ウズベキスタンの貿易と投資(世界貿易投資動向シリーズ)

要旨・ポイント

  • 2022年の実質GDP成長率は、年初の予想に近い前年比5.7%増加。
  • 2022年2月にロシアがウクライナ侵攻を開始、各方面で対ロシア経済制裁の副次的な影響。
  • 貿易赤字が拡大するも、経常収支の赤字は縮小。ロシア向け輸出が大幅増。
  • 日本との経済交流が再開、日系中小企業による投資案件が徐々に拡大。

公開日:2023年9月8日

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マクロ経済 
加工業が経済成長をけん引、穀物類などを中心に価格が高騰

2022年の実質GDPは前年比5.7%増だった。2022年2月にロシアがウクライナ侵攻を開始し、世界銀行をはじめとする国際金融機関は、ロシアとの結び付きが強いウズベキスタンの経済成長が阻害されるとの見方を発表したが、最終的に経済成長は年初の予想に近い水準に収まった。

ウズベキスタン大統領府付属統計庁の発表によると、2022年の産業別GDP成長率は農林水産業が3.6%(前年実績4.0%)、建設が6.6%(同6.8%)、鉱工業が5.2%(同8.8%)、サービスが8.5%(同9.5%)だった。世界銀行は、同国が近年取り組んでいる行政・人権・環境問題・経済構造などを含む幅広い分野での野心的な改革を評価しつつも、国有企業の支配力を弱め、経済の主要部門での競争原理の導入などを通じ、民間主導の経済成長と雇用創出を継続的に促進することが必要とコメントしている。

鉱工業生産額は551兆509億スムで、最大構成比83.2%を占める加工業の内訳は金属23.2%、次いで機械・設備・自動車20.3%、繊維・衣類・皮革17.9%だった。加工業の成長率は5.3%で、経済成長をけん引した。

サービス産業の売上高は前年比29.0%増の366兆8,910億スムで、構成比は商業24.5%、運輸22.9%、金融22.0%となっている。

2022年の消費者物価指数(CPI)は前年末比12.3%と、2021年より2.3ポイント上昇した。食品は15.6%、非食品は10.7%、サービスは8.4%だった。食品のうち穀物類(31.3%)、砂糖・菓子・デザート(24.6%)、牛乳・乳製品・卵(19.1%)、野菜・塊茎・豆類(12.9%)、魚介類(12.0%)などの価格上昇が目立った。

表1 ウズベキスタンの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2021年 2022年 2023年
年間 1~3月 1~6月 1~9月 1~3月
実質GDP成長率 階層レベル2の項目7.4 5.7 6.1 5.1 6.2 5.5
家計最終消費支出 階層レベル2の項目11.7 11.4 12.9 11.7 11.7 7.0
政府最終消費支出 階層レベル2の項目3.1 1.3 1.8 1.3 1.1 1.2
総固定資本形成 階層レベル2の項目2.9 0.9 26.3 9.4 5.0 3.1
財貨・サービスの輸出 階層レベル2の項目13.4 24.6 131.9 40.2 45.7 △ 6.4
財貨・サービスの輸入 階層レベル2の項目23.4 13.6 31.4 13.3 12.6 4.5

〔注〕2022年の各期間の伸び率は前年同期比。四半期ごとの伸び率は公表されていない。
〔出所〕ウズベキスタン大統領府付属統計庁

貿易 
貿易赤字は拡大、対ロシア経済制裁の影響でロシア向け輸出急増

大統領府付属統計庁によると、2022年の貿易(通関ベース)は輸出が前年比15.8%増の193億ドル、輸入が20.6%増の308億ドルで、貿易赤字は前年の88億ドルから115億ドルに拡大した。主要貿易国はロシア(構成比18.6%)、中国(17.8%)、カザフスタン(9.3%)、トルコ(6.5%)、韓国(4.7%)、キルギス(2.5%)、ドイツ(2.3%)となった。

表2-1 ウズベキスタンの主要国別輸出(FOB) [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
ロシア 2,088 3,099 16.1 48.4
中国 2,529 2,511 13.0 △ 0.7
トルコ 1,692 1,512 7.8 △ 10.7
カザフスタン 1,178 1,393 7.2 18.2
キルギス 792 978 5.1 23.5
アフガニスタン 667 751 3.9 12.5
タジキスタン 502 521 2.7 3.8
カナダ 200 227 1.2 13.4
トルクメニスタン 192 195 1.0 1.8
イラン 177 140 0.7 △ 21.0
日本 14 15 0.1 5.8
合計(その他含む) 16,663 19,294 100.0 15.8

〔注〕サービスを含む。
〔出所〕ウズベキスタン大統領府付属統計庁

表2-2 ウズベキスタンの主要国別輸入(CIF) [通関ベース](単位:100万ドル、%)
国・地域 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
中国 4,923 6,428 20.9 30.6
ロシア 5,462 6,231 20.3 14.1
カザフスタン 2,742 3,244 10.5 18.3
韓国 1,841 2,300 7.5 24.9
トルコ 1,718 1,739 5.7 1.2
ドイツ 694 1,071 3.5 54.5
トルクメニスタン 710 732 2.4 3.0
インド 461 655 2.1 42.2
ブラジル 348 553 1.8 58.9
ベラルーシ 319 412 1.3 29.0
日本 157 219 0.7 39.6
合計(その他含む) 25,508 30,768 100.0 20.6

〔注〕サービスを含む。
〔出所〕ウズベキスタン大統領府付属統計庁

輸出の主要品目は、工業製品(構成比22.7%、繊維製品、非鉄金属など)、金(21.3%)、食料品・家畜(8.5%、野菜・果実など)、化学品(6.7%、肥料など)だった。金の輸出額は、前年と変わらず41億ドルだった。主要輸出相手国は、ロシア、中国、トルコ、カザフスタン、キルギス、アフガニスタン、タジキスタンで、輸出総額に占める割合は55.8%だった。ロシア向け輸出は前年比48.4%増で、ほかの主要輸出相手国と比べて高い伸びを示した。西側諸国による対ロシア経済制裁が影響したとみられる。

輸入の主要品目は、機械・輸送用機器(31.5%、特殊機械、一般産業用機械・部品など)、工業製品(18.7%、鋳鉄・鉄鋼など)、化学品(13.8%、医薬品など)となっている。主要輸入相手国は、中国、ロシア、カザフスタン、韓国、トルコ、ドイツ、トルクメニスタンで、輸入総額の7割を占めた。

表3-1 ウズベキスタンの主要品目別輸出(FOB) [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
工業製品 4,333 4,384 22.7 1.2
4,110 4,110 21.3 0.0
サービス 2,582 4,018 20.8 55.6
食料品・家畜 1,372 1,632 8.5 18.9
化学品 1,131 1,301 6.7 15.0
鉱物性燃料・潤滑油 915 1,215 6.3 32.8
機械・輸送用機器 694 974 5.0 40.4
非食料品原料 510 394 2.0 △ 22.8
その他 1,016 1,266 6.6 24.6
合計 16,663 19,294 100.0 15.8

〔出所〕ウズベキスタン大統領府付属統計庁

表3-2 ウズベキスタンの主要品目別輸入(CIF) [通関ベース](単位:100万ドル、%)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
機械・輸送用機器 8,252 9,688 31.5 17.4
工業製品 4,722 5,767 18.7 22.1
化学品 3,648 4,232 13.8 16.0
食料品・家畜 2,510 3,393 11.0 35.2
サービス 1,767 2,548 8.3 44.1
鉱物性燃料・潤滑油 1,557 1,795 5.8 15.3
その他 3,052 3,346 10.9 9.6
合計 25,508 30,768 100.0 20.6

〔出所〕ウズベキスタン大統領府付属統計庁

対内・対外直接投資 
対ロシア金融制裁などで経常収支の赤字が縮小

ウズベキスタン中央銀行によると、2022年の経常収支は6億2,800万ドルの赤字だった。前年の49億ドルの赤字から大幅に縮小した。貿易収支(財・サービス、国際収支ベース)の赤字137億ドルを、一次・二次所得の黒字131億ドルで相殺した。一次所得(主として国外で働くウズベキスタン国民に支払われる賃金・給与および直接・証券投資収入など)の収支は8億9,700万ドルの黒字(2021年は3億6,000万ドル)で、国外に出た短期労働者が前年より増加したことが主な要因である。二次所得(ウズベキスタン居住者と非居住者の間のコミットメントを伴わない経常的な送金)の黒字は122億ドル(2021年は62億ドル)となった。個人間送金が前年比2.3倍の86億ドルに増えたことが影響した。西側諸国による対ロシア金融制裁でロシア国内での外貨引き出しが制限され、国外労働者によるウズベキスタンへの資金送金が現金などから国際送金システムへ移行したこと、ロシア向けに輸出した小規模事業者が貿易決済を、銀行送金ではなく個人間送金システムを利用したことなどが影響した。

2022年の大規模な対内直接投資の事例として、ハンガリーのOTP銀行によるウズベキスタン大手イポテカ銀行の買収、アラブ首長国連邦(UAE)のマスダールやサウジアラビアのACWAパワーによる複数の太陽光・風力発電事業などがある。

2022年の対内直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は25億ドル(2021年は23億ドル)に達した。うち、純資本投資(生産物分与契約事業を除く)が9億9,480万ドル、親会社からの借入金など負債性資本が7億8,480万ドルだった一方で、生産分与契約締結企業による投資は4億7,650万ドルの引き揚げ超だった。

2022年9月30日時点のウズベキスタンの対外債務残高は2021年末比11.0%増の482億ドルで、このうち中央銀行を除く政府部門が3.3%減の174億ドル、民間非金融部門が14.5%増の172億ドルだった。財務省資料によると、2022年10月1日時点の大口の債権者はアジア開発銀行54億ドル、世界銀行44億ドル、国家開発銀行(中国)21億ドル、中国輸出入銀行19億ドル、国際協力機構(日本)17億ドル、イスラム開発銀行9億ドル、国際協力銀行(日本)4億ドルであった。対外債務の主な割り当て分野は、政府予算補填66億ドル、エネルギー(石油・天然ガス)29億ドル、電力27億ドル、農業25億ドル、輸送・物流インフラ24億ドル、住宅・公共サービス22億ドルとなっている。

表4 ウズベキスタンの対内直接投資の推移[実行ベース、ネット、フロー](単位:100万ドル)
2019年 2020年 2021年 2022年
対内直接投資額 2,317 1,728 2,276 2,531

〔出所〕ウズベキスタン中央銀行

対日関係 
新型コロナ感染拡大で縮小していた経済交流が再開

日本側貿易統計(通関ベース)によると、2022年の日本の対ウズベキスタン輸出は前年比50.1%増の2億7,777万ドル、輸入は3.4倍の5,271万ドルだった。ウズベキスタン側の輸入超過に変わりないが、対日輸出の伸びに勢いがある。日本からの輸出は一般機械(原動機、加熱用・冷却用機器、繊維機械)、電気機器(重電機械、電気回路等の機械)などが伸びた。日本の輸入では電算機類(含周辺機器)、化学製品、野菜などが大きく増加した。

新型コロナウイルス禍の影響で縮小していた日本・ウズベキスタン間の経済関連イベントが開催され、ビジネス関係者の往来も戻っている。2022年8月にはウズベキスタン航空によるタシケント~成田直行便が再開した。10月には3年ぶりとなる第16回日本ウズベキスタン経済合同会議がタシケントで開催された。タシケント市のパートナー都市である名古屋市を中心に、中小企業関係者の来訪も多くなっている。

中小企業の進出案件としては、和食レストラン、カフェなどの飲食サービス分野が目立つ。シャフカト・ミルジヨエフ大統領の訪日(2019年12月)を契機に開始された日系企業による投資も積極的な拡大がみられる。通信教育サービスを提供する「ジャパン・デジタル・ユニバーシティ」 新キャンパス工事、日系ホテル「ホテルインスピラ-S」レストラン増築などが挙げられる。また、2022年2月以降、ロシアに代わる市場として中央アジアにビジネス機会を求める日系企業も増えている。

表5-1 日本の対ウズベキスタン主要品目別輸出(FOB)
[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
一般機械 59,041 175,760 63.3 197.7
階層レベル2の項目原動機 19,625 131,295 47.3 569.0
階層レベル2の項目繊維機械 9,039 18,380 6.6 103.3
階層レベル2の項目建設用・鉱山用機械 9,522 8,059 2.9 △ 15.4
階層レベル2の項目加熱用・冷却用機器 29 7,586 2.7 26,058.6
輸送用機器 99,853 71,306 25.7 △ 28.6
階層レベル2の項目自動車 98,940 70,316 25.3 △ 28.9
階層レベル3の項目バス・トラック 84,980 46,522 16.7 △ 45.3
階層レベル3の項目乗用車 6,395 14,326 5.2 124.0
電気機器 3,689 19,805 7.1 436.9
階層レベル2の項目重電機械 231 16,205 5.8 6,915.2
階層レベル2の項目電気回路等の機械 300 1,907 0.7 535.7
合計(その他を含む) 184,993 277,766 100.0 50.1

〔出所〕財務省「貿易統計(通関ベース)」をドル換算

表5-2 日本の対ウズベキスタン主要品目別輸入(CIF)
[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
一般機械 218 23,699 45.0 10,771.1
階層レベル2の項目電算機類(含周辺機器) 174 23,410 44.4 13,354.0
化学製品 5,442 12,359 23.4 127.1
食料品 2,286 8,871 16.8 288.1
階層レベル2の項目野菜 2,025 8,454 16.0 317.5
階層レベル2の項目果実 179 155 0.3 △ 13.4
原料別製品 1,902 2,886 5.5 51.7
階層レベル2の項目非鉄金属 1,056 2,036 3.9 92.8
階層レベル2の項目織物用糸・繊維製品 844 841 1.6 △ 0.4
原料品 726 1,164 2.2 60.3
電気機器 60 35 0.1 △ 41.7
階層レベル2の項目電気計測機器 60 29 0.1 △ 51.7
合計(その他を含む) 15,495 52,707 100.0 240.2

〔出所〕財務省「貿易統計(通関ベース)」をドル換算

基礎的経済指標

人口
3,620万人(2022年4月1日)
面積
44万8,900平方キロメートル
1人当たりGDP
2,014米ドル(2021年)
(△はマイナス値)
項目 単位 2020年 2021年 2022年
実質GDP成長率 (%) 2.0 7.4 5.7
消費者物価上昇率 (%) 11.1 10.0 12.3
失業率 (%) 10.5 9.6 8.9
貿易収支 (100万米ドル) △ 6,052 △ 8,845 △ 11,390
経常収支 (100万米ドル) △ 3,028 △ 4,895 △ 628
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 14,687 14,189 12,703
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 36,295 43,400 48,179
為替レート (1米ドルにつき、スム、期中平均、公定レート) 10,054 10,609 11,050

注:
消費者物価上昇率:12月の前年同月比。
貿易収支:通関ベース
対外債務残高(グロス):2022年数値は2022年9月30日時点。
出所:
人口、実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率、貿易収支:ウズベキスタン大統領府付属統計庁
面積:ウズベキスタン投資産業貿易省
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:国際通貨基金データベース
経常収支、対外債務残高(グロス):ウズベキスタン中央銀行