日本の特許庁がシンガポールの国際調査・予備審査機関に

(シンガポール、日本)

バンコク事務所

2012年12月25日

日本の特許庁は12月1日から、シンガポールで特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の国際調査と国際予備審査の管轄機関になった。シンガポール知的財産庁に出願されたPCT国際出願について、特許庁が調査・予備審査し、その結果を提供する。日本企業がシンガポールで行った研究開発成果を適切に保護することにつながるとみられる。

<ASEANで4ヵ国目の管轄機関に>
日系企業は東南アジアで研究開発拠点の設置を増やしており、現地で創出された発明を適切に保護することが強く求められてきた。現地での発明は、現地の知財当局にPCT国際出願(注1)を行うケースの増加が見込まれる。

このため2012年7月、日本の特許庁はシンガポール知的財産庁と、協力覚書を取り交わし、特許審査協力を進めていた。

12月1日から、シンガポール知的財産庁に出願されたPCT国際出願を、日本の特許庁が調査と予備審査をし、その結果を提供することで、両庁が合意した。

なお、日本の特許庁は、タイ、フィリピン、ベトナムのPCT国際出願に関する管轄機関(注2)としての役割を担っている。今回、これにシンガポールが加わったことで、日本の特許庁はASEAN諸国のうち4ヵ国の管轄機関となった。

このような東南アジア各国におけるPCT国際出願の管轄機関化について、特許庁の上田真誠国際課長補佐は「今後も引き続き、ASEAN各国をはじめとしたアジア新興国などのPCT国際調査と国際予備審査を管轄する国の拡大を図り、現地に出願されたPCT国際出願について質の高い日本の審査結果を提供するとともに、アジア新興国などとの知的財産分野の協力関係を強化することで、日本企業のグローバルな事業活動の支援に努めていく」と述べている。

特許庁は今後、インドネシアやマレーシアなど日本企業の関心が高い各国に対する管轄機関化の交渉を進める予定だ。

(注1)特許庁によると、PCT国際出願とはPCTに基づく国際出願のこと。1つの出願書類を条約に従って提出することによって、PCT加盟国である全ての国に同時に出願したことと同じ効果が得られる。PCT国際出願は、PCTが定める国際調査機関と国際予備審査機関により、その特許性が調査されるため、各国の特許庁は国際調査機関・国際予備審査機関の見解を参照して自国の審査を行うことが可能となる。
(注2)特許庁によると、日本の特許庁が、ある国のPCT国際調査・国際予備審査を管轄する管轄国際調査機関・管轄国際予備審査機関になっている場合、その国で受理されたPCT国際出願について、出願者の希望があれば、特許庁が国際調査報告と国際予備審査報告を作成できる。

(大熊靖夫/アジア知的財産担当)

(シンガポール・日本)

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