PSAがスロバキアで自動車生産調整の動き

(韓国、スロバキア、フランス)

ウィーン事務所

2013年02月01日

2012年のスロバキアにおける自動車生産台数は90万台で、過去最高を記録した。スロバキアに生産拠点を持つ起亜自動車とフォルクスワーゲン(VW)が生産を大幅に拡大している一方で、PSAプジョー・シトロエンが1月28日、スロバキアのトルナバ工場で生産を一時的に停止した、とオーストリア主要経済紙などが報じた。欧州での需要低迷のためで、2月にはさらに4日間生産を停止する予定という。

<起亜とVWは生産拡大>
スロバキア自動車産業連盟(ZAP)の2013年1月11日発表によると、スロバキアに生産拠点を置く韓国の起亜、ドイツのVW、フランスのPSAの3社は、2012年に推定で前年比40%増の90万台を生産した。2013年も90万台で横ばいとなる見通しだ。3社の自動車はスロバキアの輸出の2割弱を占め、7万4,000人(3.5%増、人数と伸び率は予測値)を雇用している。

メーカー別にみると、起亜とVWはスロバキアでの生産を大幅に拡大している。起亜はこのほど、2012年の完成車の生産が前年比15%増の29万2,000台、エンジンの生産が29%増の46万4,000基となり、ともに過去最高を記録したと発表した。特に小型のスポーツ用多目的車(SUV)「スポーテージ」が34%増と急増し、スロバキアで生産する車種全体の47%を占めた。そのほか、コンパクトカー「シード」が全体の41%、小型多目的車「ベンカ」が12%を占める。スロバキア投資庁によると、起亜は欧州市場における乗用車需要減の対策として、スロバキア工場からアフリカに製品を輸出することをディストリビューターと検討しているという。起亜はスロバキア工場で2013年に完成車29万台、エンジン49万基を生産する計画。

VWスロバキア工場の2012年生産台数は未発表だが、計画では2012年に約40万台の乗用車生産を予定していた。2011年9月にドイツで先行発売され、同12月に欧州全体で販売が開始された小型車「Up!」のスロバキア工場での生産開始によって、2012年の生産台数は2011年に比べて増加したとみられる。現在、ブラチスラバのVW工場では、SUVの「トゥアレグ」とアウディ「Q7」、小型車のセアト「Mii」、シュコダ「Citigo」を生産しているが、2013年には新型ハイブリッド車「eco up!」の量産も始める予定だ。

<欧州債務危機の影響でPSAは生産を一時停止>
増産を続ける起亜やVWとは対照的な動きをみせるのがPSAだ。同社はスロバキア西部のトルナバ工場での生産を2013年1月28日に一時的に停止した、とオーストリア主要経済紙「ビルトシャフツブラット」などが報じた(ウェブサイト2013年1月28日)。2013年2月も生産を4日間停止する予定だという。PSAはトルナバ工場で、プジョー「207」とシトロエン「C3ピカソ」という小型車を製造している。年間生産能力は30万台だが、2012年の生産は21万5,000台弱にとどまった。同社は「欧州で新車需要が減少を続けている」と生産停止について説明したという。

PSAは、欧州債務危機による販売減で大きな打撃を受け、フランスでの一部工場閉鎖と人員削減を計画している。今のところ、スロバキアの工場を縮小するという計画は発表されていない。しかし、PSAの生産停止が長引くと、自動車産業への依存度の高いスロバキア経済にも影響が出てくるとみられる。

(エッカート・デアシュミット)

(スロバキア・フランス・韓国)

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