改正住宅法が7月から施行、市場の活性化狙う−外国企業や外国人の住宅所有制限を一部緩和−

(ベトナム)

ホーチミン事務所

2015年04月10日

改正住宅法が7月1日から施行され、企業など外国の組織と外国人に対する住宅の所有制限が一部緩和される。ベトナムに入国を許可された外国人は住宅を所有でき、賃貸も条件付きで可能となる。ただし、所有率は集合住宅1棟当たり30%までで、1戸建ても1つの町村で250戸を超えてはならない。また、購入できるのは、住宅建築プロジェクトにおいてのみで、既存の一般住宅街では原則認められない。

<戸建て住宅も所有可能に>
改正住宅法(No.65/2014/QH13)は、2014年11月25日に国会で承認され、2015年7月1日から施行される。現行の住宅法(No.56/2005/QH11、No.34/2009/QH12、No.38/2009/QH12)、ベトナムにおける外国組織ならびに外国人による住宅の購入および所有に関する国会決議(No.19/2008/QH12)、および施行ガイドラインに関する政令(No.51/2009/ND−CP)に定められた外国組織および外国人に対する住宅の所有制限が一部緩和されることによる。

主な改正点は以下のとおり。

(1)住宅所有の資格
外国人による住宅所有の資格は、現行法では「ベトナムに居住する者または少なくとも1年以上ベトナムに入国許可された者で外交特権を有しない者」で、さらに「直接投資する者、経営管理者として雇用された者、受勲者、学位を有する専門家で社会経済組織に従事する者、およびベトナム人の配偶者など」に制限されている(No.19/2008/QH12第2.1条、2.4条および3条、ならびにNo.51/2009/ND−CP第5条)。これが改正法では、「ベトナムで入国許可を得た者で、外交特権を有しない者」となる(No.65/2014/QH13第159.1.c条および160条)。外国企業による住宅所有の資格も、現行法では「投資法に基づいて運営する不動産事業に従事しない外国資本の企業で、従業員のために住宅の購入を希望する場合」(No.19/2008/QH12第2.5条)だが、改正法では「ベトナムで活動している外資系企業、外国企業の支店・駐在員事務所、外国の投資ファンド、外国銀行の支店」(No.65/2014/QH13第159.1.b条)となった。ただし現行法の「投資証明書またはそれと同等の書類を有すること」という条件は変更されていない。

(2)所有物件と物件数
外国企業および外国人の住宅所有物件と物件数に対する制限は、現行法では「外国企業および外国人は住宅建設プロジェクトの集合住宅1物件のみを所有できる」とされている(No.51/2009/ND−CP第4.4条および4.5条)。これが改正法では、「外国企業および外国人は住宅建設プロジェクトの集合住宅および独立住宅を所有できる」となり、戸建て住宅も所有できるようになった(No.65/2014/QH13第159.2条)。ただし、所有物件数については明確な規定はなく、今後の政令・通達などの施行細則を注視してゆく必要がある。

(3)集合住宅1棟・戸建て住宅の1町村当たりの所有比率
外国組織および外国人の集合住宅1棟当たり、戸建て住宅の1町村当たりの所有比率については、現行法では明確な規定はなかったが、改正法では「外国組織および外国人の所有率は、集合住宅1棟当たり30%まで。戸建ても1つの町村当たり250戸を超えてはならない」(No.65/2014/QH13第161.2条)と定められた。

(4)住宅所有期間
外国人の住宅所有期間は、現行法では「最長50年」(No.19/2008/QH12第4条)だが、今回の改正で「最長50年、延長可能」となった(No.65/2014/QH13第161.2.cおよびd条)。外国組織の住宅所有については「投資証明書の存続期間(延長を含む)が上限」(No.65/2014/QH13第161.2条)で実質変更はない。

(5)所有住宅使用目的
現行法では外国人の住宅使用目的として、「事務所など住居使用目的以外の所有は禁止」(No.51/2009/ND−CP第4.5条)とされているが、改正法では、「省級住宅管理当局に事前通知し、納税した上で住宅を賃貸可能」(No.65/2014/QH13第162.2条)となっている。外国組織の使用目的については、「当該組織に従事する者の居住用にのみ使用することができ、賃貸用、事務所用その他の目的に使用してはならない」(No.65/2014/QH13第162.2条)とされており、実質変更はない。

<不動産業界は市場の活性化に期待>
外国組織および外国人の住宅所有は、国会決議(No.19/2008/QH12)により2009年1月1日から認められていたものの、厳しい資格、対象物件の制限、手続きの複雑さなどにより、2013年半ば時点で実際に住宅を購入した外国人は126人にとどまっていた(ベトナム建設省報告)。今回の法改正については、いまだ運用面の詳細が明らかではなく、今後の政令・通達などの施行細則を注視してゆく必要があるものの、規制緩和の方向性は明確に示されており、住宅業界は不動産市場の活性化に期待している。

日系企業でも、ホーチミン周辺で集合住宅や戸建て住宅を建設・分譲する事例は増えつつある。ターゲットは中間層以上のベトナム人向けだが、東急電鉄がビンズン省で進めている住宅や商業施設などからなる「東急ビンズンガーデンシティー」の開発や、オカムラホーム、ガイアフィールドなどの分譲住宅販売、西日本鉄道と阪急不動産による集合住宅の分譲などがホーチミン周辺で進んでいる。3月26日の「サイゴンタイムズ」紙によると、23〜55歳の都市部居住者1,000人にアンケート調査した結果、55%が20億ドン程度(約1,100万円、1ドン=約0.0055円)で50〜80平方メートルの集合住宅の購入を希望しているとのことだ。

一方、ベトナム人のみならず当地でビジネスを展開する外国企業やベトナムに在住する外国人にとっても、良質で安価な住宅が取得できることへ期待は少なくない。長谷工は、ハノイ・ロンビエン地区のイオンモール・ロンビエンの隣接地に地上18階建て集合住宅を建設、日本人向けに供給する計画(当面は賃貸)で、いずれ分譲住宅市場にも進出しシェア1割を目指すという。

(栗原善孝)

(ベトナム)

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