投資の増大と多様化を目指し、東京でセミナー開催

(チリ)

米州課

2015年04月23日

 ジェトロは、チリ外国投資委員会(CIE)、三菱東京UFJ銀行との共催で4月16日、東京で「チリ投資セミナー」を開催した。セミナーでは、チリの中南米(メキシコを含む)における投資先としての優位性が強調されるとともに、今後日本企業の参画が期待される分野が紹介された。

<中南米へのゲートウエーとしての優位性を強調>
 チリへの外国からの直接投資額は2004年から10年間で3倍に増加し、2014年は220億ドルとなった。中南米ではブラジル、メキシコに次ぐ規模だ。さらに、2014年の対内直接投資額は前年比14%増を記録した。第2期バチェレ政権が発足して1年が経過し、税制改革や外資法の改正なども進んでいることから、日本企業の関心は高く、セミナーには170人余りの申し込みがあった。

 セミナーの冒頭、ジェトロの長島忠之理事は、安定した経済、国民の購買力向上、自由貿易協定(FTA)カバー率、太平洋同盟などに触れて、チリの良好な投資環境を強調した。来賓としてあいさつしたトーレス駐日チリ大使は、国の成長には長年にわたるパートナーとの協力が不可欠だが、日本とチリの間には150年に及ぶ交易の歴史があり、2014年は中南米の中でチリが日本への輸出額で首位だったと紹介した。

 CIEのホルヘ・ピサロ・クリスティ副委員長は、「長期的パートナーに」と題した基調講演を行った。チリは中南米の中でも投資リスクが低いほか、国際的NGOトランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数、国連開発計画(UNDP)の人間開発指数などの指数も常にトップクラスにあり、また、62ヵ国と24のFTAを発効させているだけでなく、環太平洋パートナーシップ(TPP)の全交渉参加国とFTAを有する唯一の国だと述べ、先進的な通商政策の実績を強調した。そして、透明で成熟したビジネス環境であることを利用し、日本企業もチリを中南米へのゲートウエーとして位置付けることを提案した。

 なおゲートウエーに関連して、ジェトロ・サンティアゴ事務所の堀之内貴治所長が、石油ストーブやファンヒーターのメーカーであるトヨトミが、チリ拠点を足掛かりにウルグアイに事業を展開しようとしている事例を示した。2007年にチリの代理店を買収して現地法人を立ち上げたテルモの伊藤秀樹国際部欧州・中東・アフリカ、米州担当部長は、チリの拠点からアルゼンチン市場の開拓を進めていることを紹介した。

<鉱山以外への日本からの投資も歓迎>
 ピサロ副委員長は、外資誘致のためのさまざまな取り組みを紹介し、その中でチリが二重課税防止条約を25ヵ国と締結済みで、日本との協議も開始されたことを「良いニュース」として披露した。日本企業なども懸念を示していた外資法改正については、制度の基本概念は変えず国内企業との差別化はしない、本国送金など外資を守る規定は存続すると説明した。そのほか、積極的な投資誘致のための、投資者へのアフターケア、モニタリングなどを行う新組織の設置が決まっていることを紹介した。

 日本からの直接投資額は、500万ドル以上の案件を国別でみた場合、2011年と2013年で首位となっており、部門別では鉱山への大型投資がほとんどだ。CIEは今後、日本企業の参入を期待する鉱業以外の投資分野として、鉱業部門の関連産業、再生可能エネルギー、インフラなどを挙げた。再生可能エネルギーについては、世界的にみても降水量の少ない北部地域に多くの電力を消費する銅鉱山がある(鉱業部門の電力消費は国内の約3割を占める)ことから、特に太陽光発電については、発電地域と消費地域が近接しているというメリットを生かせるまれな地域だと強調した。

<参入障壁の低い医療機器市場>
 ピサロ副委員長に続いて講演した三菱東京UFJ銀行の嘉屋本敦サンティアゴ支店長はチリについて、中南米諸国の中では低インフレが継続している数少ない国で、投資する企業側からみて価格が設定後も変わらないという安心感があると述べた。外貨準備は対外債務の30%程度とブラジルなどに比べて少ないが、対外債務の増加は民間部門が中心であり、問題ないと説明した。さらに、為替相場の特色として、米国とチリとの金利差よりも銅価格変動による影響が大きいと話した。

 テルモの伊藤部長は、同社のチリでの業績を紹介した。2007年にチリの販売会社を買収してカテーテルの直販体制を築いてから業績を急激に伸ばし、現在、チリ国内のカテーテル市場での販売シェアがトップとなっている。恵まれた気候と医療水準の高さなどからチリ国民の平均寿命が延びていることを背景に、生活習慣病が増加しており、同社のカテーテルのニーズは高まっている。医療機器メーカーからみたチリの投資環境については、薬事登録の必要がないという参入障壁の低さにより、新製品の導入・発売を迅速にできるなどと高く評価した。

(竹下幸治郎、大石隆一)

(チリ)

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