トレーサビリティープログラムの対象水産物が決定-2016年9月実施、違法漁業や偽装撲滅へ-
(米国)
ニューヨーク事務所
2015年11月18日
ホワイトハウスの国家海洋会議が設けた「違法・無報告・無規制(Illegal, Unreported, and Unregulated:IUU)漁業と水産物偽装に関する委員会」は10月30日、国内で流通する水産物のトレーサビリティープログラムの第1段階で対象となる水産物を公表した。同プログラムは2016年9月から実施される。
<水産業界などから101件のパブリックコメント>
米国で流通する水産物に関するトレーサビリティープログラムの一環として、委員会は違法漁業や偽装の危機にさらされている水産物を特定するための基準案と、それに基づく候補種を2015年8月に公表し、パブリックコメントを実施していた(2015年9月9日記事参照)。その結果、国内外の水産業界団体をはじめ、NGO、外国政府、一般市民から計101件のコメントが寄せられた。委員会は10月30日、パブリックコメントで追加するよう要望があった8種類の水産物については対象としないとした上で、トレーサビリティープログラムの第1段階における対象種を最終決定し、選定基準とともに公表した。対象種を選定するに当たり、委員会は以下の7項目を基準としたという。
○種の管理、取り締まりが実現可能であること
○効果的な漁獲記録制度が存在すること
○複雑な加工流通過程を有すること
○他の種と偽って扱われた履歴があること
○税関申告などにおいて不正表示の履歴があるもの
○漁獲違反の履歴があるもの
○不正表示などにより人体に悪影響を及ぼした履歴があるもの
<候補種のうちクロマグロは対象外に>
委員会が公表した対象種は次のとおり。
アワビ(Abalone)、タイセイヨウダラ(Atlantic Cod)、ブルークラブ(Blue Crab)、シイラ(Dolphinfish)、ハタ類(Grouper)、タラバガニ〔King Crab(red)〕、マダラ(Pacific Cod)、レッドスナッパー(Red Snapper)、ナマコ類(Sea Cucumber)、サメ類(Sharks)、エビ類(Shrimp)、メカジキ(Swordfish)、ビンナガマグロ(Albacore Tuna)、メバチマグロ(Bigeye Tuna)、キハダマグロ(Yellowfin Tuna)、カツオ(Skipjack Tuna)。
8月に公表された候補種のうちクロマグロ(Bluefin Tuna)は対象外となった。委員会はその理由として、米国市場に入ってくるクロマグロのうち主要2種であるタイセイヨウクロマグロ(Atlantic Bluefin Tuna)とミナミマグロ(Southern Bluefin Tuna)についてはしっかりとした漁獲証明書制度が導入されていること、クロマグロは他のマグロとは異なり他種と偽って扱われた履歴がないことを挙げた。なお、今回選定された上記の対象種は、金額ベースで米国に流入する水産物の約40パーセントを占めているという。
対象種が決定したことで、委員会はトレーサビリティープログラムの具体的な規則作りに入る。2016年9月から規則を実施し、同年12月までに発表予定の報告書には、実施後のプログラムの評価およびプログラムを拡充するためのスケジュールが記載される。同報告書ではプログラムの対象を水産物全種に拡大することの可能性についても言及される予定だ。2017年9月までには同プログラムの最新情報と評価およびプログラムの次の段階が発表される。
トレーサビリティープログラムの対象となる種の選定理由や、寄せられたパブリックコメントの要点、コメントに対する委員会の回答については、連邦官報(Federal Register)に掲載されている。
(三橋謙一、熊谷樹里)
(米国)
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