最高裁、知財権侵害に対する規則を制定−差し止めや仮処分申請が可能に−

(インドネシア)

バンコク事務所

2012年09月06日

最高裁は7月30日、商標権などの侵害が疑われる輸出入品に対する一時差し止め命令に関する規則、および特許権などの知的財産権侵害に対する仮処分決定に関する規則を制定、発効した。模倣品など知財権の侵害に頭を悩ませる日系企業などには朗報だ。

<知財権侵害の多くは輸入品>
インドネシアには模倣品や海賊版など知財権を侵害した商品が数多く流通し、日系企業も対策に手を焼いている。そして、その多くは中国をはじめ外国からの輸入品によるもので、特に税関における差し止めなどの水際取り締まりが重要だとされてきた。

インドネシアの商標法や著作権法では、権利者は侵害が疑われる輸出入品に対して商事裁判所に差し止めの仮決定を求めることができると規定され、関税法にも申請を受けた商事裁判所が税関に対して侵害被疑品を一時的に差し止める指示を出せると規定されている。しかし実際には、一時差し止めや仮決定の申請を行うための規則が整備されておらず、税関における不正商品の差し止めを権利者が申請することは不可能だった。

しかし今回、一時差し止めと仮処分に関する規則が発効したことで、今後は権利者が税関で侵害被疑品を差し止める仮処分を行うよう申請することが可能になると考えられる。

規則によると、権利者は一時差し止めの申請に当たり、権利者であることの証明や、対象となる輸出入品の具体的な情報、保証金などを用意して商事裁判所に申請し、受理されれば原則として最長10日間、対象物品は保税地域に留保される。他方、仮処分の申請に際しては、権利者証明や権利侵害を示す証拠、保証金などを添えて申請し、受理された場合には原則として最長30日間、有効な処分が行われる。

<「水際取り締まりの進展に期待」>
規則制定に際して、これまで当局に対してさまざまな協力や働き掛けを行ってきたインドネシア知的財産権総局(ジャカルタ)の長橋良浩・国際協力機構(JICA)専門家は「今回の規則制定により、税関での模倣品など知財権侵害物品の水際取り締まりに一応の進展がみられることを期待する。そのためには、今後、税関職員が制度を理解し、運用を徹底することが望まれるとともに、権利者への周知も必要だ。JICAによるインドネシアの知財権強化支援として、税関職員に対して知財権総局とも協議の上で必要な協力を行うとともに、権利者への周知に関しては、特に日本の権利者に対してジェトロとも協力して進めていきたい」と述べている。

なお、インドネシアなどの新興国においては、法律や規則と実際の運用の乖離がしばしば指摘される。今回制定された規則に基づき、差し止めの仮処分申請などを検討する場合には現地の弁護士など専門家に相談することが望ましい。

(大熊靖夫/アジア知的財産担当)

(インドネシア)

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