「ビジネス・フランス」が発足、輸出促進と外資誘致事業の機関を統合

(フランス)

パリ事務所

2015年01月22日

フランス企業振興機構(ユビフランス)と対仏投資庁(AFII)を統合した公的機関「ビジネス・フランス」が1月1日に発足した。輸出促進と外資誘致を組み合わせることで事業の効率化を図る。研究開発(R&D)費用に関わる優遇措置、優秀な外国人のみ取得できる特別ビザなど、投資先としての魅力について広報活動にも力を入れる。

<中小・零細企業の連携で輸出を拡大>
ユビフランスとAFIIを統合した公的機関「ビジネス・フランス」が1月1日に発足した。外務省と経済・産業・デジタル省の統轄下に置く。フランス企業(在フランス外国企業を含む)の輸出振興、外国企業の対仏投資支援、フランスの投資先としての魅力に関わる広報活動の3つを事業の柱とする。

ビジネス・フランスのトップを務めるミュリエル・ペニコー氏は「欧州およびアフリカ向け輸出拠点の設置に重点を置いた外資誘致に取り組む」ほか、「中小企業の輸出促進事業では、外国の輸入業者、流通業者、投資会社などについてAFIIが持つネットワークを活用する」など、「輸出促進と外資誘致を組み合わせることで事業の効率化を図る」と述べた。

輸出振興についてペニコー氏は「中小・零細企業が拡散する産業構造が輸出を困難にしている」と指摘、インフラ整備、情報通信、食品産業、生活関連産業の4つの「輸出戦略部門で中小・零細企業の連携を強化することで輸出拡大につなげる」とした。

「フランスの経済成長および雇用創出の柱」と位置付ける対仏投資については、「外国企業が抱くイメージとフランス経済の現実の姿には大きな違いがある」として、研究開発費用に関わる優遇税制(注)や法人税・社会保険料軽減措置(2014年8月7日記事参照)、経済成長・雇用法案による規制緩和(2014年12月22日記事参照)や優秀な外国人のみが取得できる最長4年(更新可能)の特別ビザの導入など、フランスの投資先としての魅力について広報活動に力を入れる意向を示した。

<在仏外国企業は政府にビジネス環境改善の実行を要望>
他方、人材サービスのアデコ(スイス)、情報通信技術のHP(米国)、電機のシーメンス(ドイツ)など外国企業のフランス現地法人およそ80社は2014年12月17日、「レゼコー」紙に「誘致力:もっと速く、もっと先へ、もっと強力に!」と題した政府への要望書を掲載、ビジネス環境の迅速な改善を求めていた。

在フランス外国企業が政府に対する要望書を公表するのは2013年12月に続き2度目。2014年12月に署名した企業数は前年に比べ30社余り増加した。2013年の要望書では「法的・規制的環境の複雑さと不安定性、労働法の柔軟性のなさ、リストラの際の複雑で時間がかかるプロセス、市場経済に対する不信感などの点について、本国の親会社はフランスでは基本的に改善がみられないと考えている」ことから、親会社にフランスへの投資決定を促すことが困難になっていると訴えていた。

今回の要望書では「より分かりやすい、より安定した、より簡素な規制・税制環境で業務をし、競争相手国と比べても阻害性のより少ない労働コストを負担したいとするわれわれの期待に応えるべく、さまざまな発表がされ、イニシアチブが取られている」との認識を示す一方、「企業にとって日々、現実的に何ら顕著な進展をみせていない」と指摘。政府に対し「発表された措置の数々を迅速かつ大胆に実施する」ことを求めた。

なお、要望書によると、フランスには約2万社の外国企業が進出し、国内でおよそ200万人を雇用しており、フランス製造業全体の売上高の29%、フランスからの輸出額の約3分の1、製造業における設備投資の29%、民間企業によるR&D事業の29%を担うなど、フランス経済の活力となっているとしている。

(注)R&D費用の30%(1億ユーロを超える分には5%)を法人税から税額控除できる。

(鈴木謙次郎、山崎あき)

(フランス)

ビジネス短信 54bf01c5ea600