EEU首相会合、加盟国間の産業協力で合意-8月加盟のキルギスも参加-

(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギス)

欧州ロシアCIS課

2015年10月01日

 ベラルーシ西部のグロドノで9月8日、ユーラシア経済連合(EEU)加盟国の首相会合が開催された。会合では、加盟国間での産業協力の方針や知的財産権保護活動の協調内容などについて合意した。8月12日にキルギスがEEUに正式加盟し、加盟国が5ヵ国となってから初の「首脳級会合」となった。新たに加盟したキルギスは、関税率や技術規則などの制度を段階的にEEUに合わせていく。

<知的財産権保護の協調に関する条約を締結>

 98日に、ユーラシア経済連合(EEU)加盟国の首相級が参加する「ユーラシア政府間評議会」が開催された。ロシアのメドベージェフ首相、ベラルーシのコビャコフ首相、アルメニアのアブラハミャン首相、キルギスのサリエフ首相、カザフスタンのサギンタエフ第1副首相、ユーラシア経済委員会のフリステンコ専務理事が出席した。

 

 同評議会は201511日のEEU発足後に設立され、今回が3回目の開催となる。評議会では、11日に発効したEEU条約の内容に基づいた諸活動に関する決定や、条約や協定の締結が行われた。

 

 主なものとしては、域内での産業協力の基本方針が策定された。公共・民間部門における調達契約期間の長期化、域内での生産調達ネットワークの構築のほか、投資誘致や金銭的支援を通じて協力を促進する。産業協力の有望分野として、輸送用機器、電気機器、電子光学機器、化学製品、金属製品・鋼材が挙げられた。

 

 また、知的財産権の保護活動の協調に関する条約が締結された。加盟各国の知財権保護を担当する当局とユーラシア経済委員会が協力し、協調した知財権保護活動の実施、各国の知財権法制度の調和、セミナーや会合を通じた権利保護活動に関する経験の共有、権利侵害者や侵害商品に関する情報共有が行われる。本条約は、各国議会での批准を経て発効する。

 

 さらに、加盟国産の毛皮製品向けに、共通の識別表示を導入する試験的事業に関する実施協定が署名された。201641日までに表示の要件や手続きなどが整備され、実施に移される予定だ。

 

 次回のユーラシア政府間評議会は、201511月にアルメニアの首都エレバンで開催されることが決まった。

 

<キルギス~カザフスタン間の国境税関検査が撤廃>

 キルギスは第1回から評議会に出席しているが、812日にEEUに正式加盟を果たし、今回が加盟国として初めての参加となった。201412月にキルギスのEEU加盟に関する条約がキルギスと既加盟国の間で締結され、20155月に加盟に伴うキルギスの制度変更などが規定された議定書の署名が行われた。8月までに各国で条約の批准が完了し、同月12日の正式加盟に至った。

 

 加盟日に合わせて、カザフスタンのナザルバエフ大統領がキルギスを訪問、キルギスのアタムバエフ大統領と、キルギスにあるイシククリ湖畔の文化センター「ルフ・オルド」で開催された加盟を祝う式典に参加した。ナザルバエフ大統領は「両国間国境の開放は重要な意味を持つ。2国間ビジネスの新たな機会を創出し、相互貿易を活発化させるだろう」と期待感を示した。その翌日、キルギスとカザフスタンの8ヵ所の国境で、税関検査が撤廃された。

 

 アタムバエフ大統領は、イシククリ湖とカザフスタンの主要都市アルマトイを結ぶ新たな道路建設計画について、ナザルバエフ大統領の賛同を得たことを明らかにし、「今ある道路は480キロだが、(建設が完了する見込みの)12年内には240キロと半分の距離になる」と述べた。

 

<キルギスは段階的にEEU制度を適用へ>

 キルギスの関税は、EEUの対外共通関税率(ETT)に、品目により最長で2020年までに段階的に合わせていく。キルギスは1998年にWTOに加盟しており、加盟約束に従い、関税を引き下げ済みだ。ETTに合わせることで全体として関税率が上がるため、WTOの他加盟国から補償的措置を求められる可能性がある。

 

 EEU域内で共通化の対象となる製品の安全性を認証する技術規則については、基本的に加盟後6ヵ月以内にEEUの規則に統一する。ただし、農業機械は加盟後1年以内、食品、乳製品、食肉は2年以内などと、品目によって最長で4年間の移行期間が設けられた。

 

 知的財産権保護に関する原則や権利保護期間の共通化や、公共調達分野におけるEEU他加盟国とキルギス間での内国民待遇の供与については、加盟後2年以内に実施する。

 

 キルギスがEEUに加盟した理由の1つとして、ロシアとの経済関係の重視が挙げられる。同国にとってロシアは最大の貿易相手国である上、ロシアからキルギスへの出稼ぎ送金額はキルギスのGDP4分の1に相当する。EEUに加盟すると、ロシアを含めた域内での労働移動の自由が保障されるため、キルギスには大きなメリットとなる。

 

(浅元薫哉)

 

(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギス)

ビジネス短信 cc8c793046044135