日本産食材ピックアップゆず

風味豊か。日本料理の引き立て役

ゆずは日本の伝統的柑橘(かんきつ)のひとつで、古くから調味用に使われてきました。ミカンのような生食には向かず、多くは料理の味と香りを引き立てるために使われます。手のひらサイズで、重さは120~130グラムほど。皮は厚く、凸凹としています。表面に張りがあり、傷や黒い斑点の少ないものが、高品質とされています。

ゆずは独特のさわやかな香りが特徴です。果汁、果皮共に香りがしますが、特に果皮に香り成分が含まれているため、おろし金で皮をすりおろし、刺し身や焼き魚にふりかけると風味が良くなります。近年はその特徴的な香りから、パリやニューヨークのシェフたちがパスタやソテー、お菓子などに使うようになりました。皮は千切りにすれば、薬味やマーマレードにもなります。飾りとしても重宝され、中身をくりぬいて器代わりにしたり、そぐように斜めに切ってお雑煮の付け合わせにしたりと、使い道はさまざまです。果汁は酸味があり、ポン酢をはじめ、酢の物や鍋料理、ゆずみそ、カクテルに加えるなどして使われます。丸ごとの実を半分に切り、中身をフォークなどで崩してから手で握ると簡単に果汁を搾ることができます。

内陸の山間部で栽培。寒暖の差が生む香り

ゆずの原産は、中国・長江の上流域といわれています。約1300年前の奈良時代までに朝鮮半島を経て日本に伝わり、西日本で薬用として栽培されてきました。近年では、原産国の中国や韓国、オーストラリア、スペイン、イタリア、フランスでも栽培が進んでいますが、日本のゆずは、昼夜の寒暖差が高い内陸の山間部に産地が集中していることから、海外に比べ香り高いのが特長です。ゆずの枝には、非常に鋭いとげがあり、風などで実が傷つきやすく、管理が難しいとされています。ゆずの木は、成長が遅いことで知られ、種から育てる「実生(みしょう)栽培」では、実をつけるまで15~20年の年月がかかります。そのため、この栽培方法を取り入れているのは、ゆずの産地でも古くから栽培している一部地域に限られています。実生栽培は手間がかかる分、香りが強く、味わい深いのが特長です。多くの地域では、柑橘類のカラタチなどにゆずを接ぎ木して育てており、数年で実を実らせます。

「ゆず」という名前の由来には諸説ありますが、一説には、中国名の「柚(日本語の音読みで『ゆう』)」という漢字と、お酢として使われることが多かったことを掛け合わせ、「ゆず」と呼ばれるようになったといいます。

冬至の風物詩「ゆず湯」。血行促進や保湿効果も

ゆずは古くは薬として使われるほど、風邪予防に効果があるといわれてきました。かんきつ類の中でも皮のビタミンC含有率が高く、可食部100グラムあたりのビタミンCは、果汁内40ミリグラムに対し、皮は150ミリグラムも含んでいます。ペクチンをはじめとする食物繊維も豊富です。可食部100グラムあたり、皮に6900ミリグラム、果汁に400ミリグラムが含まれ、胃腸を正常化させるほか、コレステロールや血糖値を抑える作用があります。ほかにも、クエン酸やアロマオイルに使われる香り成分が含まれています。酸性度が低く保存性が良いことも特長で、果汁は非加熱であれば冷蔵保存が必要ですが、加熱殺菌すれば常温で長期保存することができます。

冬至の風物詩になっている「ゆず湯」は、銭湯ができた江戸時代に始まったといわれています。ゆずの成分がお湯に溶け出し、血行を促進することから「冬至にゆず湯に入ると風邪を引かない」といわれてきました。ゆずは、ガーゼの袋に入れて適度にもんだ後、湯船に浮かべます。肌の保湿やリラクセーション効果もあるとされています。

国内最大産地は高知。サッカーコート約1200個分の面積

ゆずの国内生産量は約2万7000トン。高知県が国内シェア約52%を誇り、都道府県比較では突出しています。高知県は、1960年代初めごろから国内での需要に応じて、生産を拡大してきました。2016年当時の栽培面積は、860ヘクタールで、サッカーコート約1200個分の広さになります。2位は徳島県で13%、3位が愛媛県で11%と続きます(農林水産省2016年調査)。東北地方でも、岩手県陸前高田市や大船渡市で生産が盛んです。

ゆずは一年を通して流通していますが、出荷量は11月から年明け1月に集中します。夏から秋にかけて出回る皮が緑色のままのものを「青ゆず」、秋から出回る皮が黄色くなったものを「黄ゆず」と呼びます。果汁は青ゆずより黄ゆずのほうが豊富です。寒さに強い果物で、家庭で栽培されることもあります。収穫したゆずは、冬場は常温でも数日間保存できます。

欧州で販路を広げる日本産ゆず

ゆずは、フレンチのソースやドレッシング、マカロン、デザートなどに使用されるなど、欧州を中心に販路を広げつつあります。かつて日本一のゆず産地であった高知県北川村が新たな販売ターゲットとして目をつけたのは、食文化の発信地フランスでした。2011年にフランスで「高知県産ゆず賞味会」を開催し、地元シェフらから高い評価を得ると、翌年秋にはフランスで開かれた食品見本市に出品。わずか3トンのゆずに約20カ国から引き合いがあり、その年は、村の生産量の3割を海外に輸出するまでになりました。数年後には、輸出先をアメリカやシンガポールなど25カ国以上に拡大。13年からは高知県大豊町も欧州輸出に乗り出し、県を挙げて、「Kochi Yuzu」ブランドを世界で広めようと、輸出拡大に力を入れています。

また、シェア2位の徳島県も、那賀町や上勝町、三好市を中心に欧州、米国、オーストラリアに輸出しています。那賀町木頭の「木頭ゆず」は、地域の農林水産物などの名称を知的財産として保護する地理的表示保護制度(GI制度)にも登録されているブランドゆずで、フランスの食品卸からも絶賛されるなど、品質の高さが評価されています。また、同地のメーカーは多様なゆず加工品の製造にも取り組んでおり、ポン酢や缶チューハイ、ゼリー、鯖缶などの新商品を開発。日本国内外での知名度の向上に力を入れています。

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