日本食材サポーター店インタビュー Izakaya NIWA

Izakaya NIWAがあるのは、マレー半島中西部のプタリン・ジャヤ。マレーシアの首都クアラルンプールの南西約8kmに位置する、1950年代から発展した工業が盛んな街だ。

店舗があるアラダマンサラは日本人の労働者・駐在員が多くいる地域で、近隣エリアには日系の現地企業や日本人学校がある。クアラルンプールから電車や車で30～40分とアクセスも良好なため、ファミリーでの食事から接待・会食などのビジネス利用まで多様な目的で選ばれている。

外観に目を向けると、目に飛び込んでくるのは看板に掲げられた「庭」の文字。夜になればネオンが明るく輝き、日中とは異なる表情を見せてくれる。店内は日本の居酒屋らしさも味わえる、黒を基調としたデザイン。ビジネス利用も多いことから、カーテンで区切って個室エリアを作り出せるような内装になっているのも特徴と言えるだろう。

「日本の居酒屋」をコンセプトにしたIzakaya NIWAは、2020年10月に開店した。人気メニューは、日本でも定番の鶏のから揚げとほっけ焼き。「いかげそバターの鉄板焼きやなめろう、日本産の米を使用したおにぎりなどもよく注文されます。日本風のおでんもダシを取るところから作っています。」とシェフの郷右近氏は話す。2023年に郷右近氏が入店してからは海鮮系の食材を積極的に採用しており、魚料理のメニューが好評だ。

「このエリアの店舗は、冷凍食材や日本産ではない食材を多く使っていて、日本料理でありながらもどこか日本料理「風」といった印象がありました。それもあって、日本産食材にこだわって本来の「純日本料理」を提供できるお店を作りたいと思い、お店を開業したんです。」とオーナーの小原氏。日本酒は越乃寒梅、鯉川、山田錦、焼酎は富乃宝山やいいちこ（麦）、ウイスキーはサントリーの角、梅酒は菊正宗やチョーヤの紀州など、アルコールもこだわりをもって日本産を選んでいる。

生鮮系の日本産食材は、「鮮度を重視して空輸している」という。「その日のうちに提供できるのがいいですね。2022年半ば頃からは月決めのイベントを行っており、そこでおすすめの食材や鮮度などをお客様にPRしています。イベントで使う食材は、スタッフミーティングやお客様アンケートの内容も見ながら決定します。」現在は、日本の四季に合わせた食材を絡めたイベントも計画しているのだとか。

アルコール選びについても、小原氏はこう話す。「サプライヤーが主催するイベントに参加してお酒の説明を聞きました。サプライヤーに来てもらい、日本酒の飲み比べや説明会を行ってもらったこともあります。学んだ知識を活かして、お客様へ味の違いや料理に合うお酒の説明などをすることもありますね。」

小原氏、郷右近氏がともに東北出身ということで、今後は米どころである東北産の日本酒が増えるかもしれない。また、女性の好みに合わせて果実あらごし系の梅酒を揃えたり、種類を今後増やしたりすることも検討しているという。

最後に、今後実現したいことについて小原氏に聞いた。「実現したいのは、旬な食材を使ってより日本産食材の魅力や豊かさを知ってもらうことです。魅力的な野菜が多くあるので、うまく合わせながら使っていきたいですね。イメージは、京都の昔ながらの家庭料理である『おばんざい』。冬ならかぼちゃ、春であれば山菜などを中心に数種類を店頭に並べ、お客様が気に入ったものを手に取ってもらうスタイルを考えています。」

「期間限定メニューを増やす」「自ら手に取って食べる」という形を取り入れることは、他店との差別化につながるのではないか――という狙いもある。日本産食材サポーター店認定店のメリットについては、「お客様とのコミュニケーションの接点になる」「日本産食材の魅力をより意識した上で味わってもらえる」の2点が挙がった。

「日本料理の味や雰囲気を気軽に味わっていただけることがIzakaya NIWAの良さだと思っています。日本人シェフが常駐しているので、日本人のお客様に対して臨機応変な対応も可能です。『プタリン・ジャヤの日本料理と言えばIzakaya NIWA』と言っていただけるように努めていきたいです」と語ってくれた、小原氏の理想の店づくりは続いてゆく。