送組織(法人)を設立することができなかった。なお、テレビ・ラジオのチャンネル、定期的に放送されるテレビ・ラジオ・ビデオ番組、これら放送組織(法人)の50%以上の外資への譲渡は禁止されていた。

    同法は2014年9月26日付で改正が行われ、改正法は2016年1月より発効した。改正法第19.1条によれば、従来の外資系の規制対象となる出資比率が、直接的・間接的を問わず20%超に引き下げられるとともに、「マスメディア」が従来のテレビ・ラジオ・ビデオ番組に限らず、定期出版される印刷物やインターネット配信情報も含まれると定義付けられた。

  4. 建築業
    建築業務に関しては、外国法人・個人がこれを行う場合、ロシアの個人または法人の建築業者との提携が義務付けられている(1995年11月17日付連邦法第169-FZ号「建築業務について」)。
  5. 金融業

    ロシアにおける銀行・保険・証券業務、ならびにその他一部の事業活動においては、事業許可の取得が必要であり、多くの事業許可はロシア現地法人であることを必要条件とする。ただし、外資100%出資のロシア現地法人の設立は、特定の業種を除いて認められている。

    また、銀行業務については、ロシアの銀行が外国において銀行業務の制限を受ける場合、ロシア中央銀行は、当該国の銀行によるロシア国内での銀行業務について制限を設けることができる(ただし、ロシアが参加する国際条約において、別の規定がある場合を除く)(1990年12月2日付連邦法第395-I号「銀行および銀行業について」第18条)。

事業許可が必要な業種

事業許可の取得が必要となる活動については、2011年5月4日付連邦法第99-FZ号「特定種の事業に関する許可について」で定められており、同法が定める事業許可の対象業種は約56業種である(2024年1月現在)。
許可対象業種の例としては、航空機設計・製造、薬品・医療設備の製造、乗客・貨物輸送などが挙げられる。許可対象業種は年々減少傾向にあり、2009年1月1日には監査活動、2009年6月30日にはギャンブル用具の製造およびカジノの運営、2010年1月1日には建物・施設の計画や建築活動における許可制度が廃止された。各対象業種については、連邦政府が資格要件などを規定する許可交付規則を作成し、許可手続きは、各担当省庁が審査したうえで許可を交付する。

同法の適用範囲外においても、銀行業、保険業、アルコール関連業、通信、教育、天然資源利用を含む許可対象業種がある。

許可を交付する省庁には、すべての必要書類が提示されてから45営業日以内に、許可交付の可否を回答することが義務付けられている。

出資比率

外国投資法においては、100%外資出資による現地法人(有限会社や株式会社)の設立が可能とされる。ただし、特定産業においては、外資の出資比率に制限がある。

ロシアでは、外国資本100%出資の現地法人(株式会社や有限会社、その他)の設立が認められている。ただし、保険業、旅客航空業、軍需工業などの特定業種においては、外国資本の出資に制限がある。

航空業

外国資本出資による航空会社の設立に当たっては、外資が資本金の49%以下で、社長がロシア国籍を有し、経営管理機関において外国国籍を有する構成員の比率が3分の1を超えない、という要件を満たさなければならない(1997年3月19日付連邦法第60-FZ号「航空基本法」)。

保険業

保険業務に関しては、ロシアの保険会社に外資が出資する際、連邦保険監督局の事前認可を受けなければならず、外国企業の子会社または外資の出資率が49%以上の保険会社が取り扱うことのできる保険の種類は制限されている(強制保険、生命保険、国家資産保険は取扱うことができない)。

ロシアにおける全保険会社の合計資本金に占める外資保険会社の出資比率が50%に至った場合、外資の出資に対する認可は交付されなくなる(1992年11月27日付連邦法第4015-1号「ロシア連邦における保険業務について」)。2024年1月12日現在、当該比率は9.58%である(2023年2月15日付ロシア中央銀行公示)。

金融業

以前は、中銀からの指導(1993年4月8日付ロシア中央銀行書簡第14号「ロシア国内における外資系銀行の設立の条件について」)により、ロシアにおける銀行の資本金全体に占める外国資本の出資比率には、12%の上限が設けられていた。この規制は、2002年11月4日付ロシア中央銀行規則第1204-U号「外資系信用組織の登記の特例および外資による増資の事前許可取得手続に関する規制の第3号の廃止について」に基づき、廃止された。

現状では、ロシアの銀行の資本金全体に占める外国資本の上限(クオータ)は、50%に設定されている(1990年12月2日付連邦法第395-1号「銀行および銀行業について」第18条)。2024年1月12日現在、当該比率は8.97%である(2023年2月15日付ロシア中央銀行公示)。
また、1997年4月23日付ロシア中央銀行規則第02-195号「外国資本出資の銀行の設立の特例ならびに非居住者の資金による銀行の増資にかかわるロシア銀行の事前許可の手続きについて」に従い、銀行への外国投資については特別の手続きが適用される。

その他

天然ガス供給・輸送用パイプラインの運営などにおいても、出資制限が設けられている。

外国企業の土地所有の可否

外国人は、ロシア人と同様、建物を所有することは可能。2001年10月に採択された土地基本法では、土地の所有権も外国人に認めている(農地および大統領令で定める国境隣接地、港湾用地を除く)。ただし、土地基本法の施行規則や登記制度が未整備なことから、実際には、外国人による土地の売買には、まだ難しい側面がある。

ロシアでは、土地の取引に関する一般的なルールを定める土地基本法(2001年10月25日付連邦法第136-FZ号)がモスクワ市とサンクトペテルブルク市を含むすべてのロシア領土に適用されている。
土地基本法の主な内容は次のとおり。

  1. 土地の所有権者は、「連邦および連邦構成体」、「市町村」、「民間」の3通りに区分される。土地に関する権利としては、所有権、相続権が付帯した個人による生涯にわたる占有権(同法が発効する前に生じた「相続権が付帯した個人の生涯にわたる占有権」が維持されるが、この権利を新たに取得することはできない)、賃貸権、一定期間の無償利用権、地役権などが定められている。
  2. 個人、法人ともに、同等の土地購入権が与えられている。
  3. 連邦構成体行政府が所有する土地は、個人や法人に売却することができる。建物の権利を有している個人や法人は、その建物が合法的に建てられている土地の私有化を申請する権利を有する。建造用地の売却は、連邦法で私有化が禁止されている場合や連邦構成体行政府の特殊な用途のために所有されている土地である場合を除き、自由に行える。
  4. 土地は、連邦の登記機関への登記が義務付けられる。
  5. 土地基本法では、外国人にもロシア国民と同様、土地を購入して保有する権利を認めている。

ただし、同法は外国人(個人)や外国法人に対し、次のような規定を設けている。

  • 外国人(個人)および外国法人は、国境地帯など、大統領が定める特定地域における土地の所有は認められない(土地基本法第15条3項)。所有禁止の対象となっている具体的な地域については、2011年1月9日付大統領令第26号において定められており、ウラジオストク市、ハバロフスク市を含む424カ所の市町村、または行政区が含まれている。
  • 建物の所有者であって、その建物が合法的に建てられている土地を所有しないものは、当該土地が譲渡されるとき、その購入または賃借について優先権を有する。ただし、外国人(個人)および外国法人が当該優先権を履行する場合、土地基本法に定める制限が適用される。また大統領は、優先規定が適用されない建物の一覧を別途制定することができる(土地基本法第35条5項)。
  • 外国人(個人)や外国法人には、土地の無償交付は認められない。

土地基本法以外にも、土地の用途や立地によって適用される法規がある。
農地については、外国人(個人)、外国法人、ならびに外国人(個人)・外国法人の出資が50%を超えるロシア法人は、賃借して使用することのみが認められる(農地取引法第3条)。
また、2007年11月8日付連邦法第261-FZ号「港湾について」では、港湾用地は、外国人(個人)および外国企業による所有が禁止されている。

資本金に関する規制

会社を設立する際の最低資本金は、公開型株式会社の場合は10万ルーブル、非公開型株式会社と有限会社の場合は1万ルーブル。
株式会社は、登記後3カ月以内に資本金の半分以上を、残りを登記後1年以内に支払う必要がある。一方、有限会社は、登記後4カ月以内に全額を支払う必要がある。
なお、業種によっては、さらに高い最低資本金の要件が設けられている(証券業務、銀行業務、保険業務その他)。

1995年12月26日付連邦法第208-FZ号「株式会社について」(株式会社法)により、公開型株式会社(PAO)を設立する場合の最低資本金は10万ルーブル、非公開型株式会社を設立する場合の最低資本金は1万ルーブルと定められている。
また、1998年2月8日付連邦法第14-FZ号「有限会社について」(有限会社法)により、有限会社を設立する場合の最低資本金は、1万ルーブルである。
業種によっては、さらに高い最低資本金の要件が設けられているものもある(証券業務、銀行業務、保険業務その他)。

資本金は、金銭、有価証券または金銭的価値のあるその他の権利の対価として支払う。有限会社の資本金は、登記から4カ月以内に支払う必要がある。株式会社の場合、登記後3カ月以内に資本金の半分以上を、残りの分は登記から1年以内に支払う必要がある。現物出資の場合には、出資する資産の価値について、鑑定士による証明書類を要する場合がある。

2024年1月現在、非居住者による出資は、慣行として外貨で行われている。

その他規制

優遇税制の適用条件として、現地調達率や国産化率などが含まれる場合がある。
2015年9月には、個人情報の取り扱いに関する法律が改正され、ロシア国民の個人情報に関しては、一定の条件下で、ロシア国内のサーバーなどで保存・管理することが必要となった。

  1. 政府調達の制限

    政府調達に関しては、2013年4月5日付連邦法第44-FZ号「国家または地方自治体に提供される商品・役務・サービスの発注に関する契約体制について」第14条により、外国の業者に対しても内国民待遇が適用される。ただし、業者の本国において、ロシア企業に対する政府調達に関連する制限がある場合を除く。

    また、国防、国内市場の保護、国内経済の発展、ロシア生産者の支援などのために、外国の商品、サービス、役務に対して政府調達の制限を導入することがある。政府調達の制限には、次のようなものがある。

    1. 2020年4月30日付連邦政府決定第616号「外国産の工業製品に対する国および地方自治体の調達ならびに、外国産の工業製品および外国の者が提供するサービス・役務に対する国防および安保のための調達への参入禁止の導入について」に従い、ユーラシア経済連合加盟国を除き、ロシア国外で製造された数多くの製品は、政府調達への参入が禁止された。
    2. 2015年2月5日付連邦政府決定第102号「国および地方自治体の調達における特定の外国製医療製品の参入制限の規定について」および2015年11月30日付連邦政府決定第1289号「国および地方自治体の調達における必須医薬品リストの医薬品について外国製医薬品の参入制限および参入条件について」に従い、特定の医療機器と医薬品の公共調達についても、それぞれ2015年2月14日と2015年12月10日より外国製品の参入が制限された。
    3. 2015年11月16日付連邦政府決定第1236号「国および地方自治体の調達における外国製ソフトウエアの参入禁止について」に従い、特別登記簿に登録されたロシア製ソフトウエアと同等クラスの外国製ソフトウエアの発注は、原則として禁止された。ただし、例外として、特別登記簿に登録されたロシア製ソフトウエアが発注スペックを満たさない場合には、外国製ソフトウエアの購入が認められる。
    4. 2016年8月22日付連邦政府決定第832号「国および地方自治体の調達における特定の外国産食品の参入制限について」および2016年9月26日付連邦政府決定第968号「国および地方自治体の調達における特定の外国製通信電子機器の参入制限および参入条件について」のそれぞれの決定に従い、特定の食品および通信電子機器分野においても、外国製品の参入が制限された。
    5. 2016年9月16日付連邦政府決定第925号「ロシア産の商品およびロシアの事業者により提供される役務・サービスの、外国産の商品及び外国の事業者により提供される役務・サービスに対しての優先取扱について」に従い、公社、その子会社など公的企業による調達の際、国産の商品や国内事業者によるサービスについて優先的な取り扱いが行われる。

    また、2019年7月10日付連邦政府決定第878号「国および自治体による物品・サービス・役務の調達に際してのロシア国内の電子機器の製造の促進措置および2016年9月16日付連邦政府決定第925号の改正およびロシア連邦政府の一部の法令の廃止について」に従い、国産の電子機器について優先的な取扱いが行われる。また、生産物分与協定(PSA)法(「税制」を参照)では、生産物分与契約の実施に際し、ロシア法人は請負業者、調達業者、郵送業者などとして、優先的に使用される権利があるとされる。

  2. 個人情報の国内管理規制

    企業などが取得した個人データをロシア国内にあるサーバーで保管し処理すること(データローカライゼーション)を義務付ける法律(2014年7月21日付連邦法第242-FZ号「情報・電子通信ネットワークにおける個人情報の処理手続きの適正化に関する一部のロシア連邦法の改正について」)は、ロシア個人情報保護法を含む3つの連邦法の改正法として、2015年9月1日に施行された。
    同改正法では、ロシア国内の事業者(外資系企業の現法、支店および駐在員事務所を含む)、および海外の事業者であってもロシア国内向けのウェブサイトを通じて個人情報を収集する者(オペレーター)は、ロシア国民の個人情報をロシア国内で保存、管理しなければならないとされる。またオペレーターは、個人情報(ロシア国民のものであるか否かを問わない)を処理するサーバーの場所を含む通知を、通信・情報技術・マスコミ監督庁(Roskomnadzor)に提出しなければならない場合がある。

  3. 2021年4月1日より、2021年1月1日以降製造されたスマートフォン、パソコン、スマートテレビなどを含む一定の消費者向け電気製品について、ロシア製ソフトウエアのプリインストールが義務付けられた(2019年12月2日425-FZ号「消費者保護法第4条の改正に関する連邦法」)。
  4. 2021年7月1日付連邦法第236-FZ号「ロシア連邦領域内のインターネット情報通信ネットワークにおける外国人の事業について」に従い、一日当たりのロシア人利用者数が50万人超の外国のIT事業者およびロシア国内の利用者向けサイトのホスティングを行う外国のプロバイダーなどで、以下の条件のいずれかに当てはまる場合は、ロシアの利用者向けにオンライン問い合わせフォームの作成などの措置をとる義務が課されるとともに、2022年1月1日以降、ロシア国内で支店、駐在員事務所、現地法人のいずれかを設立する義務が発生する。
    1. ロシア連邦の正式な言語などによる情報を発信している。
    2. ロシア国内の消費者の注目を集めるための広告を発信している。
    3. ロシア国内の利用者の情報を処理している。
    4. ロシアの法人・個人より金銭を受け取っている。

撤退に際しての国庫納付金

ウクライナ侵攻に関連してロシアに対して制裁を発動したいわゆる「非友好国」に属する企業等がロシアを撤退する際、ロシア法人の持分を売却等処分する場合、当該売却等に必要な外国投資管理政府委員会小委員会の許可を得るためには、原則、当該持分の鑑定人による評価額(市場価格)の15%以上を国庫に納付しなければならない(同委員会分科会2023年7月7日付会合議事録第171/5号抜粋、同委員会分科会2023年9月26日付会合議事録第193/4号抜粋)。