技術・工業および知的財産権供与に関わる制度

最終更新日:2024年01月12日

技術・工業および知的財産権供与に関わる制度

知的所有権の保護に関し、ロシアは一連の国際条約に加盟している。しかし、ロシアには知的所有権に関する法律、制度はあるものの、国内では必ずしも遵守されていないとの指摘もある。

国際条約

ロシアは、著作権や商標権に関し、次の国際条約を批准している。

  1. 工業所有権の保護に関する条約(パリ条約。1883年3月20日締結。ソ連は1968年に批准)
  2. 世界知的所有権機関を創立する条約(1967年7月14日締結。ソ連は1968年に批准)
  3. 文学的および美術的著作物の保護に関する条約(ベルン条約。1886年9月9日締結。ロシアは1994年に加盟)
  4. 万国著作権条約(ジュネーブ条約。1952年9月6日締結。ソ連は1973年に加盟)
  5. 著作権に関する世界知的所有権機関条約(WCT)(2009年2月加盟)
  6. 実演およびレコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)(2009年2月加盟)
  7. 商標法に関するシンガポール条約(2009年12月加盟)
  8. 特許法条約(2009年8月加盟)
  9. 1994年9月9日付ユーラシア特許条約(1995年8月発効)
  10. 1994年9月9日付ユーラシア特許条約に付属する工業意匠保護に関する議定書
  11. 意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定(2018年2月28日発効)
  12. 2020年2月3日付商標、サービス・マーク、原産地名称に関するユーラシア経済連合協定(2021年4月26日発効)
  13. 原産地名称および地理的表示に関するリスボン協定のジュネーブ改正協定(ロシアでは2022年12月31日発効)

ロシア国内法

概要

ロシアでは以前より、著作権や商標権に関しては、旧特許法、旧商標・サービス・マーク・原産地名称法、旧著作権・著作隣接権法、旧集積回路配線図の保護に関する法律、旧コンピューター・プログラム・データベースの保護に関する法律(1992年)などによる規程があったが、2008年1月1日に発効した民法第4部では、著作権、著作隣接権、特許権、ノウハウ、商標等に関する規定がまとめられ、知的財産に関する規定が一本化された。民法第4部の発効により、前記の特許法、商標・サービス・マーク・原産地名称法、集積回路配線図の保護に関する法律、コンピューター・プログラム・データベースの保護に関する法律、著作・著作隣接権法などは廃止された。

2014年3月12日付連邦法第35-FZ号「ロシア連邦民法第1部、第2部、第4部および個別の連邦法の改正について」によって民法第4部が改正された(2014年10月1日発効)。同改正法では、特許権、実用新案権、意匠権、商標権に係わる権利譲渡などの契約およびライセンス契約の登録手続きの簡素化(第1232条3項)、著作権に関するオープンライセンスの導入(第1286.1条)、特許権侵害の過失責任主義の導入(第1250条3項)、損害賠償の代わりに補償金を請求する権利の導入(第1406.1条)などが定められた。

また、憲法、独占禁止法などにも関連規程がある。

登録・出願・審査機関

知的財産権の登録は、知的財産権を担当する国家機関である連邦知的財産局(ロスパテント外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)が行い、出願の受付・審査など実際の手続きについては、連邦産業財産研究所(Federal Institute of Industrial Property:FIPS外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )が行う。
ロシア国外に居住する人および外国法人が、ロスパテントに出願や審判請求などを行う場合には、ロスパテントに登録された弁理士を代理人として指定しなければならない(民法第1247条2項)。

権利の存続期間、適用範囲等

商標権については10年間の設定が可能であり、ロスパテントへの登録手続きが規定されている。また、10年単位での延長が可能である。識別力がない商標、例えば、特定の商品を表示するものとして一般的に使用されている商標などは、登録の対象とならない。

ロシア民法第4部では、発明、実用新案、意匠の定義、その特許性の成否の判断根拠、出願等の手続きが規定されている。特許権、実用新案、意匠権の存続期間は、それぞれ出願日から20年、10年、5年であるが、特許権(医薬品、殺虫剤、農薬のみ)と意匠権について、期間の更新が認められることもある。著作権は、著者の存命中とその死後70年間存続する(第1281条1項)。知的所有権の侵害に関しては、刑事責任が問われることもある。

ロシア民法第1245条に準拠した2010年10月14日付連邦政府決定第829号「私的利用のためのレコードと音響・映像作品の自由な複製に対する補償について」により、同決定に記載のある一部のAV機器や録音・録画メディアの製造者、または輸入者は、それぞれの販売価格あるいは税関での課税価格の1%を補償金として、管理団体に支払うことが義務付けられた。本措置は、こうした事柄について規定する関税同盟の協定が締結されるまで適用される。

最近まで認められていなかった並行輸入について、2022年3月8日付第46号連邦法により、ロシア政府は、当該禁止が適用されない商品を指定する権限を与えられており、2022年3月29日付連邦政府決定第506号「商品で表された知的活動の成果に関する排他的権利並びに当該商品がマーキングされた識別手段の保護に関するロシア連邦民法の規定の一部が適用されない商品(商品グループ)について」により、並行輸入が認められる具体的な商品のリストの作成を産業商務省に指示した。当該商品のリストは、2022年4月19日付産業商務省規定第1532号に定められている。

ロシア民法第1360条第1項により、国家安全保障などのために権利者の同意なく発明、実用新案、意匠の使用に当たり権利者に支払う対価について、ロシア政府は定める権限があるが、権利者が対ロシア制裁を導入した、いわゆる「非友好国」に属する場合、当該対価が2022年3月6日付連邦政府決定第299号によりゼロとされ、事実上、当該場合における無償使用が認められた。

※ジェトロ「知的財産に関する情報」のページを参照。