投資法や企業法など目白押しの法改正に注目を−「はじめてのベトナム駐在」セミナー−

(ベトナム)

ハノイ事務所

2014年10月03日

ジェトロ・ハノイ事務所は9月17日にハノイ市内で、セミナー「『はじめてのベトナム駐在』〜覚えておいて欲しい法務〜」を開催した。2014年から2015年にかけては、投資法や企業法、不動産事業法などの重要な法改正が予定されており、日系企業の関心も高く、約140人が参加した。

<重要な法律も数年ごとのスケジュールで改正>
今回の法務セミナーでは、講師に招いた長島・大野・常松法律事務所の澤山啓伍弁護士が、ベトナムの法システム、会社や事業運営上の注意点、法改正のスケジュールなどについて解説した。

セミナー会場の様子(筆者撮影)

ベトナム法は、1986年のドイモイ政策による市場経済導入以降に整備され、どの法律も歴史が浅い。そのため、たとえ憲法や企業法などの重要な法律であっても、数年ごとのスケジュールに沿って改正される仕組みとなっている。また、フランス統治時代のフランスを母国とする大陸法系に属しているため、成文法主義がとられ、国会の制定する法律が第1次的法源とされている。英国や米国を母国とする英米法のように、裁判所による判例を第1次的法源としていないため、法改正の都度、情勢に応じて大幅な変更が必要とされる。

直近の法改正スケジュールは以下のとおり(直近で施行済みの法令も含む)。

○労働法(2012年6月制定、2013年5月施行)
○憲法(2013年11月制定、2014年1月施行)
○土地法(2013年11月制定、2014年7月施行)
○企業法(2014年末制定予定、施行時期未定)
○投資法(同上)
○不動産業法(同上)
○住宅法(同上)

<外国企業の投資認可手続きが簡略化されるかに注目>
2014年10月に開幕する国会で最終審議が行われ、改正が予定されている法律の中で、主な注目ポイントは以下のとおり(セミナーで澤山氏が紹介したものから要旨を抜粋)。

○投資法:外国投資家に義務付けられている投資許可手続きを簡素化
現行法では、外国投資家はプロジェクトごとに計画投資省の投資許可証を取得しなければならない。投資を行う上では、内外差別化が図られており、外国投資家は内国投資家に比べて煩雑な手続きを強いられている。

○企業法:有限会社および株式会社における決議事項可決に必要な賛成比率を引き下げ
現行法では、普通決議事項を可決するには出席者の議決権の65%以上の賛成が必要。特別決議事項は出席者の75%以上の賛成。たとえ合弁事業で過半(51%)以上の出資比率であっても、思いどおりに事業を進められないケースも多い。

○不動産業法:不動産の転貸を外資に開放
現行法では、外資企業による再販売、転貸(サブリース)のための物件購入、賃貸は禁止されている(2014年8月21日記事参照)

上記のような法規制の緩和が期待されているものの、外資企業に対する警戒感も根強く、ここへきてそれを裏付ける動きも確認されている。澤山氏は「投資法改正案においては、2014年5月に作成されたドラフト(第5案)では、投資認可手続きの内外無差別(内資、外資ともに同じ)の考えが盛り込まれていた。しかし、9月に公表された最新版(第7案)では、その概念自体がなくなり、再び外資にとって不利な内容(内資と比べて手続きが多い)に修正されている」と述べ、「最終議決までどうなるか分からないが、当初案に比べるとベトナム側にとって保守的な内容に傾きつつある」と付け加えた。

いずれにしても、ベトナムにおける「法制度の未整備、不透明な運用」は、在ベトナム日系企業にとって大きな障害となっている。2013年にジェトロが実施した日系企業活動実態調査においては、67.5%の企業が投資環境上のリスクとして挙げている(表参照)。法改正の方向性は、外資企業誘致に対するベトナム政府のスタンスそのものと捉えられ、2015年にかけて改正内容がどういったかたちになるのか注目が集まっている。

在ベトナム日系企業にとっての投資環境面でのリスク

(平野雄士)

(ベトナム)

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