ムーディーズ、英国債を1段階格下げ−1978年以来、35年ぶりに格付け見直し−

(英国)

ロンドン事務所

2013年02月27日

格付け会社ムーディーズは2月22日、英国の自国通貨建てならびに外貨建て長期債務格付けを、最上位の「Aaa」から「Aa1」に1段階引き下げた。同社は格下げの要因として、低成長の継続や財政再建の遅れなどを挙げ、将来の見通しは「安定的」とした。格付けの見直しは、1978年3月にAaaに引き上げて以来35年ぶり。

<2015年以降も低成長との見通しなどに基づく>
ムーディーズは格下げの要因として、(1)中期的に景気が弱含みで推移することから2015年以降も低成長が継続する見通し、(2)経済見通しの悪化に伴う財政再建プログラムの遅れ、(3)債務負担増加により2015年までにバランスシート健全化のめどが立たなくなった点を挙げている。

一方、格下げ後の「Aa1」であっても、(1)高い競争力があり、多様性がある経済、(2)財政再建への取り組み実績と構造改革の進展、(3)政府債務の国内引き受けなど望ましい債務構造、といった点で、引き続き極めて信用力が高いと評価している。

見通しの「安定的」は、底堅い経済基盤と政治主導により、将来的に財政再建が進むことへの期待を示すもので、ユーロ圏との貿易、金融を通じたリスクが懸念されるものの、独自の通貨政策により影響を緩和できることも考慮に入れたとしている。2012年2月にムーディーズは、経済成長の遅れによる財政再建の遅れを懸念し、18ヵ月以内に30%の確率で格下げとなる「ネガティブ」としていた。

今回の格下げを受け、イングランド銀行(中央銀行)も「Aaa」から「Aa1」に引き下げられている。

<政府は財政再建への取り組みを強化>
オズボーン財務相は下院で2月25日、「財政再建を放棄し状況を悪化させるのではなく、さらなる努力を重ねて、より良い国を次世代に引き継ぐことが、われわれがやるべきことだ」と述べ、財政再建への取り組みを強化する姿勢を明らかにした。

欧州債務危機解決の糸口がみえない中で、今回の格下げを踏まえ、財政再建を進めつつ、どのように政府が成長を実現するかに注目が集まる。オズボーン財務相は、3月中に2013年度予算(2013年4月〜2014年3月)の発表を控えており、手腕が試される。

(村上久)

(英国)

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