外国投資法を上回る優遇措置を付与−整備進む経済特区(2)−

(ミャンマー)

ヤンゴン事務所

2014年04月10日

経済特区(SEZ)には、輸出志向型企業のための「フリーゾーン(無関税区域)」、国内市場をターゲットとする内販型企業などのための「プロモーションゾーン(奨励区域)」の2区域が基本的に設定される。フリーゾーン進出企業には、法人税が7年間免税になるなど、SEZの優遇措置は全般的に外国投資法を上回る内容となっている。

<運営体制は3階層>
新経済特区法は表1のように18章(全96条)で構成されている(注)。

表1新経済特区法の構成

第3章〜第5章で、「中央委員会」「中央運営委員会」「管理委員会」の3委員会の設立が明記された。中央委員会が法律に沿ってSEZに対する政策を決定、中央運営委員会が管理委員会の申請に基づいてSEZの開発計画や優遇産業などについての審査や中央委員会に対する提案を行い、管理委員会がSEZ開発計画の策定、30日以内の投資承認、ワンストップサービスセンターの設置やビザ発給も含めた各種調整などの実務を担う3層構造での運営体制を構築した。

SEZの設置については、第6章で、中央委員会の提案に基づいて連邦議会の承認が必要とされた(第12条)ほか、SEZとして認定されるための要件について、(1)国内市場、国境、もしくは港湾・空港などへのアクセスが容易であること、(2)基礎インフラが整備されたもしくは整備計画があること、(3)水源および電気が確保されていること、(4)工業用地としての十分な土地が確保されていること、(5)労働者が確保できること、(6)道路網、通信網や市場へのアクセス上の中心地であること、などが示された。

<外国企業の投資促す>
第7章で基本的に「フリーゾーン」と「プロモーションゾーン」の2区域が設定された。各区域への進出を想定する産業として、表2のような特徴が明記され、両区域では外国企業の100%出資、国内企業との合弁のいずれも可能と定めている。

表2投資想定産業

SEZの設置は、外国企業の投資を促し、ミャンマーの経済発展のエンジンとなることが期待されていることから、新経済特区法においては2012年11月に制定された新外国投資法を上回る優遇措置が規定されるのではないかとみられていた。実際に制定された新経済特区法では、外国投資法で規定された外国投資家への5年の法人税免税期間を7年(フリーゾーン対象)とするなど、全般的に新経済特区法の優遇措置は外国投資法を上回る内容となった(表3参照、法人税、輸入関税、商業税については第8章〜第10章)。また、土地のリース期間についても、新外国投資法下の最長70年(当初50年に加え2回の10年延長)を新経済特区法下では最長75年(当初50年に加え25年の延長)に延長することで、外国企業の誘致を目指す構えだ(第17条)。

表3新経済特区法の主な優遇措置

なおほかにも、会計上、投資家および経済特区開発業者は5年間の欠損金繰り越しが可能(第48条)、フリーゾーンの投資家については熟練工などの訓練経費、研究開発経費を課税所得から控除できる(第52条)といった優遇措置もある。

<ワンストップセンターで一元的に手続き>
新経済特区法では第5章で管理委員会の責務として、「ワンストップセンター」の設置が明記され、各種投資関連手続を同センターで一元的に行うとしている。新外国投資法の枠組みとは別ラインでの申請・承認が可能となり、また30日以内の審査が義務付けられたことから、SEZに対する機敏な進出が可能となることが期待される。

ワンストップセンターの機能は次のとおり。

○SEZ内への投資申請の承認、ライセンス発給
○投資企業の登録
○ビザ発給
○原産地証明の発行
○納税
○労働許可
○建設許可

<労働者雇用は外国投資法と同じ規定>
労働者の雇用(第16章)については、外国投資法と同様に、未熟練労働者についてはミャンマー国民のみを雇用できると規定したほか、熟練労働者、技術者などのミャンマー人最低雇用比率については、事業開始後2年以内に25%以上、4年以内に50%以上、6年以内に75%以上にしなければならないとの内容などが規定された。

(注)新経済特区法は、2014年3月末現在、ミャンマー語版しか公開されていない。ジェトロで独自に訳した英語版をもとに解説している。実際に新経済特区法に基づいて進出を検討する場合は、法律事務所などの専門家とともに原典を確認してほしい。詳細については、細則の公表を待つ必要がある。

(高原正樹)

(ミャンマー)

投資申請はワンストップセンターで30日以内に審査−整備進む経済特区(1)−
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