出入国・通過・居住法が2015年1月から施行予定−労働許可書の取得や査証免除入国の取り扱いに要注意−

(ベトナム)

ハノイ事務所

2014年12月04日

外国人の出入国・通過・居住法(47/2014/QH13)が2015年1月1日から施行される予定だ。新法が施行されれば、査証と短期滞在許可書の分類や期間が一部変更されるほか、労働許可書を入国前に取得することが義務付けられる可能性があることや、短期出張時の査証免除入国の取り扱いが変更になるなど、実務面でも注意が必要だ。

<査証と短期滞在許可書の分類が詳細に>
今回の新法は、他法令との矛盾の解消や現行法に規定がなく混乱を生じている点を明確化したものとされる。また、新法は施行細則などの補助的な規定を設けず単独で施行される予定だ。新法が施行されれば、現行規定では10種類となっている査証と短期滞在許可書の分類や期間が、20種類と細かく分類されるようになる(表参照)。

主な査証の記号、期限と短期滞在許可書の期限

外国人駐在員の大部分が該当するDNとLDに関しては、DNの場合の査証は12ヵ月で、LDの場合は査証、短期滞在許可書ともに2年となっており、期限は現行規定と変わらない。一方、駐在員の家族などが対象のTTは、短期滞在許可書の期間が3年と、扶養者である一般の駐在員より長い期間になっている。なお、査証・短期滞在許可の期限は、パスポートの期限より少なくとも30日以上前までとなる(第9条8項、第38条1項)。

また、外国人投資家や外国人弁護士(DT)に関しては査証・短期滞在許可書とも期限が5年に延長されているが、これは現行投資法の規定との間でつじつまを合わせているものと考えられる。

<労働許可書は入国前の取得が必要になる可能性も>
新法施行に伴い、注意が必要な規定がある。1つ目は、第7条1項により、ベトナム入国後に国内で査証の種類を変更することが禁止される点だ。日系企業の中には、赴任予定者をまず3ヵ月の商用査証で入国させ、その後、労働許可書を取得してから査証を書き換える場合があるが、新法施行でこうした方法が認められないことになる。これまでも規定上はベトナム着任前に労働許可書を取得することとされていたが、運用面で柔軟な対応がされていた。今後はベトナム入国前に労働許可書を取得し、ベトナム政府の在外公館において就労目的の査証を取った後に入国することが求められる可能性がある。このため、ベトナム側の運用次第では進出日系企業にとってはこれまでの事務手続きを見直す必要が出てくるため、注意が必要だ。

この点に関し、当地日系コンサルタントからは「査証の種類の変更が認められなくなると、特に新規の法人や駐在員事務所の場合、労働許可書の申請はその設立後となる。ところが、同許可書申請前には人民委員会委員長から外国人雇用の承認も得る必要があり、その手続きに1〜2ヵ月かかるのが現状だ。そうなると、駐在員が赴任できるのは、設立から2〜3ヵ月ということになり、企業活動に著しい影響が出ると考えられる」という懸念の声が寄せられた。

もう1つの注意点は、査証免除による入国の場合だ。第20条1項により、査証免除で入国する場合、直近の出国から少なくとも30日以上空けないと再入国が認められなくなる。現行規定では、有効なパスポートを所持する日本国籍者については、15日以内のベトナム滞在で一定の要件を満たす場合には査証免除となっており、再入国までの期間に関する制限はない。新法施行により、出張や観光で短期間にベトナムへの出入国を繰り返す場合や他国と周遊する日程を組む場合などは、事前の査証取得が必要となる。ビジネス面への影響もさることながら、観光面でも日本からの定期直行便のない国々(カンボジア、ラオスなど)へのツアーでは、再入国しにくくなるベトナムを避け、第三国を経由するケースが増える可能性も高くなる。このため、当地日系観光業界関係者は「ベトナムの観光業界への影響は避けられないのではないか」と指摘する。また同条項では、査証免除入国時のパスポート残存期間についても、現行の3ヵ月から少なくとも6ヵ月に延長されている点にも注意が必要だ。

新法の施行は2015年1月からの見込み。しばらくは当局の運用状況を注視していく必要があるが、企業側としては専門家とともに実務見直しの準備を進めておくことが重要と思われる。

(竹内直生)

(ベトナム)

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