日本産食材サポーター店インタビュー TOYO FOODS PROVIDENCIA店

ハリスコ州サポパン市内に本社を構えるComercial TOYOが運営する日本食材店「Toyo Foods」は、メキシコ国内の在住日本人は勿論のこと、メキシコ人が足繁く通う人気小売店である。Toyo Foodsはメキシコ国内でB to C販売拠点として35店舗を持ち、倉庫を含めると50拠点に上る。取扱商品数は4,000品を超え、商品棚には、日本の醤油やみりんなど日本人にとって馴染みの商品が数多く陳列されている。日本産の各種調味料に加え、日本から取り寄せた菓子類や飲料品、什器などが幅広く販売されている。昨今では醤油や調味料、日本産小麦粉を100%使用した自家製のパンなどを自社開発し、店頭で販売を行っている。

「メキシコ人のお客様を思い浮かべて、この商品は実際に手にとって買ってくれるだろうか、ということを常に真剣に考えています。味はもちろん、値段、パッケージなども判断材料にしながら商品の購買を決定しています」とComericial TOYOの鎌田智子氏は語る。「日本酒がようやくメキシコで認知され、販売が伸び始めています。若いメキシコの方々には柚子や抹茶風味の商品が人気ですね。あくまでも私たちのメインターゲットはメキシコ人。彼らが購入してくれるような商品を今後も発掘し、取り扱っていきたいと考えています」と同氏は話す。

「ここ数年で日本へ旅行するメキシコの方々も増えましたが、大多数のメキシコ人には日本は遠く、物価も高いというイメージが強く、物理的・心理的に遠い存在です。ですから、Toyo Foodsを通じて、通常の生活圏から離れた、異なる世界に触れたような体験を提供したいと考えています」と鎌田氏は和かに語る。「日本食材を購入したい」という欲求は、今後ネット販売を通じて満たされるはずなので、TOYOの店舗にいけば楽しい経験ができる、新しい世界に触れることで人生の質が高まる、そのような店舗づくりを行っていきたいと同氏は話してくれた。

Toyo Foodsはメキシコを代表するB to Cの日本食材店としての地位を確立したが、日本食の普及に勤しんだこれまでの日々は苦労の連続だったと鎌田氏は語る。「メキシコの方々に日本食材を購入してもらうことや、日本食を自宅で調理して頂くために、従来、本社の社員が実際に店頭に出向き、顧客に直接声をかけて商品の説明を行うなどの地道な努力を積み重ねてきました。その後、ソーシャルネットワークを介して日本食のレシピを提供するなどして、徐々に日本食がメキシコ人の生活に溶け込むようになったんです」。

長い年月をかけて日本食材の普及を行なってきたことが、漸く実を結びつつあるものの、新たな課題も生まれているようだ。メキシコ人の日本食に対する知識が近年急激に高まったことで、「以前、湯葉や海蘊などをお求めになられるメキシコ人の方がおられました。取扱商品数が約4000品目あることに満足せず、お客様が求める商品や知識を、当社としてもスピーディに浸透させ、顧客の満足度を高めることを常に意識している」からとのことだ。

日本産の酒類において、いまや日本酒や焼酎のみならず日本のビールの取扱っているToyo Foods。今後は日本産のワインやウイスキーの販売にも挑戦していくとのことだ。年々、食品においても取扱商品数は増加しているが、今後は「日本でも簡単に手に入らない商品」など、拘りの商品を積極的に仕入れていく予定だ。

Toyo Foodsは販売チャネルの拡充として自社ECサイトを開設するとともに、小売店舗も店舗数を増加させてメキシコ国内の販売エリアの拡大を戦略的に進めていく。年々、自宅で日本料理を調理するメキシコ人も増加していることから、和食器などの需要が高まり、関連備品販売も好調のようだ。「自社の商品を海外に輸出したいとお考えの日本の食品・飲料メーカーの方はもちろん、和食器の職人の方々がメキシコへ商品を販売したいと考えたとき、真っ先に思い浮かべて貰えるような企業になりたいと思います。またメキシコ国内で日本食レストランを経営する方々、日本産の食材や飲料を販売したい大手スーパーなどの発展に貢献したいですね。社内では”お客様のラストワンマイル”を意識し、メキシコ国内で日本食に携わる全ての方々の要求をどのように満たしていくかについて常に議論しています。メキシコで日本食を求める全ての人と、日本食に携わる全ての人に頼られる存在になりたいですね」と精悍な表情で鎌田氏は応えてくれた。