ユーラシア経済連合が発足、アルメニアも正式加盟

(アルメニア、キルギス、ベラルーシ、カザフスタン、ロシア)

欧州ロシアCIS課

2015年01月16日

ロシア、ベラルーシ、カザフスタンで構成されるユーラシア経済連合(EEU)が1月1日に発足した。翌2日にはアルメニアも正式に加盟した。キルギスも5月の加盟が見込まれている。なお、EEU発足に伴い、域内の経済統合の推進母体となっていたユーラシア経済共同体(EurAsEC)は活動を終了した。

<主要部門で協調政策、医療・電力・原油市場を統合へ>
EEUの発足を前に2014年5月、関税同盟に加盟するロシア、ベラルーシ、カザフスタンの大統領がEEU条約に署名(2014年6月2日記事参照)、10月には3ヵ国の議会で同条約の批准が完了し、2015年1月1日に同条約が発効することが確定していた。

2014年最後の最高ユーラシア経済評議会(以下、最高評議会)が12月23日にモスクワで開催され、加盟国および加盟を目指すアルメニアとキルギスの首脳が出席した。最高評議会後に発表された各国首脳の声明において、ロシアのプーチン大統領はEEU発足に至るまでの加盟各国の労をねぎらった上で、「加盟国は工業、農業、運輸、電力など主要部門において協調政策を取り、消費者の権利を保護するため共通の衛生・技術規則を適用する」と述べた。2016年には医薬品や医療機器の販売規則を共通化し、統一の医療市場を形成する。また、2019年までに電力、2025年までにガスおよび原油・石油製品市場も統合する。

一方で他加盟国からは問題も提起された。ベラルーシのルカシェンコ大統領は声明の中で、「EEU域内ではいまだにモノの移動の自由化が完了していない」と述べ、その例として、ロシアとベラルーシの間で公共調達分野で互いに最恵国待遇および内国民待遇を供与していないことを挙げた。

またカザフスタンにおいては、国家企業家会議所が12月26日、通貨テンゲがルーブルに対して高くなっている影響で製造業の競争力が落ちているとして、国内市場を保護するためEEUの協定で認められた時限的な貿易制限を導入するよう政府に提言した(「BNews.kz」12月26日)。

<キルギスも5月加盟を目指す>
EEUの発足翌日にはアルメニアが正式加盟した。アルメニア加盟に関する条約は、2014年10月に開催された最高評議会においてロシアなど3ヵ国とアルメニアの間で署名され、その後、各国議会で批准が行われ(批准日:アルメニア12月4日、ロシア12月22日、カザフスタン12月24日、ベラルーシ12月31日)、1月2日に発効した。加盟に伴いアルメニアから、EEUの政策執行機関であるユーラシア経済委員会の理事として、ロベルト・アルチュニャン氏(元アルメニア中央銀行為替操作部長)、カリネ・ミナチャン氏(元経済省第1次官)、アラ・ヌラニャン氏(元議会議員)の3人が就任した。

アルメニアは2022年までにEEUの対外共通関税に段階的に合わせていく。また、技術規則は5年以内、知的財産権保護制度は3年以内に共通化される予定だ。ロシアのビジネス誌「エクスペルト」(電子版1月3日)では、アルメニアがEEUに加盟する理由の1つとして、対立関係にあるトルコやアゼルバイジャンに東西から挟まれる位置にあり、ロシアと政治的関係を強化する必要があることと、経済がロシアに全面的に依存している点を挙げている。また、ロシアへの出稼ぎでアルメニアに送金される額はGDPの1割、国家財政の4割に相当し、失業率が18%に上るアルメニアにとって、EEUに加盟することで労働者が自由に域内を移動できるようになることがメリットにもなるという。

キルギスもEEUへの加盟を目指しており、2014年12月23日の最高評議会において、キルギスとロシア、ベラルーシ、カザフスタンがキルギスのEEU加盟に関する条約に署名した。今後、各国議会での批准が完了すると、同条約が発効する。キルギスのアタムバエフ大統領は最高評議会後の声明の中で、「戦勝記念日である5月9日までにはEEUに加盟したい」と述べた。

(浅元薫哉)

(ロシア・ベラルーシ・カザフスタン・アルメニア・キルギス)

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