EU・ベトナムFTAの交渉終了、2018年初めの発効目指す
(ベトナム、EU)
ハノイ事務所
2015年12月25日
ベルギーのブリュッセルで12月2日、EU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)交渉の正式な終了が宣言された。ベトナム側の報道はおおむね好意的で、EUへの輸出拡大と投資促進に期待している。ベトナム政府はEVFTAの発効を早くて2018年初めとしており、それまでの2年間は法制度の整備などに充てられる。
<双方で貿易額と品目の99%を関税撤廃へ>
EVFTA交渉は2012年6月に交渉開始を宣言、14回の会合が行われ、2015年8月に大筋で合意していた(2015年8月19日記事参照)。ベトナム側がEVFTAに期待しているのは、まず輸出の拡大だ。EUとベトナムの輸入関税は、双方の貿易額と品目数の99%が撤廃となる(在ベトナムEU代表事務所資料)。時期的にはEU側は7年後、ベトナム側は10年後までに撤廃される見通しだ。
また即時撤廃に関しては、EU側がベトナムへの輸出額ベースで71%、品目ベースで84%、ベトナム側はEUへの輸出額ベースで65%、品目ベースで49%と、かなり高い比率になる。12月3日付のベトナム政府ウェブサイトは、輸出拡大が予想される品目として、ベトナム側の縫製品、靴製品、農水産品、木工製品、EU側の機械・設備、自動車、アルコール飲料、農産品などを挙げている。
現地報道によると、EUとベトナムとの貿易額は2010年の177億5,000万ドルから2014年には368億ドルと2倍強に拡大し、国・地域別では米国に次ぐ2位だ。直近の2015年1~6月は194億ドル(前年同期比11.0%増)で、輸出が149億ドル、輸入が45億ドル。ベトナム政府は、双方の貿易は補完関係にあり、EVFTAをきっかけにさらに経済的効果が大きくなるとしている。
<EUからの投資促進にも期待>
ベトナム側が次に期待するのは、EUからの投資促進だ。政府は、EVFTAには「オープンかつ円滑な事業投資環境を保護する」ことが盛り込まれているとする。具体的には、サービス貿易の自由化、政府調達、知的財産権の保護などの分野だ。
例えば、サービス貿易の自由化の場合、外資系小売流通業が多店舗展開する際に必要とされるエコノミックニーズテスト(ENT)の審査が、発効から5年後に廃止される(在ベトナムEU代表事務所資料)。また、政府調達については従来、交渉に乗っていなかったが、今回は環太平洋パートナーシップ(TPP)と同様に、公約として規定された。
12月2日付の「ベトナムエコノミックタイムズ」紙(電子版)によると、2015年におけるEUからベトナムへの直接投資は国・地域別で3位、2015年9月までの累計は2,030件、310億ドルとなっている。業種別では、工業、建設、サービス業の順に多い。政府は、EVFTAをきっかけにベトナムが(ASEAN)域内におけるEUとの貿易・投資活動の懸け橋、ハブになることを期待している(12月3日付政府ウェブサイト)。
<発効までに法制度などを整備>
ベトナム政府は、EVFTAの発効を早くて2018年初めと見込んでいる。在ベトナムEU代表部のブルノ・アンジェレット大使は12月7日にハノイで開催されたセミナーで、発効までの2年間を「効果的にFTAを運用できるよう、EUとベトナム双方で法制度の整備などのキャパシティービルディング(能力向上)に充てる」と説明した。実際に、EVFTA交渉でベトナムとEUは、相互に関心のある分野で協力プログラムとキャパシティービルディングを実施することに合意している。
同代表部関係者はEUからの輸入が多い医薬品を例に挙げ、「輸入手続きや国内販売の許認可など法制度がかなり複雑になっており、改正しなければならない」と述べ、キャパシティービルディングの必要性を説いた。また、キャパシティービルディングは衛生植物検疫や貿易障壁などについても行われる。ベトナム政府は、これにより法的なシステムを構築でき、中小企業の競争力強化につながるとみている。さらにベトナムでは、EVFTAによりEUの近代的な技術やマネジメントスキルを習得することができ、より多くの雇用を創出できると期待を寄せている。
(佐藤進)
(ベトナム、EU)
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