海外における日本産食材サポーター店認定制度

日本産食材サポーター店インタビュー ポポロ屋

和食の魅力を広める“シロー”こと、平澤稔氏のミラノ初の“すし場”

所在地:ミラノ(イタリア)

長年に渡りすし・和食ブームを牽引してきたポポロ屋

ポポロ屋は、日本食材販売店として出発した。和食店を併設オープンしたのが1989年、ミラノ初“すし場”の誕生である。店舗のことをすしバーではなく、あえて“すし場”と呼ぶのが平澤稔オーナーの小さなこだわりだ。当時は、今のすしが溢れる状況からほど遠く、客の大半を日本人が占めていた。「刺身やすしなど生魚に馴染みがないから、イタリア人客は、ほんと少なかった。」と、平澤氏。でも“和食の魅力を広めたい”情熱とイタリア人の好みに合わせる工夫や地道な努力のお陰で、状況は逆転する。今では、ほとんどがイタリア人客である。

日本の演歌が流れる店に入ると、下ごしらえしている通称“シロー”こと平澤氏が、カウンター越しに威勢良くイタリア語で声を掛ける。常連客も「調子はどう?シロー」と応え、フレンドリーな会話がはじまり、まさに日本のスシ屋のような活気ある雰囲気に包まれる。メニューは、すし、ちらしずし、刺身のほか、てんぷらや焼き鳥、豆腐、酢の物やみそ汁が並ぶ。気軽に正統派の和食が楽しめると評価が高く、絶え間なく客が入って来る。

同店は、日本人レストラン経営者イタリア協会の会員として、また日本の全国すし商生活衛生同業組合連合会に加入し、日本の味を広めるため、活躍している。

和やかな雰囲気の家族経営、鮨を握る父・平澤稔氏と運営担当の長女・真美氏

長野県出身の平澤氏は、辻調理師学校で学んだ根っからの料理人である。辻校長の「イタリアは料理が優れた国、でもイタリア人は、食に対して保守的、和食を定着させるのは難しい。」というアドバイスにも、むしろ平澤氏は、和食を広める意気に燃え、ローマを振り出しに、ミラノに移住して、“すし場”を開き、本格的に和食の伝導にのりだした。

「はじめのころは、にぎりのすし飯が少ないと怒られたもんですよ。客のニーズに応えて、すし飯の量を多くしたり、ちらしずしのすし飯の中にネタを加えたりし、工夫をしてきた結果、イタリア人の好みに合わせる惜しまない努力が実った。」と嬉しそうだ。そして、店の切り盛りを、安心して任せられる次世代、イタリア育ちの真美氏も加わり、日本の取引先との関係も、ますますスムースになってきている。

和食に欠かせない海草類や味を決める調味料は日本産

昨今のダイエットや健康志向から、カロリーオフの海藻類は、イタリアでも関心が高い食材だ。店では、日本産のわかめ、もずく、とさかのり、寒天、また群馬産のしらたきを酢の物にしてサービスしている。このほか、海産物の海苔や明太子も、日本産だ。

よくリクエストされる緑茶も、山口県産の“小野茶”である。コクのある味で、香りもよい、と評判が良い。

また、日本に比べイタリアの水は硬度が高いため、正統派の和食の味を出すのに苦労する。そのため調味料選びには、ことのほか心をくだき、醤油や味噌、みりん、酢など調味料の90%は上質な日本産を使っている。

肉質の柔らかい京都産和牛のにぎりも、食通の興味を引き、人気がある日本産の食材のひとつ。このほか和牛肉は、リクエストがあると、大根おろしを添え、和風ステーキにして提供している。

バラエティのある品揃え 小さな1~2合瓶の日本酒

店内には、ポポロ屋のロゴ入りノレンがかかり、ガラス張りのショウケースには、すしネタの新鮮な魚介類が、行儀よく並び、食欲をそそる。なにげなく積まれたにぎり用の器も、和の空気感を盛り上げているようだ。また、すき間ないほど、壁に和食材や日本産飲み物の説明ポスターや紹介記事が張られ、客の好奇心を誘いオーダーに繋がる宣伝効果もある。カウンター前には、醤油瓶がおかれたテーブル席があり、営業時間が待ちきれないように客が入って来て、あっという間に店内が賑やかになって行く。

日本産地ビールも「違いのわかる人に、リピーターが多い。」と真美氏。新潟県産のピルスナーや、口当たりがさらっとして、飲みやすい米のビールも、人気上昇中だそう。注目度が増している日本酒も、手軽に楽しんでもらえるよう、小さい瓶で多様な銘柄を揃えている。これからも安定して供給可能な、日本からの飲み物の種類を増やして行くつもりだ。

併設のこじんまりとして豊富な品揃えの日本食材販売ショップ

ショップでは基本的に、“すし場”で用いる食材を販売している。日本産の醤油や酢、お好み焼きのソースなど、調味料をはじめ、海苔やインスタントみそ汁、スナック菓子、そしてスペインで栽培する日本種米も並んでいる。

2015年、食をテーマに開催された“ミラノ万博”以降、家庭で和食を作りたいという人が目立って多くなり、日本の食材を買いに来るイタリア人客も、着実に増えてきている。

“シロー”の「和食のすそ野を広げたい」という思いを胸に、買いに来る客たちに、どのように日本食材を活用したらよいかを丁寧に説明し対応している。

ポポロ屋:スシ場&ショップ
Via Eustachi 17 - 20129 Milano
+39 02 29406797
https://www.poporoyamilano.com/ja/home外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

和食レストラン・シロー・ポポロ屋
Via Eustachi 20 - 20129 Milano
+39 02 29512635
https://www.ristoranteshiropoporoya.it/ja/home外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます