投資進捗報告の提出義務を厳格化

(インドネシア)

ジャカルタ事務所

2015年01月23日

投資調整庁(BKPM)は1月11日、インドネシアの国内企業(PMDN)および外国企業(PMA)に義務付けられている「投資進捗報告(LKPM)」を提出していない企業に対して、警告書を送付するとのプレスリリースを発表した。2007〜2012年の間に法人設立プロセスにおける原則承認(Izin Prinsip)を取得した企業のうち、一度もLKPMを提出していない法人が警告の対象となる。1月末までに報告書を提出しない企業に対しては、この原則承認を取り消す予定としている。

<1万5,000社余りが警告の対象>
BKPMのフランキー長官は1月11日、「この措置は報告書の提出義務の順守を促すもの」とコメントし、1月12日から30日までの間に警告書を送付し、これに対応しない企業については、原則承認を取り消す準備があるとした。同日、BKPMはウェブサイト(インドネシア語版)でプレスリリースを発表した。

フランキー長官によると、2007〜2012年に原則承認を取得した企業は2万2,095社で、そのうち、70.3%に当たる1万5,528社が投資進捗報告書を一度も提出していないという。内訳は国内企業が3,506社、外国企業が1万2,022社。外国企業の国別内訳をみると、韓国(1,972社)、シンガポール(1,371社)、中国(1,264社)、マレーシア(1,208社)、インド(445社)、オーストラリア(420社)と続く。公表されたワースト6位までに日本企業は入っていなかったことからみて、該当企業は少ないと推測される。業種別では、商業(4,440社)、エネルギー鉱物(1,950社)、工業(1,899社)。

インドネシアで法人を設立する際には、BKPMに必要書類を提出した上で3営業日をめどに同庁から原則承認を取得することが必要で、当該ライセンスは法人設立の手続きを進める基本となる。その後、設立登記、各省庁からの輸入ライセンス取得、建設許可の手続きなどが全て終了した段階で、最後に恒久営業許可(IUT)を取得できる。IUTを取得するまでの期間は、業態や規模により異なるが、半年から1年かかる。

投資進捗報告は、原則承認を取得している企業に提出義務があり、2012年7月2日付投資調整庁長官規定2012年第3号で定められる手順、フォームに従って、報告書を作成する義務がある。報告事項の内容は、投資の終了、各種投資許認可、投資実施額、キャパシティーの増強、外国人雇用数、製造・販売状況、原材料、資本財の恩典活用状況など。既にIUTを取得している企業は半年ごと、未取得企業は四半期に1度の提出が、義務付けられている。四半期ごとに発表される外国投資および国内投資の投資実績統計は、投資進捗報告に記載された数字を集計し作成される。

<承認額と実現額のギャップ解消図る>
BKPMによると、2007〜2012年に原則承認を得た案件の承認額合計と、投資進捗報告で報告された外国投資実現額(681億5,000万ドル)とのギャップは859億8,000万ドルあるという。同様に国内投資における承認額と実現額〔429兆3,000億ルピア(約4兆784億円、1ルピア=約0.0095円)〕とのギャップは316兆2,900億ルピアあるという。フランキー長官は、承認額と実現額の差が大きい状況下、投資実現に向けてどのような障害があるかを把握することで、BKPMとしての役割を強化する意向を表明している。

また、原則承認の悪用を防止したいというBKPM側の事情もある。フランキー長官は「投資が実現していなくても、ゼロと報告されていれば問題ない」とし、報告事項は非常に簡易なことからも順守徹底を呼び掛けた。また、ジョコ大統領が主導する「統合ワンストップサービス」を2015年1月中旬からテスト運用し、企業設立手続きおよび設立後の各種申請のオンライン化を進めることで、他省庁も含めた関連する全ての許認可の迅速化に取り組んでいる点を強調した。

インドネシア経営者協会のハリヤディ会長は「政府は投資実現について把握、監視する必要があり、実現していないケースについては、投資家へ直接インタビューし、要因分析すべきだ。インフラ、労働・雇用などの問題が阻害要因になっているケースもある」とコメントした。

(藤江秀樹)

(インドネシア)

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