効果的な産業政策と日本企業の貢献を紹介-第3回「ジャパン・セミナー」開催-

(南アフリカ共和国、日本)

中東アフリカ課、ヨハネスブルク事務所

2015年10月15日

 ジェトロは9月22日、ヨハネスブルクで「ジャパン・セミナー」を開催した。セミナーにはシリル・ラマポーザ副大統領らが登壇、南ア政府関係者、ビジネス界、大学関係者など約230人が参加し盛況だった。

<ラマポーザ副大統領が登壇>

 922日、ジェトロは日本大使館や在南ア日本商工会議所と共催でジャパン・セミナーを開催した。セミナーは経済産業省による「ロビイング活動支援事業」の一環で、3回目。「南アフリカ共和国における産業クラスターの形成と人材育成~日本企業の貢献~」をテーマに、南アの政府関係者、ビジネス界、学術機関などに対して日本企業の貢献の可能性をアピールするとともに、日本に関する理解を深めてもらい、両国の関係を強化する目的で実施した。

 

 セミナーではラマポーザ副大統領がゲストスピーカーとして登壇し、南アでは工業化と技能開発が経済成長を促す原動力であり、政府が中期戦略枠組みの優先事項に掲げる分野の1つに、より効率的な産業政策の実施が含まれると述べた。また日本からは水素燃料電池の技術や、海洋産業、エンジニアリング、沖合の石油ガス採掘、人材開発などの分野で協力を得たいとしつつ、先の訪日201593日記事参照)での経験に触れながら、アフリカ開発会議(TICAD)を通じた日本とのさらなる連携強化に意欲を示した。また、同副大統領は、南アを含むアフリカ諸国と日本企業との貿易および投資関係の構築でジェトロが重要な役割を果たしているとも述べ、ジェトロへの敬意を表した。

<地域の事情に合わせたビジネス戦略が重要>

 日本側からは、廣木重之・駐南ア大使、金木幸雄・南ア日本商工会議所会頭(三菱商事ヨハネスブルク支店長)に加え、在南ア進出日系企業3社(トヨタ南ア、サンエース・アフリカ、サカタのタネ)の現地法人の幹部がそれぞれ講演を行い、現地の工業化に対する日本企業の貢献を訴えた。トヨタ南アのアンドリュー・カービー氏は、自社の競争力・強みの1つである社内での人材育成を挙げ、教育プログラムを説明した。また、特殊添加剤メーカーであるサンエース・アフリカのゲーリー・バン・アイク氏は、グローバル市場での立ち位置を確保することと同時に、アフリカでは地域それぞれの事情を考慮したビジネス戦略を立てる必要があると説明。最後に講演したサカタのタネのポール・ンシャバネ氏は「1999年に南アの同業メイフォードを買収して現地法人を設立し、2000年代半ば以降、南アからの輸出は劇的に伸びた」と述べ、技術革新がビジネス成長につながっていることを紹介した。

 

<産業クラスター形成の事例を紹介>

 ジャパン・セミナーではまた、日本大学の朽木昭文教授が効果的な産業政策と日本企業の貢献について講演した。朽木教授は、中国・広州の自動車産業クラスターやベトナム・ハノイの電子産業クラスターなど、アジア諸国における日本企業の産業集積と、産業クラスター形成の事例を紹介し、産業クラスター形成にとって必要な要素(インフラ、労働力、制度、生活環境)を段階的に整備すること、その中で特に地方政府のイニシアチブと、アンカーとなる企業の誘致が重要だと強調した。

 

 これに対し、スティネク・サミュエル貿易産業省地方産業クラスター局長は、南ア政府が経済特区のさらなる整備に取り組む計画を持っていると紹介し、アジアの事例を通じて同国の産業別クラスター政策形成に向けて学ぶことができたと述べた。また、会場からはアジア諸国の事例を、南アを含むアフリカ諸国でいかに適用し得るのか、もう少し具体的に知りたい」という声も出ていた。

 

(堀田萌乃、川上康祐)

(南アフリカ共和国、日本)

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